●8月28日、朝
窓を開くと、カーテンが風をはらんでふっくらと揺れた。
まばゆい陽の光、温まったぬるい風。
空気の入れ替えを早々に切り上げて窓を閉めたレプス・リエヴルラパン(レポリスヘリオライダー・en0131)は、髪を結いながら。いつものように片目を瞑ると、電子カレンダーの予定を確認する。
仕事欄は空白。
予定欄にはケーキマークのスタンプ。
本日、レプス・リエヴルラパン36歳の誕生日。
例年通り、予定は特に入れずに過ごす日。
首を左右に揺らしてパキリと音を立てて、ぐうっと体を伸ばすとキッチンへと向かう。
「えーっと……、ほうれん草と卵があったなァ」
――まずは朝食をやっつけてしまおうか。
●いつもの日
本日の予報は晴れ。
今日も暑くなるらしい。
ボードにのって走る子どもとすれ違い。
犬の散歩をするお姉さんに会釈を一つ。
こんなに平和な日常の裏側でも、ケルベロス達の戦いは日々続いている。
新たな事件だって、次々に起こっている。
しかし。
その戦いがあるからこそ、この平和は守られているのだ。
いつもの、金曜日。
なんでも無い、金曜日。
かけがえのない平和な金曜日。
今日は天気も良すぎる程。
さて、何でもない今日をどうやって過ごそうか。
●
空青に響く蝉の声。
街をじりじりと焼くかのような陽射しが、鮮やかな緑によって和らぐ木陰。
さわさわと涼やかな音を立てる木漏れ日を浴びて、環はベンチに腰掛けた。
「アンちゃん、アンちゃん、見て下さい! 期間限定の瀬戸内レモン味ジェラートです!」
「いいね、おいしそうだ。そういう味って今日みたいに暑い日に食べると、さらに美味しく感じるよね」
次いで彼女の横に腰掛けたアンセルムの答えに、灰の尾を揺らした環は屈託も無く笑って一口。
「そのとおりです! あ、果肉も入ってて更に爽やかですー」
「うん、おいしいなら何よりだね」
頷いた彼も眦を和らげ、パステルカラーのあられが散りばめられたソフトクリームを一口齧り。
その様子に、環は瞬きを一度。
「そのソフトクリームもかわいいですよねー、アンちゃん……そこら辺の女子より女子力高くありません?」
「まあ、可愛いものにすぐ反応できるようにしておかないと、この子にお洋服も着せれないからね」
彼は否定するでも無く。
この子――自らを覆う蔦の先に腰掛けた愛らしい少女人形を一度見下ろして。
「女の子にうけそうなモノは確認しておきたい気持ちだよ」
「さすがアンちゃん、歪みないですー。ところで……おいしいは共有するに限りますよね?」
とびきり悪戯げに笑った環は、ずずいとジェラートをアンセルムへと差し出して。
「そういうことなので、アンちゃんも一口いりますー?」
「え、いや、スプーンも貰って無いし、流石にそのまま食」「ほら、溶けやすいから早く早くー!」
一歩引いた彼がふるふると首を揺すり、更に近づくジェラート。
「ちょっと、環。ちょっと待つんだ、近い……!」
「垂れちゃうからー!」
「そ、そういう問題じゃ……おいしそうとは言ったけれどっ、ああもう!」
皆には内緒の二人きりのお出かけ。
夏の日の思い出。
こんな日が、ずっと続くといいのにな。
歴史を感じる赤煉瓦造りの洋館。
夫婦並んで本を手に、水入らずで過ごす読書の時間。
――常より戦いの中に身を置く二人にとって、こうやって一緒に過ごす何気ないひと時はとても幸せな時間で。
静謐たる室内に響くのは頁を捲る音ばかり。
有理がふと時計へと視線を向ければ、針は随分と良い刻を指していた。
「そろそろおやつにしよっか?」
本を閉じ。夫へと声をかけた有理が窓辺へと向かえば、差し込む光は夏の色。
綿あめみたいな雲が浮かぶ空の青は高く、今日も外は暑そうだ。
――冬真は暑いのが苦手だものね。
