ドラゴンをロードで飛ばせ!

作者:大丁

 陸橋が重なり合う、都市高速道路のジャンクション。
 立体交差の合流に注意を払う運転手たちには、路面に落ちた影をいぶかしむ暇は与えられなかった。
 コウモリめいた羽で滑空し、長い尻尾をくねらせている。
 高架にそって1周した影の主は、トカゲのような頭から、地上に向かって何かを吐いた。
 ある種の衝撃波であって、色も形も無かったが、乗用車のボディが寸断されてしまい、運転していた男性のビジネススーツも、塵となった。
 道路に沿って、シャーシの上にハダカの人間が座っている車列ができる。
 それは車種を問わず、高速バスには運転手だけでなく、むきだしの客たちが乗っているのだ。
 次の瞬間には、ボディの残骸が路上に散らばり、各車はハンドルをとられて、次々と事故を起こす。
 なんら守られるものもなかった人々の死から、グラビティ・チェインを奪った襲撃者、孵化したばかりのドラゴンは、魔竜化形態へと急激に成長する。

 ブリーフィングルームに現れた、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は、汗でレインコートを貼り付かせながら、集まっていたケルベロスたちに状況説明をはじめた。
「ユグドラシル・ウォーの後、姿を消していたデウスエクスたちが、また活動してるよねえ。ユグドラシルの根と共に姿を消した樹母竜リンドヴルムは、その胎内に魔竜の卵を孕んでいたんだけど、その卵が孵化していってる」
 プロジェクターから投射された映像で、予知や報告をもとにしたドラゴンの姿が示される。
「孵化したばかりのドラゴンは、まだ魔竜の力を発現してないみたい。だから、多くのグラビティ・チェインを奪って魔竜化しようと、都市に襲撃を仕掛けてくるのお。このドラゴンが人々を虐殺し魔竜となるのを防ぎ、撃退してね」
 次に映しだされたのは、現場のジャンクション。カーブを描いた高架道路が、二重三重と積み重なっている。
「ドラゴンの襲撃時間が正確に判ったから、寸前に全部の進入路を封鎖して、ジャンクションに車両が1台もない状態にするよう手配してあるの」
 飛行して現れるドラゴンだが、自動車に乗った人間を殺すつもりだからなのか、道路に沿うように低空飛行してくる。
 路上から迎撃が可能なうえに、ドラゴンが通っている道路よりも、1段上の道路を足場にすれば、立体的な戦法もとれる、とのことだった。
「使ってくるのはドラゴンテイルと、衝撃波になっているブレスね。防御を破られるから注意して」
 参加を決めたケルベロスは装備を整えると、ヘリポートへと移動する。
 冬美のレインコートはさらに曇った。
「コ、コンクリートの照り返しが……。みんなには、さらに装備をしてもらうけどね」
 暑さに観念して、コートをバサッと脱ぐと、ローターに飛ばされないよう、胸元に抱える。
「レッツゴー! ケルベロス!」
 光が、メンバーに重なり、実体化していくのだった。


参加者
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
除・神月(猛拳・e16846)
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)
ルティア・ノート(ヴァルキュリアのブレイズキャリバー・e28501)
エル・ネフェル(ラストレスラスト・e30475)
ファレ・ミィド(身も心もダイナマイト・e35653)
ジルダリア・ダイアンサス(さんじゅーごさい・e79329)

