スカイヤー・オブ・ザ・ドラゴン

作者:土師三良

●宿縁のビジョン
「この辺りは復興途中……というか、まだ手つかずの状態ですね」
 青い体色の竜派ドラゴニアン――中条・竜矢(蒼き悠久の幻影竜・e32186)が自主パトロールしているビル街は、つい最近まで大阪城デウスエクス連合軍との緩衝地帯だった都市の一画だ。
 いくつかのビルが半壊している上に一般人の姿がないため、ゴーストタウンの様相を呈しているが、それも今だけのこと。再入植が始まれば、以前の活気を取り戻すことだろう。
 突然、その希望の街に不吉な影がさした。
 慣用句ではなく、大きな影が実際に地を走ったのである。
 竜矢は反射的に顔を上げ、影の主を見た。
「ドラゴン!? ……いや、ダモクレスですか」
 そう、それはドラゴンを模したような白いダモクレスであった。体長は三メートルほど。両肩から長大な砲身が伸び、体のそこかしこに機銃が装着され、左手の何倍もあろうかという右手には鋭い爪が備わっている。偵察や諜報ではなく、攻撃を目的とした機体であることは明らかだ。
「どらごにあん、発見」
 ダモクレスのほうも竜矢の存在に気付いたらしく、空を旋回しながら、電子音声で呟いた。
「対どらごん用ノ私カラスレバ、相手ニ不足アリモイイトコロダガ……マア、肩慣ラシニハナルカモシレンナ」
「随分な言われようですね。しかし――」
 頭上のダモクレスを睨みつけて、竜矢は武器を構えた。
「――肩が慣れてる頃には、あなたはスクラップになってるかもしれませんよ」

●セリカかく語りき
「中条・竜矢さんがデウスエクスに襲撃されます」
 ヘリポートに緊急招集されたケルベロスたちの前で、ヘリオライダーのセリカ・リュミエールが予知を告げた。
「場所は大阪市内。ユグドラシル・ウォーの前までは緩衝地帯だったエリアの一つであり、未だに一般人の出入りは制限されていますので、幸いなことに周囲に市民はいません。さて、肝心のデウスエクスですが……どうやら、対ドラゴン用として生み出されたダモクレスのようですね」
 そのダモクレスは形もドラゴンに似ており、翼は有していないが、飛行しているという。また、最強種族たるドラゴンを相手取ることを想定しているため、高火力である可能性が高い。
「しかし、現在のダモクレス勢にとって、対ドラゴン用兵器というのはさして有用なものではないと思われます。ドラゴンたちに往年の勢いはありませんし、今はケルベロスの対処に戦力の大半を回さなくてはいけない状況でしょうから」
 故に件の対ドラゴン用ダモクレスはフラストレーションを溜め込んでいるかもしれない。そして、鬱憤を晴らすと同時に自己の有用性を証明するため、ケルベロスたる竜矢を完膚なきまでに叩きのめそうとするかもしれない。
「今から出発すれば、戦闘が始まる直前に現場に到着できるはずです。来ていただけますね?」
 セリカは皆にそう尋ねると、答えを待つことなく(答えは判り切っているからだ)ヘリオンに向かって歩き始めた。


参加者
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
立花・恵(翠の流星・e01060)
伏見・万(万獣の檻・e02075)
フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)
七星・さくら(緋陽に咲う花・e04235)
中条・竜矢(蒼き悠久の幻影竜・e32186)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
朧・遊鬼(火車・e36891)