「今日は、冷たいおやつにしようね」
「うん、いいね。じゃあ僕がお茶を煎れるよ」
集中をしていたって耳馴染んだ彼女の声ならば、耳に届く。
冬真も本を閉じると立ち上がって、空を見上げる妻の背に眩しげに瞳を眇めた。
――読書をするにしたって、昔は人が横にいると落ち着かなかったものだ。
しかし、今となってば隣に彼女がいなければ落ち着かない。
日々のおやつだって食事だって、冬真の事を考えて品を変えてくれている事だって識っている。
それはきっと、今だって。
思案げに顔を小さく上げる無防備な彼女。
その背を見ているだけで、じんわりとこみ上げる愛おしさ。……それに、少しばかりの悪戯心も。
「でもその前に――」
冬真に引かれたカーテンがはらりと舞い。有理の上へとふわりと淡い影が落ちた。
「……別の甘いものが、欲しいな?」
それがカーテンの影だと気づく前に。甘い声音と自らを抱きしめた腕に、有理は眦を和らげ。
「もう、冬真ったら」
今だけは自分だけを見て欲しくて。
カーテンで世界を切り取って包んだここは、ふたりだけの世界。
振り向いて見上げる有理の瞳の色まで愛おしくて、その唇に唇を重ねる。
――愛おしい人、最愛の人。
おやつはもう少しだけ、お預けだね。
あまい、あまい時間を、今は。
柔らかな毛並みと、心音。
無く子も黙る上腕二頭筋、歌う僧帽筋。
揺れる世界で、シズネは腹筋が14つに割れている事に気が付いた。
夢のような肉体を手に入れたシズネは喜び――。
「!」
その先に自らよりも逞しい姿を見た。
「はあ……」
身体が熱い。伝う汗を、袖でぐいと拭ったラウル。
暑い日こそ筋トレだなんて意気込んで。ラウルをトレーニング室へと引っ張り込んだシズネは、とっくの昔に筋トレを終えて部屋を後にしている。
「……」
メニューはまだ半分も残っているが、筋トレは筋肉を休ませる事も重要なポイントだ。
決してこれはサボりでは無く休憩だと、自分に言い聞かせたラウルはリビングへと向かう。
「シズネ、そっちに居るの?」
声掛けに返事は無く、扉を開けば猫に囲まれシズネはお昼寝中。
「ず、ずるい……」
腰掛けたラウルはシズネの寝顔を覗き込み――彼の苦悶の表情を見た。
なんか、魘されてない?
瞬きを重ねた、その瞬間。
「ら、ラウル?!?!」
「えっ、うん。ラウルだよ」
シズネが大声を上げて飛び起きて、慌てた猫達は急いでラウルの後ろに隠れ。
「ら、ラウル~……」
横に座るラウルが決して逞しく無い事に、シズネは安堵の息を漏らした。
「……一体どんな夢をみたの?」
不思議そうに、ラウルは首を傾ぎ。
「えっ、あっ、お、覚えてねぇな~、……そ、それより筋トレは終わったのか?」
シズネは慌てて話を逸らす。言えない、言えない、あんな事。
「も、勿論終わったよ! 腹筋14個に割れたから!」
「腹筋14個!?」
しかし次に慌てる事になったのはラウルの方。
彼の誤魔化しに、シズネは大きな声で驚いた。
脳裏に過るは、夢の中のムキムキラウル。
「だ、だめだ! 今からお菓子食べまくるぞー!」
「えっ、い、良いけどっ」
そうして猫だまりでおやつタイム中も、シズネはちらちらとラウルの腹を見やって――。
のどかな郊外の隠れ家めいた店内で、カッコウ時計が時を刻む。
「ありがとうございマス」
会計を済ませた常連客が席を立ち。
昼の混雑を過ぎれば、店内にも穏やかな時間が訪れる。
丁寧にドリップする珈琲。
蒸らしている間に野菜とハムを挟んだサンドをトーストマシンに収めて。
香ばしいかおりがする頃には、カップに珈琲を注ぎ終えている。
差し込む木漏れ日が、蒼穹の髪に落ち。
すこし遅めの昼食の準備を終えたエトヴァは、窓辺の席へと腰掛けて。
「頂きます」
