紫陽花の海

作者:芦原クロ

 自然に恵まれた広い公園では、紫色、白色、赤色や桃色など、カラフルな紫陽花で彩られている。
 広場へと続く歩道の両側は、青や水色の紫陽花で埋め尽くされ、歩きながら美しい紫陽花を見ることが出来る。
 レジャー用のスペースが有る広場では、色とりどりの紫陽花が辺り一面に咲き乱れ、紫陽花の海と呼ばれる光景が広がっていた。
 シートを敷いてのんびりと紫陽花を眺めたり、手作りの弁当を持ち寄ったり、近場のバーベキュー施設で新鮮な魚貝類、肉、野菜を購入してバーベキューをしたり、と。
 人々は思い思いに興じ、平穏な一日を過ごしていた。
 ふと、謎の花粉のようなものが漂い、誰の目にも映らないまま、紫陽花にとりつく。
 白色の紫陽花は巨大化し、動き出す。
 パニックになった一般人を次々と殺め、血だまりと死体だらけの無残な光景が広がった。

「タキオン・リンデンバウムさんの推理のお陰で、予知が出来た」
「紫陽花の花の攻性植物が出現します」
「急ぎ現場に向かい、攻性植物の撃破を願いたい。放っておけば、多くの命が失われてしまう」
 霧山・シロウ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0315)とタキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)は、どちらも真剣な表情をしている。
 緊迫感が漂う中、説明を始めた。

 配下は居なく、敵は1体のみ。
 警察などが一般人の避難誘導を迅速におこなってくれるので、ケルベロスたちは降下後、広場で、攻性植物を迎撃すれば良いようだ。
 一般人のことは気にせず、戦闘に集中していれば、敵の標的はケルベロスだけになる。

「あんたさん達なら、確実に撃破してくれるだろう。死傷者の出ない平和を、どうか守ってくれ」
 強い信頼の言葉と共に、頭を下げ、頼み込んだ。


参加者
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)

■リプレイ


(「カラフルな紫陽花ですか、どんな景色なのか今からでも楽しみです。ですが、それを楽しむには、まずは人々を脅かす攻性植物を倒してからですね」)
 降下し、地面に着地した兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)は、ぐるりと辺りを見回す。
(「……攻性植物に、この素敵な景色を……荒らさせる訳には、いきませんよ」)
 花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)が、胸中で強く想う。
「私達ケルベロスは、ここで攻性植物を迎え撃って、戦闘に集中だね」
 避難誘導が無い分、戦闘に思う存分集中出来る、と。
 シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)は柔らかく微笑む。
 次の瞬間、周囲の空気が重く禍々しいものに変わり始めた。
(「まさか私が危惧していた攻性植物が本当に現れるとは驚きましたね。これは、何としてでも被害を阻止せねば」)
 這い出て来た異形を前に、タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)は武器を手に取る。
(「カラフルな紫陽花で彩られた紫陽花の海か、とてもロマンチックな景観だな」)
 紫陽花が咲き誇るスペースをチラリと見て、紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)は敵に眼差しを向け直す。
(「この景観と、人々の命を守るために、ここはしっかりと戦おう」)
 黒色の双眸に、強い意志を宿らせて。
 雅雪は素早く戦闘態勢に入った。


