ミッション破壊作戦~希望高らかに響かせよう

作者:ほむらもやし

●暑中休みなし
「今日から8月だね。田んぼの緑も濃くふさふさになってきたし、蝉もやかましく鳴いている。急に暑くなってきたけれど、皆は無事にやっているかな?」
 ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は、軽く頭を下げると、今月もミッション破壊作戦への参加を呼びかける。
「これから向かうのは、エインヘリアルのミッション地域だ。行き先は選択可能な地域の中から一箇所、参加したメンバーで相談して決めてほしい。立ちはだかる強敵の戦闘傾向はミッションのデータが参考になる」
 回廊攻撃は高空からの降下作戦を実施する。
 ヘリオンが通常飛ぶよりも高い高度からの降下だ。
 攻撃を行ったケルベロスは、自力でミッション地域中枢部から撤退しなければならない。
 過去には危険とされたミッション破壊作戦だが、現在、戦術はある程度確立されている。
 しかし経験者にとっては常識であることが、初心者にはわからず、そこが盲点になる可能性がある。
 だから同じ説明を何度も繰り返している。
「グラディウスは降下攻撃の時に浮遊する防護バリアに刃を触れさせるだけで能力を発揮する。手放しさえしなければ、叩き付けても突いても、切りつけても使い方は自分流で大丈夫だ」
 グラディウスは一度使用すると蓄えたグラビティ・チェインを放出して主要な機能を失うが、1ヶ月間くらいグラビティ・チェインを吸収させれば再使用できる。
 紛失の可能性のある使い方はしない。
 使用済みのグラディウスを持ち帰るのも任務だ。
「ジグラット・ウォー以降に状況は劇的に変わったけれど、限られた数のグラディウスをやりくりしながら、多くの魔空回廊を破壊できたのは、皆がグラディウスを大切に扱ったおかげだ」
 山、島嶼、市街地、城址……地形や状況は、向かうミッション地域によって異なる。
 山中を素早く移動するのに適切な作戦が、掘割のある城址で同様に役立つとは限らない。
 地形に応じた行動を心がけるだけでも、メリットは重なるだろう。
 >あと忘れてはいけないのは、ミッション破壊作戦で攻撃を掛けるミッション地域中枢部は、通常の手段では立入ることが出来ない場所。
 戦闘や撤退に時間をかけ過ぎれば、孤立無援のまま全滅することもあり得る。
「見落としがちだけど、上空から叫びながらグラディウスを叩きつける――という攻撃は、相当に目立つからね」
 そしてこの叫びは『魂の叫び』と俗称され、攻撃の威力アップに一役買っている。
 グラディウス行使の余波である爆炎や雷光は、強力なダメージをばらまいて敵軍を大混乱に陥れる。
 発生する爆煙(スモーク)によって、敵は視界を阻まれ、連携など組織的行動が出来ない状況である。
「スモークが有効に働いている時間が撤退時間の目安だ。攻撃を終えてからスモークが効果を発揮する時間は一定ではないと言われるけど数十分程度という感じだ」
 敵中枢に大胆な攻撃を掛けて、一度も戦わずに逃走できるほど甘くはない。
 ミッション破壊作戦では地域に設置された強襲型魔空回廊の破壊を目指し、魔空回廊の破壊はその後のミッション地域の開放という結果に繋がって行く。
「エインヘリアル勢力の手に落ちた地域はまだ多い。ひとつでも多く解放に繋げられるように、そしていつかくる決戦の時のためにも頑張って行こう!」
 困難な時代であるからこそ、続けなければならない仕事がある。
 仕事で大切なものは、勇気と想像力、そして重要と信じるものに情熱を注ぐことだ。


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
燈家・陽葉(光響射て・e02459)
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)
バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)
風魔・遊鬼(鐵風鎖・e08021)
岡崎・真幸(花想鳥・e30330)
朧・遊鬼(火車・e36891)
帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)

■リプレイ

●高知城上空
「殺して翼を集めるなんて許せない」
 翼のある種族に執着する悪趣味さに集ったケルベロスの誰もが眉をしかめていた。
 目標、魔空回廊の設置された高知城上空への到着を告げるサインと共に照明が非常灯に切り替わる。
「出撃の時間だね」
 燈家・陽葉(光響射て・e02459)は滑り止めの施された床を強く踏み込むと夜明けを迎えたばかりの空に飛び出した。灰色に見える高知市街の中心部に、青黒い緑で囲われたような高知城の城郭、そこに設置された魔空回廊が在った。
 過去に何度も経験しているとは言え、高空から降下してグラディウスを行使するのに何の恐怖もないかと言い切れば嘘になるだろう。しかしそれを意識させないほどに、敵への怒りの方が勝っている。
「翼を狩る、なんて……有翼種族の人にとって迷惑が過ぎるよ」
 翼でなければ良いというわけでもない。それが指や耳や毛髪であっても、意志を持つ存在を殺害し、身体の部位を集めること自体が悪趣味で許せない。
 頬を打つ空気の塊が夏とは思えないほどに冷たい。そしてぼんやりとしていた高知城の輪郭の詳細が、落下の加速が増すのに比例してハッキリと見えて来る。
「僕自身は地球人で、翼は無いけど……お嫁さんが有翼種族のオラトリオだから……」
 個人的な感情や強い執着心は時に戦況を見誤らせるが、グラディウスを行使するにあたっては追い風となる。
「――うん、安全の為にもこのエインヘリアル達には滅んでもらおう!」
 今や魔空回廊を防護するバリアは目の前に立ち塞がる巨大な壁だ。
「……というわけで………滅べー!」
 魂の叫びと共にグラディウスを突きつけた瞬間、風景が閃光に包まれる。
 数秒の後に巨大な火球を起点に凄まじい爆発が湧き起こった。
 太陽を直視するようなまぶしさに、バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)は反射的に瞼を閉じた。瞼を開けた時にはマッシュルームを上から見たような爆炎が、その熱によって巻き起こした上昇気流で周囲の物を空中に巻き上げて来る様子が見えた。
「……っ?!」
 根こそぎ巻き上げられた松の木がバジルの目の前で雷光に貫かれて灰と散った。
 視線を遠くに巡らせれば、衝撃波に薙ぎ倒された市街地に火の手が上がる様子が見えた。
「翼を奪うエインヘリアルですか。翼を持つ者にとって、翼は自分が自由に動き回る為に必要なもの」
 翼を持っていても街中で飛べば大迷惑が掛かるため、飛ぶには時と場所を選ばざるを得ないが、翼を持つ種族にとって翼は大切な身体の一部だ。
「翼を奪うという事は、僕達人間にとっては手足を奪われるのも同然です」
 爆炎によって巻き上げられた熱気を全身に感じながら急速に迫って来るバリアを睨み据える。
「そんな卑劣なエインヘリアルは許せませんよ」
 バジルは満身の力を込めてグラディウスを振り上げ、バリアを目掛けて叩き付ける。
 グラディウスに蓄えられた力を出し切るまでの短い時間、言葉にしきれなかった思い出がイメージとなって脳裏を巡る。瞬間、平滑に見えたバリアの表面に蜘蛛の巣を張ったような筋が広がった。
「こいつら許せないのだ」
 攻撃態勢に入っていた、平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)は、その異変を目にして勢いづいた。
「高知城は本丸の建物が全部残ってる唯一のお城なのに……!」
 目に見える変化が破壊の成功を意味しないことは理解していたが、ダメージを与えたことは分かる。
