暗闇を照らすモノ

作者:ゆうきつかさ

●山梨県某所
 キャンプ場の放置されていたのは、電気ランタンであった。
 この電気ランタンは様々な機能が備え付けられており、辺りを照らすだけでなく、ラジオを聞いたり、方位を確かめたり、携帯の充電なと字が出来たらしい。
 また乾電池だけでなく、USBにも対応しており、手回し発電をしたり、ソーラー発電をする事も出来たようである。
 だが、多機能すぎる電気ランタンも、所有者のうっかりミスで放置され、半ば置物と化していた。
 そこに蜘蛛型の小さなダモクレスが現れ、電気ランタンに機械的なヒールを掛けた。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、電気ランタンだったモノがダモクレスと化し、耳障りな機械音を響かせながら、グラビティチェインを求めて暴れまわるのであった。

●セリカからの依頼
「クライン・ベルブレッド(導く光・e53250)さんが危惧していた通り、山梨県某所のキャンプ場で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、山梨県某所にあるキャンプ場。
 このキャンプ場は多くの利用者がいるため、まずは避難させておく必要があるだろう。
「ダモクレスと化したのは、電気ランタンです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは眩い光を放ちながら、攻撃を仕掛けてくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
クライン・ベルブレッド(導く光・e53250)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)

■リプレイ

●山梨県某所
「どうやら、この場所に私の危惧していた電気ランタンのダモクレスが現れるようですね。まだダモクレスが現れるまで、多少の時間があるようですが、ここで気を抜く訳にはいきません。被害が出てしまう前に、ここにいる人達を避難させておきましょう」
 クライン・ベルブレッド(導く光・e53250)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された山梨県某所にあるキャンプ場にやってきた。
 キャンプ場は沢山の人で溢れ返っており、避難誘導をしても、なかなか応じてくれない程、みんな楽しんでいるようだった。
 だからと言って、このまま放っておれば、被害が拡大するだけ。
 その事が分かっているためか、クラインも必死にまわりの人々を説得した。
 その気持ちが通じたのか、少しずつではあるが、キャンプをしていた人々が、片付け作業をし始めた。
 もろちん、本音を言えば、BBQ。
 気の合う仲間達と、キャッキャウフフと笑い合いながら、肉祭りをしたいと言ったところのようだが、自分達の身に危険が迫っている事を知ったせいか、みんなあきらめムードで、その場を後にしていった。
「……そうですね。ダモクレスが現れてからでは、避難をしても間に合いませんし……。それにしても、最近の電気ランタンは、万能なのですね。沢山の機能が備わっているので、驚きましたよ」
 アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)が、まわりの人々を避難させつつ、電気ランタンに関する話題を振った。
 電気ランタンすべてに、沢山の機能がついている訳では無いのだが、ダモクレスと化したモノは機能性に富んでおり、キャンプ向きであった。
 その分、値段が高めに設定されているため、キャンプ場に忘れて言った事自体、驚きではあるものの、探しに帰ってこなかった事を考えると、その持ち主にとっては大した損失ではないのだろう。
「それが放置されたままとか、本当に勿体ない話だね。……とはいえ、ダモクレスと化す事が分かっていながら放っておく事なんで出来ないけれど……」
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が警戒した様子で、キープアウトテープを貼った。
 それでも、キャンプ場に残ろうとする人々がおり、『ダモクレスが怖くて、キャンプが出来るか!』と言った感じで、強気な態度を取っていた。
 そこまで意地になっているのは、キャンプにいくため、色々と準備をしていた事が、すべて無駄になってしまうのを、恐れているも知れない。
「さぁ、これで人払いはバッチリのはずよ。これでどこから現れたとしても、無関係な人が犠牲になる事はないわ」
 そんな中、雪城・バニラ(氷絶華・e33425)が殺界形成を発動させ、最後までキャンプ場に残っていた人々を追っ払った。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィイ」
 その事に腹を立てたのか、ダモクレスと化した電気ランタンが、怒り狂った様子で茂みの中から飛び出してきた。
 ダモクレスは灯台の如くそびえたった電気ランタン状の突起部分から、ケルベロス達に対して眩い光を放っていた。
「それで脅しているつもりですか……? 何の落ち度もないのに、捨てられてしまった事で、人々に対して恨みを持っているのかも知れませんが、ダモクレスと化した以上、見過ごすわけには行きません。ここで確実に……撃破します!」
 そう言ってクラインが仲間達と連携を取りつつ、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。

