●彷徨える死の黒剣
磨羯宮に秘された領域抜けて転移門の内側へと足を踏み入れればそこは見るからに奇怪な異次元通路。
ひとときたりと留まることなく変幻つづける色彩と、過剰に濃密なグラビティ・チェイン空間が魔空回廊を思わせるその内部からにじり寄る、異音。
――ズズッ……ズッ……ズズ……。
重く呪わしい何かを引き摺るかの様な音の正体は、1体の騎士であった。
エインヘリアルであったと思しき体躯の黒騎士である。
ふらふらと、正気おぼつかない様子で――否、黒きこの騎士からはもう、とうの昔に正気など失われて久しい……禍々しき大剣を腕から垂れ、休むこと無く彷徨い続ける『それ』が求めるものとは、侵入者の生命だ。
『……死ヲ、与エヨ……、死ヲ……、死ヲ……』
かつて輝かしき星霊甲冑だったであろうそれはすっかり異形と化し漆黒へと染まり――。
今やその騎士は『死者の泉』へと取り込まれ、自らの意思無きまま、ただ防衛の為だけに剣振るう『死』そのものと化していた。
『……死ヲ……我ハ――『門』……』
●新たなる力とともに
ケルベロス達による磨羯宮ブレイザブリクの探索は、新たなる領域発見へと結実した。
双魚宮「死者の泉」に繋がる転移門の存在についての報告がリューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)から届けられたのだ。
「多くの尽力あればこその大発見、本当に喜ばしいかぎりですわ」
にっこりと双眸細め、ネイ・クレプシドラ(琅刻のヘリオライダー・en0316)の口からもリューディガーの報告が伝えられた。
エインヘリアル勢力にとっては生命線にも等しいこの地下神殿へとケルベロスが到達する意味は極めて大きい。
故に侵入を阻もうとする護りもまた堅いのだと……ヘリオライダーの少女は、転移門内に存在する防衛機構『門』についてを語り始めた。
それは『死を与える現象』がそのまま実体化したかのような漆黒の甲冑に身を包むエインヘリアルで、ケルベロスに殺されようと蘇り続けて『門』の突破を阻む異形の守護者なのだという。
『門』内全域をカバーするこの防衛機構を完全停止させない限り、死者の泉に向かう事は不可能なのである。
なお、今回の黒騎士『門』との接敵は迷宮状に入り組んだ箇所と予知されている。
不意の遭遇とならぬよう充分な警戒が必要である一方、作戦次第ではケルベロス側からの待ち伏せ奇襲もまた可能なのである。
ヘリオライダーは判明している限りの敵能力を提示した後に、今回の戦場となる異空間が敵のみを大幅に強化する危地である点を強調した。
「魔空回廊に似たこの空間において、自らも『門』を名乗る黒騎士の戦闘力は何倍にも引き上げられておりケルベロスの皆さんといえども苦戦は必至……ですが代わりに『東京』からの力が皆さんを助けてくれる筈です。新型決戦装備――『ヘリオンデバイス』が遂に完成したのです!」
やや昂揚ぎみに語るネイの手にはグラディウスをベースに製造された『ヘリオン改造装置』が握られていた。
決戦都市と化した東京からのエネルギーによって実体化しケルベロスを強化してくれる『ヘリオンデバイス』によって、今後は、『全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)』時にも匹敵するパワーアップと各種追加効果をもって、常時、戦いに臨めるのである。
再生を繰り返す防衛機構『門』といえど決してその復活には限界があり、1チーム1殺を42回ほど繰り返せば双魚宮「死者の泉」への転移は可能になると予測されている。
ただし、この攻略は時間との勝負でもある。
現時点ではまだケルベロスの転移門到達はエインヘリアル陣営には全く気付かれてはいない。が、『門』の完全攻略があまりに長期に渡り過ぎた場合、何らかの手段でケルベロスが侵入済である事を察知され、ルートそれ自体が潰されてしまうかもしれないのだ。
「ですが焦りは禁物です。まずは確実な一殺を……。これは『死』へと立ち向かう皆さんの為に私達がお贈りできるせめてものお手伝いです――『ヘリオライトよ、光を』!」
黒揚羽のタイタニアの少女が紡いだ祈りはそのままコマンドワードとなり、ヘリオンからケルベロス達に向けて『ヘリオンデバイス』実体化の為の光線が照射され始めたのだった。
