激闘7分間ー歌って踊る「巨大ハニワ」を倒せ!

作者:秋津透

 埼玉県熊谷市、深夜。
 中心街に並ぶビルの一つが、突然内側から爆発するように崩れ、全長7m程度の大型ロボット……巨大ロボ型ダモクレスが出現する。
 その姿は、熊谷市で出土した有名な「踊る埴輪」に酷似し、造形としては「素朴で剽軽」と言っていいだろう。しかし、人類を蹂躙するデウスエクスの巨大ロボットとして見れば、むしろ不気味で威圧的かもしれない。
 そして、出現した巨大埴輪ロボ型ダモクレスは、いきなり甲高い声で歌いだす。
「ハニ~、ハニハニ、ハニャ~ン♪」
 更に、歌(?)に合わせて左右にぴょんぴょんと跳ね回り、周囲の建造物を破壊する。破壊が目的というよりは、単に踊っているようにも見えるが、傍迷惑なこと甚だしい。
 そして七分間、破壊の限りを尽くすというか、好き勝手に歌って踊った挙句の果てに、巨大埴輪ロボ型ダモクレスは虚空に開いた魔空回廊に吸い込まれて消えていくのだった。

「巨大恐竜ロボ型ダモクレスが出た以上、次は出土年代的に、巨大埴輪ロボ型ダモクレスが出るに違いないと思ったのですが、予想の通りでしたね」
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が、淡々とした口調で告げる。ヘリオライダーの高御倉・康は、どうしてそういう予想になるんですか、と問いたげな様子を一瞬見せたが、すぐに表情を引き締めて告げる。
「埼玉県熊谷市で、封印されていたとおぼしき巨大ロボ型ダモクレスが復活し、7分後に魔空回廊が出現して回収される、という予知がありました」
 そう言うと、康はプロジェクターで画像を示す。
「出現時間は今夜深夜、出現場所はここ。既に住民の避難は進められており、出現時には近隣には誰もいなくなっています。こちらは出現30分前ぐらいに到着し、待ち構えることができますが、出現する建物の内部等を調べても何もありません」
 そう言うと、康は画像を切り替える。
「予知された巨大ロボ型ダモクレスの形状は、見ての通り、熊谷市で出土した有名な「踊る埴輪」に酷似しています。近年の研究では「踊る埴輪」は実は踊っているのではなく、馬を牽く動作を表しているのだとも言われますが、この巨大埴輪ロボ型ダモクレスは、そんな事お構いなしに歌って踊ります」
 難しい表情のまま告げ、康は画面を切り替える。
「巨大埴輪ロボ型ダモクレスは、グラビティ・チェインの枯渇によりさほど強力な攻撃はできないようですが、主として音波を使った列攻撃を仕掛けてくるようです。催眠効果があるようなので、充分注意してください。また、左右に跳ね回り踊るようなトリッキーな動作で、体当りというか踏みつぶしのような攻撃をしてきます」
 そう言うと、康は一同を見回す。
「そしてフルパワー攻撃として、全身から炎を発して「炎のファイアハニ~」と叫びながら全力体当りを一度だけ仕掛けてくる可能性が高いです。まともに当たったら、かなり高レベルのケルベロスでも一撃で戦闘不能に追い込まれる強力な攻撃です。たた、仕掛けた反動で、巨大埴輪ロボ型ダモクレスもそのあと1ターン動けなくなるようです」
 すると、遠音鈴・ディアナ(ドラゴニアンのウィッチドクター・en0069)が告げた。
「敵が催眠音波を使うなら、キュアのできる者は少しでも多い方がいいと思います。私とロコも参加します」
「わかりました」
 でも、気を付けてくださいよ、と、康は応じる。
 そして康は、もう一度画像に目をやった。
「ふざけているとしか思えない形状のダモクレスですが、機能的に、回収を許したら厄介な存在になりそうに思えます。7分間で確実に仕留めてください。新装備『ヘリオンデバイス』での支援も可能になりましたし、どうぞよろしくお願いいたします」
 ケルベロスに勝利を、と、ヘリオンデバイスのコマンドワードを口にして、康は頭を下げた。


参加者
日柳・蒼眞(無謀刀士・e00793)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)

■リプレイ

●埴輪ロボを待ちながら。
「人が入ってきたりはしてないよな?」
 埼玉県熊谷市、深夜。巨大埴輪ロボ型ダモクレスの出現が予知された時刻まで、残り約5分。
