ケルベロス大運動会~目立て、大ズモウ!

作者:ゆうきつかさ

●東京都墨田区
 世界最強の格闘技、スモウ……。
 それは闘志と闘志のぶつかり合い。
 まっすぐ前だけを見て、相手に闘気をぶつけ、打ち負かす。
 それが……スモウであった。
 故に、背中を見せる事は、すなわち敗北。
 それが相撲であり、スモウであり、SUMOUであった。
 とある格闘家曰く『土俵の上では、スモウが最強。それが分からない奴等は、スモウの恐ろしさを知らないだけ。あれなら、ヒグマと素手で戦った方がマシだ』と言う程。
 噂では、スモウレスラーが本気を出せば、四股を踏むだけで激しく大地が揺れ、張り手だけで人を吹っ飛ばす程の破壊力がある……らしい。
 その真偽は別として、スモウレスラー(ケルベロス)が、スモウを奉納して、人類の勝利を願う神事を行われる事になった。
 場所は両国国技館!
 その場所に集まったのは、世界の様々な宗教の代表者や、信心深い来賓……、相撲が好きな人々であった。
 みんなスモウレスリング見たさに胸を躍らせ、瞳をランランと輝かせていた。
 しかも、参加する相撲レスラーは、みんなケルベロスッ!
 みんなケルベロス達の活躍を期待し、ワクワクしている様子であった。
 その気持ちに応えるようにして、控室ではケルベロス達が水着の上からまわしをつけ、自分自身に気合を入れていた。
 ケルベロス達の中には、『まわしは飾り!』と言わんばかりに、水着をアピールするだけを考えている者もいたが、心は……ひとつ。
 『誰よりも目立ちたい……!』。
 それはスモウの本質とかけ離れているかも知れないが、要は盛り上げたモノ勝ち。
 みんなの心をひとつにする事が出来るのであれば、手段を選ぶ必要もない。
 何故ならスモウは、懐が深い格闘技なのだから……。

●セリカからの依頼
「皆さんの中にも、分かっている方がいるかも知れませんが、『全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)』は、発動の度に世界経済が疲弊してしまう諸刃の刃です。それ故に、莫大な戦費を賄わねばなりません。それが『ケルベロス大運動会』と言う訳です。場所は日本の首都『東京』! これまで数々の戦火に晒されてきましたが、今回の大運動会は、戦費獲得は勿論の事、『ハイパーエクストリームスポーツ・アトラクション』による『東京の防衛力増強』も目的とされています。ここ数年で大きく発達した『決戦装備』の技術を用いたアトラクションを建造し、運動会後にはそのまま東京の防衛施設として活用する事に加え、大きく戦費を獲得する事ができれば、恒常的に活用できる『新型決戦装備』の開発に、着手できるかもしれません」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「そこで皆さんに御願いがあります。両国国技館でスモウをしてください。スモウは、もともと、神事ですので『ケルベロス大運動会の成功を祈願』したり『人類の繁栄』や『デウスエクスの戦いの勝利』の祈願にうってつけでしょう。しかも、スモウを取るのは、ケルベロス! これは間違いなく、御利益があります。海外からやってきた観光客も、きっと喜んでくれる事でしょう。世界の様々な宗教の代表者や、信心深い来賓の方、相撲が好きな人などが、両国国技館でのケルベロスのスモウレスリングを楽しみにしていますから、皆さん張り切っていきましょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、期待の眼差しを送るのであった。


■リプレイ

●東京都墨田区
「お祭り! お祭り!」
 火神・りた(オウガの土蔵篭り・e86254)はゴキゲンな様子で、仲間達と共に東京都墨田区両国国技館にやってきた。
 両国国技館の周辺は、沢山の人で溢れ返っており、沢山の出店が所狭しと並んでいた。
 そのため、りたも御祭り気分。
 焼きそば、わたあめ、たこ焼きなど、気がつけば山ほど食べ物を買っていた。
 もちろん、最初は浮かれないようにするため、頑張って気を張っていたのだが、それで退く事が出来るほど甘い誘惑ではなかった。
「祭りや、祭りや!」
 半沢・寝猫(天声・e06672)もノリノリな様子で、りんご飴を口にした。
 その途端、脳裏に浮かんだのは、かつて見た祭りの景色。
 あの頃と全く同じとは言えないものの、それと似た光景が、目の前に広がっていた。
 その影響もあるのか、当時に買う事が出来なかったモノや、買っておけばよかったと後悔したようなモノを買っていた。
 それはかつて満たす事が出来なかった心のピースを埋めていくような感覚。
 自然と昔の自分と、今の自分が重なり合い、幸せな気持ちが倍増した。
「みんな盛り上がっているね」
 そんな二人を眺めながら、鳳凰寺・四季(レプリカントのワイルドブリンガー・e66827)も幸せな気持ちになった。
 両国国技館の周辺では、喧嘩神輿が行われており、この日のためにカスタマイズされた神輿が、各町内会のプライドに掛けて、ぶつかり合っていた。
 これには見物客達も、大興奮ッ!