参加者 | |
---|---|
楡金・澄華(氷刃・e01056) |
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242) |
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524) |
風魔・遊鬼(鐵風鎖・e08021) |
ティユ・キューブ(虹星・e21021) |
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828) |
草薙・ひかり(往年の絶対女帝は輝きを失わず・e34295) |
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450) |
●
ヘリオライトよ、光を――と。
タイタニアの少女が祈るように口にしたコマンドワードを合図に、滞空するヘリオンから発射された光線が地上のケルベロス達を包み込む。
かくして、『決戦都市』東京からのパワー受けた常駐型決戦兵器『ヘリオンデバイス』は実体化を果たす。
それぞれのポジションに応じたデバイスを装着したケルベロス達は、磨羯宮ブレイザブリクの新領域、双魚宮「死者の泉」へと繋がる転移門内の回廊へと足を踏み入れていた。
「遂に噂の死者の泉に手がかかるね」
たとえ敵の重要拠点だろうと、未知の領域や長年の謎の一端がこの先にあると思えばティユ・キューブ(虹星・e21021)の胸は昂揚に高鳴り、いつも以上にヤル気充分である。
「死者の泉……古のヴァルキュリア達が見つけた、我らと関わりの深いと言われる場所か。我らは洗脳され良いように記憶を操られておったから今ではよく覚えておらぬが……一体、どんな場所じゃったのか……」
清浄たる光の翼と右眼に宿る地獄の青炎。その両方を、ふるり、幽かに震わせて。
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)は遠い遠い過去の記憶を懸命に紐解こうとするも、昏く得体の知れぬ靄が彼女を阻む。
「これまでになく厳重な守りだね、死者の泉とやら。エインヘリアルにとってそれだけ重要さも今までの比じゃない、ってことかな」
ケルベロスのデウスエクス殺しの力もってしても何十回と蘇るという防衛機構『門』だけでなく『門』の戦闘力をハネ上げる領域を構築するという念の入れように、草薙・ひかり(往年の絶対女帝は輝きを失わず・e34295)はむしろ、確実に敵を追い詰めつつある局面だとの確信を得ようとしていた。
一方で、辺りに満ちる『力』を確かにその肌へと感じながら……たとえここが魔空回廊そのものだったとしてももはや己はその恩恵を受けるデウスエクスでは無いのだという不思議をメロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)はメリュジーヌとして改めて噛み締める。
定命化に後悔は無い。むしろ、いっそ解放感に清々とすらしてくる心地である。
伝統的なタキシード姿の女奇術師はシルクハットを大仰な動作で外し、謎めいた笑顔で、まずは一礼。
「さて! 危険な場所で強敵と闘ってこなきゃならないんだから、先手は取れるなら取りたいよね。なので……ゴッドサイト・デバイス、力を貸してもらうよ」
スタイリッシュなモノクル型のデバイス越し、紅眸に映し出されたのは自らの周囲に集うケルベロスの仲間とそのサーヴァント達。
そして直線距離で数百メートル奥、敵性反応を示す1体の黒い鎧のエインヘリアル。
「これが『門』……みんな、あっちよ」
駆け出したメロゥの下半身は蛇身ではなく奇術師スタイルに合わせたヒト型であった。
彼女とは異なり、ごく標準的なデザインの強化ゴーグルを選んで索敵に務める源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)は逐一、敵位置の変化を仲間に伝えて情報共有を徹底する。
「色々と事態が動いているようだけど、まずは確実な『門』の攻略。そして、出来ればヘリオンデバイスの性能テストもだね」