■リプレイ

●高架で待つ
 下りの二車線は、路側帯も十分に左へと曲がっていく。上りの陸橋をくぐった先に、4人が等間隔に並んでいた。
 ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)は、尻尾に掴んでいた箱、ミミックのエイクリィを路上に置く。
 黒いライダースのツナギは、ジッパーが下ろされ、内のTシャツには、『おいで』と大書されている。
「時にシフカ様、服破りの手合いとは経験豊富と耳にした」
「ええまあ。ただ、ジェットパック・デバイスをつけるのは初めてで、上手く扱えるか、少々不安ではありますが」
 ごそごそと身じろぎし、両腕の鎖を巻きなおす、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)。やがて、質問の続きを促せば。
「服破りの意味を再度確かめたい」
「あ……文字通り、です」
 そのやり取りで、ルティア・ノート(ヴァルキュリアのブレイズキャリバー・e28501)には、ユグゴトの困惑がよく判った。ドレスアーマーに身を固め、愛用の鉄塊剣を備えてさえ、沸き起こる感情。
 口にしたのは、ファレ・ミィド(身も心もダイナマイト・e35653)だった。
「防御を破られる……嫌な予感がするわね」
 しかしながら、弱気に過ぎたと態度を改める。
 今のファレは、いわば悪の女幹部装束。紫基調の布地は少なめで、グッと身体を反らして胸を誇示した。
「あっはっは! 私たちの作戦は完っ璧よ。ねえ、エル、ミスラ!」
 見上げると、一段上の高架の縁、コンクリートの障壁から、武器の先っぽが覗く。
 掌だけ見せて、合図を返した、エル・ネフェル(ラストレスラスト・e30475)は、壁の内側に背を預けて座り、両足首を肩の高さまで持ち上げていた。
 フェアリーブーツと一体化した、左右それぞれのふくらはぎのジェットパック・デバイスを点検していたのだ。着ているのはリボンだけで、今はどこも隠されてはいない。
「その水着、いっつも使ってんだナー?」
 前に立ったのは、除・神月(猛拳・e16846)。お尻ハミ出す赤い下着のみ履き、背には彼女もジェットパック。それを装着しているのは、チャイナドレスの上半分である。
「手放しで開けられて快適なんですよね」
 ふたりが話題にしているのは、エルの股を支えているU字型ゴムである。プールでの依頼で見たことがあった。
 神月(しぇんゆぇ)は、呆れぎみにうなずく。
「動き回れるよーニ、準備はしとかねーとナ」
 まさに、背のデバイスに期待しているところだ。
 両手に刀を掲げた、ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)は、すでに呼吸を荒くしている。
 ジルダリア・ダイアンサス(さんじゅーごさい・e79329)は、ドラゴニックハンマーを担いだジャンパースカート型の学生服姿。
「緊張していますか? 孵化したばかりでもドラゴンは脅威ですから、おっきくなる前に潰しておきましょう」
「でも、やってる事がまるでスカートめくりみたいで。それを考えると若干気が削がれますね。ふぅ、三本目の武器がちょっとキツイだけです」
 まあ、と興味を示したジルダリアだったが、ゴッドサイト・デバイスに反応があった。
 陸橋上の仲間に伝えて、向かいの壁に身を潜ませる。そして、下り方面の路上に立つ4人へと、顔を出して伝えるのだった。

●竜と道
 右にカーブした道の彼方から、ドラゴンが姿を現す。
 路面から2、3mの高さを、翼を拡げて滑空してきた。ユグゴトは唱える。
「産声を上げた程度の竜に『母』が負けるなど赦されない。貴様の血肉を再び胎内に還して魅せよう――おいで」
 『Eraboonehotep(コンダク)』を受けた怪物は、姿勢を崩した。
「行きましょうか」
 シフカは、鎖型の牽引ビームを発する。ルティアを伴い、逆走方向へ低空飛行。
 ドラゴンの右の翼の根元へと、雷を帯びた鎖を叩きつけた。
 左には、ルティアの鉄塊剣が、すれ違い様に繰り出される。
 地獄の炎を纏って。
 爬虫類じみた顔へと、ファレは汚染をほどこす。
「どかーんっ!」
 女幹部は、陸橋の下でふんぞり返ったまま、汚染箇所から『重力爆散(グラビティ・バースト)』を起こした。ドラゴンは、粉塵の中でひと声いななき、口を開ける。
 衝撃波が、紫の衣装を吹き飛ばした。ファレは乳房を弾ませ、むしろドヤ顔で宣言する。
「引っ掛かったわね。さあみんな、ヤッておしまい!」
 一段上の高架道路から、ミスラが、エルが、そして神月が飛び降りてくる。
 左右の刀に零体を憑依させ、ミスラは上下逆さになりながら、竜の眉間に×字を刻む。
 急降下蹴りのエルは、両足のデバイスでさらに加速した。出力にバラつきがあるのか、大きく開脚し、U字からはバシャバシャと失する。
 虹が二重に掛かってドラゴンの背に刺さり、尻尾の根元へと、神月が『降魔「トロピカル・コング」・風拳(フウケン)』をキメた。
 空飛ぶ怪物は、ガクンと高度を落とし、鼻先でアスファルトを削る。
 陸橋をくぐり、慌てて避けたファレをかすめて、分かれ道の又のところ、緩衝材に突っ込んで止まった。
 首から尾までを捻じらせて横たわる巨体を、コンクリ―ト壁の上に立って見下ろすジルダリアは、ドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させたところだ。
「最適なタイミングでした。体勢を整える前に存分に打撃を」
 轟竜砲で、分岐点は崩れ、さらに下の一般道へと、ドラゴンは嵌まり込む。

