月光雨

作者:崎田航輝

 月色の雫がきらきらと、夜を燦めかせている。
 雨の季節は夜半にも空から雫が注ぎ、街の温度を冷やしてゆく。けれど今宵は雲の隙間から眩い月が覗いていて──降り注ぐ滴が宝石のようにその光を帯びていた。
 ネオンの輝く街の只中でさえ、月彩の雨は美しく。人々は見惚れるように空を仰ぎ眺める──筈だった。
 轟音と共に、土煙が広がる。
 地鳴りを伴って濛々と昇る瓦礫の塵が、空を隠すように深い影をかけていた。
 崩れ行く建物の陰から、歩み出て人々を見下ろすのは巨大な鋼鉄。艶めき一つ無い、闇色の鎧を纏った人型──ダモクレス。
『……全てに、闇を』
 まるでそれこそ、命が行き着く先なのだと言ってみせるように。鋼鉄の巨影は鋭い剣を抜き、建物も人々も薙ぎ払って散らせてゆく。
 宙に昇る砂埃が、夜を翳らせる。数分の後──静かな雨音の中、現れた魔空回廊へと漆黒の巨影は消えていった。

「集まって頂きありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、ダモクレスの出現が予知されました」
 現れるのは巨大ロボ型の個体。大戦末期に封印されたもので、仲間のダモクレスによって復活させられるようだ。
「魔空回廊を通じて、その仲間達に回収される予定なのでしょう。放置すれば街は破壊され、死者が多数出てしまいます」
 だけでなく、ダモクレス勢力の戦力増強にも繋がってしまうことになるだろう。
「それを防ぐために、撃破をお願いします」
 出現場所は市街地の中心。
 敵は出現から7分後に魔空回廊によって撤退する。こうなると追うのは困難になるため、撃破はその時間までに行う必要があると言った。
「人々の避難は警察によって事前に行われます。皆さんは戦闘に集中できるでしょう」
 ダモクレスの全長は7メートル。巨体を活かした戦いをしてくるので、こちらも高層の建物などを利用して戦うと良いかも知れません、と言った。
「尚、敵は戦闘中、一度だけフルパワーの攻撃を行ってくるようです」
 敵自身も反動で傷を負うようだが、その分威力は高いだろう。
「おそらくは広範囲の攻撃でしょう。前兆があるかも知れませんので、警戒を欠かさないようにしてくださいね」
 皆さんならば勝利できるはずですから、とイマジネイターは声音に力を込める。
「健闘をお祈りしていますね」


参加者
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)
クレーエ・スクラーヴェ(明ける星月染まる万色の・e11631)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
八尋・豊水(イントゥーデンジャー・e28305)
月岡・ユア(皓月・e33389)
笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)
ステラ・フラグメント(天の光・e44779)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)