 ジェットパック・デバイスで低空を回りながら訊ねる日柳・蒼眞(無謀刀士・e00793)に、ゴッドサイト・デバイスを装着したオズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)が、物憂げに応じる。
「いない。訊くが、地球人という種族には、危険なデウスエクスが出るから避難しろと言われた場所に、わざわざ戻って見物にくるほど酔狂な者がいるのか?」
「滅多にはいないが、絶対にいないとも言えない。念のためだ」
 蒼眞の返事に、定命化したばかりの妖精種族メリュジーヌ出身のオズは、小さくうなずく。
(「まあ、スティンソンにとっては異郷での初任務だしな。故郷が廃墟になって意気消沈してるとかいう話だし、あまりこっちから突かないでおくか」)
 言葉には出さずに呟き、蒼眞は機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の方へ目を転じる。
 もともと、巨大埴輪ロボ型ダモクレスの出現を予感したのは真理で、その予感はヘリオライダーの予知で裏付けられたわけだが、予感を覚えた理由として彼女が語った「巨大恐竜ロボ型ダモクレスが出た以上、次は出土年代的に、巨大埴輪ロボ型ダモクレスが出るに違いない」という言葉には、正直、蒼眞は納得できていない。
(「……出土年代的に恐竜の次は埴輪って……数千万年は時代を進めているんだけどその間に誕生した生物は……?」)
 いや、突っ込むだけ野暮ってのはわかってるんだけどさ、と、蒼眞は言葉には出さずに呟く。
 すると、彼の思いを察したわけでもなかろうが、山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が近寄ってきて訊ねる。
「人類の歴史、恐竜からいきなりとか結構端折られてない? ……そうでもないの?」
「いや、端折られてるよ。マンモスとか、サーベルタイガーとか、北京原人とか」
 蒼眞が答えると、ことほは真面目な表情でうなずく。
「やっぱりそうなのね。なにしろ地球人は蒼眞さんだけだから。聞いてみてよかった」
「まあ、地球年代的に正確かどうかよりも、ダモクレスの思考法を見抜いて対処する方が優先だからな」
 半分自分を納得させるような口調で、蒼眞はことほに告げる。
「そういう意味では、レプリカントの機理原の直感は、傍からどう見えようと重視すべきだと俺は思う」
「ああ、そっか」
 もともとダモクレスとレプリカントって同族だったっけ、と、ことほは納得顔になる。そういう彼女は、今や地球文化に馴染み切っているが、本来は異星のデウスエクス種族だったオウガの出身だ。
 そして真理は、蒼眞とことほが見守る中、黙々とアームドアーム・デバイスを駆使して、交差点の中央に「野外ステージ」を作っている。
 ヘリオライダーから、巨大埴輪ロボ型ダモクレスが、なぜか「歌って踊る」と聞いた瞬間、彼女は「ハニワの全力攻撃を早めに引き出す為にはステージが必要」と直感し、現場に到着してからずっと、炎をイメージしたデザインや灯りを多用した可動型野外ステージの作成にいそしんでいるのだ。
(「壊れた建物は、ある程度ヒールで簡単に直せるけど、わざわざ作ったステージを元の道路に戻すことって、ヒールでできるのかな?」)
 まあ、ダメなら実作業して道路に戻すだけのことだけどさ、と、蒼眞は言葉には出さずに呟く。
 するとことほが、大真面目な口調で蒼眞に訊ねた。
「レスキュードローンを整然とシャッフルさせたら、巨大埴輪ロボ型ダモクレスのダンスを盛り上げられるかな? 早めにフルパワーを出させたいんだけど」
「そうだな……それは機理原に訊ねた方がいいかもしれない」
 というか、頼むから俺に訊かないでくれ、と、蒼眞は内心呻く。
 そして、ことほは素直に真理の方へと動き、蒼眞は再び飛翔する。
(「催眠音波は飛行していても防げないだろうが、踏みつぶしや体当りは飛んでいた方が避けやすいように思うが、どうだろうか? まあ、それこそやってみないとわからないが」)
 飛行可能種族の遠音鈴・ディアナ(ドラゴニアンのウィッチドクター・en0069)に訊いてみようか、と、蒼眞が思いついた時。
 予知された時間が到来し、ビルが崩れて、巨大埴輪ロボ型ダモクレスが出現した。

●歌って踊って大激闘!