「そんな大事な所を占拠するとか、本当、許し難しなのだ!」
 お盆に入っても故郷に帰れない者たちの気持ちと、和の抱く怒りのイメージが重なる。
「とっとと出て行くのだー!」
 閃光が広がる。続いてこの日3度目の爆発が無人の高知市街を揺さぶる。
 その破壊の力は、敵だけでなく周囲にあらゆるものに及ぶ破壊の力が映る。
 風魔・遊鬼(鐵風鎖・e08021)は急速に距離が近づいて来るバリアの、そこに刻まれた亀裂の一点にグラディウスの先端を向ける。
「大切な人がいるこの世界を守るためならどんなことでもなそう」
 バリアに接触するまでの刹那、風魔・遊鬼の脳裏に守ると決意した者の万感が満ちる。
「正義も悪も関係なし。必要なのは護るためになるかどうか」
 爆発。突き付けたグラディウスからの衝撃が激痛となって身体を突き抜ける。
 散った閃光は無数の雷光と変わり矢の如くに空中に舞い上げられた影に襲いかかって行く。
 雷光も爆炎もグラディウスを手にした者だけは傷つけることはなかった。
 マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)は回廊のように二つに割れた炎の先、橙色の輝きを反射するバリアを見据えながら背中の羽を窄めて鋭角にする。
「サキュバスの翼は飛べはしなくても、何ものにも捕らわれない自由があるんだよ」
 本来、無用であれば誰も傷つけない、利用され損なわれることもない。
「この翼が飛べても飛べなくても、翼は未来へ羽ばたく意思の象徴、奪わせはしない」
 自由を奪われたく無いのは、翼の有無や種族に関わらず同じ筈だ。
 物事が上手く行かなくなると美化した過去を呼び戻そうとする意志が世の中に満ちる。
 個人の意志は羽毛のように軽く扱われ、義務や責任は大地よりも重くなり、やがて刑罰を回避することが人生の目的のようになってしまう。――そんな時代はご免だ。
「地球は、この場所はもうお前が遊んでいい舞台ではない、わかっているね?」
 マサムネは火の粉のような光を散らしながら崩壊の度合いを増して行くバリアを目掛けてグラディウスを叩きつける。
「理解出来たのなら、俺達の前でご退場願おうか! この土地を取り返してみせる!」
 爆発。そして鐘を打ち鳴らしたような鳴動が響き渡るが、バリアは持ちこたえている。
 しぶとい。
 朧・遊鬼(火車・e36891)は心の中に浮かびそうになった雑念を払うようにグラディウスを握り絞める。
「アンタが来る前まで、ここは公園として、高知市民に親しまれていた場所」
 築城の目的は戦いに備えであったはずだが、時代の経過と共に行政を担う場となり、その役割の終焉とともに、やがて高知市民の心のよりどころとなり、憩いの場となって行った。
「……そこを下衆なアンタに居座られたままでは誰も安らげぬ!」
 この規模の城址であれば、翼のある者なら、文字通り大いに羽根を伸ばせただろう。
 その翼を引きちぎられる苦痛を与えながら殺害するなど許されない。
「さぁ、アンタにこの地は不相応だ……故に氷漬けにしてでもここから消してくれる!」
 カーン。と硬い金属を打ち鳴らしたような音が響き、閃光が爆ぜる。
 凄まじい量の爆煙(スモーク)が崩れ掛けのバリアの表面を流れ落ちて行く中、朧・遊鬼はグラディウスが力を放出しきるまで刃に力を込め続けた。
 攻撃を掛けられる残り人数は2人。
 帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)は胸の内に漂い始めた不安を払うように叫ぶ。
「ここは、日本百名城にも数えられる由緒正しい場所なんです!」
 そう高知城は400余年の歴史を持つ。本丸の建造物が現存することで知られる日本の宝である。
「由緒正しいお城を占拠し、歪んだ性癖を満たそうとするなんて……許せねー!」
 エインへリアルにとって自由とは支配階級にのみ認められた特権という古典的解釈なのかも知れない。
