虚ろの鋒

作者:坂本ピエロギ

 それは巨大な通路だった。
 双魚宮『死者の泉』に繋がる転移門、その内側に広がる異次元回廊――。
 かつてアスガルド神により封印されたこの地を満たすのは、ただ絶対零度の静けさのみ。デウスエクスも人類も、動く者の影は一切存在しない。
 ただひとつの例外を除いては。
『オオ……オオォォォ……』
 声の主は、黒い鎧の騎士だった。
 獣めいた呻き。手には禍々しい長剣。回廊を彷徨う足取りはどこまでも虚ろ。
 名前も自我もとうに失い、防御機構の一部となり果てても、しかし騎士は剣を離さない。
『門は泉を護る者……この道、通ること罷り成らぬ……』
 失われた端末は13体。
 しかし転移門の守りはなおも盤石、何人たりとも通す事は相成らぬ。
 防御機構が発する絶対意志の下、『門』は泉を護り続ける――。

 磨羯宮の隠し領域で発見された、『死者の泉』に繋がる転移門。
 その門を守護する防御機構――通称『門』と名乗るエインヘリアルの撃破は、着々と進んでいるとムッカ・フェローチェは告げた。
「これまでの撃破数は13体。皆さんには引き続き、この『門』の撃破をお願いします」
 エインヘリアルの生命線であり、死神の最優先攻略目標である『死者の泉』。そこに至る方法はただ一つ、倒すたびに蘇る『門』を復活不能になるまで撃破し続け、防御機構を破壊する以外にない。
「破壊に必要な撃破数は42回。依頼では1体の『門』を撃破できれば成功となります」
 戦場となるのは魔空回廊に似た異次元の回廊だ。非常に広い一本道の空間となっており、『門』はその中央で侵入者を排除すべく待ち構えている。回廊内では敵の戦闘能力は数倍に強化されるため、ケルベロスであっても激戦は免れない。
「敵は妨害の能力に特化した相手で、回復や防御を低下させる攻撃を行ってきます。こちらもヘリオンデバイスの使用が可能ですので、ぜひ有効に活用して下さい」
 幸いにもエインヘリアル勢力は、いまだケルベロス側の動きを察知していない。
 天秤宮アスガルドゲートに近い位置にあると推測される、死者の泉。そこに通じる転移門が開かれれば、遠からず彼らとの決戦も開始される事だろう。
「エインヘリアルはこの瞬間も、地球侵略の機会を伺っています。私達の動きが彼らに露見する事のないよう、着実に制圧を進めていきましょう」
 そうしてケルベロスを信頼の眼差しで見渡すと、ムッカはコマンドワードを詠唱する。
 番犬達の牙が、心なき『門』に終焉をもたらすよう祈りながら。
「ゴッドスピード、ケルベロス。――ヘリオンデバイス起動!」


参加者
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
ジェミ・ニア(星喰・e23256)
櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)
尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)
エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)

