『双魚の門は思考する。侵入者は通さぬと』
それは巨大な通路だった。
人も、デウスエクスも、生ける者の如何なる気配も存在しない、魔空回廊に似た空間。
その道の中央に、黒き騎士を思わせる『それ』はいた。
『門は泉を守る。侵入者は排除する』
騎士はたった一人で、同じ言葉を繰り返す。
一丈に及ぶ巨躯に、禍々しい気を帯びた剣を握り、虚ろな足取りで道を彷徨いながら。
『門は思考する』『侵入者は通さぬ』『門は泉を守る』『侵入者は排除する』
『思考する』『泉を守る』『排除する』
『門は』『門は』『門は』『門は』『門は』『門は』
機械的な声の残響が、虚ろに響き続ける。
騎士がいるのは通り道。磨羯宮ブレイザブリクと、地上ではないどこかを繋ぐ道だ。
抜けた先にあるのは死と静寂に満ちた、冥府の海へと続く場所。
その名を――双魚宮『死者の泉』。
第九王子サフィーロ撃破に伴い、ケルベロスが制圧下に置いた磨羯宮ブレイザブリク。
その探索を進めた事によって、双魚宮『死者の泉』へと繋がる転移門が発見された事を、ムッカ・フェローチェはケルベロス達に告げた。
「死者の泉はエインヘリアル達の生命線であり、死神達の最優先攻略目標。一刻も早い掌握が望まれますが……どうやら、そう簡単に事は進まないようです」
調査を進めた結果、死者の泉へと繋がる通路には『門』と呼ばれる存在がおり、侵入者を排除すべく立ち塞がっている事が判明したという。
泉の防御機構である『門』は、死者の泉の門番であったエインヘリアルを取り込み、自身の一部に組み込んで通路を守らせているようだ。そしてこの『門』――門番たる黒き騎士を撃破する以外に、死者の泉へ辿り着く方法は見つかっていない。
「皆さんへの依頼はただひとつ。『門』を撃破すること、それだけです」
ただし作戦遂行にあたり、注意点が2つあるとムッカは言う。
ひとつは『門』の戦闘力だ。
戦場となる通路――魔空回廊に似た空間の影響によって、敵の力は大幅に上がっている。戦う相手が単体でも、苦戦は免れないだろう。万全を期して戦いに臨むようにと、ムッカは繰り返し告げた。
もうひとつは『門』の持つ特性だ。
『門』は死者の泉の防御機構そのものであり、たとえ一度倒しても時間を置くと次の個体が現れてしまう。とはいえ湧き出る個体は無限ではなく、回数を重ねれば防御機構はその力を喪失し、死者の泉を探索する事が可能となる。
「つまりこの依頼は、死神の拠点へ至る道程の一歩。どうか確実な遂行をお願いします」
『門』を1体倒せば、この依頼は成功となる。通路に留まればじきに新たな個体が現れるため、理由がない限りは留まるべきではないだろう。この作戦は長丁場が予想されるので、決して無理だけはしないように――そう言ってムッカは説明を終えた。
「泉に直通するルートが開いたら、エインヘリアル勢力との決戦の火蓋が切って落とされるでしょう。皆さんの健闘を祈ります」
そうしてムッカは、高らかにコマンドワードを謳い上げる。
これより戦地に赴くケルベロス達が、無事に帰還するよう祈りを込めながら。
「ゴッドスピード、ケルベロス。――ヘリオンデバイス起動!」
参加者 | |
---|---|
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414) |
アンゼリカ・アーベントロート(黄金騎使・e09974) |
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983) |
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762) |
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615) |
狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604) |
ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434) |
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450) |
●一
磨羯宮ブレイザブリクで発見された、『死者の泉』へと続く転移門。
その道を閉ざす双魚宮の防御機構、『門』を名乗る黒騎士を撃破するため、ケルベロス達は磨羯宮の隠し領域を進んでいく。
彼らが手にした、新たなる力と共に――。
「ヘリオンデバイス……こいつは凄いな、鳥にでもなった気分だぜ」
空中を軽々と舞い飛びながら、水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)は口笛を吹いた。
翼を持たない鬼人に飛翔の力を付与しているのは、身に着けたジェットパック・デバイスの能力によるもの。このデバイスは彼のみならず、他のデバイス装着者達をもビームの力で牽引し、空飛ぶ力を与えてくれるのだ。
「飛行高度は低めに調整……と。よし、これで隊列も大丈夫だな」
「うん、いい感じだ。高い所を『飛行中』だと必ず後衛になるんだっけ?」
最後尾を飛ぶアンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)の問いに、鬼人は頷いた。
「みたいだな。俺の場合だと『後衛かつ火力二倍』か……色々工夫できそうだ」
「研究の余地が沢山ありそうだよね。まあ、そっちは追々かな」
牽引ビームで飛行しながら応えるアンセルム。その前方では白銀のバックパック・アームを背負って飛ぶフローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)の姿があった。
「調整は万全です。正真正銘のパワーアップ、という感じですね」
アームドアーム・デバイス――巨大な二本の腕を備えたデバイスは、主であるフローネの体の一部として、そのタフネスを大幅に向上させている。門との死闘においても、頼もしい相棒になってくれる事だろう。
(「泉へのルート確保は急務。負けられません」)
微かに逸る気持ちを鎮めながら、フローネは考える。
死者の泉を探る事は、死神達との対話の道を残すためにも無駄にはなるまい。与えられた時間は有限、だからこそ失敗は許されないと。
「その為にも……デバイスの力、惜しまず使わせて貰います」
「この『靴』も素敵。僕のマジックにも使えるかもね」
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)が、ふふっと微笑を浮かべた。
定命化したメリュジーヌの少女。タキシードにシルクハットという出で立ちの巫術士は、二本の足に装着したチェイスアート・デバイスの使い心地を確かめるように、宮殿の壁や床を縦横無尽に滑っている。
「追跡逃走を容易にする力、か。『門』が逃げ出す事はあり得ないだろうから……逃走用の出番がない事を祈りたいね」
初陣の高揚を噛み締め、メロゥは速度を一層上げた。
そうして彼女達の前方に、磨羯宮と双魚宮を繋ぐ異空間が見えた直後、デバイスで周囲を索敵していたアンゼリカ・アーベントロート(黄金騎使・e09974)が警告を発した。
「気をつけろ。進路方向に敵がいる」
強化ゴーグル型デバイス『ゴッドサイト・デバイス』が、アンゼリカに示す。
異空間の奥、転移門の内側。微動だにせず立ちはだかる一つの影を。
「そっちの反応はどうだ、ローゼス?」
「間違いありません。……『門』です」
ゴッドサイトの示した情報を確認すると、ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)は更に加速。一本道の異空間を風のごとく疾駆する。
迷いはない。阻む相手が何者であれ、セントールの蹄で蹂躙するのみだ。そうして駆けた先、通路の中央には――黒き鎧の騎士が、一体。
