バーニングフラワー

作者:久澄零太

「てやんでいべらぼうめい!!」
 謎のノリで始まった今回の鳥さん。水色の羽織に「花火絶許」の刺繍が施されているあたり、もはや説明不要。
「花火ってーのは火薬の塊だ!」
 不要だって言ってるのに鳥さんが語り始めた……。
「そこに金属をぶち込んで炎色反応を起こしてる爆弾に過ぎねぇ!」
 取り出したるは火消のノボリ。めんどくさいなーこいつもまた。
「いくぞ野郎共! この世から花火なんてぇ火災の火種を取っ払うんだ!!」
『イェス火消! ノーモア花火!!』

「みんな大変だよ!」
 大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)はコロコロと地図を広げて、とある河原を示す。
「ここに花火は危険だから消火しようってビルシャナが現れて、信者を増やそうとするの!」
「そいつをぶちのめして花火を楽しんでくればいいのね!」
「違うよ……?」
 既に遊ぶ気満々だった曽我・小町(大空魔少女・e35148)は出鼻を挫かれ、不満そうに唇を尖らせた。改めてユキが言うことには。
「信者は花火の凄さを語ったり、花火の効果っていうのかな? 花火があるからこその良さを語ると目を覚まして……くれる……よ?」
 ジリジリ迫りくる小町から顔を背けるユキだったが、ついに逃げきれなくなり。
「当日は近くの神社でお祭りがあるから、速攻で片付いたら遊びに行けばいいと思うよ……」
「やたっ!」
 本来なら最後に出てくるであろう情報がここで引きずり出されたか。
「えーっと、敵はおっきな団扇で仰いで動きを封じてきたり、みんなに向かって迫ってくる導火線を巻きつけたり、直接花火を投げつけてくるよ」
 おそらく、その攻撃方法は高確率で日の目を出ないのだろうな、とユキは四夜・凶(泡沫の華・en0169)を見るが、彼もまたそっと視線を外す。オチが見えてしまった気がするが、未来は不確定……その末路は君達が見届けるしかない。
「一応、危険な相手だから油断しないでね……?」
 締まりが悪いが、一応お仕事だからと釘を刺しておくユキなのだった。


参加者
日柳・蒼眞(無謀刀士・e00793)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
セイシィス・リィーア(橙にして琥珀・e15451)
白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)
曽我・小町(大空魔少女・e35148)
ディッセンバー・クレイ(余生満喫中の戦闘執事・e66436)

■リプレイ


「ヒャッハーおっぱいダイブの時間だぁ!」
 もはや恒例行事、日柳・蒼眞(無謀刀士・e00793)が白猫を襲う!
「なるほど、これがプロのセクハリスト……執事防衛術を修めていなければ危なかったでしょう」
「なにぃ!?」
 しかし、太陽騎士に触れる前にディッセンバー・クレイ(余生満喫中の戦闘執事・e66436)が手首と肩を掴んで、ユキの後方まで背負い投げ!機体の壁に叩きつけた!!
「この、俺が……がくり」
「すごーい!」
 ユキが小さく拍手を送れば、ディッセンバーは恭しく一礼。
「すべては我が主のために……あっ」
「ん?」
 執事につられて振り返ろうとした瞬間に、もにゅん。
「この程度で俺がくたばると思ったか!」
 蒼眞がユキの尻を揉みしだき、尻尾をにぎゅもふ。
「ん……ゃ……!」
「おっぱいを狙うためならば、先に背後を取るのもまた一つの……」
 震えて脱力するユキの胸を背後から撫で回す蒼眞だったが、勝利を確信したドヤ顔の口上を、唸るエンジン音がかき消した。
「ギヒヒヒヒ!セクハラさん絶許、滅ぶがイイ!」
 口を三日月にして歪に笑い、二刃が一体となりナックルガードのような形態をした駆動剣を振り回すアリャリァリャ・ロートクロム(悪食・e35846)。怒りのあまり、一周回って凄まじい笑顔で……元から?気にするな!
「洒落になってないんだが!?」
「マジに決まってんだロォ!!」
 ユキから離れて回避を試みる蒼眞に合わせ、武器を放り投げると貫手を構えて。
「徹甲パーンチ!!」
 螺旋の重力鎖を纏った指先が蒼眞の鳩尾をえぐる!
「ゴハァ!?」
 体を高速スピンさせながら、蒼眞は落下していった……。
「安心シロ、グラビティは非活性にしてオイタ」
「あ、ありがとう……」
 背を向けるアリャリァリャと、礼を述べたユキが見つめ合う。その視線が、同時にちょっと下がって、じー……。
「「……」」
 ガッ!謎の仲間意識が芽生えて、固い握手が交わされた。


