荒ぶるエレキギター!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化したビルに、エレキギターが捨てられていた。
 それは夢見た一人の男が奏でていたモノ。
 しかし、男の夢が無惨に破れ、絶望のどん底の中、捨てられたモノでもあった。
 それに引き寄せられるようにして現れたのは、蜘蛛型のダモクレスであった。
 蜘蛛型のダモクレスは、エレキギターの中に入り込み、機械的なヒールで家電製品っぽいダモクレスに変化させた。
「エレ、エレ、エレキィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化したビルの壁を突き破り、グラビティ・チェインを奪うため、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「姫神・メイ(見習い探偵・e67439)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化したビルでダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが現れたのは、廃墟と化したビル。
 この場所に捨てられていたエレキギターが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、エレキギターです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、グラビティ・チェインを求めて攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)
姫神・メイ(見習い探偵・e67439)
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)
ミアン・プロメシュース(瑠璃の処罰者・e86115)

■リプレイ

●都内某所
「まさか私の危惧していたダモクレスが本当に現れるとは……」
 姫神・メイ(見習い探偵・e67439)は仲間達と共に、ダモクレスが確認されたビルにやってきた。
 このビルには以前まで楽器店が入っていたらしく、気軽に上の階で練習をする事も出来たらしい。
 そのため、ミュージシャンを夢見る者達が頻繁に出入りしていたようだが、そこで夢を叶える事が出来たのは、ごく一部。
 それ以外の者達は、夢破れて、ここを去っていったようである。
「エレキギターのダモクレスかぁ。前に生演奏も聴いたこともあるけど、中々エレキギターの音も良いわよね。まぁ、ダモクレス化したなら放ってはおけないけど……」
 霧矢・朱音(医療機兵・e86105)が、深い溜息を洩らした。
 それまでの経緯を考えると、同情したい気持ちもあるのだが、既に警察や消防によって、避難が済んでいるため、ここで考えを改める訳にもいかなかった。
「おそらく、価値のある物だったんでしょうね」
 そんな中、静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、何処か遠くを見つめた。
 出来る事なら、回収したいところだが、ダモクレスと化した事で、原型を留めていない可能性が高かった。
「私はあまり楽器の心得がないですけど、きっと良い音楽を奏でてくれた品だったのでしょうね」
 タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)が複雑な気持ちになりつつ、廃墟と化したビルを見上げた。
「エレエレエレキィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが廃墟と化したビルの壁を突き破り、奇妙な機械音を響かせた。
 ダモクレスは幾つものエレキギターが融合しているような形をしており、耳障りな音がケルベロス達を苛立たせた。
 それはまるで無数の悲鳴。
 地獄の底で助けを求める亡者の悲鳴。
「これは……酷い」
 その音を耳にしたルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)が両手で耳を押さえ、嫌悪感をあらわにした。
 だが、亡者達の悲鳴はケルベロス達の体に纏わりつき、穴と言う穴から入ってきそうな勢いだった。
「確かに、この状況は……放っておく訳にはいかないね」
 すぐさま、カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が、ダモクレスに攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「エレエレエレエレキィィィィィィィィィィィ!」
 それを迎え撃つようにして、ダモクレスが耳障りな音を響かせ、音符の形をしたビームを放ってきた。
「まさかエレキギターがここまで大きな変貌を遂げるとは。ダモクレスの驚異の技術力……というところでしょうか。いずれにせよ、捨て置くことのできない存在ではあります。確実に、破壊すると致しましょう」
 ミアン・プロメシュース(瑠璃の処罰者・e86115)が身の危険を感じ、ダモクレスが放ったビームを避けた。
 音符型のビームは、そのままビルの壁を突き破り、水道管を破壊して、大量の水を噴出させた。
「相手は1体とはいえオレ達を纏めて相手できるほどの強さだ。油断せず、きっちり倒そうぜ」
 そう言って相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が自分自身に気合を入れ、自らの闘気を鎧の如く身に纏うと、躊躇う事なくダモクレスに攻撃を仕掛けていった。

