ミッション破壊作戦~剣閃流星雨

作者:坂本ピエロギ

「グラディウスが使用可能になりました。これよりミッション破壊作戦を開始します」
 ヘリポートに集合したケルベロスを見回して、ムッカ・フェローチェ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0293)は説明を開始した。
「本作戦ではビルシャナの強襲型魔空回廊を攻撃します。場所は鳥取県の浦富海岸です」
 5月末に岡山の回廊が破壊され、ビルシャナのミッション地域は既に1か所を残すのみ。16箇所の回廊へ攻撃を続けて3年と5ヶ月、完全解放に王手をかけた状態だ。
「今回の作戦では攻撃先を指定する必要はありません。ミッション地域を解放できるよう、頑張って下さいね。……では、今回が初参加の方もいらっしゃるかもしれませんので、まずグラディウスの説明から始めます」
 そう言ってムッカは、一振りの剣をケルベロスに掲げてみせた。
 長さ70センチ程の剣型兵器『グラディウス』。ミッション破壊作戦の華ともいえるこの剣は、魔空回廊にダメージを与えられる唯一の道具である。
「グラディウスに『魂の叫び』を込めれば、充填されたグラビティ・チェインとともに爆炎と雷光が発生して回廊を攻撃します。この攻撃はグラディウスを持たない者に無差別に襲い掛かりますので、攻撃完了まで手を離さないで下さいね」
 攻撃対象である魔空回廊はミッション地域の中枢にあり、通常の手段では到達することが出来ない。そこでミッション破壊作戦では、ヘリオンで回廊の真上まで向かい、高高度からの降下による強襲攻撃を実行する。
「強襲型魔空回廊の周辺には強力な防衛部隊が展開し、さらにドーム型のバリアが回廊本体を守っています。皆さんはヘリオン降下後、回廊のバリアをグラディウスで叩き、魂の叫びを込めて下さい。そうすれば、回廊への攻撃は自動で行われます」
 最終攻撃目標である浦富海岸に対して、今までに行われた攻撃回数は1回。
 回廊へのダメージは蓄積するため、最大でも10回程度の攻撃を行えば、確実に破壊することが可能と言われている。
「グラディウスは爆発や雷光に合わせ、スモークで周囲を覆う力も有しています。皆さんは攻撃を終えた後、速やかにその場から撤退を行って下さい。グラディウスを持ち帰ることも忘れないで下さいね」
 ジグラット・ウォーで大量のグラディウスを確保することに成功した現在も、この兵器が有限であることには変わりない。
 そうしてムッカは、最後に注意事項の説明へと移った。
「回廊を攻撃し、ミッション地域を離脱できればミッション破壊作戦は成功です。ただし、グラディウスの攻撃で回廊のデウスエクスすべてを無力化することは出来ません。離脱の際には、強力な個体との戦闘は免れないと思って下さい」
 回廊を覆うスモークは、しばらく経つと消滅してしまう。
 離脱や戦闘に時間がかかり過ぎれば、迎撃態勢を整えた敵勢力に包囲されるリスクもあるので、速やかに強敵を倒して離脱することが望ましい。
「万が一時間に間に合わなかった場合、降伏か暴走で撤退するしか手がなくなるでしょう。状況次第ではグラディウスが奪取される恐れもありますので、十分に注意して下さい」
 今回の作戦で回廊を破壊出来れば、ミッション地域を有するデウスエクスが、またひとつ消滅する。
 オーク、竜牙兵、ドラグナー、ローカスト、ドリームイーター……その次に連なる種族がビルシャナとなるか否かは、この作戦の結果次第で決まることだろう。
 そうして説明を終えたムッカはケルベロスたちへ一礼すると、
「それでは発進します。どうか皆さん、ご武運を!」
 搭乗用のハッチを解放し、操縦席へと向かうのだった。


参加者
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
岡崎・真幸(花想鳥・e30330)
雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)
灰山・恭介(地球人のブレイズキャリバー・e40079)
鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)

■リプレイ

●一
 日本海に面した海辺の空を、1機のヘリオンが飛んでいく。
 目的地は鳥取県浦富海岸。ビルシャナ種族が保有する最後のミッション地域だ。
「中枢エリアの上空に入ったみたい。もうじき到着だね」
 アンゼリカ・アーベントロート(黄金騎使・e09974)は窓の外を見つめ、次第に近づいてくる強襲型魔空回廊を凝視する。
「あれがビルシャナ種族最後の回廊か……今日で1つの侵攻を終わりとしたいね」
「ああ。確実に破壊しなければな」
 雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)は頷きを返すと、光剣グラディウスに目を落とした。この兵器を使用するのは、実に2年ぶりだ。
「成し遂げてみせる。英雄の名に懸けて」
 魂の叫びに雑念が混じらぬよう、瞑目して精神を研ぎ澄ます真也。
 いっぽう灰山・恭介(地球人のブレイズキャリバー・e40079)は、きびきびとした動きで降下の支度を整えていた。
「装備よし。撤退経路のチェックよし……と」
 ミッション破壊作戦には初参加となる恭介の顔には、張り詰めた緊張感が伺える。
 そんな彼の横では、シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)が一足先に降下の準備を完了したところだった。
「よし。これで装備OKだ!」
 普段の降下時とはうって変わって、今日の彼はポンチョにゴーグルという出で立ち。別に用意したタオルはきっちり人数分揃えてある。
「天気は快晴で、波も穏やかだけど……万一のこともあるしね」
「おう、備えあれば憂いなしだ。きっちりカタつけてやろうぜ!」
 同じくゴーグルを装着した鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)は、ヘリオンの窓からミッション地域の中枢を見下ろした。美しい景勝地の片隅、回廊の周辺を守るように徘徊するのは、ビルシャナ『梟羅漢』の群れだ。
「力を振るう意味すら失い、盲目的に教えを繰り返す……か」
 岡崎・真幸(花想鳥・e30330)は、不憫の色を声に滲ませて言う。
(「……終わらせてやらねば」)
 ビルシャナとなった以上、もはや人間には戻れない。弱者救済を教義に掲げ、人々の命を奪い続ける――そんな悲劇の連鎖は、断ち切らねばならなかった。
「梟丸……あんたの置き土産に、決着をつけさせてもらう」
 ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)は、かつて大菩薩再臨の戦いで撃破したビルシャナの名を呟く。
「行こうチビ助。着いたみたいだ」
 中枢エリア侵入のアナウンスが流れると、ハインツは彼のオルトロスを連れ、仲間と共に開放されたハッチへ立つ。
 前回の破壊作戦から4か月。今度こそ全てを終わらせる。
「では参りましょう。ミッション地域解放のために!」
 一番槍で降下するイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)。
 彼を筆頭に一人また一人と、ケルベロスは大空に身を躍らせるのだった。

●二
 叩きつける潮風を肌に浴びながら、8頭の番犬が降下していく。
 あちこちに傷を負った回廊なれど、その威容はいまだ健在。侵略者の拠点に今度こそ引導を渡すべく、イッパイアッテナはグラディウスをバリアに突き刺した。
「勇気ある民に報いるため、浦富海岸を取り戻す!」
 声を聞きつけて、梟羅漢の防衛部隊が地上で慌しく騒ぎ始める。