さくりとトーストサンドを齧れば、窓辺で日向ぼっこしていたみけ太郎は大あくび。
――また、新しいケーキを焼いてみましょうカ。
喜ぶであろう家族の顔を考えると、自然と眦も和らいで。
「よぉ、来たぞー、っと休憩中か?」
「イエイエ、大丈夫デス。いらっしゃいマセ」
立ち上がるエトヴァ。
珈琲の薫りに包まれた昼下がりは穏やかに、穏やかに過ぎてゆく。
共にこの島へと訪れるようになってから三年目。
あかりが手にした、ダイビングのジュニアライセンスの仮認定証を祝って。
「乾杯!」
幾つも重なった麦酒と麦茶のグラスが音を立てる。
「本物は郵送だから、東京に帰ってからのお楽しみだな」
「うん、本当にありがとうございました!」
陣内の言葉に頷いたあかりが、陣内の両親を見上げて。
その笑顔に、やはり指導アシストの資格くらい取っておけば良かったな、と改めて陣内は感じてしまう。
――陣内の実家はダイビングショップである。
今年のケルベロス大運動会で、ダイビングで海を渡って二人は聖火を運んだ。
そのタンクにプリントされたポップ体の広告の甲斐もあってか、今年の夏は両親とも忙しかったようだ。
……陣内はあのロゴだけは、もう少しマシにならないかと思っているが。
そんな中。あかりがライセンスを取得したいと伝えた所、両親は喜んで熱心に彼女を指導してくれた。
その努力の結果が、彼女の前に置かれた仮の認定証である。
夏の間頑張った彼女と、指導する両親。
……資格があれば、彼女に指導が出来ただろうに、と思うと。
格好をつけたいだけの不純な動機では在るが、やはり惜しく思えた。
「ねえ、タマちゃん」
陣内が想像を重ねながらグラスを傾けると、あかりの小さな小さな声。
服の裾を引く、彼女の蜂蜜色の瞳を覗き込む。
「――あのね、指輪。バレてるみたい」
花のように微笑む、日に焼けた肌の天使様。
そう、やっぱり。
あかりが見ている限りでも陣内の母の視線は、二人の左手の薬指を行き来していた。
「……そうか」
父はともかくとしても、母の目敏さには昔から敵いはしない。
それでいて陣内が切り出すまで、何も言わずにいてくれているのであろう。
グラスの中身を呷ってから、あかりの手を取った陣内は。
「父さん、母さん。話があるんだけど――」
腹を括る。
●
傾き出した太陽が、空を赤く染めている。
明日にはまた一つ年を重ねてしまうから、帰途へつく前に少しばかりの寄り道を。
「そっちのメロンのケーキなんて良いんじゃないか?」
「あ、美味しそうだね」
クローネは店先で会ったレプスと並んで。
明日の21歳の誕生日を祝うケーキの予約と、今日まで頑張った20歳最後のご褒美ケーキを選ぶ。
――クローネは子供の頃。
魔術の才こそあれど身体も弱く、病気がちであった。
治療と修行を兼ねて魔女医師の祖母のもとで育つも、ここまで長く生きている事ができるなんて思っても居なかった。
だからこそ、また一年を健やかに重ねられた事がとても嬉しい。
「ありがとう、レプス」
「おう、おめでとさん」
「少し、早いけれどね」
くすくすと笑ったクローネは改めて帰途に付く。
胸裡に抱くは、重ねた一年。
お仕事に、大切な人と過ごした時間。
「……早く、明日にならないかな」
店を閉じる準備をしながら、蓮は考える。
彼にとって食事とは、栄養を摂取するだけのものであった。
食に時間を割くよりは、読書をしていたかった。
倒れない程度に、必要最低限摂取していれば良いものであったのだ。
しかし、しかし。
志苑が気を使って、時々食事を持ってきてくれるようになったのだ。
そして今。
蓮の自宅の台所で志苑は、料理をしているはずであった。
買い出しこそ手伝えど、古書堂の店番もあり。
彼女が料理するに当たって蓮が役立てることは、申し訳ない事に何も無い。