■リプレイ

●月雨
 澄んだ夜風の中、空から雫が注ぐ。
 静謐の摩天楼の天頂で、月岡・ユア(皓月・e33389)はその冷たさを仰いでいた。
 ──雨は少し苦手、だけれど。
 月がきらきらと宝石を零すように美しくて、思わず足を止めてしまうほどだったから。
「……綺麗」
「ああ」
 綺麗だな、と。
 ステラ・フラグメント(天の光・e44779)も隣で頷く。月色に燿く夜天は、素直にそう思える眩さだったのだ。
 横の建物に立つ七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)もまた同じ気持ちだったろう。暫し見惚れるように、月光を反射する雨を見つめていた。
 雨の降る夜は綺麗で好きだ。
 けれどそれ故に、と。吹き上げてくるビル風に視線を降ろす。
「そこにダモクレスが現れるなら、放ってはおけませんね」
 そう呟いた直後。
 静寂を地鳴りが突き破り、破砕音と共に巨大な影が出現していた。
 それは濛々と黒煙を漂わせる──ダモクレス。
「ふーん、真っ黒くろの夜戦タイプってわけね」
 山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)はスマホのアラームをセットしながら、その姿を見下ろす。
 それは夜に溶ける闇色の金属鎧。
 すべての光を遮るようなその巨影に、戦闘態勢を取りながらもミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)は声を零す。
「これが街中で暴れたら被害が甚大になりますね」
「だからこそ──そうならない様に、私達で食い止めよう!」
 拳をきゅっと握って、笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)が明るく言えば、巨体を包囲する皆が頷いて。
 八尋・豊水(イントゥーデンジャー・e28305)が先陣を切って走りながら、如意棒をくるりと手に携えていた。
「八尋流正当後継! 豊水、並びに李々。参るわよ!」
 言葉に応えるように、追随して飛翔するのはビハインド。豊水の傍らから鎖鎌を投げて巨鎧の腕を縛り付ける。
 そこへ飛び込んだ豊水は一撃、真っ直ぐの刺突を加えてみせた。
 衝撃に、ダモクレスは初めて此方を察知する。
 が、その頃にはクレーエ・スクラーヴェ(明ける星月染まる万色の・e11631)が勢いをつけてジャンプ。
 サキュバスとしての見目を顕にするのは、好きではないけれど。角と尻尾、そして小さな翼で風を撫ぜて墜ちる角度を調節して。
「お願いするね、桜」
 敵へ迫りながら、共に舞い降りるビハインドへ声をかけていた。
 柔く頷いた桜はそっと巨鎧へ触れる。瞬間、桜の枝が地より伸びてダモクレスの足元を拘束した。
「ステラ、ユア」
 そこでクレーエが視線を上へ向ければ──。
 応えるようにきらりと燿く影がある。
 遥かな高所から、まず光の流線を描いて跳ぶのはステラ。
「さてそれでは今宵、この怪盗が! 闇の帳を盗み出してこの街へ美しい輝きを取り戻しましょう!」
 朗々と口上を聞かせながら、立ち込める煙を突き抜けて。眩い空を覗かせるよう流星の蹴撃を叩き込んでいた。
 揺らぐ巨体へ、次いで舞い降りてくるのは月の光。淡い逆光に縁取られながら、黒翼で滑空してくるユアだ。
「さあ、始めよう」
 愉しげな声と共に隣を向けば、双子妹のビハインド、ユエが旋律を口遊み巨影の動きを鈍らせる。
 そうして抵抗を許さぬままに、ユアが円弧を描く蹴りを見舞っていた。
 鈍い音を上げてダモクレスは一歩たじろぐ。それでも黒雷を撃ち放ってくるが──。
「フルスロットルで行くよー」
 そこへ疾走するのが、ライドキャリバーの藍に乗ったことほ。
 加速してビルの縁から跳び出し、衝撃を庇い受けながら。墜ちずに別の建物へ着地すると、癒やしの風で自らを回復していく。
 同時にクレーエが獅子剣から星の加護を降ろすと、ステラもまた黒猫のノッテに翼で薙がせて治癒を進めていた。
 そうして体力が保たれれば、綴はこがねに燿くオウガメタルを流動させている。
「アムルタートよ、仲間の超感覚を覚醒させよ!」
 呼びかけに応えて明滅するそれは、光の粒子を風に乗せて。前衛を万全にしながら意識を澄み渡らせていった。
「攻撃は任せます!」
「判りました、私が行きますね」
 そうして高まった力を活かすように、ミントは残霊を呼び出している。
「力を、借りますよ」
 現れたそれはミントのその意志を汲むように、巨鎧へ跳んで槍撃を繰り出す。ミントがそこへ銃撃を合わせれば『華空』の名の如く、衝撃の花が咲いて巨体を穿った。
「さあ、氷花さん」
「うん!」
 ミントに頷く氷花もビルからビルへと駆け上り。敵の眼前へと跳躍して躰を翻していく。
「どんな固い身体も、この炎で燃やしてあげるよ!」
 月灯を透かして一層耀かしく。放つ蹴りは焔を宿して巨鎧の一端を溶解させた。
 下がるダモクレスへ、豊水は容赦を与えない。
「逃しはしないわよ」
 奔りながら、己の指先を苦無で小さく破って血を滴らす。
 捧げたその雫を糧に、得られる力は莫大。超高密度の紅螺旋(クリムゾン)を纏ったまま、竜巻の如く──錐揉み廻転を伴い巨体を宙へ投げ飛ばす。
 『八尋流豪血・紅螺旋錐揉放』──常識外の威力を発揮する秘術が、ダモクレスを地へと叩きつけた。

