――とある海底洞窟。
誰も気にも留めないこの場所で、巨大なダモクレスがひそかに活動をしていた。そのダモクレスの名は『暴食機構グラトニウム』。
キャタピラで水底を移動しながら、上部に装備された回転刃で壁を粉砕し、中央のクジラの口を開き鉱石を吸い込んでいく。
別段レアメタルや質のいい鉱石が掘れるわけではない。コストに見合わない場所で好き好んで採掘をしようと考えるものなどいない。
だからこそ、邪魔をされずに大量の鉱石を集められると、ダモクレスの絶好の採掘場となっていた。
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「深海にある海底洞窟の一つで、巨大なダモクレスが鉱物資源を掘り出している事が判明しました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の話では、この巨大ダモクレスには『植物的な要素』が強くあり、大阪城から脱出したダモクレスによる事件である可能性も高いとの事。
「意図は分かりませんが、ダモクレスに資源を渡せば悪用されるのは予想できます。この採掘を阻止して、採掘を行っている巨大ダモクレス『暴食機構グラトニウム』の破壊を行ってください」
注意したいのは戦場が水中であることだろう。言葉での意思疎通が出来ないため、予め伝達方法や連携の為の合図などを決めておきたいところだ。
「敵の攻撃方法は体内に取り込んだ不要な石を飛ばしたり、上部の回転刃を使ったりしてきます」
強敵だが、戦闘特化では無い為、付け入る隙は必ずあるはずだ。
「巨大ダモクレスの無理な採掘で洞窟が脆くなっています。洞窟の崩落にも注意してください」
戦闘中に地形が変わることも考えて作戦を立てた方がいいかもしれない。
「海底洞窟上空までは私が皆さんを運びます。ヘリオンデバイスが必要でしたら、申請の方をよろしくお願いします」
参加者 | |
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水無月・鬼人(重力の鬼・e00414) |
篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558) |
オリヴン・ベリル(双葉のカンラン石・e27322) |
エマ・ブラン(ガジェットで吹き飛ばせ・e40314) |
ナターシャ・ツェデルバウム(自称地底皇国軍人・e65923) |
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678) |
ランスルー・ライクウィンド(風のように駆け抜ける・e85795) |
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450) |
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ヘリオンに運ばれ、海底洞窟の上空へと辿り着く。見下ろせば辺り一面、青一色。波一つない穏やかな海の底では、今も巨大ダモクレス『暴食機構グラトニウム』が黙々と採掘作業を行っている事だろう。
「こんな所でこっそり採掘ね。ご苦労なこったなぁ」
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)が海を眺めながら呟く。上空から海の様子を見る限り、暴食機構グラトニウムが採掘を行っている気配は感じられない。予知がなければ見逃してしまっていただろう。
「10m級ダモクレス、そして水中戦。しまっていきましょっす」
篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)は気合を入れ、降下の準備を始めている。
「鉱石はこの星のたからもの、です。星を痛めるために使うのは、だめです……!」
オリヴン・ベリル(双葉のカンラン石・e27322)はそう言うと『水中戦闘用ゴーグルⅡ型』と『水中用パック』を装着する。
エマ・ブラン(ガジェットで吹き飛ばせ・e40314)も同じように『水中戦闘用ゴーグルⅡ型』と『水中用パック』を装着。更に予備の『酸素ボンベ』を背負った。
準備を終え、ケルベロスたちはヘリオンから飛び降りる。
「ヘリオンデバイス・起動!」
降下を確認し、ヘリオライダーがコマンドワードを叫ぶ。すると、ヘリオンから次々と光線が発射されケルベロスたちを包み込む。光が収まると、各々のヘリオンデバイスが実体化した。
鬼人と佐久弥はすぐにジェットパック・デバイスからビームを他のヘリオンデバイスへと繋ぎ皆を飛翔させる。そしてそのままゆっくりと海面へ降下していく。