●ダモクレス
「まるでキャンプ場のヌシみたいに振る舞っているけど、私達が来た以上、好き勝手な事はさせないわよ。それでも、自分の思い通りにしたいって言うのであれば、私達を倒してからにしなさい……!」
 すぐさま、バニラがダモクレスの行く手を阻み、仲間達と共に陣形を組みながら、わざと挑発的な言葉を吐いた。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その挑発に乗ったダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達に対して眩い光のビームを放った。
 それは目を開ける事が出来ない程、強烈な光……。
 無理に目を開けていたとしても、何も見えなくなってしまう程、強烈な光であった。
 そのため、ケルベロス達はダモクレスを直視する事が出来ず、一斉に視線を逸らした。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その隙をつくようにして、ダモクレスがカサカサと耳障りな音を響かせ、ケルベロス達に体当たりを仕掛けてきた。
「単なる体当たりで、倒す事が出来るほど、僕らは弱くないよ」
 その事に気づいた司がダモクレスの体当たりを避け、側面に回り込むようにして、スターゲイザーを繰り出した。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その拍子にダモクレスがバランスを崩し、横滑りしながら辺りの木々を薙ぎ倒した。
「……スライムよ、敵を貫き、その身を汚染せよ!」
 それに合わせて、アクアがケイオスランサーを仕掛け、鋭い槍の如く伸ばしたブラックスライムで、ダモクレスの身体を貫いた。
 その影響でダモクレスのボディが汚染され、その部分だけ妙に毒々しくなった。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 しかし、ダモクレスは全く怯んでおらず、耳障りな機械音を響かせながら、再びビームを放ってきた。
「そのランタンよりも眩しい炎を見せてあげますよ」
 それを迎え撃つようにして、クラインがダモクレスの死角に回り込み、グラインドファイアを仕掛け、ローラーダッシュの摩擦を利用し、炎を纏った激しい蹴りを炸裂させた。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスがケモノの如く咆哮を響かせ、ボディの中に収納されていたアームを伸ばした。
 そのアームは先端が電気ランタンのようになっており、まるでバリアを張るようにして、眩い光で辺りを照らしていた。
 そのため、ダモクレスが自分のナワバリを示しているような感じになっており、『この光の中に入ってきたら、誰であろうとブチ殺す……!』と警告しているようでもあった。
「いくら眩しくしたところで、幻想的な水晶の炎を消し去る事は出来ませんよ!」
 その間に、アクアがクリスタルファイアを発動させ、熱を持たない『水晶の炎』でダモクレスのアームを斬り落とした。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 それはダモクレスにとって、破壊衝動を促進させる出来事であったらしく、耳障りな機械音を響かせながら、狂ったようにアームを振り回し、辺りの木々を薙ぎ倒した。
 その影響で近くにあったテントが潰れ、大量の土煙が舞い上がった。
「随分と怒っているようだけど、私はここよ。本気で殺すつもりでいるのなら、そんなところで駄々をこねていないで掛かってきなさい」
 その間に、バニラがフローレスフラワーズを発動させ、美しく舞い踊るようにして、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせた。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その挑発に乗ったダモクレスが、耳障りな機械音を響かせ、八つ当たり気味にガリガリと地面を削りながら、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
「真正面から攻撃を仕掛けてくるなんて芸がないね。それとも、そんな攻撃で何とかなるほど、僕らが弱いと思ったのかな? だとしたら、甘いね。……勘違いもいいところだよ」
 司が軽く皮肉を言いながら、薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑した。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その影響でダモクレスが見当違いの方向を攻撃し始め、辺りの木々が無意味に薙ぎ倒されていった。
 しかし、ケルベロス達には一発も当たっておらず、逆に遠ざかっていた。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事に気づかぬまま、ダモクレスが執拗にアームを振り回した。
 それは実に哀れであったものの、ダモクレスが自らの愚かな行いに気づく事はない。
「大丈夫ですか、癒しの光よ、仲間を護って下さい!」
 その隙をつくようにして、クラインが黄金掌を発動させ、光輝く掌をかざす事で、仲間の傷を癒した。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスの怒りが爆発し、電気ランタン型のミサイルを飛ばしてきた。
 地面に落下した電気ランタン型のミサイルは、眩い光を放ちながら、次々と爆発していき、大量の破片を飛ばしてきた。
 その破片はひとつひとつが鋭い刃の如く尖っており、ケルベロス達の身体を斬り裂き、近くの木々に突き刺さった。
「……思ったよりもやるようだね。次に喰らったら、僕でも身体が持たないかも……。まあ、僕の剣技よりも速く、ミサイルを撃つ事が出来ればの話だけど……」
 それと同時に、司が紫蓮の呪縛(シレンノジュバク)を発動させ、レイピアを華麗にふりかざし、ダモクレスめがけて衝撃波を叩き込んだ。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その影響でダモクレスの動きが封じられ、ミサイルを飛ばす事も出来なくなった。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 それでも、ダモクレスは必死に身体を動かそうとしていたが、ギチギチと耳障りな音が響くだけで、その場から一歩も進む事が出来なかった。
「意地でも動くつもりのようですが、その前にこのハンマーで、叩き潰してあげますよ!」
 アクアがアイスエイジインパクトを仕掛け、超重の一撃をダモクレスに華って、生命の『進化可能性』を奪う事で凍結させた。
「デ……ン……キィ……」
 次の瞬間、ダモクレスが勢いよく崩れ落ち、眩い光を放っていた電気ランタンの部分が、音を立てて弾け飛んだ。
「……これで、みんな安心して、キャンプを愉しむ事が出来そうね」
 バニラがホッとした様子で、ダモクレスだったモノを見下ろした。
 ダモクレスだったモノは、ガラクタの山と化しており、二度と動く事はなかった。
「このキャンプ場も、今後も変わりなく利用者が増えると良いですね」
 そう言ってクラインが、キャンプ場に視線を移した。
 キャンプ場は静まり返っていたものの、まるでケルベロス達の勝利を祝福するようにして、沢山の蛍が光を放っていた。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年7月12日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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