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夏が近づくこの時期、日本は梅雨に入って雨が降ることも多い。
しかしながら、そんな梅雨の晴れ間、ヘリポートへと久々にやってきたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が大きく背伸びして。
「こんにちは。良ければちょっとパワースポットになんて行ってみようか」
現在の情勢としては、大阪城の攻性植物との最終決戦を控えている状況。
その勝利を祈願して、とある神社へと皆で行きたいとリーゼリットは語る。
その神社は各地によくある形式のもので、正月などには多数の人々が訪れるというから、それなりの規模の神社らしい。
「決戦の勝利を願うのもいいけれど、他にも大切な人の無事を祈ったりするのもいいね」
自分自身で絵馬に祈願することを文字に起こし、神社に奉納するのもいいだろう。
境内には売店も設置されている。
お守り、お札、根付他、小物など、自分、または誰かのお土産にするのもいい。おみくじもあるので運試ししてみるのもいいかもしれない。
祈願を終えたら、近場の茶店で腹ごしらえしたり、甘味を口にしてもいい。時期的にそれほど人は多くないので、のんびりと楽しむことができるはずだ。
一通り説明を終え、リーゼリットは自身のヘリオンへと乗るようケルベロス達へと促す。
「折角パワースポットへと向かうのなら、次になすべきことを行う力にしたいかな」
リーゼリットもまた、これからもケルベロスとして活動できるようにと祈願したいと語った。
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パワースポット。
地球には特別な場が点在しており、そこには大地の力が漲っているとされる。
全国に点在する神社もその一つとされており、霊場、聖地として社が建てられて神社となったのか、自然崇拝の高まりによって力が集まったのか、どちらかは分からない。
ともあれ、デウスエクスとの戦いを重ねるケルベロスとしても、余裕があるうちにそうした力場からパワーを得ておきたいところである。
パワースポットである神社へと行こうという誘いを耳にした褐色肌のドラゴニアンの青年、ロコ・エピカ(テーバイの竜・e39654)。
その誘いに乗り、ふらりとヘリポートへと足を向けたロコはそこで思わぬ人と再会する。
「丁度、日本へ戻りました。エピカさん」
そこに、角と翼をワイルド化させたドラゴニアン女性、ホリィ・グリーン(柊・e61747)がすごい勢いでやってきたのだ。
これには、さすがのロコもびっくりしたらしい。
ロコは春にも、ホリィとひなたぼっこのお誘いへと出かけていた。
その時、ホリィはすぐ日本を発つ為、桜が咲く光景を見られないとのことで、満開の桜を写真に収めて送ってほしいとロコに依頼していた。
それを受け、ロコは春のうちに頼まれた写真を用意はしていたのだが……。
今回の話を受け、彼は日付と時間と名前だけを書いた手紙を、気まぐれに投函する。なお、桜の写真は同封しなかったようだ。
返事がいつになるのかと思っていたのだが、まさかその前にホリィ本人が直接来るとは。
「不穏で憂鬱な情勢でしたが、届いた手紙を見て急旋回してきました」
滞在先に届いたその手紙に文章はなく、ただシンプルな数字と語句のみが書かれていた。
それにホリィは緊急性を感じ、ロコの書いた日時に間に合うよう急いで駆けつけたそうだ。
「エピカさん、エピカさん。どういう風の吹き回しですか」
息を整えつつ、距離を詰めて問いかけてくるホリィの様子に驚いたロコではあるが、自然に笑みが零れて。
「いいタイミングで良かった」
2人は共に、今回誘ったヘリオライダーの操縦するヘリオンへと乗り込んでいくのである。
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程なくして、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)のヘリオンが降り立ったのは、関東某所のとある神社。
「到着したよ。皆忘れ物のないようにね」
彼女は操縦席から機内へとアナウンスを響かせた。
普段、ケルベロスは高空から現地へと飛び降りることも多いが、今回は着陸するまでゆっくり止まってから外へと出る。
「大阪城決戦の勝利を祈願しに行くよ!」
長い銀の髪の少女、エマ・ブラン(白銀のヴァルキュリア・e40314)はリーゼリットだけでなく、同じくヘリオンに同乗していたユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)や雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)と一緒に参拝したいとのこと。
