ブルーベリー狩り

作者:芦原クロ

 とある広めの農園では、大粒で甘く、完熟したブルーベリーの、摘み取り体験が出来る。
 時間は無制限で食べ放題、というのも有ってか、観光客も多い。
 果実を摘み、まっすぐに引き抜くのがコツで、違う方向から引き抜くと、果実に傷がつく……と、農園のスタッフが親身になって教えている。
 家族連れが多く、楽しそうにブルーベリーを摘み取って食べ、ひと夏の想い出を作っている。
 そこへ、漂って来た謎の花粉のようなものが、一粒のブルーベリーにとりついた。
 直ぐに攻性植物化して動きだし、地面に落下してから、一粒サイズの実はどんどん巨大化してゆく。
 異変に気付いて逃げ惑う人々を襲い、異形は暴れ回る。
 滅茶苦茶に荒らされた農園は、死体が並び、鮮血で汚れ、無残な光景と化した。

「花見里・綾奈さんの推理のお陰で、攻性植物の発生が予知出来た。早速だが、急ぎ現場に向かって、討伐して欲しい」
「放っておくと、沢山の人が……亡くなります」
 霧山・シロウ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0315)の後に、花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)が重要な事を添える。
 シロウは深刻そうに頷き、説明を続けた。

 敵は1体だけで、配下は居ない。
 一般人の避難誘導は警察などが迅速に対処してくれるので、ケルベロスたちが現場に到着する頃には避難は完了し、無人となっている。
 ケルベロスたちは現場に到着後、現れる攻性植物を迎撃すれば良い。

「ブルーベリーは、酸味や渋味の印象が強いようだな。この農園のブルーベリーはどれも完熟していて、甘くて美味いそうだ。どれぐらいかと言うと……苺ぐらい、と言えば伝わりやすいだろうか。これを機に、甘いブルーベリーを味わってみたら、どうだろうか」
 もちろん敵を討伐した後で、の話だ。
「死者を出さない為にも、確実に撃破して欲しい。頼んだぞ」


参加者
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)
天原・俊輝(偽りの銀・e28879)
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ


(「ブルーベリーですか、実っている物を直接見たことは無いので楽しみです」)
 無人の現場に到着後、綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)は周囲を見回す。
 同じく、敵の不意打ちを食らわぬよう、常に周囲を警戒している、アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)。
「私たちは攻性植物の相手に集中しましょうね」
「敵が、一般人のいる方向へと……向かわない様に、注意します」
 ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)の言葉に頷く、花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)。
「此方はサーヴァント含めて人数も多いから、敵を取り囲む様に布陣しながら戦えるわね」
「敵を取り逃がさない様に気を付けるのも、重要ね」
 雪城・バニラ(氷絶華・e33425)とリサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、メンバーに語り掛ける。
(「余裕があれば農園に被害を出さず、最低限の被害に抑えられるように頑張ってみよう」)
 肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)が思案していると、こちらに向かって何かが這って来るような音が聞こえた。
 巨大化したブルーベリーの実から下は、いくつものツルが生え、実を支えているのと同時に、ツルを伸ばしてゆっくりと移動している。
「寄生されてしまったものに罪はありませんが、止めさせて頂きますよ」
 天原・俊輝(偽りの銀・e28879)の言葉を合図に、メンバーは敵を取り囲むように位置取りし、戦闘態勢に入った。


