かき氷食べ放題!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 まるで雪の如くフワフワのかき氷が出来る製造機があった。
 この製造機は、普通のモノとは異なり、雪のようにフワフワ。
 何処にも真似できないほどの口どけ感が売りだった。
 だが、非常に壊れやすい上に、部品が割高であったため、すぐに必要とされなくなり、ゴミの山に埋もれる事となった。
 そんな中、現れたのは、蜘蛛の姿をした小型ダモクレスであった。
 小型ダモクレスは、かき氷製造機に機械的なヒールを掛けた。
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
 次の瞬間、かき氷製造機がダモクレスと化し、耳障りな機械音を響かせながら、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「雪城・バニラ(氷絶華・e33425)さんが危惧していた通り、都内某所にあるゴミ捨て場で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるゴミ捨て場。
 この場所に捨てられていた、かき氷製造機がダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、かき氷製造機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスはかき氷製造機がロボットになったような姿をしており、かき氷を作りながら、ケルベロス達に襲い掛かってくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)
伊礼・慧子(花無き臺・e41144)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)
 

■リプレイ

●都内某所
「まさか私が危惧していたダモクレスが本当に現れるとはね。私も、かき氷が好きだけど、それが破棄されるなんて悲しいわ」
 雪城・バニラ(氷絶華・e33425)は都内某所にあるゴミ捨て場に、仲間達と共にやってきた。
 ゴミ捨て場の周辺は異様なニオイに包まれており、近寄り難い雰囲気が漂っていた。
 それでも、念には念を入れて、殺界形成で、人払いをした。
「……と言うか、敵なの!? 夏の救世主じゃなくて? えっ? 嘘、嘘、嘘! 絶対に味方でしょ! だって、タダでかき氷を食べさせてくれるんだよ? それなのに、敵……って。う~ん、何か腑に落ちないなー」
 佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)が信じられない様子で、複雑な気持ちになった。
 何やら納得がいかないものの、ダモクレスと化した以上、倒さなければならなかった。
 それが分かっていても、迷いが生じてしまう程、かき氷は魅力的であった。
「確かに、カキ氷機が破棄されるのは、勿体ないですね」
 アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)が、警戒した様子で辺りを見回した。
 いまのところ、ゴミの山の何処に、かき氷製造機があるのか、分からない。
 だが、ゴミの山から禍々しい気配が漂っているため、ここにある事は間違いなさそうだ。
「僕も、ふわふわした食感のかき氷は好きだけど、破棄されるなんて、勿体ない気がするね」
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)も、納得した様子で答えを返した。
 おそらく、部品代が安ければ、かき氷製造機が捨てられる事も無かっただろう。
 しかし、それは避けられない運命……。
 ……変える事の出来ない過去。
 それ故に、ダモクレスと化したかき氷製造機を、破壊する事しか選択肢が残されていなかった。
「雪はあまり好きではありませんが、夏のかき氷は大歓迎です。専門店のふわふわを家で再現できるとなれば、売れたのも道理ですが、修理を考えると原始的な手動の氷削り器でいいやというのも理解できます」
 その間に、伊礼・慧子(花無き臺・e41144)が、キープアウトテープを貼った。
 ダメ押しで殺界形成も発動させため、間違っても人が近づく事はないだろう。
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ゴミの山の中からダモクレスが現れ、まるで産声の如く耳障りな機械音を響かせた。
 ダモクレスは、かき氷製造機がロボットになったような姿をしており、ケルベロス達を敵として認識しているようだった。