 まるで自らの思いを喧嘩神輿に託すようにして、盛り上がりまくっていた。
「相撲という、日の本の国技にして神事。日本男児たるもの、一度はこの身で味わっておかねばな!」
 そんな中、ヴァルカン・ソル(緋陽の防人・e22558)が、両国国技館を見上げた。
 ただし、ヴァルカンは、日本人ではない。
 だが、魂だけなら、日本男児。
 それを証明するため、スモウ大会に参加しようとしているようだ。
「ワタシもニホンジンとして、頑張っちゃいマァース!」
 村雨・ビアンカ(地球人の螺旋忍者・en0020)も、その場のノリと勢いに合わせて、自分自身に気合を入れた。
 そもそも、ビアンカは日本人でなければ、男児でもないのだが、それでも大和魂的なモノを燃え上がらせ、気合に満ち溢れていた。
「相撲は昔から好きだったから、よく(性癖的な意味で)目の保養に取組を観に行っていたけど、今回も盛り上がりそうね」
 ファレ・ミィド(身も心もダイナマイト・e35653)が、興奮した様子で拳をギュッと握り締めた。
 その上、今回は相撲であって、相撲でない。
 いわゆるスモウ。
 その上、参加するのがケルベロス達なのだから、興奮しない訳がない。
 故に、真っ直ぐ。
 そこには、微塵の迷いもない。
 その思いが誰かひとりにでも響けば、参加した意味があったというモノである。
「……相撲、それは古代より形を変えながら続く日本の伝統。神事にして競技……うん、俺は奇をてらわずにしっかりと『相撲』をしよう」
 しかし、メガ・ザンバ(応援歌ロボ・e86109)の気持ちに迷いはなかった。
 スモウではなく、相撲を……。
 それがスモウに参加した理由であり、メガが果たすべき使命であった。

●両国国技館内
「……オレがルールだ」
 一方、土俵の上では、行司を務める事になった神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)が、吸血鬼をテーマにした水着姿で堂々と胸を張っていた。
 本来であれば、土俵の上は、女人禁制。
 だが、今回やるのはスモウであって、相撲でない。
 それを観客の胸にズドンと突き刺す勢いで、柧魅が土俵の上に陣取っていた。
「スモウと相撲……似たような規則らしいが、まぁ……任せろ。オレの行司は完璧だ」
 柧魅がキリリとした表情を浮かべ、キッパリと断言をした。
 本音を言えば、完璧に相撲のルールを理解している訳では無い。
 しかし、柧魅自身がルールである事を宣言しているのだから、何かあっても何とかなるだろう。
「それじゃ、実況の方は僕に任せて!」
 そんな中、因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)がハイテンションで、実況席に座った。
 相撲に関する知識は、猛勉強をして頭の中に叩き込んできたため、おそらく大丈夫。
 それに、これはスモウ。
 その事を観客にも分からせるため、ビアンカを横に座らせているため、何となく察してくれるはずである。
「……解説は、なぜか呼ばれた俺こと狼炎ジグだぜ。……まあ、面白い勝負と活躍でも期待するかね」
 狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604)が、マイク片手に自己紹介。
 相撲をやった経験はないものの、ある程度の知識が備わっているため、何とかなる……はず。
 例え、何とかならなかったとしても、ノリと勢いで乗り越える事が出来そうな感じであった。
「何だか緊張するなぁ……」
 その間に、ミスティアン・マクローリン(レプリカントの鎧装騎兵・e05683)が水着コンテストで用いたスポーツタイプのビキニ姿で、花道の奥から柧魅に先導されるようにして土俵に上がった。
「これは自分をアピールするチャンスよ」
 ファレが悪の女幹部風エロセクシー格好いい水着姿で色々なところを揺らしながら、ラウンドガールのようなノリで懸賞旗をアピールした。
 それに合わせて、実況の白兎が名前を読み上げたものの、土俵入りと言うよりも、プロレス寄りの紹介であった。
 土俵に上がった参加者達も柧魅のまわりを囲むようにして、何かを召喚する勢いでベントラ、ベントラと唱えていた。
 この時点で観客も何かを察したのか、『スモウとはノリと勢いでウェーイするモノと理解した!』と言わんばかりに、大興奮ッ!