「着水失敗したら痛いし、助かるかもー」
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が安堵していると、その横を降下時の勢いのまま通り過ぎていく、オリヴンのテレビウム『地デジ』と、ことほのライドキャリバー『藍』。そのまま海面へと衝突し、2つの大きな水柱を立てる。
「ああ、地デジ……」
「キャー、藍ちゃんー」
オリヴンとことほが心配そうに波紋を見つめる。地デジと藍が水面から姿を現すと、2人は安堵のため息を漏らした。
(「ここからはわたしがみんなの言葉を中継するよ!」)
エマがマインドウィスパー・デバイスを使い、皆に連絡を入れる。
ケルベロスたちは頷くと、水中を進んでいく。
(「うーん、流石に息が出来ないと苦しいっすね」)
(「仕方ないなー。予備を貸してあげる」)
(「おっ、それは助かるっすよ」)
それぞれが水中での呼吸方法を確保している中、そのまま進もうとする佐久弥を見かねたエマが『酸素ボンベ』を渡した。
ゴッドサイト・デバイスを使い、索敵をしながらナターシャ・ツェデルバウム(自称地底皇国軍人・e65923)が先頭を進む。
水圧が大きくなるのを感じつつ進むこと数分、海底に大きな横穴が口を開けていた。
(「この先に反応がある」)
ナターシャの言葉に頷くと、ケルベロスたちは洞窟の中へと進んでいく。
(「うお、でかい……だがやってやれないことはない!」)
暴食機構グラトニウムの姿を確認したランスルー・ライクウィンド(風のように駆け抜ける・e85795)が驚く。
(「鯨、にキャタピラに、クレーンまでつけて……節操がないっていうか、デザインが前衛的というか、な」)
鬼人が暴食機構グラトニウムの様子を観察する中、退路が崩落しない様に、アームドアーム・デバイスを使い、ことほとランスルーが天井の補強作業を行う。
(「僕たちの事、気が付いているはずだよね」)
暴食機構グラトニウムの周りを一回りしたメロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)が首をかしげる。
目の前を横切ったのにもかかわらず、暴食機構グラトニウムは採掘を優先していた。
(「攻撃しない限り反応はしない、か。意思疎通は出来るのかね」)
鬼人は暴食機構グラトニウムの目の前で話しかけようとしたが、水中ではただ口から泡が漏れ出すだけ。早々に話しかけるのは断念した。
(「地盤が緩んで崩落とか地上にも影響でそうっすし、確実に仕留めるっすよ」)
(「敵の資源供給を絶つのも戦いのひとつだ。戦闘用ではないらしいが悪く思うなよ」)
(「我が故郷に飽き足らず、どこにでも現れよって……貴様らにこれ以上くれてやるものなど、ない!」)
ケルベロスたちは暴食機構グラトニウムの採掘行動を阻止する為、攻撃を開始した。
●
鬼人が手始めに暴食機構グラトニウムの胴体、クジラの部分へと斬撃を放つ。しかし、相手は10mもの巨体。流石の大きさに一太刀入れた程度ではびくともしなかった。
がんばろう、ね……。そう気持ちを込めてオリヴンが地デジを見つめると、気持ちが通じたのか、地デジは頷き配置へとつく。
オリヴンは嬉しそうに微笑むと、支援の為にオウガ粒子を放出した。
(「同胞よ――いまひとたび現世に出で、愛憎抱くトモを守ろう。ヒトに愛され、捨てられ、憎み、それでもなおヒトを愛する我が同胞達よ――!」)
佐久弥の詠唱に応え、身体中から無数の思念体が現れる。思念体は暴食機構グラトニウムのキャタピラ部分へと次々纏わりついていく。
ことほはエクトプラズムで疑似肉体を作り、次々と仲間の元へと飛ばしていく。
ドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させるエマとメロゥ。撃ち出された竜砲弾はキャタピラへと命中し、爆発を起こす。
「ゴボゴボボボゴボッ! ガボボボゴボ!」
騎士道精神で名乗りをあげようとするランスルー。しかしここは水の中。ただ口から漏れ出す泡が海中へと溶けていくだけ。
やればできると信じる心が魔法に変わりバスタードソードへと宿る。ランスルーは正面から突撃しクジラの額にバスタードソードの一撃を叩き込む。
その間にナターシャと鬼人は海底まで潜ると、刀を構え急上昇する。2人の放つ斬撃が暴食機構グラトニウムのクジラの左右の頬をそれぞれ切り裂いた。
暴食機構グラトニウムが上部に付いた回転刃で薙ぎ払う。予備動作の大きい攻撃にケルベロスたちは余裕で避けるものの、その時に生じた水流に飲まれ、洞窟の天井や壁へと叩きつけられた。