「……ハニ?」
 出現した巨大埴輪ロボ型ダモクレスは、ぽっかりと開いた空洞の目で周囲をぐるりと見回すと、おもむろに催眠攻撃歌を放ってきた。
「ハニ~、ハニハニ、ハニャ~ン♪」
 ケルベロスの前衛に向かって放たれた歌……というか怪音波が、その効果を発揮する寸前。
 それぞれディフェンダーポジションについていた、ことほのサーヴァント、ライドキャリバーの『藍』が真理を、オズのサーヴァント、ウイングキャットの『トト』が蒼眞を庇う。
「……これも巡り合わせとはいえ、庇うはずの私が庇われたですか」
 冷静に呟き、真理は『藍』に向けて丁寧に一礼する。
「ならば、攻撃あるのみなのです」
 言葉を続けながら、真理は自分が作成したステージ上で高速走行し、スラスター型脚部装甲に摩擦炎を生じさせ、巨大埴輪ロボに向けて炎の蹴りを放つ。
 続いて真理のサーヴァント、ライドキャリバーの『プライド・ワン』が、全身に炎をまとって突撃する。
「……そうだな。攻撃あるのみだ」
 蒼眞が『トト』に一礼し、そのまま空中から斬り下ろす形で斬霊刀を振るう。鮮烈な一撃を受けてダモクレスの頭頂に傷が生じ、氷が張り付く。
 そしてことほが、前衛に向けて強力なエクトプラズム治療を行う。ダメージの治癒と、催眠の解除、そして今後、催眠や炎を受けた時に自動解除する効果が、同時に付与される。
 その治癒を受け、『藍』が炎をまとって突撃する。続いて『トト』が、前衛に治癒とBS自動解除効果を備えた風を送る。
 更に、オズがドラゴニックハンマーを砲撃形態に変えて撃ち放つ。そしてディアナが、前衛に治癒とBS自動解除効果を備えた電撃治療を行い、ディアナのサーヴァント、ウイングキャットの『ロコ』は、後衛にBS自動解除効果を備えた風を送る。
 すると、最初の一分の攻防が終了するが早いか、巨大埴輪ロボ型ダモクレスが高々と宙に跳んだ。
「ハニ~、ハニハニ、ハニャ~ン♪」
 冒頭に放った怪音波とまったく同じようにしか聞こえないが、攻撃グラビティ効果のない純然たる「歌」を歌いながら、ダモクレスは蒼眞の頭上へと跳び、そのまま地上に叩きつけようとする。
「うわっ!」
 飛行中の相手に踏みつぶしとかありかよ、と、蒼眞が表情をひきつらせた瞬間、『ロコ』が飛び込んで蒼眞を跳ね飛ばし、庇うというか身代りになって、巨大埴輪ロボの下敷きになる。
(「あっちゃー、無茶しやがって」)
 庇ってもらったのは有り難いが、お前がその攻撃受けたら一撃でリタイアだろ、と、蒼眞は声には出さずに唸る。
 真理が用意したステージに着地したダモクレスは、『ロコ』を完全に潰して実体を失わせ、敵を一体減らしたのが嬉しいのか、ひょこひょこと左右に踊りまわる。
「フルパワー攻撃ではないのに、ディフェンダーを一撃で轟沈ですか。侮れないのです」
 冷静な口調で呟いた真理が、改造チェーンソー剣を猛然と振り回し、踊る巨大埴輪ロボの円筒形脚部(?)に切りつけて炎を増やす。更に『プライド・ワン』が、同じ個所をかすめるようにスピンをかける。
(「俺も下を攻撃した方がいいのかな?」)
 一瞬迷ったものの、蒼眞は飛行を止めずダモクレスの頭上から斬り下ろし、頭頂部の傷を抉り氷を増やす。
「私も攻撃、行っちゃうよ!」
 治癒者とはいえ、もともと血の気の多いオウガのことほが、ガネーシャパズルから竜を象った稲妻を放つ。
 まあ、消えたサーヴァントは治癒のしようがないもんな、と、蒼眞が肩をすくめる。