●闇
 秒針が二度目の回転を終える。
 土煙の中に倒れていたダモクレスは──それでも起き上がって長い影を伸ばしていた。
『……全てを、闇に』
 光差さぬその底へ堕とすまではと、そう言ってみせるように。
 ユアは瞳を伏せてから、街を見渡して。ゆっくりと月光を見上げる。
「闇だけの世界なんておとずれないよ。命にも夜にも、こんなにも綺麗な光が満ちてるからね」
「そうだな」
 ステラも頷く。
 眩いものは、空にも、地上にも。
「世界は綺麗なものに満ちてるよ」
「うん。だから──折角キラキラ綺麗なのに闇で覆うのは勿体ないよ?」
 クレーエの声に、しかし巨鎧は抗するように刃を握る。
『闇こそ、汎ゆる光の墜ちるべき終着』
 灯る光はいつか無くなるのだから、と。
 けれど豊水は退かず、正面から巨体を見据えてみせた。
「闇に潜むのは私のような日陰者の仕事よ」
 故に、無辜の者をそこに落とすことなど以ての外だと。ビルを蹴上がり、高空から巨体を見下ろして。
「たとえこの身が潰えようと、日向の道を歩む人々を闇から掬い上げて見せるわ」
 瞬間、一撃。棍を真下に突き下ろし、脳天を穿ってみせる。
 均衡を欠く巨体の、その後方より迫るのがミント。
「氷花さん、合わせましょう」
「うん。私は左に行くね」
 と、声を返す氷花も並走しながら、直後に二手に分かれて。
 左右に広がるようにビルを飛び石にすると、まずはミントが青薔薇の意匠のパイルバンカーへ冷気を収束していた。
「雪さえも退く凍気を受けてみなさい」
 刹那、撃ち下ろす杭で巨鎧の腕を貫いてみせると──その逆方向より跳んでくるのが氷花だった。
「その傷口を、更に広げてあげるよ!」
 奔らせる刃は、真冬の夜を思わせる冷気を纏ったナイフ。煌めく斬閃が鎧の傷を刳り込み、凍結させて。強く軋ませて挙動を蝕む。
 それでも一歩一歩と前進するダモクレスを、ことほは少々眺めてみつつ。
「すべて滅ぼすとか言いつつグラビティ・チェインを集めてるんだとしたら、ちょっとツンデレ系だよねー」
 ま、いいかと足元に力を込めると──自身はその場で跳んで、藍だけを奔らせた。
「藍ちゃん、そのままGO!」
 駆動音を反響させて駆け抜ける藍は、炎を纏って体当たり。強烈な打力で巨体を一歩後退させる。
 そこへ羽ばたき、白銀の剣閃を踊らせるのがユア。相手が反撃する間も無く、体を返して宙で鮮やかに廻り、無数の傷を刻みつけて。
「ほら、その程度で闇に染めるって? キミの闇はその程度か? もっと遊んでよ!」
 愉しげな笑いに、ダモクレスが反抗するかの如く刃を振り上げても──マントをばさりと棚引かせ、その腕に跳んでいるのがステラ。
「そこまでだぜ!」
 星色のオウガメタルを放つと、巨腕に絡めて自分を引き寄せて。
 スイングするように零距離に迫ると、流体を拳に纏い直して一撃。真っ直ぐの打突を叩き込んでみせた。
「クレーエ!」
「うん」
 頷くクレーエも追随し、刃に星の煌めきを宿して。飛び退るステラと入れ替わりに敵へ肉薄し、眩い直線を描いて刺突を加えていく。
 深々と装甲を貫かれた巨体は、破片を零しながらよろめいた。
 それは弱り始めの兆候にも見えたが──。
「攻撃が来ませんね。あれは……、力を溜めているようです!」
 すぐに異変に気づいた綴が、大声を響かせる。
 確かに闇色の巨鎧は、その身を黒色のエネルギーで覆い始めていた。紛うことなき、諸刃の反撃の準備。
 ミントはひらりひらりとビルから下りながら、皆へハンドサインを見せて警戒を促していく。同時に分厚い建物の陰を見つけてもいた。
「隠れるなら、ここが良さそうです」
「そうだね。皆もこっちに!」
 氷花もまたつぶさに合図を送り、自身がいる場所へと皆を招く。
 そこへ滑り込みながらも、クレーエは淡く燿く青い鳥をそっと解き放っていた。
 それはSict《Ein blauer Vogel》──絆が育てた慈しみを、皆へ齎すように。前衛の体力を保ちながら堅固な護りを与えてゆく。
「ありがとねー」
 声を返したことほは、陰に隠れながらも皆の最前面に立ち防御態勢をとった。
「さあ、君の力、見せてもらいたいな!」
 そうしてステラが高所から舞い降りながら、言ってみせれば──直後にはダモクレスがエネルギーを解放。漆黒の巨大な光線で一帯のビルを薙ぎ払った。
 深い黒の靄が立ち、まるで全てが闇に飲まれたように視界が曇る、けれど。
「身体を巡る気よ、空高く立ち昇り癒しの力を降らして下さい」
 澄んだ声が響くと、雨滴に清らかな雫が交じって黒色を晴らしていく。
 それは綴の『練気驟雨』──気功を集中し、天へと昇らす癒やしの一手。
 それに降られて体力を回復していくことほもまた、しかと倒れず踏み止まっていた。
 そのままことほ自身も清廉な風を吹かせて傷を拭えば──。
「これで何とか問題なし。ディフェンダーの底力、見た?」
 言って巨体を仰いでみせる。
 ダモクレスは昏い火花を散らし、自己への負荷で大きなダメージを負っていた。
 この機を逃さず、豊水は疾駆する。今だ靄も晴れきってはいないけれど──暗き只中を駆けるのは慣れたものだから。
「私の八尋流体術で、更に削り取ってあげる」
 瞬間、地を跳ねると強烈な打突から斬撃に繋げて負傷を広げていく。
 ふらつく巨体に、ミントも連撃。燃え盛る蹴撃で烈火の痛手を加えれば──そこへ氷花も追撃。
「これで、倒れちゃえ!」
 鋭き魔氷の杭で脚を貫き、大音を上げさせ巨鎧に膝をつかせていた。