■リプレイ

●一
 ヘリオンの光を身に宿し、ケルベロス達は駆ける。
 死者の泉の防御機構が待ち受ける、異次元の回廊を目指して――。
「『門』……転移門を守る門番達か。じつに厄介な相手だな」
 磨羯宮の隠し通路をひた走りながら、リューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)は呟いた。
 泉への道が発見されて一月半。今までに撃破した『門』の数は、ちょうど3分の1に届くところだ。いずれ来たる決戦のためにも、立ち止まる事は許されない――リューディガーは決意を胸に、アームドアーム・デバイスの拳をギュッと握る。
「皆よろしく頼む。一歩一歩、道を繋げて行こう」
「こちらこそ。死をもたらす現象に昇華した黒騎士……必ず排除して見せまショウ」
 頷きを返すのは、後列のエトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)だ。
 彼は今、仲間の隠密気流に囲まれながら、眼鏡型のゴッドサイト・デバイスで周囲を索敵している。不要な敵との遭遇を、万が一にも避けるために。
 そんな彼の前方では、メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)がブーツ型デバイスを操作し、仲間達のそれに逃走補助用ビームを接続していた。
「戦いも奇術も同じ。万一の命綱は怠らずに、ね」
 門を開くための戦いは、長丁場の戦いだ。焦らず腐らず泉への道を拓いてやる――そんな決意を胸に、メロゥは4度目となる『門』との戦闘に臨む。
「あんな仕掛けを見たら……ね。勝負師の僕としては、挑まずにはいられないよ」
「うむ。いかにも『暴いてみろ』と言わんばかりの造りだものな」
 先頭を飛ぶ櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)が、飄々と頷きを返す。
 ジェットパック・デバイスの調子は上々だ。隊列を外れぬように低空飛行しながら、ふと千梨は泉の防御機構に思いを巡らせた。
「42回、行っては帰る。何やら儀式めいているが……」
 門番が守る先、死者の泉には果たして何があるのか――道が開かれれば、その謎も明らかとなる事だろう。その為にも、己の役割はきっちり果たさねば。
「ところで広喜。デバイスの具合はどうだ?」
「おうっ、絶好調だぜっ!」
 後列を行く尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)が、ドローンを旋回させて合図を返した。折り紙型のレスキュードローン・デバイスは、この実戦が初お目見えとなる。迫る戦いの時を待ちわびるように、
「待ってろ『門』。何度だって壊してやる」
 そうして満面の笑みで凝視した先には、逆巻く渦のような空間があった。
 死者の泉に繋がる、異次元回廊の入口である。
「あの奥に敵がいるんだね。藍ちゃん、レッツゴーだよ!」
 ライドキャリバーの『藍』に跨った山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)は、拳を突き上げ加速した。渦を潜り抜け、一変する視界。体感時間で1秒にも満たぬ間に、広大な一本道の空間へと世界が切り替わる。
 ことほは初めて訪れた回廊を珍しそうに見回しながら、
「うわー凄い。ていうかこれなら、門番とか要らなく――」
 仲間達への軽口が、ふいに途切れた。回廊の前方から刺すような殺気を感じたからだ。
 ことほが見据える先、転移門の前には黒い影――『門』の姿があった。
「ヤッバ……! やる気満々ってやつ?」
 メリュジーヌハープ『小角』を構え、戦闘態勢を取ることほ。その横でジェミ・ニア(星喰・e23256)は『門』との間合いを測り始める。
「今日も宜しく、エトヴァ。頼りにしてるよ!」
「ハイ。頑張りまショウ、ジェミ」
 大事な家族、そして信頼した仲間と肩を並べて戦う。
 エトヴァはその事に頼もしさを覚えながら、同時に言い知れぬ悲しみも感じていた。
 『門』――死者の泉へ至る道を、ただ一人で守り続けた番人に。