「この世から花火なんてぇ火災の火種を取っ払うんだ!!」
「なるほど、つまり近所の花火大会が軒並み中止になってるのはあんたらのせいだったんすね!」
 色々あったが、本日の現場こと河川敷。鳥さんと対峙するのはシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)、学校のサボり魔と噂される彼女は果たして口頭で勝てるのか!?
「あちしはサボってるんじゃないっす、効率化を図っているだけっす」
 キリッと決め顔して、鳥さんに向けて指をズビシィ!
「花火というのは憩いの場っす!憩いの場がなくなればストレスで人間関係も悪くなるんすよ!」
「だったら手持ち花火ファミリーパック(税込み千七十八円)でも買ってお友達と仲良く……」
 話の途中でディッセンバーが背後から鳥さんの首を掴み、嘴にサーバー用大型ボトルをセット!
「この世に完全に無害なものなど存在しませんよ?飲料水ですら大量に摂取すれば命の危険を招きますし、実際に大勢の人が溺死していますよね?」
 ディッセンバーが言ってるのは海やら川やらの規模だと思うが、生水は寄生虫とか汚染物質とっか、普通に危ないから絶対に飲むなよ。担当官との約束だ!
「逆に言えば、熟知した職人が取り扱うなら、危険な火薬ですら安全な娯楽となるのです」
 と、ここで執事はぺかーっとスマイル。
「ところで、延々と語って喉が渇いたでしょう?熱中症も怖いですし、たっぷり飲んでくださいね?」
 十二リットルもの水を強引に流し込まれるって、拷問だと思うんだ……。
「まあ火薬による事故ってのも無いではないけど、何だって程度問題なわけよ」
 この隙に、曽我・小町(大空魔少女・e35148)は信者が持ってた火消しの幟を示して。
「あんた達のその幟だって、人ごみの中で振り回したらぶつかって危ないし、むしろその危険性のほうが高くない?自分たちの危なさを棚上げして、花火が危ないだなんて笑っちゃう」
 鳥さんが何か言いたそうな顔してるけど、残り十リットルの水を前に嘴が開かない不具合。
「花火って綺麗だし素敵だよね~子どもの時に空に上がった大きな花火を見て感動したりしなかったのかな~?」
 小町に続き、セイシィス・リィーア(橙にして琥珀・e15451)が言うことには。
「用意も大変だしこの伝統を守っていく花火業界の人もお祭りの人も大変だよね~それを壊して邪魔しようとしてる人達は空気が読めないよね~」
「花火は歴史上最も素敵な火薬の使い方なのよ。安全面は然るべき人が管理してるから安心なさいな」
 顔を見合わせ「ねー?」と息ぴったりな二人だが、小町は黒地に赤いバラの刺繍を施し、膝丈スカートの裾にグラデーションのフリルを飾った和ゴス浴衣。対してセイシィスは紺の生地に白い雪の結晶を散らした涼しげな浴衣。胸元を開いて熱中症対策かと思われたが、あの谷間は胸が大きすぎて浴衣の中に納まらなかっただけなのだろう。
「花火って一種のアートだよねん。鮮やかな色と音が夜空に広がるのは圧巻だし、一瞬の芸術を見る為にその場所に行って、匂いや気温や湿度も感じれるのも良いんだよん」