オリヴンとことほが支援を続け、その間に佐久弥が攻撃を叩き込む。
(「的が大きいからたぶん当たるよね。ファイアー!」)
エマが生成したロケットランチャーを発射する。放たれたロケットは、暴食機構グラトニウムに命中すると大爆発を起こした。
爆発で舞い上がった砂に紛れ、メロゥ、ナターシャ、ランスルーの3人は暴食機構グラトニウムとの距離を詰める。
メロゥが被っていたシルクハットを取ると、中から半透明の御業が現れクジラの口の中目掛けて炎弾を放つ。
ナターシャは『地底皇国軍用シャベル』を手にキャタピラを。ランスルーはバスタードソードで回転刃をそれぞれ攻撃した。
暴食機構グラトニウムの飛ばした蔦の網が、前線のケルベロスたちを捉える。
(「いやー、水揚げ前の魚になった気分っすね」)
(「そんなこと言ってる場合じゃないんだけどー」)
網に絡まれながらものんきな佐久弥に、ことほが声をあげるのだった。
●
元々戦闘向けに作られているわけではない暴食機構グラトニウムは、攻撃の度に大きな隙が出来ていた。ケルベロスたちがそれを見逃すわけはない。いくら頑丈だといえ、ケルベロスたちの猛攻に、暴食機構グラトニウムの動きは徐々に鈍くなっていた。
(「エマはやらせん! ぬわーーっ!」)
暴食機構グラトニウムの吐き出した岩石の塊に当たり、盛大に吹き飛ぶランスルー。
洞窟の天井まで吹き飛んだランスルーは、天井を蹴り急降下。回転刃の付いているクレーンへ向かってバスタードソードを叩き込んだ。その一撃で限界が来たのか、クレーンが軋みをあげ折れ曲がっていく。
(「あともう一息、ですね」)
オリヴンの言葉にケルベロスたちは頷く。そして全員が同時にハンドサインを出す。
――総攻撃をかける。
皆の気持ちが一つになると、頷き合いケルベロスたちは一斉に動き出す。
(「何があるかわからないなら、せっかくなら幸せな理由があると思いたいなー」)
ことほの詠唱と共に、エクトプラズムの桜吹雪が海中に舞う。
桜吹雪の中を駆け抜け炎を纏い暴食機構グラトニウムへと突撃する藍。
オリヴンがオウガメタルの拳を叩き込み、地デジが手にした凶器で一緒に殴りかかる。
佐久弥が海底に足を踏み込む様に叩きつけると、その場からまるで海底火山が噴火したかの様に溶岩が噴き出してくる。
(「ファイアー!」)
溶岩と噴煙に飲み込まれている暴食機構グラトニウム目掛けて、エマがロケットランチャーを発射。爆発で散った噴煙が辺りを黒く染めていく。
(「さぁさぁご注目あれ、今日も楽しい手品の時間だよ。お代は見てのお帰りだけれど――見たのなら、無事には帰れないかもね」)
メロゥがトランプの束を暴食機構グラトニウムに向かって放り投げる。飛び散るトランプの1枚が突如消え失せると、暴食機構グラトニウムの体を突き破って体内からジョーカーの絵柄のカードが飛び出した。
(「岩盤、鉄塊、龍の鱗……ドワーフに掘れぬ道理無し!」)
ナターシャは『地底皇国軍用シャベル』を暴食機構グラトニウムのクジラの頭部へと突き刺すと、穴掘りの要領で掘り進めた。
噴煙が晴れると、頭部に穴の開いた暴食機構グラトニウムは活動を停止していた。
●
(「天井の方からなんか嫌な音がするかも……崩れたー!」)
エマの視線の先では、戦闘の余波に耐えきれなくなった洞窟の天井が崩れ始めていた。
(「敵の体を調べたかったんだが……」)
(「とにかく今は脱出しないと、生き埋めになっちゃうよ」)
メロゥはチェイスアート・デバイスから他のヘリオンデバイスへとビームを繋ぎ、同じ能力を皆に与える。
暴食機構グラトニウムを残し、脱出を始めるケルベロスたち。アームドアーム・デバイスをドリルへと変形させ、ことほとランスルーが先行し落下してくる岩を砕きながら進む。
「ぷはっ」
海面へと顔を出し肺いっぱいに空気を吸い込むと、無事に戻ってこられた実感がわいてきた。
「今回も無事に終わったぜ」
鬼人は首から下げたロザリオへと手を当て祈る。
「暴食機構グラトニウム、埋まっちゃったね」
「アームドアーム・デバイスを使えば掘り起こせそうだけど、どうするー?」
「何かしら、情報は欲しいよね」
「そうだな。とはいえ今から潜り直して掘り起こすとなると時間がかかるな」
調査はひとまず後にして、ケルベロスたちは迎えを待つことにした。
作者:神無月シュン |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年9月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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