正直。彼女の気遣いが、余計だと感じる事もあった。
しかし、――今は。
廊下に満ちた、出汁の芳しいかおり。焼き魚の香ばしいにおい。
この香りを、嬉しいと思う蓮が居た。
食卓へと向かえば、志苑は柔らかに微笑んで。
「あ、お疲れ様です。直ぐ頂かれますか?」
茄子の肉味噌炒めに夏野菜の煮浸し、オクラの梅和え、焼き魚にお味噌汁。
夏野菜を中心とした和食が二人分、綺麗に机の上に並んでいる。
蓮はすこし申し訳無さげに頭を下げて。
「すまない、全て任せてしまって。……ありがとう頂くよ」
「ふふ、お気になさらないでください」
彼が放っておけば、食事を抜きがちな事は志苑にとっても重々承知のことだ。
ならば、身体の為にも申し訳無く思うよりはしっかりと食べて貰いたい。
蓮の座る前に座った志苑、二人は手を合わせて。
――自然の恵みに感謝を重ねて、頂きます。
「……美味い」
「夏のお野菜は味が濃くて、美味しいですよね」
「ああ、……何時もありがとう」
「どう致しまして。そう仰っていただけますと、嬉しく思います」
蓮の零した言葉に、志苑は眦を和らげて笑う。
志苑にとって、食事はいつもの日常。
蓮にとって、彼女と共の食事は特別な時間。
――食事を共にする事は、なんでもなくて、特別で。
そして、そして、幸せな時間で。
空が茜に染まろうとも、スーパーの中は白々と。
巨大なカートを引いて先陣を切るティアンの後ろを歩む夜は、さも当然と言った自然な動きで果物とナッツをカートへと放り込み。
ついでにおつとめ品チョコも入れておこう。あ、新作チョコもね。
サイガが掌ほどの巨大マシュマロを重ねれば、夜は負けじとスモア用のビスケットを入れる。
そこにアイヴォリーが色鮮やかな夏野菜を入れれば、最早カートは山と成り。
「アイヴォリー、いいお肉ってどう選ぶの?」
「そうですねえ、赤い汁が出ているものは避けて……、濃い赤よりも白に近い明るい赤色のモノを選ぶ事ですかね」
「明るい赤」
肉のパックを手にしたティアンが、じいと色を見比べる。
今日は皆でバーベキュー。
デウスエクス退治のお礼で代金を賄って貰えると言われれば、目に付いた全てをカートに詰め込んでしまっても仕方が無い。
仕方の無い事なので、麦酒に、ワイン、フェアだという一升瓶の地酒。夜は遠慮なくカートに酒を押し込んで。
「夜、果物ジュースも入れておいて」
「了解」
未成年代表のティアンのお願いに夜が選んだのは、無駄に鮮やかな色をしたラベルの何か。
成人していてもサイガは酒が飲めぬのだから、飲むモノを確認しておくのは悪くないだろう。
瓶を掲げて原材料を覗き込み――。
「……なんだこの味分からん飲み物……?」
あっ、わかんねえなこれ、材料からしてわかんねえわ。他のジュースもいれとこ。
サイガの手が止まっている間も、夜の手は止まらない。
鳥、豚、牛、羊にソーセージ。ありとあらゆる肉を詰めて、重ねて。
「そういえばスモアをするなら、チョコレートも使って良い?」
首を傾いだティアンはチョコを手に。先程スモア用のビスケットが居た気がする、もう肉で見えないけれど。
「チョコ? いいぞ、通れ」
頷いたサイガは既にチョコが幾つも埋まっている事を知らない。
目を背ける夜。
「……えっ。何ですか、この山は」
カートの肉山にアイヴォリーは目を丸くして。ひゅうと夜が唇を吹いたものだから彼女は肩を竦める。
「犯人は腹ぺこ夜さんですか、全くもう」
浮かぶ苦笑、そりゃあこの程度ならアイヴォリー一人でも食べきれる量だけども。
なんたって炭火は魔法。炭火で焼くと、大体のモノは美味しくなるものだ。
そう。特に味噌焼きおにぎりなんて本当に最高でしょう。
「そういえば締めはやっぱり、焼きおにぎりですよね?」