「ならばマッピングの補助を兼ね、わらわのレスキュードローン・デバイスも飛ばすとしようぞ」
アデレードのドローンは通路の分岐先の偵察に活躍する事となる。
お蔭でメロゥの地図作成はいっそう捗り、これにティユによるアリアドネの糸を併せれば撤退に手こずるような事態はおよそ避けられるに違いない。
敵との距離が縮まるにつれてメロゥは声を潜めての筆談やハンドサインに切り替え、瑠璃もまた彼女に倣った。待ち伏せ奇襲を確実に成功させる為の細やかな配慮であった。
「新しい任務だな。やることは変わらんが……」
潜入ののち暗殺――いや当の黒騎士自身が『門』を自称しているのならこれは破壊活動の一環という事になるのだろうか。
一軍の上忍として類似の裏稼業を数々こなして来たという楡金・澄華(氷刃・e01056)。
アデレードや瑠璃と隠密気流を維持して来た彼女は釣り野伏せを仕掛ける策を提案した。
囮役は澄華本人だ。
しかし、数倍強化という地の利を得ている格上クラッシャー敵に向かって防具耐性の合致しない単騎が突出しても、チェイスアート・デバイスすら無しに敵を振り切り、事前察知されない距離まで離れた味方達の下へと戻れる保証は無い。
確かにヘリオンデバイスは旅団パワーによる強化をもたらしてくれているし重傷化しても能力低下は起きないが、それでも大ダメージを受けた際に戦闘不能へ陥る事までは防げず、大幅短縮されたとはいえ最大HPの全回復には約2時間を要する。
事前のポジション決めやグラビティ活性等の各段階からの入念な準備も無しに実行へ移しても、有力なクラッシャーの片方をむざむざ玉砕させるだけに終わる可能性が高いのだ。
「焦りは禁物じゃ。せめて到着する前にでも申し出ておってくれればのぉ……」
外見だけならば澄華よりも遥かに年若く小柄なアデレードがやんわりとたしなめる。
だがこの献策を下敷きにティユが新たな作戦を思いつく。
「せっかくのアームドアーム・デバイスだしいっそ回廊の地形そのものを僕たちに都合良く改造しちゃえないかなって一度は考えたんだけど、そこまでの大工事だとやっぱり一切音を漏らさないようにって無理筋だから諦めたんだよね。でも……」
「なるほど。皆様のための潜伏場所をあえて騒々しく作り上げる事で、澄華様ではなく私達ディフェンダーが囮役となるのでございますね。それは一石二鳥の妙案かと」
彼女が言わんとする処を即座に理解したテレサ・コール(黒白の双輪・e04242)は、その表情一つ変える事なく……ただ、静かに眼鏡を光らせながら頷いた。
ティユやテレサならば耐性含めて『門』のダメージを最大で4分の1にまで抑え込めるし、澄華の隠密の技や一撃の破壊力は待ち伏せ奇襲側でこそ活かせる筈である。
ちなみに。
周辺条件に左右される事なくあらゆる武器を取り回せるケルベロスの特性はここでも発揮され、当初テレサが懸念したようなデバイスの駆動音等だけならば探索の妨げを引き起こすような事態が発生する事は無かったという。
●
(「ところで……これって予知の範疇を外れる建造物破壊に抵触しないかな?」)
(「!!」)
(「し、進撃とかはしないから! 隠れるだけだから! ギリセーフだよ、たぶん!!」)
作業重機と化した巨大な機械腕達が力強く躍り、みるみると、回廊の死角箇所が穿たれて新たな潜伏の為の小空間が作りだされてゆく。
思いがけず戦闘前から既にヘリオンデバイスの力を実感する事となったテレサだったが、その表情はやっぱりアンニュイ&クールなまま。
ティユ達を残して身を隠した一行は、隠密気流に守られながら攻撃開始の刻を待つ。
――ズズッ……ズッ……。
近付いてくる異音は、長大な死の剣引き摺る、黒騎士到来の警鐘。
むろんメロゥと瑠璃のデバイスはそれよりも先んじて敵の接近を感知しており、迎撃態勢は既に万全。
『……死ヲ、与エヨ……』
四つ辻の角をゆっくりと曲がり終えて。
その先にティユとテレサの姿を認めた途端に黒騎士の兜の奥がギラリと光る。
闇深き漆黒の瘴気がにわかに漣立ち、まるで外套を思わせる動きで黒騎士がそれを翻せば……巨腕のレプリカントふたりの体は真っ向その衝撃を受けて薙ぎ払われてしまう。
しかし。
眼前の侵入者への殺意に気を取られすっかりガラ空きになった黒騎士の延髄に突き刺さる――『絶対女帝』のドロップキック!