■リプレイ

●立花・恵(翠の流星・e01060)
 ヘリオンからダイブすると、ボロボロの市街地が眼下に広がった。
 崩れたビルや崩れかけたビルや崩れていないビルの間を二つの影が飛び回っている。青い影と白い影。
 風を切る音に紛れて、外部スピーカー越しのセリカの声が聞こえてきた。
『ヘリオンデバイス、起動!』
 光が俺たちを包み込み、すぐに消え去った。
 ヘリオンデバイスを置き土産にして。
 俺のそれは耳掛けヘッドホン型のゴッドサイト・デバイスだ。片方の耳の辺りに手をやって操作すると、その小さなサイズに収まるはずのないバイザーが両目の前で実体化した(原理は訊くな。俺にも判らん)。ゴッドサイト・デバイスの機能が必要とされている状況じゃないってことは判ってる。バイザーで目を保護したかっただけ。
 皆がデバイスを装備している間も高度はぐんぐんと下がり続け、ビル群が大きくなっていく。青と白の影はもう影じゃない。竜と人の間の形を取っている。
 青いほうは俺たちの仲間。竜派ドラゴニアンの竜矢。
 白いほうは俺たちの敵。ドラゴン型のダモクレス。
「おまたせ、竜矢! 助けに来たぜ!」
「ありがとうございます」
 俺の叫びに応じて、竜矢がこちらを振り仰いだ。その姿が普段と少し違って見えるのは、あいつもヘリオンの光を浴びたから。デバイスのタイプはジェットパックだ。
「あいつを倒すために――」
 敵に視線を戻した竜矢のデバイスから何本かのビームが伸び、そのうちの一本が俺のデバイスに繋がった。
「――よろしくお願いします!」
「おう」
 と、答えたのは万。狼の人型ウェアライダーだ。竜矢と同様にジェットパック・デバイスを装着し、これまた竜矢と同様に牽引ビームを伸ばしている。
 そのビームをエニーケがゴッドサイト・デバイスでキャッチした。
「動物変身していたら、天馬になっていましたわね。翼などありませんけども」
 そんな冗談が成り立つのは、エニーケが馬の獣人型ウェアライダーだから。デバイスも馬用の兜(『ちゃんふろん』とか言うんだっけか?)みたいな形をしている。
「見たところ、奴にも翼がないようだな」
 敵を睨みつけながら、フィストが言った。彼女は竜派のドラゴニアン。デバイスを使わずに翼で飛行している。
「高等種族タルだもくれすニ――」
 敵が顔を上げ、機械仕掛けの赤い目を俺たちに向けた。
 いや、目だけじゃなくて、両肩から突き出してる大砲も。
「――翼ナド不要ダ」

●伏見・万(万獣の檻・e02075)
 しっかし、可愛げのない竜モドキだよな。何人ものケルベロスがいきなり空から降ってきたってえのに、ビビる様子を見せやしねえ。
 それどころか、悠々と大砲をブッ放してきやがった。大砲は二門だから、砲弾の数も二つ。煙の糸を引いて延びてく先にはフィズムがいた。
 しかし、それらはフィズムの手前で爆発した。
 無表情な若造が盾になったからだ。
「対ドラゴン用ダモクレスか……」
 砲撃の爆煙が晴れ、その若造――霧山の姿がまた現れた。ダメージを受けたにもかかわらず、あいかわらず無表情と来たもんだ。
「あえて言おう。遅かったな」
 俺のデバイスに牽引されて飛びながら、ドラゴニックハンマーを砲撃形態に変える霧山。
 その両隣と真上を三つの影が疾走した。立花と中条、そして、シャドウエルフの朧。
「空中戦はデバイスを使って何度かこなしたし、宇宙戦だって経験したし、だいぶ慣れてきたつもりだけど――」
 立花が足を突き出した。
「――やっぱり、地に足がついてるほうが性に合ってる気がするな!」
 敵のドタマにスターゲイザーが命中。
 続いて、中条と朧も同じ技を食らわせた。
「リュウヤを狙うとは命知らずな奴だ」
 蹴りの反動を活かして離脱しながら、朧がダモクレスに言った。
「友に刃を向けたことを後悔させてやる」
 それに対してダモクレスはなにか言い返したようだが、聞こえなかった。さっきのお返しとばかりに霧山が轟竜砲を響かせたからだ。
 直撃を受け、体勢を崩すダモクレス。
「後悔? 随分と優しいのね、遊鬼くん」
 と、朧に笑いかけたのは七星だ。白と黒の斑の翼を持ったオラトリオなんだが、その翼を使わずに牽引ビームで飛んでいる。
「わたしは後悔だけで済ませるつもりはないよー」
 七星のバトルクロスから何体かのヒールドローンが射出され、前衛陣の防御を強化した。ちなみにフィズム以外の前衛は一人と一体。フィズムの同族のヴァーミスラックス(後衛の減衰値を小さくするためか、牽引に頼らずに自前の翼を使っている)と、その頭にしがみついているオルトロスのイヌマルだ。
「ヴォオさんとイヌマルくんは盾役をよろしくー」
「がおー!」
 七星が元気な声で指示を出すと、イヌマルも元気よく答えた。
 だが、ヴァーミスラックスだけは元気がない。
「俺、前衛は苦手なんだけど……」
 こぼしながらも、チーム最年長のドラゴニアンは『紅瞳覚醒』の演奏を始めた。

●霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
「こいつぁ、喰うには随分と硬そうだが――」
『紅瞳覚醒』が流れる中、半壊して傾いたビルに沿って、伏見さんが急降下しました。敵に体当たりでもするかのような勢いです。
「――まあ、好き嫌いはよくねえわな」
 しかし、体当たりはしませんでした。敵にぶつかる寸前にビルを蹴り、直角に軌道変更したのです。拳を振り下ろす動作とともに竜の頭部の幻影を投下しながら。
 半透明の竜は巨大な顎門で敵の上半身を挟み込み、牙を突き立てました。『喰う』というのは比喩ではなかったようですね。
 その竜がダメージを残して消えるや否や、新たな竜が現れました。
 もちろん、今度のそれも幻影。フィズムさんが青白い体(青い竜矢さんと白い敵の間に並ぶと、グラデーションになりますね)の上に、朽葉色の不気味かつ巨大なドラゴン型のオーラを纏っているのです。
「キュオオオーン!」
 耳をつんざく咆哮をあげ、フィズムさんは敵に突撃しました。先程の伏見さんのように体当たりせんばかりの勢い……いえ、今度は本当に体当たりをしました。
 朽葉色の幻に弾かれて、空中で真横に飛んでいく白い鋼の体。
 その後方にスコルークさんが素早く回り込み、ポーズを決めました。右の前腕部を垂直に立て、左腕を水平に交差させて十字をつくり……なんというか、一目で『ああ、これは必殺技なんだな』と納得できるポーズですね。
「通り魔感覚でイキり倒させていただきますわ!」
 交差した腕から光線が伸び、ダモクレスの背中に命中。逆方向に弾かれた末、ビルの壁面に衝突しました。これがカートゥーンなら、敵のシルエットと同じ形の穴が壁面に穿たれるところでしょう(そして、頭上でヒヨコが舞うのでしょうね)。しかし、現実の世界では穴だけでは済みません。ぶつかった勢いが強すぎたためか、ビルにダメージに蓄積していたのか、あるいは手抜き工事だったのか……とにかく、その衝突を切っ掛けにして、ビルの一角が崩れ落ちました。
「エニーケちゃんってば、通り魔といよりも破壊魔だねー」
 さくらさんが笑っています。

●七星・さくら(緋陽に咲う花・e04235)
 崩壊したビルの一部が更に崩壊して、その奥からダモクレスが猛スピードで飛び出してきた。衝撃波を伴っての再登場。いくつもの瓦礫が散弾みたいに飛び散ったりして……まあ、派手なこと。
 その瓦礫の一つを和希くんが受け止めた。でも、自分の手を使ったわけじゃないよ。アームドアーム・デバイスの腕を真横に伸ばしてキャッチしたの。
 そして、ダモクレスめがけて投擲。一見、ただのサイドスローだけど、実はガンスリガーのお家芸のクイックドロウなんだろうね。
「ウォォォーッ!」
 両目の間に瓦礫を受け、ダモクレスが吠えた。特殊金属で出来ているであろう顔面が歪んで見えるのは、今の攻撃のせいで装甲が変形しちゃったから? それとも、怒りの表情?
 一方、和希くんのほうは無表情をキープ。でも、憎しみのオーラみたいなのがメラメラと燃え上がってるような感じがするのよねー。同僚の竜矢くんが襲われたもんだから、本当は荒ぶっているのかも。
 かく言うわたしも少しばかり荒ぶってるよ。優秀かつ可愛い後輩である竜矢くんを行きずりの敵の餌食にするわけにはいかなーい! それは職場の未来と地球の平和にとって、大きな損失だからー!
「ウォォォォォーッ!」
 負けじと荒ぶるダモクレス。吼え続けながら、右腕や両腰のレーザー機銃を撃ちまくった。
 狙いは後衛陣。でも、後衛に位置するわたしはノーダメージ。遊鬼くんがカッコよく庇ってくれたからね。
「方針変更だ。さくらが言っていたように、後悔させるだけでは済まさない」
 ダメージをものともせずにエクスカリバールをぶん投げる遊鬼くん。その姿に大きなハートが重なって見えるのは、わたしが特別な想いを抱いてるから……とかじゃなくて(だって、わたしには愛しのダーリンがいるもーん)、可愛いナノナノのルーナちゃんがナノナノばりあで包み込んだからよ。