「何で翼に執着するかは知らねーが、引き千切ってコレクションにするとは悪趣味の極みだぜ!」
 高知城が鷹城とも呼ばれることと関係があると想像する者もいる。
 真意は分からない。分かりたくもない。
「今まで殺してきた翼のある者の痛み、今度はその身体で味わいやがれ!」
 翔は今も踏みにじられている者たちへの万感と共にグラディウスを突き出し、跳ね返ってくる衝撃に耐えながら蓄えられた力を放出し尽くした。
 夜が明けたばかりの空に雲と地上から伸び上がった赤黒い渦を巻く爆煙が柱のように伸びて行く。
 世の終わりの如き光景が広がる中、爆煙の根元でバリアと回廊は膨張しながら光の欠片を散らし始める。
 だが、消滅していない。破裂寸前の風船のように其処に在った。
「まだ壊れないのか」
 羽根で激しい上昇気流を受け流しながら、岡崎・真幸(花想鳥・e30330)が滑空するように突っ込んで来る。
 グラディウス攻撃のチャンスは1回限り。膨張したバリアはどこを突いても、ひと突きで破れるようにも見えたが、破けただけで終わらせるわけには行かない。
 何が何でもこの一撃で決着をつけたい。
 そのために出来ることと言えば、魂の叫びに気持ちを込めるしかない。
 刹那に育て親と共に高知城を訪れた思い出が脳裏を巡る。
 現存天守閣のことを誇らしげに語る表情、公園に咲く春の桜、鳥の声、暑い日の蝉の声。
「返せ――全て俺のものだ。欠けることなど堪えられない」
 突き出したグラディウスが呆気なくバリアに突き刺さり、ここまで積み重ねられた亀裂が一挙に花開く。
「これ以上奪う事は許さん」
 楽しかった日々の思い出と引き換えに破壊の力が生み出されたような気がして、感情が昂ぶれば昂ぶらせるほどに、記憶に孔が空いたような空虚感が来た。
 直後、巨大な菌類が胞子を噴出するように光る粉を噴出しながら、バリアと混じり合った魔空回廊は急速にその輪郭と存在感を失って行った。

●撤退戦
 果たして、高知城に設置された魔空回廊は消滅した。
 後には成層圏と地上を繋ぐような巨大な茸雲、そして濃霧のようなスモークが地表を覆っていた。
「みんなそろったー? 速やかに撤退なのだー!」
 真幸の合流を確認すると、和は撤退を呼びかけて撤退を開始しようとする。
「待って下さい、皆さんグラディウスは持っていますか?」
 特注のベルトでグラディウスを身につけている者、普通に所持している者、その管理はそれぞれだったが紛失した者はいない。
 城内から外に出るには主に西か北か東の三方向、直線距離で言えば東の追手門側が一番短いだろう。
 但し高知城は公園として整備されていたとしても、城郭特有の入り組んだ構造を持つ。当たり前に地図を見てルートを選定しても時短の期待は出来ない。
「スモークの効果を信じてもっと急ごう」
 物陰に身を隠しながら進むと極端に移動速度は遅くなることに気がついた陽葉が指摘する。
「城内の道を進む限り、敵を避けて進むのは難しいだろうな」
 過去に来たことがあっても劇的に撤退速度を上げる手立ても思いつかないのだが。
 果たして両側を石垣に囲まれた下り道で、待ち構えていた、エインへリアル「翼狩りの略奪者」との戦闘に入るのは必然であった。
『お前らはここで死んで、吾輩のコレクションになるのだ! ひゃーあははは』
「うん、わざわざ挨拶してくれて助かったよ」
 探す手間が省けたとばかりに、応じながら手にした弓に矢を番えないまま、その弦を弾きならす。
 瞬間、異様なテンションで得意げに性癖を語るエインヘリアルの足元が崩れた。
「正気とは思えません――」
 バジルは紫水晶のごとき瞳で周囲を見渡す。エインへリアルは身長3メートルを超える巨体、その後ろには門があり、左右は高い石垣だ。
 早くこの敵を倒したい。だがバジルは逸る気持ちを抑え込んで、サークリットチェインを発動する。