●月夜
 残り二分の合図に、クレーエのスマートフォンから響くのは美しいメロディだった。
 それはユアの歌声──月鏡の『届け』。
 皆の時計からもアラームが鳴る中、その音色とハーモニーを奏でるような聲が、皆の心を真っ直ぐに、戦いの終わりに向けていく。
「向こうも弱ってるみたいだし、一気に行っちゃおう」
 ことほが言えば、皆で頷いて。立ち上がることもままならぬ巨体へ突き進んでいった。
 ダモクレスは自己を暗幕で包み、破損の修復を図る。だが藍の猛加速で一息に接近したことほが、その拳の一打で幕を晴らせば──。
「あと少し、かな」
「では私がやっておきますね」
 後ろから追いつくミントが疾駆。
 敵の足元を蹴り上がりながら、パイルバンカーへ破壊の魔力を渦巻かせると一撃。強烈な擦過音を上げて金属の鎧を削り、加護を砕いて負傷も深めさせていった。
「このまま攻めていきましょう」
「ええ、勿論です」
 頷く綴も既に攻撃態勢。
 ダモクレスは異音を上げながらも無理矢理に立ち上がり、抗う姿勢を見せる。
 周囲のビルが崩れた分、その頭上を取ることは出来ない──だが障害物が無いことは、此方にとってもマイナスばかりでなく。
「これを──受けてみなさい」
 綴は手を伸ばしてグラビティを収束、爆散。巨大な空間諸共巨体を爆撃で包んだ。
 再度バランスを崩すダモクレスへ、氷花は『血祭りの輪舞』。壁の花を踊りに導くかのように、軽やかに周囲を巡って剣撃を加えていく。
「反撃、くるよ」
「ええ。李々、皆を守ってちょうだい!」
 ダモクレスが足掻くように刃を振るっても──氷花に応えた豊水が呼びかけて。ふわりと翔んだ李々が受け止めた。
 そのまま豊水は奔り抜けながら連閃を加え、一気に敵を瀕死に追い込んでゆく。
 朦朧とする巨体は、それでも最後まで抗うしかない。
 だからユアは横へと瞳を向けて。
「ステラ、クレーエ! 思いっきり行くよ!」
「ああ、こっちは準備バッチリだ!」
「僕もだよ。行こう」
 頷く二人から、まずはクレーエが跳び出し手を翳す。
 すると跳び出るのは黒き猫型のスライム。宙を游ぶように軽々ダモクレスへ喰らいつくと、その体を咬み切り引き倒してみせた。
 そこへユアは『歌葬曲』を謡う。
「闇に還るのは君だけだ……」
 ──さぁ、月に看取られ逝きな。
 美しく儚く。響く弔いの旋律が機械の命を薄らがせていく中──同時にステラが銀色のガジェットを飛ばしていた。
「さあ夜空に輝きをもたらせ! 俺のガジェット!」
 宙で鳴動したそれは、縦型の機巧を収納し変形。五角形の星型になると──回転しながら星々の如き光を撃ち出す。
 『Danza di stelle』──煌めく輝きの中に、黒き巨体を包み込むように。眩き衝撃がダモクレスを千々に砕いていった。

「随分破壊されましたね」
 雨音が聞こえるほどの静けさが戻ると、ミントは街並みを見回す。
 事実、戦場となった多くの建物が壊れて瓦礫となっていた。ただ、被害がこれだけで済んだことが何よりの成果だから。
「後はヒールをしっかりとしておかないとね!」
 氷花が気合を入れて言えば、綴も頷く。
「この作業も、私たちの仕事ですからね」
「じゃあ始めましょう」
 と、豊水も李々と共に歩み始め、崩れた場所へヒールをかけていく。
 それから皆で作業を行って──瓦礫はことほが怪力を活かして撤去。美しい街並みが戻り、連絡も済ませればその内に人波も戻って。
 見回すことほはうん、と一つ頷いた。
「これで元通りね」
「うん。それじゃあ、帰ろうか」
 平和な空気の街の中、クレーエはユアとステラと歩み出す。
 すると頬を雨滴が触れるけれど──ユアは傘は差さずに笑みを浮かべて。
「……こういう雨なら何だか悪くないね。今日は濡れて帰ろうか♪」
「そういうのも楽しくて良いな!」
 よし、と。応えるステラもまた快い冷たさの中、雫を除けずに路へ進んだ。冷えすぎないように、自分のマントをユアに掛けてあげながら。
 皆が去った場所に、もう暗い闇は無く。街明かりと月色の穏やかな雨が、優しく輝きながら夜を照らしていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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