●ダモクレス
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、七色のシロップビームを放っていた。
 そのビームは太陽の光を浴びて、キラキラと氷が輝いており、まるで宝石の如く煌びやかであった。
「氷の『属性』の力よ、仲間を援護しなさい!」
 すぐさま、バニラがエナジープロテクションで、『属性』のエネルギーで盾を形成し、仲間の守りを強化した。
 そのおかげでダモクレスのビームが辺りに飛び散り、濃厚なシロップのニオイが辺りに漂った。
「えっ? これって防ぐ必要ないよね? 単なるシロップだし……。食べちゃっても大丈夫でしょ。それじゃ、遠慮なくいただくわよ!」
 そんな中、レイが山盛りになったかき氷の器で、飛び散ったシロップを受け止めた。
 その途端、かき氷が七色に彩られ、レイの胃袋を刺激した。
 この状況で食べないという選択肢はない。
 例え、頭がキーンとしたとしても、食べる事以外の選択肢が存在していなかった。
 そのため、躊躇う事なく、かき氷が胃袋の中に流し込んだ。
 それはレイにとって、至福の時間……。
 思わず、今が戦闘中である事を忘れてしまう程の夢心地。
 だが、頭がキーン。激しくキーン!
 反射的に、膝をついてしまう程の痛みであったが、それでも食べる事を止められなかった。
「せっかくですから、味見をしておきましょうか」
 慧子がエナジープロテクションで、ビームの威力を弱めつつ、雨の如く降り注ぐシロップを、持参した器で受け止めた。
 もちろん、慧子も危険は承知していたものの、かき氷を食べずにはいられなかった。
 その衝動を抑える事が出来ず、慧子もかき氷を掻き込んだ。
 もう迷いもない。躊躇いもない。
 ただ、かき氷を掻き込むだけ。
 それ以外には、何も考える事が出来ない程、かき氷は美味しかった。
「それじゃ、どんどんいくわよ。ほらほらダモちゃん、シロップちょーだい♪」
 その間に、レイがフロストレーザーでかき氷を作り、ダモクレスを挑発するようにして間合いを取った。
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その挑発に乗ったダモクレスが、再びビームを放ってきた。
 だが、レイに迷いはない。
 躊躇う事なくダモクレスに突っ込み、手慣れた様子でビームをキャッチした。
 そして、一心不乱にかき氷を掻き込み、天国と地獄を味わった。
 それでも、食べる事は止められない。
 頭では分かっていても、身体がそれを拒絶する程、本能がかき氷を求めていた。
「そのカキ氷と、僕の氷、どちらが強いか勝負だよ」
 即座に司が螺旋氷縛波を仕掛け、氷結の螺旋を放って、ダモクレスを凍らせようとした。
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事に気づいたダモクレスが、再びビームを放ってきた。
 それはまるで空中かき氷。
 七色のシロップと混ざり合った氷が、雨の如く降り注ぎ、空になった器の中に入っていった。
「……スライムよ! 敵を貫き、その身を汚染しなさい」
 その隙をつくようにして、アクアが鋭い槍の如く伸ばしたブラックスライムで、ダモクレスの身体を貫き、容赦なく汚染した。
「カ、カ、カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その途端、ダモクレスが身体のあちこちから、オイルに似た液体を撒き散らし、スプーン型のアームを次々と伸ばしてきた。
 スプーン型のアームは、かき氷を食べるのに適したサイズで、ケルベロス達の肉をえぐる勢いで迫ってきた。
「まるで取り立てですね。かき氷を食べた代償が体の一部と言う時点で笑えませんが……」
 すぐさま、慧子が憑霊弧月を発動させ、自らの武器に無数の霊体を憑依させ、ダモクレスを斬りつけて、さらに汚染した。
「カ、カ、カキ、ゴゴゴ……」
 そのため、ダモクレスが息苦しそうにしながら、狂ったようにスプーン型のアームを振り回した。
「えっ? タダじゃなかったの? 確かに、お金を払うだけの価値はあったと思うけど……。お肉は無理っ! 絶対に無理だから……!」
 レイが身の危険を感じつつ、ダモクレスにペイントラッシュを仕掛け、塗料を飛ばして塗り潰した。
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 だが、ダモクレスは止まらない。
 カラフルにペイントされた事で、何となくテンションが上がっている感じであった。
 それはレイが意図していない事であったが、言い訳をしている暇がないほど、ダモクレスがノリノリになっていた。
「随分と気持ちが昂っているようだけど、調子に乗っていると、痛い目を見るよ」
 その間に、司がダモクレスの死角に回り込み、薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟を繰り出した。
「カ、カ、カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その影響でダモクレスが幻惑され、スプーン型のアームで見当違いの方向を攻撃し始めた。
「このまま幻想的な水晶の炎で、焼かれてしまいなさい」
 その隙をつくようにして、アクアがクリスタルファイアを発動させ、熱を持たない水晶の炎で、ダモクレスの肉体を斬り裂いた。
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、かき氷型のミサイルを発射した。
 かき氷型のミサイルはアスファルトの地面に落下し、かき氷と共に大量の破片を飛び散らせた。
「花びらのオーラよ、仲間を癒す力を与えなさい!」
 その事に危機感を覚えたバニラが、フローレスフラワーズを発動させ、戦場を美しく舞い踊る事で、花びらのオーラを降らせた。
 それは仲間達を癒す特別なモノ。
 そのおかげで、仲間達も傷ついた身体が癒え、致命傷を避ける事が出来た。
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 しかし、ダモクレスは諦めておらず、耳障りな機械音を響かせながら、再びかき氷型のミサイルを放とうとした。
「んんっ、頭がキーンとする……! で、でも、戦わないと……!」
 そんな中、慧子が激しい頭痛に襲われ、身体をゆらりとさせた。
 だからと言って、ここで倒れる訳にはいかない。
 その気持ちを原動力にして、慧子が一気に間合いを詰め、ダモクレスにシャドウリッパーを炸裂させた。
「それじゃ、これで終わりにしようか」
 それに合わせて、司が一気に間合いを詰め、ダモクレスに降魔真拳を炸裂させた。
「カキゴオリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが断末魔にも似た機械音を響かせ、完全に機能を停止されて、その場に崩れ落ちた。
「……終わりましたね。せっかくですから、どこかでかき氷を食べたいところですが……」
 アクアがホッとした様子で、深い溜息を漏らした。
 戦っている最中は気にならなかったが、全身汗でビッショリ。
 出来る事なら、何処かで涼みたいところであった。
「それなら、かき氷を買って帰りましょうか」
 そんな空気を察したバニラが、一緒に戦った仲間達を誘った。
「いいわね、かき氷! みんなで買って帰りましょう。でも、あの美味しい七色のシロップって結局どんなもので作ったのかしら……お家でも食べたぃ~」
 そう言ってレイが辺りをヒールで修復しつつ、先ほど食べたかき氷を脳裏に思い浮かべるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年7月28日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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