 白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)がまともな説得をしている……だと!?
「だからこそ、大切なイベントや思い出にも残りやすかったりするし、感動もする。デートとかにもピッタリだよねん!」
 などと説得をする傍ら、永代は拳を構えて上半身で8の字を書き始める鳥即殺のスタンス。
「花火を見ながらの飲食は普段の数割増しに美味しくなりますよね」
 永代に合わせてか、花火肯定派のシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は黒地に白い彼岸花の装飾が施された浴衣。ただし襟がはだけて立派な果実(意味深)をつなぐようにサラシが晒され……いや待て、セイシィスの時は見えなかったってことは、まさか!?
「花火大会まであと一時間……始まったらみんなで一緒に食べましょう?先に屋台で予約を済ませてきたんです」
 などとシフカは引換券を取り出すのだが。
『量!?』
 信者から総ツッコミをもらったその枚数は数えてらんない。扇状態のそれは、彼女がとんでもない大食らいであることを匂わせる。
「じゃあそろそろシメるか」
 肩を回す永代の前で鳥さんは水を飲み終えて、大型ボトルを放り捨てる。
「おのれ小癪な真似を……貴様ら覚悟し」
「オラァ!!」
 永代のボディブローが鳥さんの内臓にクリティカル!水が逆流して、鳥さんが薄汚い水花火に!!
「ア?なんだ、水に飽きたノカ?」
 痙攣してる鳥さんを、アリャリァリャがツンツン。
「そんな貴様にとっておきのオヤツ……真っ黒大福ダ!」
「食事は席について召し上がってくださいねー」
 ディッセンバーが鳥さんをドラム缶にぶち込むと、アリャリァリャが嘴の中に大福をぎゅむぎゅむ。
「火薬無かったラ今の人類文明の発展は無かっタダロうナ。実際火薬は便利ダゾ!」
 なんで火薬の話?って顔する鳥さんだがこの大福、妙に香ばしい……。
「子どもから老人マデ大人気の和菓子ダガ、詰め込み過ぎテのっぴきならネーカンジになルってあるあるダナ。ソンナ時デモ花火大福ナラ!マッチ一本でスッキリ解消!」
 ここで小町とセイシィスが両サイドからドラム缶をホールド。
「「せー……の~!」」
 グルンッ!上下逆さまにセット、かーらーの。
「花火なら空に煌く大輪の華を咲かせた後は跡形もなく消え去る、まさに粋ってやつだ……鳥にはぜひとも花火の良さを『その身をもって』理解して貰わねば」
「大福のおかわりもアルゾ!」
 蒼眞が意味深なスイッチを握る傍ら、嘴に更なる大福を詰め込み。
「今こそ花火大会が中止になったストレスを鳥にぶつけるっす!」
 シルフィリアスが杖を振るえば服が解け、光の帯を形作ると彼女の体を包み込み、星を散らして弾れば、紫の布に朝顔をあしらった……お前も浴衣かよ!?
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす!屋台をめぐるためにも、食らうっすー!」
 杖から放たれる魔力が大福に引火、爆発した鳥さんがフライトゥザスカイ!!
「へっ!きたねえ花火だ……」
 蒼眞がスイッチを、カチッ。