「取り逃がさない様に気を付けよう」
 カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)がメンバーに声を掛けると、仲間たちは敵を囲むように位置取りする。
 敵が一般人の方へ向かわないよう、立ちはだかる、タキオン。
「仲間を護る自然の属性よ、加護の力を与えよ!」
 タキオンは形成した盾で、先ずは己の護りを強化する。
「……BS耐性付与に、専念してください、ね」
 綾奈が夢幻に指示を出し、夢幻は清浄なる翼を羽ばたかせ、味方に耐性を付与する。
 同時に、綾奈は輝く翼を暴走させ、光の粒子に変化すると全身で敵に突撃。
(「危ないですから、攻性植物は皆で倒してしまいましょう」)
 水龍の加護を受けた大槌を手にする、アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)。
「竜砲弾よ、敵の動きを止めてしまいなさい」
 砲撃形態に変わった大槌から、砲弾を撃ち込む、アクア。
 敵が咆哮と共にツルを伸ばして反撃する、が。
「おっと、させませんよ。ハズレです、またどうぞ」
 ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)がすかさず庇い、上手く躱す。
「紫陽花は与えた養分のphで花の色がきまると言いますが、血ですとどうなるんでしょう。ま、させませんけれど。――善き霊よ、力を貸してください」
 ジュリアスは呼び出した霊を、タキオンにつかせることで、ヒールグラビティの手助けをする。
「まずはその素早い動きを、封じてあげるよ!」
 敵の機動力を奪う飛び蹴りを浴びせ、身軽に着地する、カシス。
「月の弧の如き斬撃を受けなさい」
 紅葉は紅の和みで、緩やかな弧を描く。
 瞬間、繰り出された斬撃。
 ズタズタに斬り裂かれた敵は、怒りから全身を震わせた。
 直後、大地が震動し、人数の多い前衛陣をあっという間に飲み込む。
「魔法攻撃はあんまり効かないんですよね、フフン」
 近くに居たシルフィアを、迅速に庇っていたジュリアス。
「ありがとう、助かったよ。私はこのまま、攻撃に集中するね」
 シルフィアはジュリアスに礼を伝えてから、回復は信頼する仲間に任せ、駆け出す。
「俺は主に、BSをどんどん付与していく攻撃寄りの構成で行くぞ」
 立ち上がった雅雪は駆け出し、地面を蹴って飛び上がる。
 叩き込んだ蹴撃は、きらきらと輝く軌跡を残す。
「あなたに届け、金縛りの歌声よ」
 呪いの歌で金縛りを引き起こし、敵の動きを封じる、シルフィア。
「大丈夫ですか、すぐに回復しますね!」
 敵の高威力の攻撃により負傷した者を、タキオンが急いで癒やす。
 夢幻も前衛陣の治癒に回り、翼で邪気を祓っていた。
「まだ、ダメージが残って……いますね」
 綾奈が美しく舞い踊り、降り注ぐ花弁のオーラで、前衛陣を癒やしてゆく。
「これで地盤は固まりましたかね。そういえば白の紫陽花は色が変わらないんでした。気に病むことなく戦えそうです」
 形成した盾で自分の護りを強化し、ジュリアスは浅く息を吐く。
「スライムよ、その身を蝕んでしまいなさい」
 アクアがブラックスライムを操り、鋭い槍の如き形状で敵を貫いた。
 傷口から汚染が始まり、敵は苦痛に悶えながらも、炎の熱線を放射する。
 何度も仲間を庇っている、ジュリアスを標的にして。
「……あんまり効かないのであって、こうも喰らってると、いたた、さすがに痛いですね。まだ時間かかりそうですかね?」
 バーベキューの食材が傷まないか。ジュリアスの心配は、それである。
「ダメージ量が大きいですから、回復の回数も増えますし、時間は掛かりそうですね」
 タキオンが冷静に告げると、ジュリアスはうなだれた。