「さぁ、行きますよ夢幻……。サポートは、任せますね!」
 夢幻は綾奈に言われた通り、翼で邪気を祓い、前衛陣に耐性を付与する。
 その隙に、綾奈は全身を光の粒子に変え、敵に突撃した。
「こちらも高火力の攻撃を加えて行き、短期決着を目指します」
 詠唱し、華空を展開する、ミント。
 槍の乱舞攻撃に合わせ、ミントは銃で連射し、槍の突撃と強烈な一発の弾丸を撃ち込む。
 ケルベロスチェインを展開して、地面に前衛陣を守護する魔法陣を描く、俊輝。美雨はポルターガイストで、敵に足止めを加える。
「BSをどんどん付与していく戦法で、此方が戦闘を有利に進められる様にするわね」
 続くリサは、ライトニングパルスを展開。
 高速で流れる電気信号が敵に放たれ、敵を痺れさせる。
「敵はBS付与攻撃を中心にしていますので……」
 鬼灯は自分がどう動くかと、素早く思考を巡らせ、地面に守護星座を描く。
 守護星座が輝き、中衛の仲間たちの護りを固める。
「ネオン、共に行きますよ! 氷の属性よ、仲間を護る盾となりなさい」
 ネオンがブレスを放射している間に、玲奈はメディックを護る盾を形成する。
「その身体を、破壊してあげるわ!」
 痛烈な一撃を敵に叩き込む、バニラ。
 敵は苦しげに呻いた後、侵食した大地で前衛陣を飲み込む。
(「まずは人々に害をなす攻性植物を倒してしまいましょう」)
 地面を蹴り、宙へ飛びあがる、アクア。
「足止めや服破りなどのBSを沢山付与し、大ダメージを与えやすくして早期決着を目指しましょう」
 そう言いながら、アクアは煌めく飛び蹴りを炸裂させ、敵の機動力を奪う。
(「ブルーベリーですか、私も大好きですよ。沢山のブルーベリーを狩る為に、攻性植物は倒してしまいましょう」)
 ミントが思案しつつ、炎を纏う。
「その身を、焼き尽くしてあげますよ」
 焼け付く炎の激しい蹴撃を、食らわせるミント。
 黒き鎖を操って魔法陣を描き、前衛陣の回復を素早く行なう、俊輝。美雨は攻撃に徹している。
 夢幻が更に治癒を重ね、仲間を庇った負傷が完全に回復すると、綾奈は攻撃に回った。
「高い威力のグラビティで攻めて、短期決着を付けられる様に戦うわ」
 影の弾丸を敵に撃ち込む、バニラ。
「まずはその素早い動きを、封じてあげましょう」
 更に撃ち込まれるのは、アクアが放つ、竜砲弾。
「敵の攻撃が激しいですね」
 鬼灯は冷静に戦況を見極め、ダメージを軽減するべく、敵を突如爆破させた。
「虚無の世界へと消えてしまいなさい」
 リサが放ったのは、触れたもの全てを消滅させる不可視の球体。
 敵の一部がごっそりと消え、敵は痛みからか、咆哮をあげた。

 数分が経過し、状態異常が重なり続けた敵は確実に、衰退していた。
 敵の攻撃も、威力が衰えている。
「ブルーベリーシャーベットになってしまいなさい!」
 今が攻め時だと判断し、ミントは凍気を纏った杭を、突き刺す。
 美雨と共に、攻撃に入る俊輝。
「エンジェリックメタルよ……私に、力を!」
 鋼の鬼と化したオウガメタルの拳で、敵を粉砕する、綾奈。
「この刃で、貴方のトラウマを想起させてあげます!」
 玲奈は敵を刺し貫き、刃から伝わる呪詛で敵の魂を汚染する。
「僕を見くびった貴方の負けです!」
 グラビティの刃を纏い、渾身の斬撃を浴びせる、鬼灯。
「幻想的な水晶の炎を、ご覧あれ」
 熱を持たない水晶の炎で、アクアは敵を切り刻む。
「貴方を動けなくしてあげるわよ」
 リサの、尋常ならざる美貌が放つ呪いで、敵は動けなくなる。
「この一撃で、凍てついてしまいなさい!」
 身動き出来ずにいる敵目掛け、氷結輪で敵を切り裂き、強烈な冷気で凍てつかせる。
 バニラのその攻撃がトドメとなり、敵は霧散して消滅した。


