●都内某所
そのペンライトは7色に輝き、持ち主と共に幾つもの会場で光を放っていた。
その姿は、まるで戦友。
同じ時間を過ごし、同じモノを見て、同じように感じていた……はずだった。
だが、時の流れは残酷。
時代は24色!
カラーバリエーションが7色しかないなんて、時代遅れ……というレッテルを貼られ、ゴミとして捨てられた。
だが、ペンライトの輝きは、まだ消えていなかった。
まるで自分の存在を示すようにしてボンヤリと輝き、誰かに助けを求めているようだった。
その光に導かれるようにして現れたのは、小さな蜘蛛型のダモクレスであった。
蜘蛛型のダモクレスは、ペンライトの中に入り込むと、機械的なヒールによって変化させた。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスと化したペンライトが、耳障りな機械音を響かせ、七色の光を放ちながら、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「霧矢・朱音(医療機兵・e86105)さんが危惧していた通り、都内某所にあるゴミ捨て場で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるゴミ捨て場。
この場所は大量のゴミが捨てられているものの、半ば不法投棄されたモノのようである。
「ダモクレスと化したのは、ペンライトです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスはペンライトで出来た戦車のような姿をしており、七色の光を放ちながら攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677) |
雪城・バニラ(氷絶華・e33425) |
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566) |
霧矢・朱音(医療機兵・e86105) |
●都内某所
「どうやら、私が危惧していた通りの事件が起こったようね。これは責任を取って、私が撃破しておかないと……」
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)は自分自身に言い聞かせながら、仲間達と共に都内某所にあるゴミ捨て場にやってきた。
その場所にあったのは、大量のゴミだった。
だが、そのゴミの半分以上が不法に投棄されたモノで、警告文の書かれたステッカーが袋の前面に貼られていた。
それでも、不法投棄が後を絶たず、まるで塔の如くゴミの山がそびえ立っていた。
「ペンライトの色って、24色もあるのですね。カラフルで素敵だと思いますが、7色もあれば十分ですね」
そんな中、花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)が、事前に配られた目を通した。
ペンライトは色々な種類が存在しており、単色~12色まで様々。
他にも点滅速度を調節する事が出来たり、色の変化するタイミングを調節する事が出来たりするモノもあるため、ダモクレスと化したペンライトは、時代遅れのシロモノであった。
だからと言って、ペンライトが壊れた訳ではない。
その状況で捨てられてしまったのだから、怒りが爆発しても仕方がないだろう。
ただし、それはペンライトに意志があった場合の話。
実際には、意志もなければ、感情もない……はずである。
「確かに、24色はさすがに多いと思うわね。私は7色あれば充分よ。虹の色も、7色だしね」
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)が自分なりの考えを述べた後、念のため殺界形成を発動させた。
その影響で、この場所には無関係な一般人が、誰ひとりとして近づかなくなった。
「7色さえあれば、それなりに色々なパフォーマンスが出来ると思うのだけど、やっぱり皆さんは色の種類の多さに惹かれるのですね」
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)が、複雑な気持ちになった。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ゴミの中に埋もれていたペンライトがダモクレスと化し、まるで自らの誕生をまわりに知らせるようにして、耳障りな機械音を響かせた。
「ペ・ペ・ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォ」
そして、ダモクレスは認識した。
目の前にいる相手が、敵である事を……。
ダモクレスにとって、ケルベロスは倒すべき存在である、と……。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
その事を理解したため、ダモクレスは後先考えず、ケルベロス達に突っ込んできた。
「……!」
その拍子に大量のゴミが雪崩の如く崩れ落ち、ツンと鋭い臭気が、ケルベロス達の身体を包み込むのであった。
●ダモクレス
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスと化したペンライトが耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達に対して七色のビームを放ってきた。
それは虹の如くカラフルで綺麗だったが、ブロック塀を軽々と粉々にする事が出来るほどの破壊力があった。
「……よほど私達を殺したいようね。でも、簡単に殺されるほど、私達は弱くないわ。調子に乗って、返り討ちに合うのがオチよ。それでも、いいって言うのなら、遠慮なく掛かってきなさい!」
その攻撃を避けるようにして、バニラが勢いよく飛び退いた。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
その気持ちに応えるようにして、ダモクレスがまわりに散らばったゴミの山を弾き飛ばし、再びケルベロス達に襲い掛かってきた。
それが自分の果たすべき使命であると信じているためか、全く躊躇いがなく、捨て身の特攻であった。
「さぁ、行きますよ、夢幻。サポートは、任せます……!」
それを迎え撃つようにして、綾奈がウイングキャットの夢幻に声を掛け、ダモクレスに攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
それと同時にダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達を狙って、再びビームを放ってきた。
「さすがに、これは……眩しいですね」
そのビームを避けるようにして、綾奈が壊れたブロック塀の後ろに隠れた。
その後を追うようにして、夢幻もブロック塀の後ろに隠れ、ダモクレスの攻撃を警戒した。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
その事にに気づいたダモクレスが、まわりにあったゴミを巻き込みながら、再び綾奈に突っ込んできた。
そのゴミが宙を舞うたび、照らされるのは、7色の光であった。
それはまるでパーティタイム。
ノリノリの音楽があれば、そのまま踊り始めそうなほど、カラフルだった。
「いくらノリノリでも踊る気にはならないわね。さぁ、まずはその機動力を奪ってあげるわ」
それを目の当たりにした朱音が、複雑な気持ちになりながら、ダモクレスにスターゲイザーを炸裂させた。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
その一撃を喰らったダモクレスがバランスを崩して、勢い余ってゴミの山に突っ込んだ。
それはダモクレスにとって、最大の屈辱。
ゴミの山に埋もれて、惨めな時間を過ごしてきたため、余計に腹立たしい事でもあった。
しかも、ダモクレスと化した事で、怒りも倍増!