●ダモクレス
「エレ、エレ、エレキィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、再び音符型のビームを放ってきた。
 音符型のビームは様々な形に変化し、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
「……みんな覚悟は良いな?」
 すぐさま、タキオンがメタリックバーストを発動させ、全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出すると、仲間の超感覚を覚醒させた。
「仲間を護る属性のエネルギーよ、盾となれ!」
 それに合わせて、タキオンがエネルギーで盾を形成し、音符型のビームを防いだ。
「エレ、エレ、エレキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事に腹を立てたダモクレスが苛立った様子で、再び音符型のビームを放ってきた。
「それなら、これで……」
 ミアンが大きな胸を揺らしながら、阿頼耶識から光線を放って、音符型のビームを相殺した。
「周囲の地面ごと、貴方を叩き潰してあげるわ!」
 それに合わせて、朱音がグラウンドブレイカーを仕掛け、グランドロンの強靭な腕力で、周囲の地面ごとダモクレスを叩き潰した。
「だから、しばらく大人しくしてもらうわよ」
 続いてメイがスターゲイザーを放ち、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りで、ダモクレスを足止めした。
「まずは、その素早い機動力を封じてあげるよ」
 カシスも同じようにスターゲイザーを放ち、ダモクレスにアスファルトの地面に蹴り飛ばした。
「無限の剣よ、我が意思に従い、敵を切り刻みなさい!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、ルピナスが暗黒剣の嵐(アンコクケンノアラシ)を発動させ、エナジー状の剣を無数に創造し、ダモクレスのボディを斬りつけた。
「エレ、エレ、エレキィィィィィィィィィィィィ!」
 だが、ダモクレスはまったく諦めておらず、地面の裂け目から這い上がって、再び音符型のビームを放とうとした。
「エクトプラズムよ、敵の動きを止めなさい!」
 その事に気づいた朱音がプラズムキャノンを仕掛け、圧縮したエクトプラズムで大きな霊弾を作って、ダモクレスにぶち当てた。
 その途端、ダモクレスがバランスを外し、見当違いの方向に飛んだビームが、ビルに当たって瓦礫の雨を降らせていた。
「このナイフを、ご覧なさい。貴方のトラウマを想起させてあげます」
 ルピナスがナイフの刀身に、ダモクレスのトラウマを映し、それを目の前で具現化させた。
 そのトラウマは、ダモクレスがエレキギターだった時のモノ。
 夢破れた者の悲鳴が響く中、ダモクレスがホディを震わせた。
「ヤ、ヤメロ……ヤメテクレェェェェェェェェェェェ!」
 その悲鳴を掻き消すため、ダモクレスがエレキギター型のアームを、狂ったように掻き鳴らした。
 しかし、具現化させたトラウマは消える事なく、ダモクレスに迫っていた。
 そのため、ダモクレスは自らの不安を具現化させる勢いで、アーム事に異なる音を響かせた。
「そんな事をしても、無駄ですよ」
 ミアンがハンマーを砲撃形態に変形させ、竜砲弾でダモクレスのアームを破壊した。
「吹雪の様に舞う鈴蘭を、その身に受けてみなさい」
 それに合わせて、依鈴が鈴蘭の吹雪(スズランノフブキ)で鈴蘭の花弁を、まるで吹雪の様に飛ばし、ダモクレスを攻撃した。
「これでも喰らえ! オラオラオラオラオラオラオラ!」
 続いて泰地が一気に間合いを詰め、牽制怒涛蹴り(ケンセイドトウゲリ)を仕掛け、無数の蹴りを放ってダモクレスのアームを破壊した。
「さぁ、スライムよ、敵を丸呑みにしてしまいなさい!」
 それと同時に、朱音がレゾナンスグリードで、ブラックスライムを捕食モードに変形させ、ダモクレスのアームを丸呑みした。
「ヤ、ヤ、メ、ロロロロロ……」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、ケルベロス達から離れていった。
「まさか、この状況で逃げる事が出来ると思っているのかしら?」
 その行く手を阻むようにして、依鈴もレゾナンスグリードを仕掛け、同じようにブラックスライムを捕食モードに変形すると、残っていたダモクレスのアームを丸呑みさせた。
「エレ、エレ、エレキィィィィィィィィィィィィィィ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、エレキギター型のミサイルを飛ばしてきた。
 エレキギター型のミサイルは、アスファルトの地面に落下すると、音符型の破片を飛ばしてきた。
「……すぐに治療します」
 タキオンがメディカルレインを発動させ、薬液の雨を降らせる事で、仲間達の傷を瞬時に癒した。
「……よし! 一気にカタをつけるぞ!」
 その間に泰地がダモクレスの死角に回り込み、卓越した技量から達人の一撃を放って、ダモクレスの装甲を剥ぎ取った。
「それだけで済むと思ったら、大間違いですからね」
 続いて、ルピナスがジグザグスラッシュを仕掛け、ジグザグに変形させたナイフの刃で、ダモクレスのボディを斬りつけた。
 それと同時に、ダモクレスのパーツが宙を舞い、耳障りな音を辺りに響き渡せる事が出来なかった。
「エ、エ、エレキィィィィィィィィ!」
 だが、ダモクレスは諦めておらず、再びミサイルを放とうとした。
「私の眼は、欺けないわよ……」
 次の瞬間、メイが探偵の眼力(タンテイノガンリキ)を発動させ、探偵の経験によって培われた鋭い視線を相手に飛ばすことで、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「さぁ、断罪の時間だよ。無数の刃の嵐を受けよ!」
 それに合わせて、カシスが断罪の千剣(ダンザイノセンケン)を仕掛け、罪を浄化するため、エナジー状の光の剣を無数に創造すると、ダモクレスのボディを斬りつけ、装甲を剥ぎ取った。
「処罰を執行します」
 その隙をつくようにして、ミアンがハンマーを振り上げ、処罰の一撃を繰り出し、ダモクレスのコアを破壊した。
「エレキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが断末魔にも似た機械音を響かせ、崩れ落ちるようにして機能を停止させた。
「ふう、エレキギターって結構音量が大きかったのね」
 依鈴がホッとした様子で、ダモクレスだったモノに視線を落とした。
 そこにはアームと化したエレキギターが転がっており、少し手を加えれば使えそうな感じであった。
「皆お疲れ様、お怪我はないかしら?」
 そんな中、メイが仲間達に駆け寄り、怪我の有無を確認した。
 幸い仲間達に怪我はないものの、みんな暑さでヘトヘトだった。
「念のため、周囲を軽くヒールで修復しましょうか」
 そう言ってタキオンがカシスと共にヒールを使い、壊れた場所を修復した。
 その間に、泰地が付近の警察や消防に対して、ダモクレスを討伐した事を知らせに行くのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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