採掘坑道への開口部は、巧妙に隠されていた。
山奥で、人知れず流れ落ちる滝。その、裏側にあいた洞穴から掘り進んだのである。
『暴食機構グラトニウム』は、自走可能な小山だ。頂上の機械部は回転式の掘削機で、ガリガリと岩を砕き、中腹にあるクジラの口から鉱石を吸い込む。
そして、底部についた履帯で、坑道内を行き来する。
邪魔されないように選んだ土地ゆえ、鉱脈のあてがあるわけではない。
ある程度進んで収穫がなければ、戻って別方向へと作業するうちに、洞穴網が形成されてきた。
グラトニウムは、秘密の滝まで戻る道を忘れかけるほど、もくもくと鉱石を溜め込むのだ。
ヘリポートには、ケルベロスたちを迎えて、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)とヘリオンの姿があった。
「予知で判明したのは、山奥の滝裏に隠れて、巨大なダモクレスが鉱物資源を掘り出してるってことなの」
すでに、地底をめぐる坑道網が出来つつあるらしい。
「敵は単独だけど、『植物的な要素』が強くあって、大阪城から脱出してきた可能性も高いのねぇ。どこのどなたであっても、ダモクレスに資源を渡せば、それを悪用するに決まってる。坑道網から、採掘しているとこを見つけ出して、この巨大ダモクレス『暴食機構グラトニウム』の破壊を行って欲しいのぉ」
冬美は、ヘリオンのローター風でめくれがちなスケッチブックを両手で掲げて、暴食機構グラトニウムの再現図を見せた。
「戦闘特化では無いながら、攻撃を受ければ、採掘装置を利用した反撃をしてくるよ。上についた支柱はけっこう伸びるし、可動域も広いの。支柱先のグルグルを押しつけられたら、防御を削られちゃって、真ん中のクジラ口に、破れた服を吸い込まれちゃう」
もちろん、場所がら一般人はいない。服のピンチは、恰好よりも防御力の低下に気をつけてと、言い添えた。
「資源を奪われないよう、敵を早めに見つけてほしいから、新装備が役にたつかもね。てことで、コマンドワード行くよぉ」
スケブは掲げたままなので、レインコートの裾は盛大にめくれた。
「レッツゴー! ケルベロス!」
参加者 | |
---|---|
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476) |
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532) |
神宮・翼(聖翼光震・e15906) |
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466) |
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441) |
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902) |
●洞窟から坑道へ
落差も川幅もあり、立派な姿をしているが、その滝ツボ周辺に人が訪れている様子はなかった。
レスキュードローンが7人ばかりを乗せて、河をさかのぼってきたところだ。エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)が岸に降り立てば、ビキニ型の金属鎧が景観に映えた。
「人里から離れ、隠された地。まさに秘境か」
「ふわりねー、自然がいっぱいなの大好きなの!」
ミニスカ丈の巫女服で、盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)が、跳ねる。
背中にちょこんとジェットパックがあるから、飛ぶことも可能だ。ビーム牽引も行っていて、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は強化ゴーグルに効果を受けながら、ドローンから遊離する。
後ろから付いて来ていた、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は、ライドキャリバーに跨っていた。
水面を滑っていて、これはもう一人のクラッシャー、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)が牽引していた。いつも通りのカウボーイスタイル、長めのスカーフを揺らしながら、後続に手を振る。
そして上陸のさい、ロディとシフカは川の縁に崩れたところがあると気が付く。キャタピラで踏み外した跡のようである。