「は?」
米と味噌を抱くアイヴォリーの言葉に、選び抜いたリンゴを手にしたサイガが柄の悪い声を上げ。
「米とかメインだろが? 締めってぇのはもっと、こう、スルスルーッつって終えてえわけよ、お分かり?」
「へえ、メインだからこそ最後に持って来るのでは無くって?」
アイヴォリーとサイガの間に散る火花。
「それはそうと、焼きそばのソースの香りも天国だよね」
間にするっと潜りこんで来た夜が、焼きそばの麺をどさりと載せて。
「焼きそば派の者!?」
そこにティアンの鶴の一声。
「……全部焼いて、わけっこする?」
「ああ、良いね」
ソバ飯にすれば良いんじゃないなんて考えていた夜が膝を打つ。なんたって焼きリンゴはソバ飯には入らない。
「確かに全部食や同じことだわ、賢いぞティアン」
「ええ、ありがとうございますティアン。全部焼けば無問題でしたね」
こうして世界平和は守られるものなのだ。
「まあ、実際全部焼いた所で、締めは焼きリンゴが最強なんですがね。俺の神テクで嗜好が変わる準備はできてるか?」
「あらあら、フラグって言葉はご存じですか? 味噌焼きおにぎりに屈する前振りをありがとうございます」
軽口を叩きながらカートを押して、レジへと向かうサイガとアイヴォリー。その後ろを歩む夜は大あくび。
あれ、世界平和守られて無いかも。
ティアンは皆の様子に耳をぴるぴる。
――今日もきっと楽しい夕食になるだろう、と。
星の瞬きだした空。
ロコが書店の紙袋を抱いて歩む帰路。
「あれ、アンラ。まだ仕事?」
「アイビーか。そうだ、まだ仕事中だ」
そこに街人から何かを手渡されている郵便屋の姿に、ロコはひらと手を振って。
「しかしまた珍しい包みを持っているものだな」
「これ? 少し練習しようと思って」
アンラの指摘にロコが書店の紙袋より掲げた本は『はじめてでも美味しいレシピブック』。息を呑んだアンラが、真直ぐにロコの瞳を見やって。
「ダークマター生産は止め給えよ」
「……それを防ぐ為の本だろ??」
答えるロコの視線はどうしたって泳いでいるけれど。
その間もアンラは何かを手渡されているものだから――そんな彼の後ろに付いてロコも歩み出す。
「何故ついてくる……?」
「ねえ、そんな事よりさ。さっきからそれなぁに?」
「BC」
短く一言だけ応じた郵便屋の抱える束は大体同じ宛先の配達物であるようで、ロコは得心がいったと頷いた。
「あぁ、成程。……それなら僕にも一枚貰える?」
「嗚呼、嗚呼、好きにし給え」
アンラの大きな鞄から真新しいカードを受け取ったロコは、さらりとペンを走らせる。
そうして配達物の束に重ねられた、新たなもう一通。
そんな二人の前に程なく姿を現したのは『宛先』の影であった。
「届け物だよ、レプス・リエヴルラパン殿――貴方で間違いは無いかね?」
「お?」
呼び止められたレプスが振り返るとロコは彼を見上げて。
「こんばんは。それとおめでとうレプス。良い1日は過ごせた?」
「おう、勿論。アイキランケクンもエピカクンも届けてくれてありがとなぁ」
BC――街人や番犬達からのバースデーカードの束を受け取ったレプスは、擽ったそうに笑った。
何でも無い夜、何でも無い金曜日。
それはきっと誰かにとって、大切な記念日でもあるようだ。
作者:絲上ゆいこ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年8月29日
難度:易しい
参加:18人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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