 侵食された大地も、ヒールによって元に戻り、片づけを終えたメンバー。
 一般人の避難も解除され、観光客や農園のスタッフが戻り、平穏な光景が広がる。
(「私の推理したことが本当に起こったのは驚きましたけど……被害が出る前に、手を打ててよかったです」)
 ひそかに安堵の息を吐く、綾奈。
「……ブルーベリー狩りを、楽しみましょう」
 綾奈が仲間たちに声を掛け、受付を済ませに向かう。
 受付を終えると、後は自由に散策してブルーベリーを摘み取ることが出来るようだ。
「ブルーベリー狩りですか。確かにこれはご家族連れが喜びそうですね。美雨、私達もブルーベリー狩りを体験させて頂きましょう」
 戦闘中は外していた眼鏡を掛け直し、美雨に話し掛けている、俊輝。
(「ブルーベリーか、ジャムとかの加工品なら食べた事あるけど、生のものを直接食べる機会が無かったから、楽しみだわ」)
(「ブルーベリーは私はジャム等で良く食べるけど、そのままの実を食べる機会ってあまりなかったわね。これを機に、沢山味わいたいわ」)
 リサとバニラが期待感を強め、早速摘み取り体験を始める。
「直接ブルーベリーを狩るのは初めてなので楽しいです」
「ブルーベリーの摘み取りって、私も初めてですから楽しみです」
 ミントの言葉に、玲奈が笑顔で頷く。
「折角なので、普段お世話になっている旅団の皆さんにお土産にでも……」
 鬼灯は真っ先に販売所へ向かい、お土産を選んでいた。
 店員にオススメの品を訊いたりし、ブルーベリーのジャムやアイス、ジュースも有ることを教わる。
 いくつか購入してから、農園のブルーベリーを楽しもうと戻る、鬼灯。

「ブルーベリーが沢山実っているわね、とても良い景色だわ」
 バニラは眺めを暫し堪能してから、摘み取りを始めた。
(「ブルーベリーが沢山食べられる、とても至福のひと時を楽しみたいですね」)
 アクアはブルーベリーを摘んで、頬張る。
 皮をむく必要も無く、種も入っていない為、簡単に食べられるブルーベリー。
 摘みたてのブルーベリーの、たっぷりとした甘みが、口の中に広がる。
「思っていた以上に甘いのですね、凄く美味しいです……」
「ブルーベリーって酸っぱいイメージがあったけど、熟した物はとても甘いのね」
 濃厚で舌触りは滑らか、甘みはイチゴぐらい有る。
 アクアとリサはその甘さに驚き、感想を言い合っている。
「甘くて、苺みたいね、とても美味しいわ」
 バニラが2人の会話に交ざり、熟した大きな実を見つけては摘み取り、3人とも甘い実を堪能しまくる。
「ブルーベリーを、生で食べる機会って……滅多に無いですよね」
 綾奈は珍しそうに、実を見つめていた。
 完熟した実は、そっと優しく持ち上げるだけで、簡単に摘み取ることが出来る。
「わぁ、大粒のブルーベリーですね。甘みが濃厚で美味しいですよ」
「ん、予想以上に甘くて、美味しいです……」
 玲奈と綾奈が、想像以上に甘みが強いことに、驚く。
「とても甘くて素敵な味わいですね」
 ミントも、ジューシーな味を堪能している。
「美雨、どれがいいですか? ……いや、それはまだ若いのでは? もっと色が濃いのが良いんじゃないですかね」
 俊輝は美雨と共に、ブルーベリー狩りを楽しんでいた。
「ああ、それは良さそうですよ……美味しいですか、良かった」
 美雨の反応を見て、自然と笑みが零れる、俊輝。
 すると、摘み取ったブルーベリーを、美雨が差し出して来た。
「ん? これは……私に? 有難う御座います。とても、おいしいですね」
 美雨の頭を優しく撫でながら礼を言い、美味しさを素直に伝える、俊輝。
「夏のこういった経験は、とても大事なものですね」
 俊輝はメンバーや美雨の楽しそうな様子を眺め、穏やかな気持ちになるのだった。

作者:芦原クロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年8月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。