真理はハンドルをそちらに向けた。
「ヴェルランドさん、進行方向の逆算ができるかもです。ジュモーの居場所ですとか」
「或いはデウスエクスについての手がかりですね。機理原さん、帰りにでも調査しましょう」
「履帯の幅から見ても、今回のターゲットはかなりの大物だな」
サイズのぶん、大量の資源を採掘できるってこと。ロディたちは、ハンズフリーライトなど、機材を下ろして身に着けると、急ぎ崖の壁面に移動した。
流れ落ちてくる水流を覗き見て、スキマを横歩きで通っていく。
「滝の奥の秘密の洞窟、なんだかワクワクしちゃうのー♪」
ふわりだけ、滝を突っ切ってきた。水を浴びてずぶ濡れだ。
シフカのライトが後ろから当たり、透けているところへ、ロディが振り返って、ソコもライトで照らし見てしまう。
「おいおい、静かにして……うお!」
巫女服に、下着はつけていない。
「あれ、ロディくん? 反応が早くない?」
神宮・翼(聖翼光震・e15906)が、グイと胸を寄せて、洞窟奥に向き直らせた。白いフィルムスーツの頂点だけ、硬質なカバーで覆われている。
「やっぱり、大きいみたい♪」
スーツと同色の長手袋に覆われた指が、握るのはマイク。その先端でちょいちょいと示した方向には、天然の洞窟が終わって、最近になって掘り進んだとわかる坑道があった。
いつの間にか追い抜いたふわりが、土の変わり目を、駆けまわって知らせる。ロディの指摘どおり、大物の仕業だ。
エメラルドは不満げに言う。
「掘削用としては優秀なようだが、鉱物資源を密かに持ち出すとは卑怯だな」
恋人の背に張り付いたまま、翼も同意した。
「これだけ派手に掘り返されると資源泥棒どころか環境破壊ってレベルよね」
坑道は、さっそく二手に分かれて、どちらもグネグネと照明の届かぬ行き先に続いている。
シフカはゴーグルをかけた。
「どの程度役に立つのか・・・…。ここで試させてもらいましょうか」
確かに、複雑な坑道網だが、位置関係を直線で結べるなら、単純極まりない。ちょっと、斜め下に掘っていくだけだ。
なにしろ、ディフェンダーが3人もいるのである。
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)は、黒いフィルムスーツの各所から接続されたアームドアーム・デバイスを前方に集中させると、ドリルを形成させる。
「……示して」
「はい。行きましょう」
ゴッドサイト・デバイスの反応を受けて、無月(なづき)のドリルが坑道の壁面を崩し始めた。
「力仕事は任せてよ」
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)のデバイスは、背中から一対の機械腕を生やし、掘削で出た土砂を運びだす。
ノースリーブにホットパンツの服装からは、鍛えられた肉体が浮かんでいる。筋力でアームドアームを支えているかのようだ。
ライドキャリバーのプライド・ワンで小回りを利かせながら、真理はトンネルの壁面を補強した。
背中や手足には、アームドフォートによる武装が陣取っているから、デバイスはキャノン砲やミサイルポッドに融合する形で、セメント弾を放つ仕組みになっている。
4人は『暴食機構』のいる地底まで、他の役割をもつ仲間を案内するのだ。
●回転掘削機との戦い
シフカが得た反応によれば、標的まであと僅かとなる。
おそらく迷路になっているであろう、坑道網の配置までは感知できない。判るのは、敵がそこにいる、ということだけだ。
無月のドリルが岩盤を貫通し、地下空間の中にそびえる小山、植物ダモクレスの斜め前方へと飛び出る。
「……到着」
暴食機構グラトニウムは驚きもせず、クレーンを振り回し、作業中の掘削装置のグルグルを向けてきた。
ドリルの変形を解くと、無月のアームは盾へと組み変わる。互いに精密な動きだ。
回転する歯のひとつずつを、全身の防御力でもって弾きだす。その一枚を、銀子の機械椀は、がっちり掴んで一瞬、止めた。
プライド・ワン上で、真理は銀子と協力して歯を押さえ、トンネルに控えていたケルベロスたちを、坑道へと降下させる。
再び、掘削機が回転力を取り戻し、押し返された真理の身に着けていたものは、手足の武装をのぞいて剥ぎ取られた。
全裸といっていい。
真理は、生のお尻を直接シートにのせながらも、脚部のミサイルポッドに、頑丈さが残っているのを確認し、戦闘に集中した。
防御には気をつけろということだったが、こちらもディフェンダー3枚は硬い。自軍の戦闘展開までは耐えきった。
サウザンドピラーの星辰を並べて、翼は魔力柱を岩盤に建てる。