 続いて『藍』がスピン攻撃を仕掛け、オズが蛇体の下半身を振るって重力蹴りを放つ。これはエアシューズのグラビティで、靴が履けないメリュジーヌがどうやって出しているのか謎だったが、どうやら「エアシューズのオーラ」を下半身に付帯させることで対応しているらしい。
 そして『トト』がリングを飛ばして攻撃し、サーヴァントを失ったディアナは対デウスエクスのウイルスカプセルを投げたが、これは外れた。
 そして、三分目の攻防。
 巨大埴輪ロボ型ダモクレスは、いきなり全身から火を噴いた。
「炎の、ファイアハニ~!」
 高らかに宣告すると、ダモクレスはロケットのような勢いで、全身から火を噴いたまま、どーんと真上に飛びあがる。
(「なんつー、わかりやすい……しかし、これ、逆落としに襲ってくるのか?」)
 すっげえ、イヤな予感がするんだけど、と、蒼眞は巨大ダモクレスが飛び上がっていった高空を仰ぐ。
 そして、その予感通り、炎の塊と化した巨大埴輪ロボは、隕石のような速度で蒼眞めがけて急降下してきた。
(「くそっ! 来るとわかっていても避けきれん!」)
 やられる、と思った瞬間、またもやディフェンダーが飛び込んできて、炎の巨大埴輪ロボに体当りを仕掛けて軌道を逸らす。
 しかし、今回蒼眞を庇ったディフェンダーは、サーヴァントではなかった。
「機理原! おい、大丈夫か!」
「大丈夫なわけはないのです。ですが、戦闘不能ではないです」
 ダモクレスの炎で全身を焼かれ、あちこちひしゃげた機械構造を露出しながら、真理は通常とまったく変わらない冷静な口調で応じる。
「そして、戦闘不能に陥っているのは、敵の方です」
 庇いに飛び込んだ時に、自動発動したのだろうか。真理は、蒼眞のジェットパック・デバイスにビーム牽引された状態で飛行しており、眼下のステージを見下ろして告げる。そこには、フルパワーを発動させて一時的に力尽きた巨大埴輪ロボ型ダモクレスが、炎に包まれて横たわっていた。
「今こそ好機です。全力攻撃です。私の治癒など後回しです」
 言い放つと、真理は神州技研製アームドフォートを強引に展開し、全力砲撃を撃ち放つ。
「……そうだな」
 呟いて、蒼眞は眼下に視線を向け『プライド・ワン』が炎の突撃を行ったのを確かめた上で、オリジナルグラビティ『巨大うにうに召喚(ギガントウニウニコーリング)』を発動させる。
(「見栄えがどうだろうと、雰囲気が状況に合わなかろうと、これが俺の、最大攻撃力が出せる技なんだ! うにうにっ!」)
 我ながら言い訳じみてるな、と内心苦笑しつつも、蒼眞は口の中で呟き、謎の存在『うにうに』の巨大なものを召喚。身動きできない巨大ダモクレスの上から、どかんと落とす。
 凄まじい質量を叩きつけられ、巨大埴輪ロボの装甲がひしゃげ、各所で圧壊が生じ、小さからぬ爆発が続けざまに起きる。
 一方、巨大うにうには巨大ダモクレスを覆う炎に炙られて、しゅうしゅうと音をたて、妙に甘ったるい香気を放ちながら蒸発する。
(「おかしいな。うにうには熱や炎に強く、焼きうにうにになって食感が変わるものの、蒸発とかはしないはずなんだが。このダモクレスの炎には、何か特別な力があるのか?」)
 状況を見据えシリアスに考察する蒼眞だが、なにしろ対象が『うにうに』と埴輪ロボなので、考察してもあまり意味がないのではないかという雰囲気が漂う。
 そして『藍』が炎の突撃を行い、ことほは真理を治癒したそうな表情で上を見たが、その視線を感じたのか、真理が断固として言い放つ。
「重ねて言うのです。今やるべきは、全力攻撃です。私の治癒は後回しです」
「……はあい」