 だが、それは無駄な足掻きだった。彼らに攻撃を止める術は、何一つない。
「大事な存在を守りたかった、その思いに敬意を。だからこそ――貴方たちの魂に、せめて安らぎあれ。今ここで解放する!」
 刹那、爆炎が地上を埋め尽くす。グラディウスの炎が、回廊を飲み込んでいく。
 次いで降下してきた真也は、逃げ惑う梟羅漢の群れに向かって告げた。
「お前たちの所業の先には、屍の山があるのみ。それは正義ではない、純然たる悪だ!」
 バリアめがけて、一閃。
「終わりにしよう梟羅漢。負の連鎖を断ち切ってやる!!」
 轟く雷光は回廊を穿ち、地上を悉く焼きつくしていく。アンゼリカはその景色を見下ろしながら、3発目の叫びを込めた。
「ビルシャナの侵略に終止符を。この地に生きる人々に平和を」
 景勝地として知られた、浦富の美しい自然。それを取り戻すため。
 布教がもたらす暴力の連鎖。それを断ち切るため。
「さぁ砕けたまえ、魔空回廊ッ」
 叫びが、爆炎となって降り注ぐ。
 次いで降下してきた恭介は、炎の中を逃げ惑う梟羅漢へ語り掛ける。その手には、光剣をしっかりと握りしめながら。
「お前たちにも、大切なものがあったのだろう」
 それはかつて、デウスエクスに親しい者を奪われた恭介も共感を覚えるもの。
 しかし――悪の道に堕ちた以上、すべきことは1つだけだ。
「もう、今のお前たちには何もない」
 罪なき人の命を脅かし、ビルシャナを増やすだけの化物。己が憎む存在に成り下がった者たちに、もはや正義はない。
「せめて俺の……命守る正義で引導を渡してやる! 消え去れ!」
 雷の衝撃が回廊を叩き、傷を刻む。
 残るグラディウスは4本。次いで降下してきたシルディは、全身の体重をこめてバリアへと切りつけた。
「君たちが助けを求めているときに……駆けつけられなくて、ごめんね」
 シルディはケルベロス――デウスエクスに抗える、唯一の存在。
 それは地球の人々にとって救世主にも等しい存在だ。だが番犬とて、助けを求める人々の全てを守れるわけではない。救いの手から零れた者たちが邪な誘いに縋ったとして、誰にそれを責められるだろう?
 だがそれも過去の話。彼らを放置することは、新たな犠牲者を増やすことと同義だ。
「いま助けを求める人たちを、傷つけさせる訳にはいかないんだ。だから……」
 狙いが涙で滲まぬよう柄を握り、シルディは叫びを込めた。
「それはきっと望まないだろうから……終わらせよう!」
 爆炎が降り注ぎ、地上を次第に煙幕が覆い始める。
 残るは3本。降下してきたのは道弘だ。彼は竜の翼を力強く広げながら、感情のない瞳で見上げてくる梟羅漢たちに向かって告げた。
「正義か……こんな曖昧な概念もそうそうありゃしねぇよな。だが、何が目的にしても、力によるねじ伏せは単なる手段だぜ」
 衝撃の余波で叩きつける波飛沫を翼とゴーグルで弾きながら、道弘は吠える。
「そのひん曲がった思想、回廊ごときっちり矯正してやらぁ!」
 轟く怒喝と共に、雷光が回廊に炸裂した。
 残るは2本。降下してきた真幸が、光剣をバリアに叩きつける。
「俺には守るべき者たちがいた。とても、とても大事な者たちが」
 育ててくれた家族。そして、妹。
 どちらも今はもうこの世にいないと、ぽつぽつとした口調で真幸は語る。
「傍にいたかったのに奪われた。これ以上喪いたくなくて、今も戦う」
 その意思は梟羅漢に変じた人々と、何ら変わることはない。
 そう告げたうえで、「だが」と彼は言葉を継いだ。
「お前らは力を欲した意味を失った。一方的な暴力で同じ存在を作り出し、悲しみの連鎖を生み出してる」
 その先にあるものは平和ではない。平穏でもない。
 どこまでも果てしなく続く、地獄だけだ。
「そんな存在に成り果てたのなら……俺なら、止めて欲しい。これ以上、同じ思いをする奴を出したくないんだ」
 故に、真幸は叫びを込める。
「終わらせる。ここで全部」