『双魚の門は思考する。何者も通さぬと』
「自我さえ失った門番。ただ斬るだけの存在……」
虚ろな声を発し続ける『門』に、ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)は刃を突きつける。
理解し合える相手ではない。為すべき事は一つだけだ。
「ご退場願いましょう。今、この場で」
『門は通さぬ。排除する』
眼前の番犬達を『門』もまた敵だと認識したらしい。誰何の言を投げる事もなく抜剣する騎士に、狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604)は狂笑をもって応える。
「双魚でも何でもいいけどよ。――魚なら魚らしく、水底に沈んでろ」
地獄の番犬と冥界の門。
戦いの火蓋が、いま切られた。
●二
熱気と冷気の奔流が、異空間に渦巻く。
『排除……滅殺……殲滅……』
戦闘開始と同時、ケルベロスを襲ったのは門が放つ冥界の呼び声だった。
津波のごとく押し寄せる、嘆きの念。質量を伴って後衛へと迫る怨嗟の声を、フローネが正面から受け止める。
「アメジスト・シールド、最大展開!!」
フローネはビームシールドの出力を上昇させ、前衛の守りを構築した。白銀の巨腕が増強する生命力は堅固な城塞そのもので、門の攻撃にも全く力負けしない。
「さあデバイスの初陣だ。出し惜しみ無しで行くよ」
一方、アンセルムは攻性植物の光を放ち、フローネが受けた治癒阻害の呪いを消去した。レスキュードローン・デバイスがもたらす治癒の力は、まさに戦争時と同等の強力なもの。強大な敵に抗しうる力だった。
「敵の攻撃は食い止めます。アタッカーの皆さんは攻撃を!」
「承知した。行くぞヘリオンデバイス、託された想いと共に!」
盾となったフローネに頷きを返すと、アンゼリカはエアシューズで突撃をかける。
攻撃を察知した門は剣で防御態勢を取るが、彼女のゴーグル型デバイスは如何なる動きも見逃さず、如何なる回避も許さない。流星の蹴りは門のガードを容易く突き破り、直撃した爪先が門の脚を砕く。
それは正にゴッドサイト――『神の視界』に恥じない能力だ。
「敵の動きがいつも以上に見えるぞ。これならば、いける!」
確かな手応えに、拳を握るアンゼリカ。
続いた鬼人が抜刀し、態勢を崩した門へと肉薄する。
「律儀に門番ご苦労様だぜ。終わりにしてやる!」
絶空斬の一閃が放たれた。斬撃は速く、鋭く、そして重い。
足止めの傷口を切り開かれた門は、しかし何ら怯む気配を見せず、凶暴な剣をどこまでも淡々と振るってくる。死者の泉を守る、完全にして完璧なる死兵として。
『排除……排除……』
「守りに殉じた献身の戦士か、あるいは絡繰仕掛けのシステムか……もはや窺い知れぬが、その姿を貴様が取るのならば宣言しよう」
ローゼスは己が蹄で地面を踏みしめると、真正面から門を凝視する。
あの黒き騎士に、自分が為す事は只一つ。すなわち正面からの突撃による蹂躙である。
「我らはケルベロス、その一人たるこの身の名はローゼス! いざ、推して参る!」
『Giino deos』の踏み込みが地を揺るがし、重刃と化して門を直撃した。
激震。衝撃。金属が砕ける鈍い音。脚甲に亀裂が生じ、門の姿勢が揺らぎ出す。
「この力が仲間の支えとなるなら……存分に振るおう。異形の力を!」
ガートルードは左腕の混沌水にグラビティを注ぎ、治癒を促進する濃霧へと変える。敵が回復を阻害するなら、癒す力を底上げするまで。一度付与が完了すれば、ブレイクの手段を持たない門に対抗策はない。
「支援ありがとう。これはちょっと負ける気がしないね」
霧を浴びたアンセルムが癒す力を向上させる一方、メロゥはパズル仕込みのシルクハットから光の蝶を呼び出した。ヒーリングパピヨン――第六感を呼び覚ます蝶だ。
「さあご覧あれ。楽しいショーをお見せするよ」