「こ、これは普通に相撲をする訳にはいきませんね」
 ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)が、光沢ピンクのTバックハイレグレオタード姿で、拳をギュッと握り締めた。
 その間も、薄地の水着がピッチリと張り付き、観客達から注目を浴びていた。
「……ん? スモウって、相撲と違うんか? 長いこと相撲は見てないからな~。知らないうちに、ルールが変わったんやろうか?」
 寝猫が不思議そうに首を傾げ、頭の上にハテナマークを浮かべた。
 何か違うような気もするが、これはスモウ。
 観客達もノリノリになっているため、おそらく正解。
 何か大改革があって、相撲のルールが変わったのかも知れない。
 そう自分自身に言い聞かせ、寝猫もノリに乗る事にした。
「これがスモウなのかもね。でも、何だかドキドキするよ。ほら、りたさんもヤル気のようだし……」
 四季が、りたを応援しながら、自分なりに納得した。
 りたはカウガール姿の水着で、土俵入り。
 緊張した様子で、一生懸命になって、四股を踏んでいた。
 そのためか、土俵が何やらカオスな空間と化しているが、ノリと勢いでサーフボードに乗って、ウェーイとしている感じなので、そういうモノなのだと理解する事にしたようだ。
「四季やんも長いこと外に出てないから、ええ社会勉強になるやろ。りたに教えたぶちまかしが何処まで通じるか楽しみやな♪」
 寝猫が目の前の現実を受け入れ、その勢いでノリに乗った。
 この際、細かい事は抜き。
 これがスモウ……スモウなのである!
「何やら私の知っている相撲とは違うようだが、まあ……いいだろう。この日のために体作りもしてきた。観客の方々を大いに湧かせられるような一番を約束しよう」
 ヴァルカンが褌姿で無駄のない筋肉を周囲に見せつけ、大地が揺れるほど力強い四股を踏んだ。
 おそらく、何処かで妻が見ている。
 そう言った意味でも、無様な姿は見せられない。
 そのため、真剣。
 まるで研ぎ澄まされた刃物の如く、鋭い視線をメガに向けていた。
「ならば全力で掛かってこい」
 その視線に気づいたメガが、ヴァルカンの前に陣取った。
「まずは互いに睨み合ってから……真正面、いった! 激しいぶつかり合い!」
 そんな空気を察した白兎が、マイク片手に実況を始めた。
「ここからはルール無用のバトルロイヤルです! 最後まで土俵に残っていた者こそ、真のチャンピオンデェース!」
 しかも、ビアンカがノリと勢いで、適当な事を口走った。
 普通であれば、非難轟轟であるが、観客はノリノリ。
 『やれ、やれ、GOGO、デストロイ!』とばかりに、大興奮ッ!