「その身体、焼き払ってあげるよ!」
 激しい炎の蹴撃を炸裂させる、カシス。
「素早い敵ですね、少し止まって下さい!」
 紅葉は全身をバネのようにして飛び蹴りを食らわせ、敵の機動力を下げる。
「植物だから、良く燃えるだろうな」
「さぁ、突撃だよー!」
 雅雪が炎を纏った蹴りを激しく打ち込み、シルフィアは超高速で敵に突撃する。
「エンジェリックメタルよ、私に力を……!」
 鋼の鬼と化した拳で、綾奈は敵に拳撃を見舞う。
 敵も反撃を繰り返し、大きな傷を負わせるが、メンバーは各々が決めた役割通り、攻防に徹した。
 メディックの回復が追いついていないようなら、他のメンバーが補う。
 人数の多さと作戦が活かされ、敵は次第に追い詰められてゆく。
 次々と付与されてゆく状態異常のせいで、ろくに反撃も出来なくなっていた。
「雷刃半キャラずらしィ! くっ、そろそろ貝がダメになります……刺身もアウトの時間ですね、なんて事だ。薪の心配もしなくては……貴方のおかげで傷んだ食材が出てきそうです、許せませんね」
「いや、流石に常温で食材保管は、してないと思うぜ?」
 敵へ怒りを募らせるジュリアスに、それとなくツッコミを入れる、雅雪。
「油断せず、こまめなキュアやBS耐性等で対処しながら、頑張りましょう」
 タキオンが鼓舞し、仲間の回復やエンチャントに専念する。
「絶空角刈りィ! ……では、後は皆さんの攻撃で倒すのを待つのみですかね」
 霊力を帯びた武器で、ジュリアスは敵の負傷箇所を斬り広げる。
 技名をさり気なくアレンジしている、料理好きのジュリアス。
(「バーベキューかぁ、とっても楽しみだよ。紫陽花の花が海みたいに見えるのも、興味深いなぁ」)
 戦後の楽しみを考え、シルフィアは少し微笑んでから、表情を引き締め直す。
「一気に攻めるよ!」
 シルフィアが敵の衰弱ぶりを確認後、仲間たちに声掛けする。
 熱の無い水晶の炎で、敵を切り刻む、アクア。
「神速の突きを、見切れますか……?」
 綾奈が目にもとまらぬ速さで突きを繰り出し、敵のツルを吹き飛ばす。
(「お腹も空いてきたし、この戦いを終えたらバーベキューを楽しもう」)
 攻撃に集中して動き回っていたカシスは、流石に空腹を感じる。
「さぁ、断罪の時間だよ。無数の刃の嵐を受けよ!」
 カシスの詠唱と共に、エナジー状の光の剣が幾つも現れ、激烈な斬撃が敵に襲い掛かる。
「そろそろ皆でバーベキューを楽しみたいので、ご退場願います!」
 竜の砲弾で敵を撃つ、紅葉。
「その傷口を、更に深いものにしてやろう!」
 逆側から敵の懐に飛び込み、空の霊力を纏った斬撃で敵の傷を斬り広げる、雅雪。
「パズルに潜む竜よ、その力を開放せよ!」
 シルフィアの呼び掛けに応え、竜を象った強烈な稲妻が光と音を共にし、敵を貫く。
 敵は灰となり、消滅した。