 ――ひゅるるるる……ドッ、パァアアン……!

「トーリヤー!!」
 アリャリァリャの歓声と共に、夜空の華が咲いた。


「出店の灯りってナンカワクワクすルナ!おいしい匂いのテロみがヤバイゾ!ヌアアー唸レウチの財布ゥゥー!」
 先陣を切ったのはアリャリァリャ!提灯に導かれるままに並んだ屋台を眺めて。
「たこ焼きお好み焼きに綿菓子チョコバナナ!鯛焼きと焼きトウモロコシもあル!冷たイきゅうりでサッパリもイイゾ!」
「お祭りといえばお菓子、お菓子といえばポテチっす」
 などと語るシルフィリアスはうねる髪に無数の袋を下げた買い物済スタイル。自分の手にはポテチを構えてぱりぱり。
「ベビーカステラとか、袋に入ってる綿菓子とか、袋に包まれているリンゴ飴系とかも良さそうだよねん。果物系の飴を幾つか買ってー……飲み物系も買おっか。後は俺用のビールとお茶……へえ、電球ソーダとかあるんだ?」
 買い物を進めていく永代だが、何故か袋に納まった物ばかり……?
「人形焼き?鈴カステラ?どう違うンダ?」
「生地は同じかもしれませんが、中に入っているものや、砂糖を振るか否かなどで味が違ってきますよ」
「ソウカ!……何故そっちにイル?」
 買い物をするアリャリァリャに、二つの袋を手渡すディッセンバー。いつの間にかエプロンに三角巾の彼曰く。
「私のお祭りの楽しみ方はこちら側なんですよ。色々な屋台料理のノウハウを学ぶのは重力料理の研究にも役立ちますしね。それに屋台で次々と料理が作られるのを眺めるのって、時間を忘れるほど楽しくないですか?」
「ウチならできた所カラ食っちまうナ!」
 笑いながらカステラを頬張るアリャリァリャは隣の屋台へ。
「たこ焼きに焼きそば、わた飴にかき氷も食べたい所だな……あ、焼き鳥があるならチューハイでも……」
「コレ全部!」
「毎度ありがとうございます」
「おい!?」
 目の前で焼き鳥をアリャリァリャに買い占められた蒼眞がツッコミを入れるが、アリャリァリャはむふー。
「美味しいものは早いもの勝ちダゾ!」
「すぐに新しく焼きますから、少々お待ちください」
「お前はお前で何軒掛け持ちしてるんだ……?」
 アリャリァリャに焼き鳥を包んだディッセンバーは、小首をかしげて。
「この手の届く限り全てですが、何か?」
 ワカホリかな?さて、あっちのコンビは……。
「小町さん、良かったら一緒にどうかな~?」
「もちろん!どこ行く?綿菓子とかりんご飴とか、ジャンボ串焼きとか食べものについ目が行っちゃうけど」
「リンゴ飴とかレインボーなのも出店らしいよね~」
「そうそう、まずは鉄板な所から……なにそれ!?」
 セイシィスが持っていた、七色のアイスに釘付けになる小町。見れば、異なる味のアイスを重ねて虹を再現していて。
「どれも美味しいし迷っちゃうよね~」
「待って待って、何よそのアイス!?」
 驚く小町にセイシィスはきょとり。
「知らない?お祭りの定番だと思ってたんだけど~……」
 実はマイナーなアイスを一層ずつ味わうセイシィスに、小町はアイスをじー。
「随分と贅沢なアイスね……私も買っちゃおっと♪」
 二人でカラフルなアイスを手に、続いて向かったのが。
「やっぱり二つの意味で外せないわよね!」
 射的である。残っていたアイスをコーンまで堪能した小町が弾を購入、構えて撃ってはみるものの。
「これ絶対威力足りてないわよね……」
 そもそも当たらないし、当たっても景品が倒れない事に小町がムムム……眉間にしわを寄せると、隣にセイシィスが参戦。
「重心がぶれないように~しっかり体を前のめりにして撃つんだよ~」
 コツを見せてくれるのかと期待する小町だったが、気づいてしまった。セイシィスが前のめりになるとその豊かな胸が台に乗っかり、膨らみが柔らかく沈んで彼女の体を支えていることに。
「巨乳をバイポット代わりにしてる……!?」
 驚愕に震える小町の前で、開いているのか怪しいセイシィスの目元が引き絞られて、銃口から飛び出したコルク弾は駄菓子を弾き飛ばす。
「ほらね~小町さんもやってみて~」
「無理!!」
 そっと舞い降りてきたグリが小町の頭に乗っかり、慰めのデコポムするのだった。

「ふふふ、みんな考えが甘いっす」
 さて、勝利を確信した顔を浮かべるのは別行動していたシルフィリアス。彼女が挑む屋台は。
「お祭りといえばくじ引きっす!射的や型抜きは技術が問われるっすが、くじ引きなら誰でも当たりを引くことができるっす……!」
 そう語るシルフィリアスの目にはゲームの最新機種と人気ソフトしか見えていないようだが……駄菓子。
「くっ、もう一回っす!」
 駄菓子。
「いやいや、簡単には出ないっすよね」
 ポテチ。
「ほら、少しずつ近づいて……」
 駄菓子。
「何故っすか!?」
 ジュース。
「はっ!これはポテチにジュースでゲームが来る流れ……!」
 駄菓子。
「……大丈夫、次は当たるはずっす」
 ※この後シルフィリアスは財布の中身が空になるまで動かなかったため、以下略。