「みんなで祈れば、きっと完全勝利だよ」
エマは楽しそうに微笑み、彼らとヘリオンを降りていく。
ロコとホリィの2人も続いて降りていくが、久々の再会とあってつもる話も尽きないようで。
「エピカさん、早くいきましょう!」
ホリィは子供のようにロコの周りを纏わりつく。
「まあまあ、ここは神社だ。参拝中は静かにね」
そんな珍しくテンションの高い彼女を宥め、ロコは拝殿に向かう。
しかし、彼は祈るというよりは挨拶を行う形で、祈願はしない。
叶うことは自分で叶えたいという考えが彼の中にはあったようだ。
なお、隣のホリィは手早く無病息災を祈っていた。
エマは同行のメンバーと楽しく語らいながら、お賽銭を入れてお祈り。
この先どうなるかはわからないが、ともあれ祝勝祈願。
「この勢いのままエインヘリアルのゲートも見つけられると良いな」
とんとん拍子に進展していくなら、エマも嬉しいのだが、果たして。
「さて、せっかく神社に来たんだし、みんなでおみくじも引いていこう」
エマを先頭としたケルベロス一行は売店へと向かい、おみくじを引いてみる。
エマが引いたのは……大吉。なお、隅に整理番号なのか、90と書かれてある。神の御助けがあり、喜びの光が差すとのこと。
「これは流れが来てるね」
運気を感じ、笑みが零れるエマの同行者達は……。
ユリアは小吉、徐々に良い兆しありとのこと。
リュエンは末吉。不成功の兆しがあるが、よく再考して過ちを文溜めれば元の通りになると記されていた。
そして、リーゼリットは、大吉を引いていた。隅には、80とある。
日頃の精進の甲斐もあって、心のままに何事も叶うとのこと。
「よかったね♪」
「ありがとう。願い、叶うといいね」
エマも一緒になって喜ぶとリーゼリットは嬉しそうに微笑み、そのくじを近くの木の枝へと結んでいた。
ロコ、ホリィ組も売店の方へと向かう。
「はい、おみくじですか?」
ロコが支払ってくれたおみくじが気になり、ホリィは早速そのおみくじを開いてみてみると……。
中吉。隅には、72とある。
今はあまり良くないかもしれないが、自身を慎めば問題は消滅していくとのこと。
「………………」
悪くはないが、微妙な結果にホリィは首を傾げる。
(「……あぁ、分かり易い」)
その様子に、ロコも可もなく不可もなくといった結果だとすぐに思い至る。
なお、そのロコはホリィがおみくじに気を取られている間に、もう一度売店へと向かっていた。
ホリィもロコがいなくなったと思っていると、すぐに戻ってきた彼からこんな言葉が。
「ホリィ、今日のお土産」
そう告げたロコから差し出した品は3つ。
まず、つい先ほど売店で購入した旅行安全お守り。2つ目は、先日頼んであった桜満開の写真。そして……。
「君の誕生日は過ぎているけれど、同じ月だから大目に見てね」
それらを確認したホリィは固まってしまう。もう一つは6月に誕生日を迎えたホリィへとバースデーカードだったのだ。
(「確かにお願いしましたけれど、私も誕生日でしたけれど」)
そう考えたホリィの口から思わず。
「ひぇ……」
「……どういう反応なのかな、それは」
「す、すみません……」
口から出た失礼な対応に、ホリィは詫びる。
「大丈夫、気にしてない」
ロコの言葉に、ホリィはあわあわしながらもやや捲し立てるようにして。
「19歳になりました。背丈も伸びました」
「来年はもう二十歳だね。……背は僕より伸びないでほしい」
ホリィの背が伸びたとはいえ、それでもまだロコは15センチほど高い。
「それでは、茶店に寄ろうか」
「はい、行きましょう」
少しだけ彼を見上げる態勢で歩くホリィはにこにこと上機嫌になって笑う。
(「私はまだ子供ですね」)
見上げる空は雲が浮かぶが、太陽が顔を出している。
ロコもそんな明るい梅雨の晴れ間を見上げながら、近場にある茶屋まで向かっていくのである。
その後、しばらくして、エマがヘリオンへと戻ってくる。彼女も売店や茶店へと立ち寄っていたようだ。
「何を買ったんだい?」
ヘリオンの操縦席へと着こうとしていたリーゼリットの問いに、終始笑顔のエマは見せてくれたのは、良縁成就のお守り。
「良い縁があるといいね」
「うん!」
そうして、ヘリオンの離陸準備が整う間、エマは客席へと向かう。
座席に座ったエマは改めてそのお守りを眺めて。
はぁ……。
何か思うことがあったのか、白銀の戦乙女は不意に溜息をついたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年6月30日
難度:易しい
参加:3人
結果:成功!
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