羽ばたく蝶はジグを包み、集中力を研ぎ澄ませた。ジグは昂る心を余さずガントレットに注ぎ込むと、正面から門を狙い定める。
外す事はない。ジグの第六感は、それを事実として認識していた。
「守るべき物を守り通す……その点だけで言えば、てめぇは騎士なんだろうさ」
だが認めはしねぇ――地獄炎を迸らせ、ジグは言葉を投げる。
何故ならば、彼にとってデウスエクスは敵。
一切の例外なく、滅すべき存在に他ならないのだから。
「骨の髄まで灰にして大地に帰してやる。甘んじて死ね!」
鎧にめり込むブレイズクラッシュの一撃が、炎となって門を包み込んだ。
●三
災厄そのものと化して剣を振るう門。真正面から立ち向かうケルベロス。
ヘリオンデバイスの輝きは、いまだ微塵も色褪せない。
「盾よ、傷を癒して守りとなれ」
アンセルムがマインドリングを掲げると、光の盾がガートルードの護りを固め始めた。
既に防御は十分に厚い。回復はメディック一人で足りるだろう。ガートルードもまた傷を癒すとマインドリングを装着、仲間の攻撃に加勢する。
「そこをどけっ!」
『門は通さぬ――』
振り下ろされたマインドソードが命中し、門を切り裂いた。
幾重にも積み重なった足止め、そして重圧。回避と命中を喪失していく門に、ローゼスはゲシュタルトグレイブの矛先を向けた。
敵の火力は未だ脅威。しかしデバイスがもたらす回復と守りの力は、それを上回る。
そして――これから自分が放つ、正確無比な『攻め』の力も。
「うむ、動きがよく見える。我が槍と砲にて、制させて貰うぞ!」
振り下ろされる剣を捌き、ローゼスが稲妻突きの刺突を差し込む。正確無比な一撃は麻痺の力を帯びて直撃し、門の体を蝕み始めた。
「動きが鈍いな? 無理もない、これほど間隙に差し込まれればそうもなろう!」
回避を封じたなら、次に制するべきは機先。一分の隙も無く蹂躙撃破するのみだ。
かたや増えゆく傷を癒さんと、命啜る刃を構える門。
だがその刹那であった。
「そこだ!」
アンゼリカのフロストレーザーが、門の頭部に直撃する。
バキバキと音を立てて鎧が凍りつくのも構わず、門が命啜る刃を振り下ろした。メロゥを狙った一撃は、しかし即座にフローネに阻まれる。
「あなたの守るべき道、通させて貰います」
刃をアームで防いだフローネは、翠石色のチェーンソー剣で斬り返すと、自身のライフルが凍結させた傷口を切り開く。多少の攻撃などものともしない。白銀のアームドデバイスはいまだ圧倒的な偉容をもって味方を守る盾であり続けていた。
「デバイスの力……どれも凄まじいな」
「本当にね。僕もちょっと驚いてるよ」
小さく声を震わせるアンゼリカに、メロゥは口笛を吹いて答えた。装着した靴型デバイスは初陣の彼女にも一切惜しみなく、その力を与えてくれているのだ。ならば、それに応えるのは勝負師の本懐というもの。
「さあ。慰撫を司るメリュジーヌの本領発揮といくよ」
ハープが奏でる「碧落の冒険家」の調べが前衛を包んだ。
鬼人は未来を拓く力を地獄にくべ、燃える腕で斬霊刀を構える。対する門は、どこまでも機械的な動きで剣を突きつけた。
『通さぬ。通さぬ』
「やれやれ。分かっちゃいたが、まるで会話が成立しねぇな」
鬼人の浮かべる苦笑が、修羅のそれへと一変する。
――いいぜ。なら力ずくで通るまでだ。
炎が弾けた刹那、斬霊斬が放たれた。メロゥの慰撫とデバイスの力を乗せた鬼人の刀は、想像を絶する威力を帯びて門の鎧に傷を刻み、その身を毒で冒していく。そこへ更なる急襲をかけるのは、エアシューズで滑走するジグだ。
「ここで死ね、魚ァ!!」
渾身の流星蹴りがめり込んだ。今までとは異なる確かな手応え。そうして更に刃を交えること数分、門の鎧から真っ黒な『何か』が漏れ始めた。致命傷である事は疑いようもない。敵が限界を迎えつつある事を、全てのケルベロスが悟った。
『門……も、ん……』
「よし、最後のひと頑張りだ」