 爆炎が回廊を包み、地上を色濃い煙幕が覆い始めた。
 そしてハインツが、最後の一撃を叩きこむ。
「誰にも助けを呼べなかったんだろう、自分の運命すら投げ捨てて……辛かったな」
 ビルシャナの教えを受け入れた人々、その心をハインツは責めなかった。
 魂を売り、悲劇の根源と化した梟羅漢たち。その妄念を断つため、彼はいま最後の一撃を振り下ろす。
「あんたらの野望も……これで、おしまいだ!」
 バリアの頂から放たれた雷は、黄金色の矢となって魔空回廊を貫いた。
 その一撃を楔に打ち込まれ――回廊が、断末魔のごとき轟音を立てて消えていく。
 それはまさに、ケルベロスの想いが実を結んだ瞬間だった。
「やった……!」
 地上へ着地して、グッと拳を握りしめるシルディ。その隣で真也はグラディウスをしまい込むと、全員に離脱を呼び掛けた。
「第1目標は達成だな。さて、次の目標に取りかかるか」
 ミッション地域を抜けるまで、戦いは終わっていない。
 首魁との戦いを予感しながら、ケルベロスは支度を整えてその場を後にするのだった。

●三
「こっちだ。急げ!」
 最前列を行くハインツの先導と共に、ケルベロスたちは煙幕を突っ切って走る。
 打ち寄せる波の音だけが聞こえる海沿いの道を突き進み、時折妨害してくるビルシャナは即座に集中攻撃で片づけた。
 そうして領域の外へと急ぐこと暫し、先頭のハインツがふいに足を止める。
「……気をつけろ、来るぞ!」
 前方から漂う濃密な殺気。黒い翼で舞い降りるのは、長刀を構えた梟羅漢だ。
 その数、ただ1体。
『我ら、力なき者の寄る辺なり――』
「さあ来い。全部オレが受け止めてやる!」
 巨大なライオットシールドを構え、戦闘態勢を取るハインツ。それが合図となった。
 刹那、梟羅漢の長刀がアンゼリカへ襲い掛かる。同時にハインツも跳んだ。
「守りは引き受けた。皆、攻撃を頼む!」
 黄金の盾で長刀を防ぎながら、仲間へ攻撃を促す。
 ここは一歩も通さない。何があろうと立ち止まらない。
 光(いのち)を背負って光(あした)を掴む、それが――。
「それが、オレたちヒーローの進むべき道なんだぜ!」
 溢れ出す黄金の光で前衛を包むハインツ。追撃せんと刀を構える梟羅漢に、オルトロスのチビ助が、神器の剣で斬りかかる。
『全ての者に抗う力を……全ての者に我等の教義を……』
「ザラキ、あの敵を縫い留めますよ」
 イッパイアッテナの飛び蹴りが、流星となって梟羅漢の脇腹にめり込んだ。
 体勢を崩す梟羅漢を、さらにミミックのガブリングが襲う。
 衝撃で敵の狙いが反れたのを見極めたシルディは、武器から噴出する蒸気でハインツの傷を癒していく。
「気をつけて。あのビルシャナ、クラッシャーだ!」
「了解だ。これで吹き飛べ、梟羅漢!」
 シルディの警告に、真也はすぐさまサイコフォースで応えた。
 真也の精神集中が爆薬と化し、振りかぶられた長刀の先端が爆発ではじけ飛ぶ。
 武器封じに足止め、着実に状態異常を積み重ねる梟羅漢めがけて、恭介はエアシューズで加速。流星蹴りで長刀と切り結ぶ。
「貴様の空虚な正義、俺たちの正義で断ち切る!」
 足を砕き、腕を蹴り、怒涛の猛ラッシュが梟羅漢を打ち据える。
 金属が擦れ合う音。骨が軋む音。ふいにそこへ混じったのはチョークが砕ける鋭い音。
 道弘が発動した『ブロークンチョーク』だ。
「追い込んでくぜ、覚悟しやがれ!」
 グラビティを帯びたチョーク片が投擲され、梟羅漢をズタズタに切り裂いた。
 チビ助に破られた服が更に破り取られ、真也の一撃で欠けた刃が吹き飛び、悲鳴をあげる梟羅漢。追撃の手を緩めず、真幸は『Ithaqua』の詠唱を終える。
「来たれ神性。全て氷で閉ざせ」
 異界の神がもたらす氷の息吹と、ボクスドラゴン『チビ』のブレスが、交差するように浴びせかけられた。
 その威力たるや凄まじく、攻撃一辺倒だった梟羅漢は否応なく守りへと転じる。