●朧・遊鬼(火車・e36891)
 仲間を庇ったのは俺だけじゃない。
 フィストも翼を広げて射線を遮り、我が身を盾にした。
 守った相手はリュウヤだ。
「大丈夫か、竜矢?」
「はい。すいません、フィストさん」
 と、二人がやりとりをしている間にエニーケがダモクレスに迫った。
 真上から一直線に。
 巨大な牙にも似た(しかし、牙らしからぬ紅に染められた)両刃の戦斧を手にして。
「地の底へ叩き落としてあげますわ! でも――」
 ダモクレスの肩に戦斧が叩き込まれた。紅の刃に刻まれたルーンが輝いているのは、その技がルーンディバイドだからだろう。
「――とどめを刺すのは私じゃなくてよ!」
 エニーケの言葉に応じるかのようにフィストの後方からリュウヤが飛び出し、バスターライフルからフロストレーザーを発射。一瞬、白い直線の光が奴とダモクレスを結んだ。
 しかし、こうやってリュウヤの奮闘振りを見ていると……『友に刃を向けたことを云々』という言葉が甦ってきて、なんだか気恥ずかしくなってくるな。まあ、リュウヤには聞こえていなかっただろう。たぶん、おそららく。
「定命者ゴトキガ……」
 悔しげに呻きながら(ダモクレスのくせに感情があるらしい)、敵は翼なき体で弧線の軌道を描き、俺たちの前から離脱した。間合いを広げて体勢を立て直すつもりなんだろう。
 しかし、上手くいかなかった。
 ジェットパックを噴かして、万が後方に回り込んだからだ。
「『定命者ごとき』だぁ?」
 万の右の拳が唸りをあげ、ダモクレスに叩きつけられた。降魔真拳の一撃。ちなみに左手はスキットルを握ってる。
「対ドラゴン用ポンコツ野郎がナメた口をきいてんじゃねえよ。こちとら、竜より怖いって評判の地獄の猟犬様だぜぇ」
 万はスキットルをぐびりと呷った。

●フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)
 対ドラゴン用というだけあって、敵は頑強だった。戦闘が始まってから五分以上が経過したが、まだ倒れていない。
「定命者ノ分際デ……」
 先程と同じようなことをほざきながら、ダモクレスが後衛陣めがけてレーザー機銃を斉発した。ダメージが減衰している(なにせ、後衛はサーヴァントを含めて八体もいるのだ)ことは判っていたが、私は横っ飛びで恵の前に移動し、代わりにレーザーを受けた。
「まだ定命者がどうこうとか言ってんのかよ」
 牽引ビームをしならせて、恵が私の頭上を飛び越えた。その体を覆うバトルオーラが左手に集束し、半透明の刃に変わっていく。
「そうやって敵を見くびるのはカッコ悪いぜ」
 恵はダモクレスに体ごとぶつかり、この戦いで生じた相手の傷口の一つにオーラの刃を突き入れて抉り抜いた。おそらく、絶空斬だろう。
「……ブァッ!?」
 と、苦しげに呻きながらもダモクレスは機銃の一つを恵に密着させた。零距離からの反撃。
 しかし、そこからレーザーが放たれるより早く――、
「頼むぞ、イクス」
 ――和希が側面から何本もの刃を繰り出し、ダモクレスの動きを封じた。
 それらの刃は和希のオウガメタル『イクス』から伸びていた。惨殺ナイフのようにジグザグの形状でありながら、オウガメタルゆえに柔軟なので、敵に絡み付くと同時に斬り刻んでいる。
 その間に恵が離脱し、彼に密着していたはずの機銃がコンマ数秒ほど遅れてレーザーを撃ち出した。
 そして、空気だけを虚しく灼くレーザーの横を青い影がすり抜けた。
 竜矢だ。
「この空から落ちてもらいましょう!」
 幾度目かのスターゲイザーがダモクレスの頭頂部に打ち込まれた。

●エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
『この空から落ちてもらいましょう!』という宣言とともに強力な蹴りを脳天に食らったダモクレスではありますが――、
「落チルモノカ!」
 ――竜矢さんを押し返すかのように高度を上げました。往生際が悪いですねえ。
「さっさとくたばれや!」
 万さんが敵の後方から突進し、背中に降魔真拳をぶつけました。あいかわらず、片手にスキットルを持っておられますわ。
「あるこーる臭イ獣人メ!」
 敵が悪態をついて振り返るものの、万さんは相手の動きに合わせるように螺旋を描いて上昇し、あっという間に離脱。ジェットパック・デバイスを活用されてますわね。私もゴットサイト・デバイスを活用したかったのですが……敵の位置が最初から把握できている上に非戦闘時ではありませんから、ジェットパックの被牽引装置としての使い道しかありませんでした。
「さあ、凍りつき――」
 万さんと擦れ違って降下してきたのは遊鬼さん。その手に構えたエクスカリバールは炎を纏っています。竜矢さんの体と同じ色の炎。
「――地に落ちろ」
「『落チルモノカ』ト言ッタハズダ!」
 燃えるエクスカリバールに打擲されても(ちなみ命中した部位は燃えることなく、逆に氷結しました)敵はなんとか耐え抜き、右手の爪で遊鬼さんに反撃しました。
「悪あがきだねー」
 さくらさんが爆破スイッチを押し、遊鬼さんを含む各後衛の背後でブレイブマインを炸裂させました(空中なので、まるで花火のよう)。傷を癒すことではなく、攻撃力を上げることが目的でしょう。
 まあ、ヒールであれ、エンチャントであれ、減衰は避けられないのですが――、
「にゃあ!」
 ――ウイングキャットのテラさんが足りない分を補うべく、清浄の翼で後衛を癒しました。
「ありがとよ」
 と、さくらさんとテラさんにお礼を述べながら、恵さんがホルスターからリボルバー銃を抜きました。
「さて、一気に畳みかけるとするか」

●中条・竜矢(蒼き悠久の幻影竜・e32186)
「『高等種族に翼は不要』などと抜かしていたな? ならば、それ相応の誇りは示してもらおうか!」
 フィストさんがビルの屋上に着地し、敵に向かって叫びました。
「翼ある者には誇りがある! 空を飛び、風とともに生きる高揚感もな!」
 翼を広げて再び飛翔したフィストさんの手にあるのはガネーシャパズル。四本腕の怒れる女神カーリーの幻影がそこから現れ、曲刀でダモクレスに斬りつけました。
「そう! 無限の彼方へと向かうかのような高揚感ですわ!」
 斬撃を浴びせて消えゆくカーリーの後方からエニーケさんが飛び出しました。無数の竜の鱗らしきもので飾られたドラゴニックハンマーから放たれたグラビティはアイスエイジインパクト。
 続いて動いたのは恵さんです。エニーケさんの攻撃で吹き飛ばされたダモクレスの懐に飛び込み、またもや密着しました。ただし、今回の武器はバトルオーラではなく、リボルバー銃ですが。
「食らえっ!」
 零距離から弾丸を撃ち込むと同時に恵さんは離脱し、銃をくるくると回してホルスターに戻しながら、私に叫びました。
「最後は竜矢、おまえに任せた!」
「やるべきことをしっかりと果たしていらっしゃい」
 さくらさんがエールとウインクを送ってくれました。
 その横で無言で頷いたのは和希さんです。
 私は頷き返し、ジェットパックの出力を上げて、突進しました。
 和希さんが言うところの『遅すぎた』敵に向かって。
「ウォォォーッ!」
 裂けんばかりに口を開けて、敵は電子音声の怒号を響かせています。威嚇のつもりでしょうか? だとしたら、効果はゼロです。
「定命者ゴトキニ負ケルハズガナイ! 対どらごん用トシテ生ミ出サレタ私ガ!」
「ダモクレスに対ドラゴン用兵器など不要ですよ。なぜなら――」
 私は両腕を広げ、自分の胸部に意識を集中しました。
「――ドラゴンも、ダモクレスも、私たちが倒すからです!」
 胸部から光弾が発射され、少し遅れて衝撃波が後に続きました。私だけのグラビティ『フリージング・ゼロ・バースト』。
 光弾が命中した途端にダモクレスの体が凍り付きましたが、その悪趣味な氷像を鑑賞する暇はありませんでした。後から到達した衝撃波によって、粉微塵に崩れ去ったからです。
 無数の破片と化したダモクレスが雹さながらに地面に降り注ぐ様を見届けて、私は他の方々に改めてお礼を述べました。
「皆さん、ありがとうございます」
 全員をぐるりと見回した後、遊鬼さんに視線を固定。
「とくに遊鬼さん……『友』と呼んでいただけたのは嬉しかったですよ」
「ん?」
 と、遊鬼さんは首を傾げました。
「記憶にないな」
 えー!?

作者:土師三良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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