「服だけじゃなく、色々ピンチになったら大変だもんね」
加護の光が、空間に広がった。エメラルドの英雄凱旋歌も石のドームに響き渡る。
「我らが英雄の不敗たるを称えよ!」
デバイスで飛び交うケルベロスたちには、攻守両方の力が与えられた。ロディは、敵の作業で開けた場所が、空中戦可能とみて、ジェットパック・デバイスを操っている。
「さて、土竜狩りと行こうぜ! ……サイズ的に鯨狩りかな?」
破鎧衝の弱点演算で、土手や石垣に見える側面に回り込み、リボルバー銃『ファイヤーボルト』のトリガーを引く。シフカは、日本刀『Bluと願グ』に雷の霊力を集め、弾丸に並んで突いた。
グラトニウムの石垣が割れて、群生していた攻性植物が抜け落ちる。雑草のようで、守備役だったらしい。
銀子はバスタードソードを抜いた。片手半剣とも呼ばれる。
「これ以上、好きにさせるつもりはない」
だが、剣を受けても掘削機を押しつけてきた。
「服ごととか節操なさすぎでしょ」
構えたアームドアームを跳ね上げて、タンクトップをちぎり取る。避けたと思ったシフカも、いったん着地したときには、素っ裸だった。
採掘機に叩かれ、ふわりの巫女服は雫を飛ばした。洗濯の要領だが、布地の水分を搾られきると、裂けはじめる。
「ぐるぐるなのー?!」
ミニの緋袴の結びだけはキッチリ締められている。
翼のフィルムスーツには、頂点にカバーがついていたが、飲料缶のタブのように、プシュと開けられると全体がはじけた。
「ああ、またマリモようかんみたく!」
両方の膨らみが露わになるあいだに、エメラルドのビキニアーマーも金具を壊され、いまや二人ぶんが揺れまくる惨事。
盾で防ぎきれなかった無月は、しかし揺れるほどはなかった。
それよりも肌に感じる。ゴオッと音をたて、坑道じゅうから空気を集めるような流れ。
布切れを吸い込みはじめたクジラ部分を、全体の頭に見立てれば、この掘削機は怪獣っぽくもある。
「服を食べる、ダモクレス。……おいしいの?」
無月のフィルムスーツだった黒繊維回路をはじめ、翼の白繊維、エメラルドのアーマーが、大きく開けた口の中に消えた。しかし、鉱石とは違うからか、時に首を傾げるような動きをみせる。
「……おいしいわけでもなさそう」
「くう、このお返しはするからな!」
カウボーイスタイル一式を吸われ、スカーフだけをなびかせてロディは、クジラの口を睨む。
早々に服を喰われはしたが、誰もがまだ、戦闘不能までは体力に余裕があった。ふわりも、袴の結びだけになりながら、全員を飛行させていたことで、ダメージが減衰分散し、ディフェンダーを含めて、仲間の被害が減ったのだと理解する。
「皆で並んだら、クジラさんから受ける攻撃も弱くなるのー?」
「牽引ビームは、役立ちそうですね」
シフカが、傍らに浮遊してくる。別の意味で余裕だった。普段はかっこよく洋服を着こなすのに、素っ裸になってもそれはそれで落ち着いている。
「くじらさんの上の、グルグルついてる柱を、縛っちゃいたいのー」
ふわりも身体を寄せて、甘い声をだした。
肌もふれんばかり、ビーム牽引のせいではない。シフカも、微笑みをたたえる。
「ええ、いいですよ。一緒にやりましょう」
御業が、禁縄禁縛呪でダモクレスの上部を掴む。シフカの日本刀が、月光斬で油圧機のひとつを切り裂いた。
クレーンを捕縛されて、暴食機構グラトニウムは、はじめて苦痛のような咆哮をあげた。
●土にかえれ
リボルバー銃に、グラビティ・チェインの刃が形成される。
ロディにブリッツバヨネットを履帯部分に突き立てられ、掘削機が地面を削りながら掃いにきた。
プライド・ワンから飛び出した真理が、ロディを庇い、彼の身体を自分の代わりにシートへと放る。
「うおっ、すまない!」
しかし、背中から車体へと落ちるかっこうとなり、その間にキャリバースピンを慣行される。
ロディは落っこちないよう必死だ。主の真理は、チェーンソー剣で敵の足まわりを半周するように刻むと、サーヴァントの元に戻ってきた。
裸の尻は、シートとのあいだに、ぐにっとナニかを挟んだ。
いったんは退けられた採掘機に、銀子は果敢にいどんでいる。
「んああっ」
アームで押さえても、回転刃が捕縛に抵抗し、踏ん張った股間に、ちょいちょい当たってくる。むしろ、拘束により柔らかくなった攻撃が、突起を撫でているようなものだ。
「だ、ダメよ……ひい」
銀子の口から、ついヘンな声がでてしまっている。
その正体は快楽であるところの苦痛から解放すべく、エメラルドは黄金の果実の光を照らした。