『何故邪魔をする……救済すべき弱者が、待っているのに……』
「力持たぬ人々を傷つけるならば、容赦はしない!」
 攻撃の機を伺う梟羅漢の背に、アンゼリカの流星蹴りが直撃。
 衝撃で吹き飛び、地べたに叩きつけられた梟羅漢は飛刀を手に立ち上がると、死に物狂いの猛攻へと転じた。
『滅ぼす……悪は滅ぼす……』
「来い。いくらでも受けてやる。この程度でオレは倒れない!」
 敵の強烈な攻撃を、ことごとくライオットシールドで受け止めるハインツ。
 全身を飛刀の傷に覆われていく彼を、イッパイアッテナの斧が放つハガラズのルーンが、シルディの放つスチームバリアが、必死に支え続ける。
「血に飢える電光石火の猟剣よ。その力をもって、敵を亡き者にせよ」
 真也の両手に、弓と剣が握られた。
 右手には弓。左手で番えた剣を変形させて、矢のごとき電光の一射を放つ。
「喰らいつけ、血に飢える電光石火の猟剣!」
「ここまでだ。鋼鬼の拳を受けろ」
 真也の矢に脇腹を穿たれ、恭介の戦術超鋼拳を鳩尾に浴びて――梟羅漢は血反吐で地面を汚しながら、なおも攻撃の手を緩めない。
『我等……正義を、示すもの……』
「正義か。その教義の下に働いた虐殺も、今日で幕引きだ」
 アンゼリカは純白の翼を広げ、金色の瞳で梟羅漢をにらむ。
 ハインツの金色が仲間を守る光ならば、アンゼリカのそれは敵を畏怖に導く光だった。
 月光は夜を照らす輝き――そして闇と共に在る光。
「夜闇を抱く光の前に、魂を凍らせるといいさ!」
『オオオッ!!』
 雄叫びと共に、アンゼリカめがけ振り下ろされる長刀。その一撃は、しかしハインツの盾によって阻まれる。
「オレは倒れない。約束したんだ、梟丸と……!」
 それは怒りでも憎しみでもない。どこまでも純粋な決意だった。
 ――理想を語りつづける苦しみも背負って、前へ進むのがヒーローだってな!
 かつて倒したビルシャナの、人を助けたいという想い。
 共に背負って歩んでいく、その誓いを胸に、ハインツは爆破スイッチに指をかけた。
「好機だ! 皆、行け!」
 カラフルな煙幕が、真幸と道弘の背を彩った。
 真幸の両手には二振りの惨殺ナイフ。道弘の腕にはパイルバンカー。奇声をあげて飛刀を構える梟羅漢を狙い定め、
「安らかに眠れ。これで――」
「終わりだ!!」
 二振りの惨殺ナイフで、斬撃の舞いを踊る真幸。
 全身をなますに切り刻まれる梟羅漢めがけ、道弘は螺旋力をジェット噴射させて突撃し、その胸板をぶち破る。
 それが、とどめだった。
 胴に大穴を開けた梟羅漢は、傷だらけのハインツを睨みながら、
『我等は正義……梟丸様、何故……何故――!』
 その断末魔を最期に、光となって消えていく。
 ケルベロスがミッション地域を離脱したのは、それから数分後のことだった。

●四
「皆、怪我は平気か?」
 恭介は確認をして回り、全員の無事を確認した。
 紛失したグラディウスもないと知り、やっと安堵の吐息を漏らす。
「これで彼らも、安らかに眠れるといいな」
 ハインツはそう呟き、煙幕の晴れた海岸を眺める。
 そこにはもう、梟丸が残したビルシャナたちの姿はない。亡くなった人々の冥福を祈り、彼は静かに黙祷を捧げた。
「これでビルシャナのミッション地域も、全て消えたね」
 アンゼリカは消滅した回廊跡を眺めた。遠からずこのミッション地域は解放され、浦富の地にも人々の暮らしが戻ってくるだろう。
(「ビルシャナ種族とも、決着をつけないとね」)
 いずれ来るであろう決戦の時に思いを馳せ、アンゼリカは仲間たちと帰還していく。
 鳥取県浦富海岸、奪還成功。
 ビルシャナ種族を巡る最後のミッション破壊作戦は、こうして幕を下ろした。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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