「ベビーフェイスだって、ゴング前の奇襲はお手の物なのよっ!」
全世界お馴染みのゼブラストライプに包まれた魅惑のボディから炸裂した跳躍技は、ラフファイトと表現するにはあまりにも善悪を超えた華麗さを備えていた。
そんな、ひかりの不意討ちキックを皮切りに。
共に待ち伏せしていたケルベロス達による奇襲からの一斉攻撃は始まった。
「ふふふ、悪が栄える時、正義もまた新たな力に目覚めるは、必定! 新たな力を得た我が癒やしの前ではそなたらの悪意に満ちた攻撃など大海に投じられた小石ほど無力と思い知るが良いわ!」
正義のヒール役(メディックの方です、ややこしい)アデレードの高らかなる口上と渾身のメタリックバーストは『死』の気配に満ちた回廊を燦然と染め上げる。
「ならば、開戦といこうか」
輝きに包まれながら、まるでショウタイムの開演を告げるような口ぶりでメロゥが翳したのは一本のステッキ。
グラビティの媒体となる武器や呪具というよりはまるで舞台道具のようなチープさで……だがメリュジーヌの麗しき奇術師がくるりと一振りすれば、そこからドドン。
賑やかに飛び出した轟竜砲は、迫る『死』の足取りさえ止める大マジックだ。
「『凍雲』、仕事だ……!」
蒼と黒の喰霊二刀を抜き放った澄華は、雪の刃紋が仄蒼く輝く大太刀に向けて叫ぶ。
初太刀から全開、出し惜しみ無しの奥義『氷空』の一閃に、瑠璃の蹴りが重ねられる。
あっさりと立ち上がったティユは綺羅星撒きながら斉天の一打振り下ろし、黒白一対の輪状アームドフォートを構えたテレサもまた、合流果たしたライドキャリバー・テレーゼとの同時斉射で奇襲にと加わる。
「攻撃に専念させていただきます。短期決戦あるのみです」
超攻撃的なこの防御機構に対し、長期戦を仕掛けるのは得策でないと風魔・遊鬼(鐵風鎖・e08021)は考える。
戦闘開始まではひたすら同行者らの隠密気流内で影のごとく潜伏に徹してきた彼だったが、キュアどころかヒール手段さえ持たない敵との交戦を効率化するにあたり、ジャマーの果たすべき役割は大きくそして多い。
仲間との連携が噛み合わず奇襲にはやや出遅れてしまったが、皮肉にも逆に、それが功を奏する事となる。
回避率が低下しつつあっる黒騎士の脛当てめがけ、命中率アップの光に包まれた遊鬼が繰り出したスターゲイザーの足払いは悠々と命中。
あっさりと敵の回避率を下げられるだけ下げ切ってしまえたのである。
しかし、依然、黒き大剣の破壊力は健在。
中衛位置にあって前のめりに戦う螺旋忍者を容赦なく襲う後の先は、冥府の如き冷気を纏う剣閃。それに反応し得たティユがすかさず間へと割って入る。
「防御のほうは、まかせて」
フィルムスーツの瞬時硬化によってダメージの半ばを受け流してなおジュデッカの凍気はレプリカントを貫き、底冷えする程の痛みをその片腕へと走らせる。
ぷわりと浮かんだ虹のしゃぼん玉は、ぺルルの羽ばたきが生んだ属性インストール。
ティユの凍結部位へと注がれた癒しは、きらきらぱちん、儚き煌めきとともに冥府の氷を溶かしてゆく。
『死ヲ……、死ヲ……』
タナトスの剣振るう『門』が放つ剣風は重き死を帯びた鋭さで澄華の首を襲う。
だが、その身代わりに斬られていたのはテレーゼの車体であった。
盾役の三番手としての役割を全うした円状ライドキャリバーは、直後巻き起こった再攻撃すらも我が身に引き受けて霧散する。
手厚く回復を振り撒くアデレードによって戦線は危なげなく維持され、3種のBS付与を終えた遊鬼が絶空斬を見舞わせた頃には、大勢はほぼケルベロス勝利へと決しようとしていた。
「奏でよう――タナトスの剣越えて、その先へと進む為に」