アンセルムは攻性植物の光を放ち、冥界の呼び声を浴びた前衛を癒していった。
回復は十分だ。この1分、誰も倒れる事はない。
「皆。準備はいいかな?」
「お任せを。我が『眼』と砲で、敵を封じてみせましょう」
「こちらもです。必ず、全員で帰りましょう!」
ローゼスとフローネ、二人のアームドフォートとライフルが一斉攻撃を開始した。主砲の斉射とエネルギー光弾が門を縫い留める。続けざま、フローネと息を合わせたメロゥが靴型デバイスで加速。紙吹雪のごとく舞い散るカードで門を包んだ。
「さぁさぁご注目あれ、今日も楽しい手品の時間だよ」
宙を舞うカードが一枚、門の目を捉える。
勝負師の少女は、その瞬間を見逃さない。
「お代は見てのお帰りだけれど――見たのなら、無事には帰れないかもね」
軽快なスナップが、その一枚を消した。
突然、門の動きが不自然に止まり、装甲が弾け飛ぶ。鎧の中からひらりと舞い落ちるは、目に留まったジョーカーの一枚。描かれた道化の笑みから目を背けるように、剣気の解放で傷を塞ごうとした門が、麻痺で膝をつく。
「お前にはもう……明日はない! ここまでだ!!」
ガートルードが達人の構えでルーンアックスを握り、門の頭めがけて振り下ろした。
鈍い音を立てて凍る兜。ジグは原型を失った鎧を狙い定め、心に込めた恨みを咆哮と共に『痛影模写』を解き放つ。死んでも通さぬならば、何度殺してでも通るまでだ。
「番犬様の通る道は、いつでも一方通行なんでなぁ!」
怨念が分身となって受肉し、本体のジグと共に三位一体の連続攻撃で門を吹き飛ばした。そうして門が、最後の力で剣を構えた刹那、
「……刀の極意。その名、無拍子」
一切の無駄を削ぎ落した鬼人の一振りが、必殺の一撃を撃ち込んだ。
鞘に納まる刀。一瞬の間の後、門の両腕がごろりと転がり落ちる。悲鳴一つあげず、なお立ち上がろうとする黒騎士を、アンゼリカは静かに見下ろしていた。その両手に純白の光を凝縮させながら。
「ケルベロスは負けない。今までもこれからも」
ただ静かに、語り掛けるように、黄金騎使の少女は掌を門へと向ける。
人々と共にある戦い。人々に託された想い。
その使命を果たし、平和を勝ち取るために。
「大丈夫だ、私は負けない。――そうさ、『約束』だ!」
『門は……阻、止……』
両手から迸るグラビティの濁流が、直撃を浴びた門を光で塗り潰す。
そうして防御機構の傀儡たる黒騎士は塵と消え、後には何一つ残る事はなかった。
●四
静寂が生まれて程なく、異空間に不穏な気が満ち始めた。
「もしかして、これ……」
「うん。離脱した方が良さそうだね」
次第に濃さを増す瘴気。鳥肌を立てるガートルードに、アンセルムは頷いた。
――新たな門が、現れようとしている。
メロゥはデバイスのビームで全員をつなぐと、退却準備を完了する。無用な長居はすべきではない。戦闘不能者こそゼロだが、ここからの連戦は流石にリスクが大きかった。
「お代わりはまた今度、ね」
「ああ。私達を待つ人々の元へ帰ろう」
アンゼリカが撤収完了の合図を送ると同時に、デバイスを起動。みるみる遠ざかって行く戦場を背に、メロゥと仲間達は異空間へ別れを告げた。
「ままならねぇもんだ。囚われて、守らされるなんてな」
鬼人は門の過去に想像を巡らせた。自我を失い使役された騎士も、これで安らかに眠れると良いが――そうして彼は、婚約者から貰ったロザリオに祈りを捧げる。
(「……終わったよ」)
死者の泉へと続く防御機構は未だ壊れず。
地獄の番犬と冥界の門、その緒戦はこうして幕を下ろすのだった。
作者:坂本ピエロギ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年8月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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