●竜退治
 身を起こしたドラゴンは、首を巡らせた。倒壊しかけた分岐点から肩口までが出ている格好だ。道路を走ってくるケルベロス、ユグゴトに衝撃波ブレスを吐いた。
 ツナギがバラバラに剥ぎ取られて、『おいで』プリントのダサT一枚になる。
「貴様が如何に破り捨てようと、我が身は金剛じみて混濁して在るのだ」
 ディフェンダーの彼女は、その身の後ろに、神月を隠していた。赤パンツから伸びた足が、跳んでドラゴンの横っ面を旋刃脚ではったおす。
 さらに、ジェットで敵の頭上に位置取った。
 シフカの鎖型ビームに吊り下げられて、ミスラも昇ってくる。
「報復には許しを~。裏切りには信頼を~♪」
 高い位置から皆に、『憐れみの賛歌(キリエ・エレイソン)』の加護を振りまく。衝撃波への抵抗となるはずだ。シフカは、ドラゴンを見下ろして印を結ぶ。
「螺旋忍法『鎖縛斬頭狩(デザート・ヘッド・ハンティング)』、その首、貰い受ける!」
 分岐点の高架を繋ぐように、鎖で陣が形成された。首を断つまではいかなかったが、もはや飛んで逃げることは叶うまい。
 ルティアへの牽引は、エルの片足からに繋ぎ直されている。フォーチュンスターを飛ばす蹴り込みに合わせて、ルティアの身体そのものが、弧を描いてドラゴンにぶつかっていく。
「コード申請。使用許可受諾。凍てつく刃、受けてみなさい!」
 鉄塊剣には氷が宿される。竜の喉元へと、ウロコを破って突き立った。
「これで、ブレスも封じて……くぅ!」
 目に見えず、破壊の振動は響きわたる。ルティアはとっさに、アームドアームで防ごうとしたが、ドレスに施された装甲は、ことごとく砕かれた。
「産まれたばかりで、人を裸にする趣味があるんですねぇ、このドラゴンさん」
 牽引によって、上り方面の高架に戻されたときには、ドレスも無くなっている。悔しいし、強がりのひとつも言いたい。エルも同意したふう。
「むしろこちらの方が、調子出るというモノです!」
 仲間を引っ張るために釣り竿のごとく伸ばした脚が、I字バランスをとっていた。リボンも千切れた無修正で、快楽エネルギーの高まりと共に、覆っていた豆の皮も剥けきる、
 確かに、サキュバスにとっては絶好調。
 すると、ジルダリアが悲鳴をあげた。
「エルさん、そこに立つと丸見え……」
 ジャンクションは、渋滞しがちなので、交通管制用のカメラが仕掛けられている。案内標識に並んで、ドライバーへと映像を届ける大型ディスプレイも掛かっていた。
 そこに、エルのそれがアップで映っている。
 映像が切り替わると、パンツ姿のお尻になった。エプロンみたいに布を前に垂らしており、元はジャンパースカート型の制服だった模様。
「はっ! うまく交わした……と思ったら、服の背中をそっくり持ってかれてる?!」
 他ならぬ、ジルダリア自身だ。
 ファレは、路上から仰ぎ、仲間が押し並べて恥ずかしい格好にさせられているのを見た。
 しかしながら、勇猛さは失っておらず、よしよしと頷くと、ゾディアックソードにおとめ座の光を輝かせる。
 回復が届けられるあいだ、シフカは吊っていたミスラを、自分より高い位置に持ち上げる。
「ミスラさん、全裸にされたかと。おや?」
 下着が残っている。
 シフカといえば、武器とデバイスの機能は維持しつつも、素っ裸で飛んでいるのだから、幸運だったと思いきや。
「ああ、ダメぇ……見ないで下さいっ……!」
 パンツは、挿入しているモノを支えるだけの道具だった。
 ニコリと笑ったシフカは、その状態をあえて口に出して言う。
「戦闘中にグチュグチュとナカを激しく掻き回させて、快楽を貪っていたのですね。でも、刀で両手が塞がっているようですから……」
 根元にも鎖型ビームを繋いでやる。シフカの操作で、刺激はコントロールされた。
「ヒッ、あう、ダメ、ダメぇっ」
 赤いパンツがヒラヒラと落ちていく。神月も衝撃波に切られて、チャイナ服の襟だけになっていた。
「むしろヨー。涼しいじゃねーカ!」
 デバイスの推力を反転し、構えたアックスで、スカルブレイカーにいく。大股開きで落下した。
 数度にわたって傷つけられたドラゴンの脳天を割ったあと、陰部を見せつけたのが、まずかったのか。
 いったん路面へ、着地しようとした神月を追うように、ブレスが吐かれた。アスファルトと下地のコンクリが割れて、亀裂の中に落ちこんでいく。