「……いいのか、それで……」
 ジグが思わずツッコミを入れたものの、『それがスモウ!』とばかりに、ビッグウェーブが出来ていた。
「だいぶ盛り上がってきたじゃない!」
 その気持ちに応えるようにして、ファレがアクロバティックに動きでミスラを翻弄し、セクシー全開で投げ技を繰り出した。
 その拍子に水着が食い込み、イケない部分が丸見えになった。
「え、ちょ……こ、こういう盛り上げ方でもいいんですか!?」
 これにはミスラも驚き、恥ずかしそうに悲鳴を上げたが、観客達は総立ちでガッツポーズ。
 『生きててよかった。これで思い残す事はない』とばかりに、しわくちゃの爺様がミスラの事を拝んでいた。
「今の取り組み、どうでしたかビアンカさん」
 白兎が興奮した様子で、解説席に座っていたビアンカに、コメントを求めた。
「これはワタシも、脱ぐしかアリマセェーン!」
 すぐさま、ビアンカが服を脱ぎ捨て、ミスラにダイブ。
 この時点で相撲とは別物になっていたが、文句を言う観客はひとりもいなかった。
「……って、これはスモウじゃありませんよ! それに、なんでローションまみれになっているんですか!」
 ミスラが信じられない様子で悲鳴を上げたが、既にヌルヌルのベトベト。
 お色気満点の取組に、しわくちゃの爺様も、昇天しそうになっていた。
「今のシーン、スーパースローでもう一度」
 その気持ちに応えるようにして、白兎が先程の場面をスーパースローで再生し始めた。
 それと同時に観客達が総立ちとなり、『お前は神か!』と大絶賛!
「この際、勝ち負けは二の次。無論、負けるつもりはないが、真っ向勝負以外あるまい」
 その間も、ヴァルカンはメガと何度もぶつかり合い、今にも衝撃波が飛びそうなほど強烈な張り手を繰り出した。
「ああ、確かに……。勝ち負けなど関係ない。ただ、この瞬間を全力で……!」
 それを迎え撃つようにして、メガがヴァルカンの呼吸にシッカリと合わせ、左右につくようにして張り手を繰り出し、脚が揃わないようにしながら、ジリジリと土俵際まで追い詰めていった。
 だが、ヴァルカンも負けておらず。
 ギリギリのところで、メガの側面に回り込み、そのまま押し出そうとした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 途端に歓声が響き渡り、興奮した観客が、ふたりの真剣勝負を見守った。
 まさに手に汗握る戦い。
 『これこそ、相撲!』とばかりに、観客達が魂を震わせた。
「……クッ!」
 その途端、メガの目に汗が入り、一瞬にして視界が遮られた。
 しかし、メガは動揺する事なく、心の目を見開き、ヴァルカンの身体に密着すると、そのまま勢いをつけて土俵の外に押し出した。
「……決まったな」
 ジグも思わず解説を忘れて、魅入ってしまう程の大勝負。
「嗚呼、デブ専だった私は一体何所にいったのか。そもそも私にこんな恋する乙女な面があったなんて驚きだわ」
 ファレもメガの勝利に感動しつつ、薄っすらと涙を浮かべていた。
 だが、戦いはまだ終わっていない。
 これはバトルロイヤル。
 最後のひとりになるまで、戦いは……終わらない!
(「こんなところで負けられない!  教えてくれた寝猫さんのためにも……。応援に来てくれた四季ちゃんのためにも……! 絶対に……!」)
 その間も、りたは自らの気合を込めたぶちかましで、攻めて、攻めて、攻めまくった。
 こんなところで負ける訳にはいかない。
 その思いが通じたのか、りたが次々と勝利を収め、土俵にはほとんど人がいなくなった。
「なかなか、いい勝負でしたわ」
 土俵の外に押し出されたミスティアンが、汗をキラキラと輝かせながら、りたとの戦いを称賛した。
 あくまでエンジェイする事が目的であり、戦いの勝敗にはこだわっていなかったため、身も心もスッキリした様子で、りたの事を見上げていた。
 そんな中、柧魅が軍配を持ったまま、古流柔術で対戦相手を薙ぎ倒し、土俵の王者として君臨しつつあった。
 それは通常の相撲であれば、あるまじき行為。
 だが、これはスモウ!
「行司は土俵で最も強いのだ、権力的にも。このまま行司が優勝でも良いのではないか?」
 柧魅が勝ち誇った様子で、他の対戦相手を見下ろした。
 そもそも、柧魅がルール。
 それは最初に宣言した事。
 故に、全く迷いはなく、戦い方にも無駄がなかった。
 まるで土俵界の女神の如く勢いで、軍配を天叢雲剣のように振り回し、見事勝利を収めた。
 それは相撲ではあり得ぬ結果であったが、スモウ的には……アリ。
 何より観客達が総立ちで盛り上がったため、その流れで宴が始まるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年8月10日
難度:易しい
参加:11人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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