ティユの周囲に浮かぶ星々の瞬きが鍵盤となり『星鍵一奏(トゥインクルトゥインクル)』と底抜けに明るく希望を奏でてゆく。
うまれたての流星たちは『門』の黒き胸を次々貫いて尚も止まらない。
「力を借りるよ!! グリフォン、その武威を示せ!!」
ダメ押しとばかりに瑠璃は伝説の霊獣グリフォンを召喚する。
太古からの血の盟約によって結ばれた縁に応えた鷲獅子が一羽撃きすれば、只それだけで、激しき風圧と神々しき霊圧が『死』を齎す黒剣の刃先を砕き散らせる。
続けてメロゥが披露したのはカードマジック。
ぱちんと指鳴らせばとっておきの切り札(ジョーカー)が右肩から下をばっさり落とす、昇り札(ライジングカード)へ。鮮血のかわり、噴き出すは漆黒。
にたり、嗤った道化は神秘も呪も全てをタネと仕掛けに摩り替える。
「さぁさぁご注目あれ、今日も楽しい手品の時間だよ! お代は見てのお帰りだけれど――見たのなら、無事には帰れないかもね」
「デバイスから強き眼鏡の波動を感じます……」
「え、機械腕型なのに?」
すかさず澄華から冷静なツッコミが入ったがテレサは大真面目である。
流れ込む旅団パワーは数字以上の戦闘力上昇を己にもたらしてくれているとの手応えが、機人メイドには有る。
合体技の為にジャイロフラフ―プ搭載の残霊として駆けつけた仲間はレプリカント旅団の方だったけど。
「「切り裂け!! デウスエクリプス!!」」
2機のレプリカントが繰り出す『斬環の末妹』モードの一撃は、まさに怒涛の蹂躙。
もはや破損箇所まみれの漆黒の鎧の傷口ばかりを的確に追尾し続ける『神喰の双円刀』からは逃れるすべなど無い。
そしてこの一戦の最後を締めくくったのは……。
「うん、理解る。さっきからずっとM.P.W.Cの皆の滾るような闘魂やファンの皆からの熱い声援が流れ込んで来て……まるでリングでライト浴びてるみたいに燃えてくる!!」
昂ぶるにまかせ、脈打つままに。ひかりの右腕から放たれた必殺ラリアット、
『“世界を制する剛腕”アテナ・パニッシャー』であった。
『……死……、……、…………『門』……』
「アンタがたとえ冥府の門だろうが死を与える現象そのものだろうが――天から降りた女神の『断罪の斧』に、断ち切れないもの、打ち砕けないものなんて、存在しないよっ!!」
●
勝利は勝利として喜びたいが、『門』攻略はまだまだこの先も続けられてゆく。
戦闘や方針についての分析結果は余さず後続へ伝えてゆかねばと澄華は考える。
ひかりもまた同様の思いを抱いていたが彼女が見据えるのは「死者の泉」よりも更に先。その眼は既に最終決戦をも視野に入れ始めている……。
「でもまずは一歩、しっかりと刻ませてもらったわ」
――それに意味はないと知りつつも。
持ち前の旺盛すぎる知識欲がうずうずと疼いて、今いる回廊の少しでも先を覗き込もうと頑張るティユの肩を、瑠璃が優しく引き止めた。
「すでに次の『門』が出現しているようだ。急いで撤退した方がいい」
「早っ。 ……もうちょっとだけ先の方も覗いておきたかったなー」
がっかりと肩を落としつつも、宙色の瞳の怜悧はあっさりと撤退を受け入れ、従った。
(「転移が可能になってからが、本番だろうからね」)
彼女が臨むものもまた『門』の先。
けれどさしあたって今は細い糸を辿り、デバイス支える頼もしき『戦友』、東京の街へと急ぐばかりであった。
作者:銀條彦 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年8月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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