「ケルベロスチェインよ、仲間を護る魔法陣となりなさい」
 データによると「翼狩りの略奪者」の攻撃は近距離に偏るらしい。それへの対応だった。
 マサムネがダークなメロディに乗せて呪わしい詩を紡ぐ中、黒衣の青年――風魔・遊鬼の突き刺した棒苦無が爆発する。
 それと前後して朧・遊鬼の放ったエネルギーを中和する光弾――ゼログラビトンが、朝日のように清らかで、純金を連想させる美しい光でエインヘリアルを包みこむ。
 魔空回廊を破壊されて破れかぶれになっていたエインヘリアルの表情が穏やかになるような気がした。
『美しい。矢張り翼は良いものだ。――寄こせ!!』
 まるで自分に襲いかかってくるのを読んでいたかのように、真幸は石垣を蹴って反対側へと跳んだ。
 そしてエインヘリアルの背後からボクスドラゴン『チビ』がタックルを決める。
 バランスを崩して石垣に激突するエインヘリアル。
 機を逃さずに、翔は腕を巨大刀――ワイルドブレイドに変形させる。狂い咲く無限に増殖する無秩序性。それを解き放つ様に翔は力任せに叩き付けた。
 和は確信した。
 この戦いは自分たちの勝ちだと。
「今だ! 渾身のー……てややー!」
 和の結集した己の知識を本の形に変え、その質量を叩き付けた。
 強烈な力にエインへリアルの身を飾っていた羽根の装飾が粉砕された。
『良くも吾輩のコレクションを!!』
 倒せると思った一瞬の心の隙、デウスエクスは死んでさえいなければ戦うことができる。
 もし対策をしていなければ致命的な一撃が和に襲いかかった。
 激痛が走り意識が飛ぶかと思ったが、傷は浅い。
 それでもバジルは緊急手術を施し、その間にマサムネと朧・遊鬼が援護攻撃を実施する。
 蹴りの直撃によろめくエインヘリアルの周囲に幻想的な青の鬼火が浮遊する。
「燃えろ……そして凍りつけ!!」
 鬼火に触れた巨躯が燃え上がり、そして霜柱のような氷が傷口を押し広げながら噴き出てくる。
 見ているだけで痛みが伝わって来そうだが、同情する者は誰もいない。
 一瞬の出来事だった。
 翔の発動したサイコフォースの爆炎の輝きにエインヘリアルが包まれる。
『チックショウォォォ!! 人間の分際でエ――』
 其処に素早い動きで距離を詰めた風魔・遊鬼の突きが乱舞して、立ち塞がっていた巨体は、前のめりに崩れるようにして倒れ伏した。
 真っ黒な炎に包まれて消滅してゆく死体を見て、誰もが戦いの勝利を知った。
 門を抜け階段を下った先は再び狭い道になっていた。
「また敵が出たらこまりますね」
「その時はぶち抜くまで!」
 無事に帰り着くまで気を緩めるつもりはないし、戦友のためならば危険を顧みない覚悟もある。
「敵への侮りや驕り、力の過信は自らを滅ぼんだよね」
 人間の分際で――エインヘリアルの最期を思い出した陽葉の頭の中に新しい歌が浮かんでくるような気がした。
 長い道を走り抜け追手門まで来ると、スモークは薄れて効果の殆どがなくなっていた。
 しかしそこには、ミッション攻略に訪れたケルベロスたちの姿があった。
「回廊の破壊ありがとう。お疲れ様。これで高知の復興もはじめられるね」
「奪われたものを取り返すのは当然のことだ」
 背負っているものがいろいろあるけれど、と真幸は小さく息を吐いて、少しホッとしたように目を細めた。
「さて、みんなに報告に行こうよ」
 和の明るい声に、誰もが無事に撤退できたとことを知る。
 暑い夏の朝。ミッション地域によって生み出される悲しみの連鎖が、ケルベロスの活躍によって、またひとつ断ち切られた。

作者:ほむらもやし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年8月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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