「あなたは誰でしたカ。使命を果たすだけの存在なのでショウカ……」
『この先、通ること罷り成らぬ』
 虚ろなる声で漆黒の剣を構える『門』。それに愛用の竜鎚を突きつける事で応えたのは、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)だ。
「42体の『門』、必ず排除して見せる……!」
 今はただ、目の前の敵を殲滅するのみ。
 互いに退けぬものの為、ケルベロスは『門』との戦闘を開始するのだった。

●二
『不埒なる者共は通さぬ。排除すべし』
 戦いの火蓋を切ったのは、『門』の一撃だった。
 黒い剣が振り下ろされると同時、死者の嘆きが波動となって押し寄せる。その一撃を正面から受け止めるのは、盾役のリューディガーと藍だ。
「そうはいくか……っ!」
 ガード態勢を取り、波動を受け止めるリューディガー。デバイスで増幅した彼の生命力は防波堤のごとく、後衛への攻撃を防ぎきる。
「広喜、大丈夫か?」
「おうっ、全然平気だぜっ!」
 呼びかけに応じるは、とびきりの笑顔とサムズアップ。
 そうして広喜はドローンを飛ばし、折り紙の紙兵で前衛の仲間を包み込んだ。デバイスの強化による治癒の効果は凄まじく、負傷者のダメージを余さず取り除く。状態異常の耐性をもたらす、祝福の力と共に。
「へへっ。さあ行こうぜっ!」
 拳を突き上げる広喜。即座にエトヴァとティーシャが頷きを返す。
「ターゲット捕捉――いざ参りまショウ」
「心得た。カアス・シャアガの威力、思い知れ!」
 轟く二門の轟竜砲が、反撃開始の狼煙を上げる。
 放物線を描いて飛ぶ竜砲弾。それを避けんとする『門』を嘲笑うように、デバイスの補正を受けて発射された砲弾が立て続けに直撃し、敵の回避を封じ込めていく。
「センリ。命中率は足りますカ?」
「ふむ、もう一声欲しい。詰めを誤るのは避けたいしな」
 千梨はエトヴァにそう返し、エクトプラズムを圧縮する。
 生み出されたのはプラズムキャノン――命中した者の回避を奪う霊弾だ。
「リスクの芽は潰させて貰おう。……ぷちっとな」
 言い終えるや、発射された弾が『門』に着弾する。
 冗談めいた口調とは裏腹の、極悪なまでの力に足を止められながら、しかし『門』は攻撃を緩めない。自分は死をもたらす現象、焦りも恐怖も抱かない――そう告げるように。
『通さぬ。誰一人……』
「人格を失い、システムの一部と成り果てたか。おぞましいものだ」
 リューディガーは拳銃を手に、銃口を『門』に突き付ける。
 名前も自我も失った門番、そんな相手にしてやれる事は一つしかない。できる限り速やかに、全てを終わらせる事だけだ。揺るがぬ覚悟を胸に秘めて、いまリューディガーは拳銃の引鉄を引く。
「目標捕捉……動くな!」
 威嚇発砲が、『門』の足を縫い留める。
 そこへ続けて仕掛けたのは、コンビネーションを発動したメロゥだった。
「短いショーにはなるだろうけれど。戦闘用奇術、楽しんでいってね」
 颯爽とかざすタキシードの袖から、色鮮やかなカードが溢れ出る。
 ダイヤ、クラブ、スペード、エース――幾百幾千の紙片を隠れ蓑に、メロゥの流星蹴りが『門』の脚にクリーンヒットを叩き込んだ。ブーツ型のデバイスがもたらす命中補正は強力そのもので、標的を捉えて逃がさない。
「足止めは十分だね。さあ、どんどん攻めよう」
「了解です!」
 そうしてジェミは頷きひとつ、バトルオーラで利き腕を包み込んだ。
 ジェットパック・デバイスで加速。一呼吸で『門』との間合いを詰め、叩き込むのは鎧をはぎ取る雷刃突の貫手だ。空気が弾ける軽快な音と共に、鎧の破片が宙を舞う。
「藍ちゃん、デットヒートドライブ!」
 続くことほはエクトプラズムで疑似肉体を生成、リューディガーら前衛にさらなる強固な保護を築いていく。続けて藍がエンジンを唸らせ『門』へと突撃。渾身の体当たりで黒騎士を真っ赤に焼き焦がした。
『通さぬ……通さぬ……』
「よしっ、いい感じ。気合いれて行くよー!」
 炎上しながら怨念の声を漏らす『門』に、ことほとケルベロスは一歩も退かず。
 巌のごとき意志を胸に抱きながら、さらに攻勢を強めていった。