『すべての元凶はケルベロスにあり』と言わんばかりに、怒りの矛先をケルベロス達に向けていた。
「それでは、貴方の生命エネルギーを頂きますね」
その隙をつくようにして、紅葉が素手で引き裂くを仕掛け、尋常ならざる怪力によって、ダモクレスの装甲を剥ぎ取った。
剥ぎ取られた装甲の中にはペンライトが何本も収納されており、まるで息をするかのごとく勢いで怪しい光を放っていた。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
それと同時にダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ペンライト型のアームを次々と伸ばしてきた。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」
ペンライトのアームは7色の光を放ちながら、何度もしつこくケルベロス達を殴ってきた。
それは地味に痛く、地味に強力!
「調子に乗っていると痛い目に遭うわよ……!」
バニラがダモクレスにポコスカされながら、フローレスフラワーズを発動させ、戦場を美しく舞い踊る事で、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせた。
そのおかげでダモクレスの攻撃によって傷ついた身体が、徐々にではあるが癒え始めた。
「このナイフをご覧なさい。貴方のトラウマを想起させてあげるわ」
それに合わせて、朱音が惨劇の鏡像を発動させ、ナイフの刀身にダモクレスのトラウマを映し、それを具現化させた。
それは共に戦った同志とも言うべきペンライトの所有者だった。
しかも、ひとり、ふたりではない。
ダンスチームではない気かと錯覚する程の大人数。
それが24色のペンラントを両手に持って、ダモクレスの前でハードに踊り狂った。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、トラウマ目掛けて、まっしぐら!
『何故、捨てた! 何故、何故、何故ェ!』と言わんばかりに、全力だった。
それだけ、ダモクレスにとっては受け入れ難い現実だったのかも知れない。
だが、実際にはダモクレスと化した事で、生み出された感情であった。
その事実に気づかぬまま、ダモクレスが自らのトラウマを壊して、壊して、壊しまくった!
「一体、何と戦っているのですか? 私はここですよ!」
その間に、紅葉が月光斬を仕掛け、ダモクレスを何度も斬りつけた。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
しかし、ダモクレスが相手にしたのは、朱音が作り出したトラウマであった。
それだけ、捨てられた事を根に持っていたのかも知れないが、偽りの感情が作り出された今となっては、真意は分からない。
「いまのうちに、その固い身体を、かち割ってあげます……!」
それと同時に、綾奈がスカルブレイカーを仕掛け、ルーンアックスを握り締め、高々と跳び上がって、落下と同時にダモクレスの装甲を叩き割った。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
それに対抗するようにして、ダモクレスがケルベロス達めがけて、ペンライト型のミサイルを飛ばした。
ペンライト型のミサイルは落下と共に、7色の光を放って、大量の破片を飛ばしてきた。
「ドローンの群れよ、仲間を警護しなさい!」
すぐさま、バニラがヒールドローンを発動させ、自らのグラビティで小型治療無人機(ドローン)の群れを操って、まわりにいた仲間達を警護した。
「ペンライトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
その途端 ダモクレスが警戒した様子で、間合いを取った、
「ペェェェェェェェェェェェェェンライトォォォォォォォォォォォォォォ!」
その間に、ダモクレスが次のミサイルを発射するため、エネルギーをチャージし始めた。
だが、ダモクレスのボディが熱くなっているため、実際に発射する事が出来るのは、どんなに頑張っても数秒後であった。
その数秒が戦闘に害を及ぼす事が分かっていても、ダモクレスが考えを改めるつもりはないようだった。
「エンジェリックメタルよ、私に、力を……!」
それと同時に綾奈が戦術超鋼拳を仕掛け、全身を覆うオウガメタルを『鋼の鬼』と化し、ダモクレスのコアを木っ端微塵に破壊した。
「ペンライトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
その一撃を喰らったダモクレスが、断末魔にも似た機械音を響かせ、崩れ落ちるようにして動かなくなった。
「終わりましたかね、皆さん無事ですか?」
紅葉がホッとした様子で、仲間達の無事を確認した。
仲間達はダモクレスの攻撃を喰らって、傷ついていたものの、みんな命には別条がなんいようである。
「まぁ、何とか……。それも後片付けをしておかないと……」
そう言って朱音がまわりに散らばったゴミの山を眺め、乾いた笑いを響かせるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年7月13日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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