「神月様……!?」
 ユグゴトは、『醜悪なる母体の偶像』をかざし、牽制にドラゴンサンダーを放つと、仲間を助けるために割れ目から最下部へと下った。
 ブレスによるヒビは、上り方面の橋脚にも入っていて、高架は一段下の道路へと傾く。
 足場が崩れて、エルとルティアは飛び立ったが、出遅れたジルダリアは、まくれるエプロン状の服を押さえながら尻もちをついた。
「あたた。強敵じゃないですか。ゾクゾクするし、奥が疼いて仕方ないですよ」
 見れば、橋脚の倒壊に巻き込まれそうになったファレが、ソードを引きずって這い出してきたところだった。
「おいたが過ぎるわよ。っと、ジルダリア! あなたもパンツを破られてるじゃない!」
 瓦礫だらけの道路に、スターサンクチュアリを描こうとする。少しは光が隠してくれることだろう。
 なのに、ジルダリアは、エプロン(仮)をめくって、疼きの原因を確認した。
「いやーん、……なんて歳じゃないですが。私のパズルも出しておきましょう」
 破れかけのポケットから、硝子の麻雀牌を掴みだすと、ジャラジャラと並べた。敵のうなじに向かって、竜を象った稲妻で打つ。
 ドラゴンはなぜか、鼻から荒い息をしている。盛んな若者のように。
 やはり女のハダカで興奮しているのではないかと、ジルダリアとファレは二人して、ゾクゾクを強めた。
 最下段の地上では、ユグゴトがその行為を目撃していた。
「我が仔よ、もはや童子では無く、成熟と成ったか」
 神月が、腹の下に組み伏せられて、挿れられている。ともかく助け出せないかと、アームドアームを伸ばす。
「よく入った……いや、何があった?」
「うッ、うッ、アソコ見せたらヨ、雌認定されたみてーダ」
 その獣に、ミミックのエイクリィがガブリングで噛みついたのだ。アームが神月の裸体を寄せる。
 脱出しながら、ユグゴトはサキュバスミストを与えて回復させた。桃色の霧は、神月の快楽を余韻のように助長した。
 ドラゴンが、わななくように苦しんでいるのは、ルティアにもわかった。
 エルの蹴り足の動きに合わせて、ルティアは、憑霊弧月で飛び込む。鉄塊剣は、竜の牙とぶつかる。
「今度はこちらが本命です」
 蹴りを止められてからの、放つ攻撃。U字ゴムの開いたとこに、『陰陽有頂昇天波(コイカ・トエ・ハカ)』の水気が集まる。
「天開地闢の気を通じ、秘奥の舞を御覧あれ……♪」
 ジョババババ。
 飲めるくらいに、ひっかける。エルは、ひいひいと快楽に浸っているようだ。
「ミスラさん、こちらも準備完了……イキましょうか」
 鎖が引っ張られるとシフカの前で、絶頂した。
「あ、あああ、ああーっ!」
 第三の武器、レゾナンスグリードが発動する。元は黒いはずが、モード変形で泡立って白濁しており、ブジュブジュと止めどなく溢れてくる。
 女の潮は、ドラゴンの頭へと滴りおちて、ウロコを溶かし始めた。
 顎をガクガクさせて苦しんでいるが、鳴き声は聞こえない。衝撃波も起こらない。
 シフカが、斬頭狩の鎖を引ききる。
 首は一般道へと落ち、胴体もろとも、崩れ果てた。

●合流地点
 ファレは、デウスエクスの消滅した崩落個所を見下ろし、大地からゴーストヒールを引き出す用意をする。
「……とんだエロガキだったわね。親の顔が見てみたいわ!」
「我がそうで在る。もう、胎に還った」
 ユグゴトが、散らばった布切れを片付けつつ呟く。
「仔の嗜好に口は挟まぬが、ツナギの歪は美味だったらしい」
「まァ、道路も派手にぶっ壊したシ、ジェットパックで飛んだら修理がはかどるかナー」
 神月が振り返ると、みんなヒールに協力する気はあるものの、まだ治まらない感じだった。
 交通管制カメラの存在も忘れて、ハダカのまま重なりあっている。
 ジャンクションより複雑に。
 ミスラの武器が、ぞんぶんに差し込まれて、エルとジルダリアの奥を満たす。ルティアは聖騎士の務めと、慰め役を引き受けるつもりが、シフカの指にイイようにされていた。
 そのシフカによれば、着替えは用意してあるから、通行が回復した後も心配いらない、と。
 神月はまた、呆れながらもうなずき、加わるのだった。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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