 ざわ……ざわ……どよめく人込みの中、その圧倒的な存在感に人垣が割れる。その中心を歩くのはもちろん。
「次の屋台は焼きもろこし五十本ですね……」
 元信者を荷物持ちにして、引換券を手に屋台をめぐるシフカさんです。
「姉さんどんだけ買ったんですか!?」
「大丈夫ですよ、あと十軒で終わりです」
「ひぇ……!?」
 信者達から上がった悲鳴を塗りつぶすように歓声が響く。その音源は……。
「盛り上がっていくわよー!!」
 簡易ステージに飛び入り参加して即興ライブする小町。浮遊するグリが肉球拍子して、一緒に上がった(巻き込まれた)セイシィスがギターを弾く小町に合わせて浴衣で踊る……けど、観衆の視線が彼女の胸元に集中していたのはたぶん気のせいではないのだろう、やたら揺れるし。
「お祭りライブですか……」
 コリコリコリコリ……焼きもろこしを延々かじるシフカの傍ら、レジャーシートを広げる信者達。シフカのお使いを終えた信者が帰ってくるとシフカに焼きそばを献上して。
「それでは今宵のお祭りに、乾杯」
『乾杯!!』
 信者とシフカの宴が始まった……。
「ウチらもそろそろ腰を落ち着ケルカ」
 それを眺めていたアリャリァリャが黒い大福をモグモグ、着ていた銀色の浴衣の佇まいを整えて、マッチを手にニタァと歯列を出す。
「ちょ、お前まさか……」
「前失礼しますねー」
 ディッセンバーが屋台の前にバリケードを築き、蒼眞も後ろに引っ込むと。
「タマヤアアアァァァァーーーーー!」
 歯列にマッチを滑らせた次の瞬間……。
「みんなー!ありがとー!!」
 小町のライブが終了し、観客に向かって両手を振っていたその背後、風切り音を響かせて、アリャリァリャが夜空に向かって飛んでいき。

 ……パァン!!

 弾けて番犬印の華を咲かせた。それを合図に次々と花火が上がり始める中、アリャリァリャは落下しながら河川敷の隅っこ、よく花火が見える位置に蒼い炎が灯るのを見た。
「凶はあそこカ。場所取りの土産を持って行ってやらないとナ!」
 耐熱、耐衝撃性の浴衣を風に靡かせて、地上に戻ってきたアリャリァリャは動ける番犬達と共に凶のもとへと向かう……動けない番犬?それはもちろん。
「こういうばでのおしゃけはとてもおいしぃれすよね……ひっく」
 一口飲んだだけで泥酔したシフカさんです。
「やきそばきれーれふね、はなびおいしいれす……」
 たこ焼きを食べながら、頭をぐわんぐわん揺らすシフカを、信者達が取り囲み。
「へへ、手間かけさやがって……」
「俺たちの前で酔っちまうほうが悪いんだからな」
「……ほぇ?」
 人目につかぬ茂みの中に連れ込まれたシフカはその場に押し倒されて、信者の手が彼女の浴衣を掴み……。
「あ、だめだコレマジで入らない!」
「胸元はだけてるわけじゃないのか……体冷やさないように誰か上着貸してやれ」
「ラムネ買ってきたよー」
「バッカ、姉さん酔いつぶれてるんだぞ?水かお茶買い直してこい!!」
 面倒みられてた。
「あぁ、花火が綺麗っすね……」
 シフカが信者達に介抱されていた一方で、真っ白に燃え尽きたシルフィリアスは一人、花火を眺めていると……。
「あれ、どこ行くっすかね?」
 どこかへ飛び去る永代を見かけた。彼の目的地は……。

「なんで戻ってきたの?」
「ん?皆と見れないから寂しいのかなって思ってねん」
 戦場から遥か遠く離れた、ヘリポート。もう半分は終わってしまったであろう花火を背に、永代はユキに電球型のソーダを差し出して。
「枯れ木も山の賑わいって言うし、俺が来るのは余計なお世話かなーっとは思ったけど……はい、祭りのお土産ねん」
「花火見てから来ればよかったのに」
 太陽騎士、及び太陽機は戦闘に巻き込まれれば最期。そのリスクを回避するために、番犬降下後はヘリポートへ戻ってしまう。例え戦闘終了後でも、現場への着陸はおろか、通信さえも許されない。それが、番犬と『一般人』の差である……が。
「せっかくだし、遠くからでもユキちゃんと花火見れたら良いなって思ってねん。誰と見るかが大切だし」
「なんかあったの……?」
 ニカッと笑う永代の缶ビールと、半眼ジト目のユキの電球ガラスが、花火を映してぶつかった。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年7月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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