 ご本人がそう言うんじゃ仕方ないね、と、ことほは巨大埴輪ロボを竜を象った稲妻で攻撃する。通常、同種の攻撃を繰り返すと見切られてしまって当たらなくなるが、相手が作動不能なら、当然ながら見切られることはない。
「ひたすら攻撃力重視、か」
 呟いて、オズが蛇体に毒のオーラを纏わせ、敵を激しく打ち据える。
「我が種族の固有攻撃、ポイズンテイル……機械体のダモクレス相手に毒が効くかは疑問だったが、意外なところで役に立ったな」
 攻撃そのものはめった打ちだから、あまり技術は要さないんだが、と、少々複雑な表情でオズは呟く。
 続く『トト』は再びリングを飛ばし、ディアナは重力蹴りを放つ。
 そして、次の一ターンもケルベロスたちは容赦なく全力攻撃を続け、巨大埴輪ロボはほとんどスクラップに近い状態まで痛めつけられる。
 しかし、五分目を迎えた時、巨大埴輪ロボ型ダモクレスは、ぼろぼろと機械部品をこぼしながらも立ち上がった。
「……ハハハニ、ハハニ……ハニ、ハハニャ♪」
 だいぶ変調しながらも、巨大ダモクレスは催眠攻撃怪音波をケルベロスの前衛に向け放つ。
 その攻撃に対し『トト』が真理を庇ったが、他にディフェンダーの庇いはなく、真理以外の前衛全員が攻撃を受ける。
(「くらっと来るな……シャレじゃないけど、催眠をくらったかな?」)
 しかし、催眠にかかっても自動解除されるから問題はない、と、蒼眞は落ち着いて呟く。
 そして真理は、もはや敵を潰した方が早いとばかりに、炎の蹴りを巨大ダモクレスに見舞う。『プライド・ワン』はスピン攻撃を仕掛け、蒼眞は敵の頭部に斬りつける。既に装甲が割れて内部構造が露わになっているので、斬撃が易々と通り、大きな部位が斬り落とされる。
「……ハ、ハニャ……ハニャ……」
 もはや歌といえない末期の喘鳴に近い音を出し、巨大埴輪ロボはステージ上でゆらゆらと揺らめく。踊っているのではない、立っていられないのだ。
 そのふらつく円筒形の足(?)元を『藍』がスピンで薙ぎ、巨大ダモクレスは斜めに傾いでべたんと頓挫する。
 ことほはちょっと考えたが、ガネーシャパズルから光の「蝶」を放ち、真理に強力な治癒を行う。
 ここまで、外装皮膚の大半を焼き焦がされ、相手のダモクレスに劣らず壊れかけた機械人形のような凄惨な姿だった真理が、やっと通常に近い人間態に戻る。
 続いて『トト』が、自分を含む前衛を癒す風を送り、オズは重力蹴りで頓挫したダモクレスの接地部を抉る。ディアナは真理に個体治癒を送り、五分目が終了した。
 そして六分目。
 巨大ダモクレスは頓挫から身を起そうとするが、もはや接地部の損傷が酷く、立ち上がれない。
「……ハ、ハニャ……ハニャ……ハニャ」
 やむを得ず、なのだろう。ダモクレスは再び催眠攻撃怪音波を放つが、ケルベロスたちは易々と見切って身を躱す。
「勝負、あったな」
 蒼眞が呟くと、真理が淡々とした口調で応じる。
「勝負そのものは、ダモクレスが三ターン目に全力攻撃を出し、それを私が凌いだ時についていたです。……でも、あそこで日柳さんが戦闘不能になっていたら、わからなかったです」
「……そうだな」
 蒼眞がうなずき、真理は全力砲撃を撃ち放つ。直撃された巨大埴輪ロボ型ダモクレスは、比喩でも誇張でもなく粉々に吹っ飛び、後にはろくに残骸も残らなかった。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月2日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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