彼女自身、今日こそ感情に惑わされまいと、裸でも強気に出ていた。地底なら、のぞき見するような一般人はいない。
果実の光をいきわたらせようと、真理の機動力を借りることにする。キャリバーの後部ステップに立ち乗りした。
「真理殿、敵に捕捉されないよう注意して、戦場を周ってくれ」
「了解なのです!」
手元の光源が強すぎると、よく見えないこともある。
ロディはいまだ、シートの代わりに仰向けになったまま、腰には真理が乗っかり、顔の前にはエメラルドの股ぐらがあった。
奇妙な3人乗りを、無月はチラと視て。
「みんな、……連携すごい。わたしにも、……連れ合いがいる」
ワイルドグラビティ『華空(ハナゾラ)』を発動させる。
「……行こう」
残霊が召喚された。
銃の連射がクジラの頭になされる。その鼻先へと、無月の槍が振るわれ、一発と一突きが、同時に巨大な歯を折った。
採掘機に吸込口、履帯の機能を抑え込みつつある。暴食機構の山頂から裾野まで、まとめてシビレさせよう。
「あたしの身体は楽器になるの♪」
翼はマイクを握ると、『V☆B☆V(ビビット・ビート・バイブレーション)』を高らかに歌う。一輪車に挟まったままでも手は自由だから、ロディはグラビティブレイクを乗せて、銃撃している。
「んー。なんで、身体をバイクにしてんのかなー」
さすがに4人は乗れないだろうと参加はしなかった。真理の乗り心地は固めになっているに違いない。
銀子への刺激も、絶頂を迎える。
「あああ、こ、堪え切れないイ」
回転刃はふたたび動き出し、シフカへと迫ったが、銀子は強く押し付けてとどめた。代わりに、溢れたものが勢いよく吹き出すのを見られ、さらに聞かれた。
「獅子谷さん、いまジョリって……剃られてしまったんですか?」
指摘に耳を真っ赤にし、なお銀子は片手半の柄を握りしめる。
バスタードソードで得物砕きをし、ついに回転掘削機を破壊した。そのために、何度も刺激させていたのだった。
「ハァハァ、服を破られるのは、もう慣れてるのさ」
ふわりの牽引ビームがシフカを回収する。
なんかもう、ハダカで抱き合ってる二人は、そのまま日本刀の斬撃を、銀子のつくってくれた隙に加えていった。
最後の弱点を示すのに、シフカの指が、ふわりの掌で踊る。
「いっぱい攻撃しちゃうの!」
握られたまま手が、カオスキャノンに変化し、混沌の砲弾を撃ちだした。
傾いだ小山を貫通する。
「ギ、……グェ!」
クジラの目は焦点が合わなくなり、最上部のクレーン基部からガラガラと崩壊がはじまった。
「こんなにも敵の姿が捉えられるとは。すごいものですね」
シフカは、ゴーグルをあげて、ニコと笑う。
暴食機構グラトニウムは、各要素が分解すると、しなびて枯れ果てた。
●滝の洞窟
牽引ビームの調節で、椅子役をバレもせずに終えたあと、ロディは掘ってきたトンネルへとメンバーを戻した。
翼は、坑道を埋めたかった。建築物ではないので無理そうだったが、残ってヒールを試す提案に、仲間たちは承認する。
協力を誘われたロディも、同意した。
もう、自分も含めて全員が全裸なのだ。着替えは川岸に用意してきたし、シフカも準備があると言っていたが、いったい何時になったら、みんながそれらを着てくれるのか、わかりゃしない。
ずっと目線を反らし続けるのは、シートに挟まるより難しいと、ロディは考えたのである。
「もろもろアフターケアしないとね♪ 大きくしちゃったでしょー?」
結局、翼と二人きりになれば、されてしまうことも、決まっている。
「……ウウッ!」
「ふふ。濃いの、でたね♪」
トンネルの傾斜を登りやすくするために、帰りも無月が先頭に立った。
銀子は体を鎮めたくて、道具も持ち込んでいた。
握って片手半の長さがあるヤツ。
すると、デバイスが個性を反映し、アームが道具に変形したのだ。ふわりとシフカがそばにいて、使いたそうなので、3本に増やす。
「滝、気持ち良さそうだから浴びてくのー♪」
地上に戻り、ふわりと真理が、裸のままで楽しみだすと、残りも躊躇しない。
「うむ、ハダカであろうと普段どおりで良いのだ」
すっかり強気になったエメラルドは、光の翼があるからと、先に飛んでいってしまった。着替えの用意があることも知らずに。
全裸のまま。
作者:大丁 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年9月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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