「先程発生しました脅威は去りました。BBQなどの続きをしていただいても大丈夫です。ただ食中毒には気を付けてくださいね、本当に」
 仲間たちにヒールを任せ、ジュリアスは避難を解除しても大丈夫な旨を報告する。
「この季節、一寸の時間で傷みますからねえ。皆様がおいしく食べれますように」
 食事を楽しみとしているジュリアスは、他の人々も美味を堪能して欲しいと、思うのかも知れない。
「バーベキュー施設で楽しいお食事でもしましょうか」
「私達も、バーベキューを、楽しみましょう……」
 ヒールでの修復も完了し、一般人やジュリアスも戻って来たのを確認してから、アクアと綾奈が全員を誘う。
「よし、俺達もバーベキューを楽しむぞ」
「私もバーベキューで、いっぱいのお肉を食べたいな」
 雅雪とシルフィアが頷き、メンバーはバーべキュー施設へ向かう。
 施設で調理器具や機材をレンタルし、ドリンクボックスとアイスボックス、食材の入ったクーラーバックを、仲間たちは分担して持つ。
(「バーベキューか、とても楽しそうだね」)
 紫陽花が良く見える場所に、仲間と共にテーブルや椅子、タープや機材をセッティングしながら、カシスは期待を膨らませる。
「食材は鮮度が命!」
 ジュリアスが率先して肉や野菜、キノコ類や魚介類を、網の上で焼き始める。
 手慣れた様子で魚をホイル焼きにし、ホタテ、イカ、牡蠣、海老、蟹などは十分加熱してからトングで簡易皿に移してゆく。
 にんにくはおろしてタレに混ぜ、焼き上がった椎茸には醤油を。
 ズッキーニは弱火でじっくり焼いて甘みを増し、食感も楽しめるように。
「四季折々の旬の食材が、調理という過程を経て食せる芸術へと変わる。美ですよね」
 ジュリアスは焼き加減を調節し、自分も食べることを忘れない。
「この魚介類とか、とても美味ですね」
 いい具合に焼け、魚介特有の旨みにタキオンは舌鼓を打つ。
 玉ねぎ、ピーマン、コーン、ジャガイモ、キャベツ、ニンジン、アスパラ、パプリカ、白ネギ……と、野菜も沢山有る。
「お肉に野菜、色々とあって楽しいですね……」
 綾奈は美味しそうに焼き上がった食材を前に、どれから食べようか迷っている。
 綾奈の無表情は崩れないが、雰囲気が柔らかく、楽しんでいることが伝わって来る。
「おっ、いい香りだ、上手な具合に焼けてきたかな? ジュリアス、これはどうだ?」
 食材を焼くことを楽しんでいた雅雪が、ジュリアスの意見を求める。
 クーラーバックから、よく冷えた刺身を取り出し、皿に並べていたジュリアスは、呼ばれて視線を向ける。
「焼き色も良いですね。大丈夫です。皆さんドリンクやアイスも有りますよ」
「私はアイスを頂きます」
 ジュリアスの言葉にアクアが反応し、ひんやりと冷えたアイスをカップに入れ、食べ始める。
「冷たくて美味しいですね」
 頬を緩めて微笑み、満足そうなアクア。
「わー、お肉が沢山。とても美味しそうだよ!」
 シルフィアは、焼き上がった牛肉、豚肉、鶏肉、ウィンナーを見て、瞳を輝かせる。
「やっぱりバーベキューと言ったら肉だな、とても美味しいよ」
「お腹空いたから沢山食べるよ!」
 カシスとシルフィアは、肉を中心に食し、厚切りのサーロインステーキも豪快に頬張っている。
「色々とあって美味しそうですね、沢山食べますよー!」
 箸を進める紅葉、その隣で調理に励んでいる、ジュリアス。
「完成です。トマトをホイルで包んでチーズと一緒に焼いてみました。そしてこちらは、ポン酢です。貝、肉、野菜、どれと組み合わせてもさっぱりしていて相性が抜群ですね」
 ジュリアスが作ったものをテーブルの上に置くと、驚く一同。
「まさかポン酢をバーベキューで作るとは……驚きました」
「調理スキルが高すぎます」
 タキオンと紅葉が、感心の声をあげる。
「折角ですし、使って食べてみましょう」
「食べてみるね。うん、さっぱりしてて美味しいよ」
 タキオンが促し、カシスがいち早く肉をポン酢につけて食べた。
「トマトとチーズの、ホイル焼きも……」
 食べ終えてからコクッと頷く綾奈を見て、綾奈と仲の良いメンバーは、美味しいのだと察する。
「どちらも美味しいですね」
 紅葉が綾奈に微笑みを向け、綾奈と仲良しのカシスとタキオンも、柔らかな表情を向けた。
「締めは焼きそばがいいですかね」
「シメまで考えてるのか。よし、食べまくるぞ!」
「わー、美味しいものが沢山だよー!」
 ジュリアスの言葉に、雅雪とシルフィアが喜び、楽しそうに待機。
(「紫陽花ですか、もうそんな季節になったのですね」)
 アイスを食べ終えたアクアは、紫陽花を眺めて思案してから、賑やかなメンバーの中に入る。
(「バーベキューを楽しめる広場、そして紫陽花の海、本当に素敵ですね」)
 彩り豊かに咲き誇り、紫陽花が織りなす自然のグラデーションは、雅やかで圧巻の美しさがある。
 見渡す限りに咲き乱れる、情緒あふれる紫陽花の海を、綾奈は暫し堪能するのだった。

作者:芦原クロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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