●三
 剣戟と砲撃が、折り重なって木霊する。
 『門』の攻撃は苛烈を極めた。保身など眼中にはないのだろう、繰り出してくる剣筋に、意志らしきものは一切感じられない。
『賊ども、通る事は罷り成らぬ』
 絶え間なく降り注ぐ攻撃に耐えながら、ケルベロスは攻撃態勢を着々と築いていく。
 『門』が状態異常を付与すれば、広喜と盾役の支援、そして耐性の力でかき消した。
 慟哭の波動が破剣をもたらせば、すぐにブレイクで破壊にかかった。
「Ich male ein Sternbild――」
 御業の鎧に包まれ、エトヴァが放つは『Rotes-Netz』。指先から射出されるグラビティの投網は、紅色の五線譜にも似て『門』の全身に絡みつくと、妨害音波をかき鳴らして治癒の力を阻害する。
「ブレイクの成功を確認。御業の支援感謝しマス、メロゥ殿」
「どういたしまして。お役に立てて嬉しいよ」
 スカーフをひらりと振って、微笑むメロゥ。
 そうして彼女は、そのまま手にしたスカーフを宙へと舞わせた。コンビネーションの発動と同時に、メロゥはその一枚を『門』の剣にひらりと被せる。妨害に優れる敵に向かって、真正面から勝負を挑むように。
「君にもご協力願わせてもらうよ。ふふ、大丈夫大丈夫、遠慮しないで」
 扇動と慰撫を司るメリュジーヌの囁きが、少女の口から紡がれる。
 一切を僕に任せてくれれば――そんな誘いの言葉と共に、スカーフがもぞりと動く。
 そして、次の瞬間。
「悪いようには――するかもね?」
 取り払われたスカーフから現れたのは、剣の変わり果てた姿だった。
 漆黒の刀身には無惨な穴が三つ。齧りかけのチーズよろしく開いた穿痕、そこに嵌められたコインが次々零れ落ち、空しい音を立てて床を叩く。
「おや、ちょっと強引だったかな? 次はもっとスマートにやるとしよう」
「へへっ。よし、一斉攻撃だなっ!」
 メロゥが謎めいた笑みを浮かべると同時、広喜のブレイブマインが前衛の背を彩った。
 それを合図に、ケルベロス達の牙が『門』へと襲い掛かる。
「貰いました!」
 真っ先に仕掛けたのはジェミだ。高速回転するスパイラルアームの刺突が『門』の防御を容易く破り、鎧の破片を盛大にぶちまける。同時、息を合わせたリューディガーが、即座に回復から攻撃に転じた。
「逃がさん!」
 肉薄から繰り出す稲妻突きが、鎧の隙間に突き刺さる。神経回路を麻痺させる一撃に悶絶する『門』。そこを千梨は狙い定め、簒奪者の鎌『灰隠』を振り被った。
「ふむ、良い流れだな。このまま行こう」
 渾身の力を込めて、投擲。続けざまにティーシャがバスターライフルを構え、冷凍光線を発射する。立ち止まっている暇はない。圧倒的な火力をもって、一秒でも早くあの『門』を殲滅するのみだ。
『門は守る。泉を守る』
「ざんねーん。効かないよ、っと!」
 虚の力を帯びた鋒を受け止め、ことほは堂々と胸を張る。
 盾役の彼女にとって、欠けた刃はもはや脅威足りえない。治癒阻害の呪いは、耐性の力と癒しの拳でかき消した。それを見たリューディガーはバトルオーラで拳を覆いながら、冷静に思考を巡らせる。
(「勝負あり、だな」)
 恐らく数分と経たずに勝敗は決する。だからリューディガーは告げる事にした。
 『門』ではない一人の戦士、かつて泉の番人であった名もなきエインヘリアルに。
「貴様の呪われた宿命、俺達が終わらせよう。だから安心して眠るといい」
 譲れぬものがあるのは、自分達も同じ。
 それに広喜も頷きを返し、地獄炎で包んだ拳を『門』に向けた。
「ここを守るのがてめえの任務か。なら、皆を守るのが俺の任務だ」
 いつか焦土地帯を復興するため。帰りを待つ者のため。
 彼もまた忠実に、己が任務を果たすのみだ。
「絶対帰るって約束してんだ。ーー行くぜっ!」
 跳躍から叩き込む『崩シ詠』が、『門』の全身を炎で青く染めた。
 息を合わせてリューディガーが突撃。肉薄と同時に放つ音速拳が、漆黒の鎧にめり込む。続けざま放たれるのは、後衛からの狙撃だ。
「ターゲット捕捉。フロストレーザー、発射しマス」
「逃しはしない。殲滅する!」
 エトヴァの凍結光線が、ティーシャのゼログラビトンが、相次いで直撃する。
 氷に包まれ、力を削がれても『門』は未だ倒れず。そこへ狙いを定めたことほは癒しの力を凝縮、『檸檬の果実』を発動した。
「ねえ知ってる? レモン1個には――」
 癒しの力は大樹となり、癒しを阻む酸をたくわえた檸檬の果実を結ぶ。
「農家さんの想いがぎゅーってたくさん詰まってるんだよー」
 降り注ぐ濃酸が『門』を焼く。その傷口を捉えたのは、ジグザグの惨殺ナイフを手にしたメロゥだ。一閃する刃に麻痺の傷を切り開かれ、ついに『門』は膝をついた。
『グッ……ググ――!』
「千梨さん、行きましょう!」
 そうしてジェミは利き腕を掲げ、一羽の白鷺を生成する。
 『Egret』。鳥を模して白熱するエネルギーの塊は、決して標的を逃さない。
「穿て!」
 一声の後、白鷺が『門』へと食らいついた。
 閃光が弾け、濛々たる黒煙が鎧から立ち昇る。グラビティの奔流が『門』を食い荒らし、致命傷を刻み込んだのだ。もはや逆転はない。決着の時だった。
「死をもたらす現象か。『お前達』は嘗て、誰だったのだろう……いや、由無し事か」
 飄々とした口調のまま、千梨が御業を発動する。その手際は素早く正確で、迷いがない。罪人の首をはねる熟練の処刑人のように。
「せめてもの餞だ、冥途の土産は派手なのを進呈しよう」
 言い終えた時には、もう千梨は結解で『門』を包んでいた。
 舞い散る紅葉に紛れて、獲物を屠る鬼手が振り下ろされる。防ぐことも、避けることも、何ひとつ『門』には許されない。
「紅に、惑え」
 散幻仕奉『隠鬼』――その一撃が、とどめ。
 剣戟も轟音も断末魔もない無音の結界、生命の終焉を告げるように散りゆく紅葉と共に、『門』はその身を消滅させた。

●四
 程なくして、離脱の準備は完了した。
 回廊に敵影はないが、じきに新たな『門』が現れる。連戦を避けての退却は、全員の一致するところだった。
「動けない人はいないね。お疲れっ、藍ちゃん!」
「おっしゃ、帰ろうぜーっ」
 情報の痕跡を片付け、隠密気流を纏って藍の座席に跨ることほ。
 広喜は武器飾りにそっと触れ、戦場へ手を振りながら離脱していく。
「エトヴァ、千梨さん、みんな無事で良かった……!」
「ジェミこそ、大事が無くて何よりデス」
「うむうむ、お疲れ。齢を重ねての初依頼としては、悪くない結果だな」
 ジェミは安堵の吐息を漏らし、エトヴァや千梨らと共に帰路を行く。
 一方メロゥは、去り行く最中に一度だけ回廊を振り返る。アンコールに応えるのは、少し先になるだろう――そう考えながら。
「また遠くないうちに来てあげるから、続きはその時に、ね」
 こうして泉への道を一歩進んだケルベロス達は、静かに帰還の途に就くのだった。
 残る『門』、あと28体。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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