決戦! 螺旋業竜~砕け! 螺旋業竜スパイラス

作者:カンナミユ


 闇。
 そこは闇に包まれた空間であった。
 生けるものは存在せず、時折何かが漂うだけであった。
 ――が。
 突如、数多の生が大量に生じた。
 それはヒトならざる存在、デウスエクス。
 ばさりと翼を広げ、ドラゴン達が咆哮を上げるその奥、殿に巨大なモノが存在している。
 巨大なそれを守るように広がるドラゴン軍の中で、きらりと何かが輝いた。
 宝石。全身に聞かざる宝石がきらきらと輝いているのだ。
 宝石を纏うドラゴンはすいと宇宙空間を飛び、他のドラゴンたちと共に進軍する。

 数多の竜が、目標めがけて動き出すその場所は――日本である。


「ケルベロスの皆さん、第二王女ハールの撃破と大阪上地下の探索、お疲れさまでしたっす!」
 慌ただしいヘリポートの一角で黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)はケルベロス達へ労いの言葉をかけてくる。
 ケルベロス達の活躍によりエインヘリアル第二王女ハールを撃破した事で、エインヘリアルと攻性植物による同時侵攻の危機を回避できたのは、正に僥倖であった。
 大阪地下ではドラゴン勢力から、本星のドラゴン軍団が竜業合体によって地球に到達しようとしているという情報も得られたのだが、更なる情報を掴んだのである。
「地球に迫り来るドラゴンは本星のドラゴンだけじゃ無かったんすよ」
 そう話し出すダンテによれば、サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791)が警戒していたスパイラスに遺されたドラゴン達が竜業合体によって惑星スパイラスと合体し、地球の衛星軌道上に出現する事が予知されたのだ。
「この予知は黎泉寺・紫織(ウェアライダーの・e27269)さんとエマ・ブラン(白銀のヴァルキュリア・e40314)さんが協力を要請していた天文台からの情報と、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)さんが注意喚起していたNASAによる解析によってより詳しい情報が確認されてるっすよ」
 詳細な予知によれば無茶な竜業合体により、慈愛龍が率いていたドラゴン軍団は殆どが失われており、残ったドラゴン達もグラビティ・チェインの枯渇によって、戦闘力を大きく損なっている事が判明している。
 では地球の衛星軌道上に出現し、一体何をしようというのか。
 ダンテは話す。竜業合体した惑星スパイラス――螺旋業竜スパイラスを衛星軌道上から日本に落下させ、その衝撃で殺害する数百万数千万の人間のグラビティを略奪する事で、失った力を取り戻そうとしているのだ。
「もしこれが実現すれば、沢山の命が……地球は終わってしまうっす! 絶対に阻止しないといけないっす!」
 ぎりっと拳を強く握り、ヘリオライダーはケルベロス達へと言葉を続けた。
「ドラゴンが出現する衛星軌道上のポイントは既に割り出しているっすから、皆さんにはグラビティチェインが枯渇し、弱体化している慈愛龍らドラゴンの撃破と螺旋業竜スパイラスの破壊をお願いしたいっす」

 ぱらりと資料をめくりながらダンテは今回の作戦の詳細を話し出す。
「今回、皆さんに戦ってもらう場所は衛星軌道上になるっす。そこまでは宇宙装備ヘリオンで移動する事が出来るっすよ。宇宙っすから当然、無重力空間での戦闘になるっすが、ケルベロスの皆さんなら大丈夫っす」
 とのことだが、希望があれば大運動会でお馴染みのジェットパッカーなどの移動用装備も用意できるという。
「皆さんに戦ってもらうのは『ヘアルト・プレダトール』という宝石を身に着け着飾ったドラゴンっす。とても綺麗っすが強力なドラゴンっすよ、気を付けてくださいっす」
 戦うドラゴンについての説明を聞いていたケルベロスの一人がすと手を上げ、聞いてくる。
「ドラゴンとの戦闘については分かったが、螺旋業竜スパイラスの破壊についてはどうするんだ?」
「螺旋業竜スパイラスは竜業合体によって地球に移動する以外の戦闘力はないっす。なのでアレコレ考えずに破壊だけを考えてくれればいいっすよ」
 ケルベロスへそう答えたダンテだが、破壊についてはタイムリミットがあるようだ。
「巨大な質量を破壊するには、この作戦に参加したケルベロス達が最大出力のグラビティで一斉攻撃して破壊する必要があるっす。ただしこれには制限時間があって、迎撃開始後12ターン以内に皆さんに担当してもらうドラゴン『ヘアルト・プレダトール』を撃破できないとスパイラス落下阻止の攻撃が間に合わなくなるっす」
「間に合わなかったら終わりという事か」
 深刻な表情で問うケルベロスだが、多少の猶予はあるらしい。
 記した資料から視線を戻し、ダンテは付け加える。
「確かに間に合わなかった場合は大変っすが、5チームまでなら大丈夫っすよ。でも、敗北あるいは時間切れでスパイラス攻撃に加われないチームが5チーム以上となった場合はどうにもならないっす。戦力不足でスパイラスの落下を完全に防ぐことが出来なくなるっす。そうなれば……」
 そこでふつりと言葉は途切れた。
 おそらくは足らなかった戦力分だけ破壊は叶わず、落下していくだろう。失われていく命もまた、計り知れない。

「惑星スパイラスを竜業合体させるなんて無茶苦茶な事を敵は考えたっすね」
 ぱたんと資料を閉じながら、ダンテは信じられないといった様子で肩をすくめてみせた。
 無茶苦茶で信じられない。だが、現実なのだ。
「とんでもない状況っすが、ケルベロスの皆さんの双肩に地球の命運が掛かっているっす。グラビティチェインの枯渇によって弱体しているといっても慈愛龍を筆頭とするドラゴンは強大な敵であり、勝利は難しかもしれないっすが……」
 真摯な瞳と表情を向け、ダンテはぐっと拳を握りしめ言葉を続ける。
「地球と沢山の命がかかっているっす。阻止限界点までになんとしても、螺旋業竜スパイラスを破壊して欲しいっす。皆さん、信じているっすよ!!」


参加者
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)
写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
東雲・凛(角なしの龍忍者・e10112)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
フロッシュ・フロローセル(疾走スピードホリック・e66331)
ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)

■リプレイ


「また救世主さんの宿敵が出たのですね」
 ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)にジト目で問われ、写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)は思わず目を見張る。
「いや私のせいじゃないよー!?」
「それで、アレはどんなデウスエクスなのですか?」
 ずいっと迫られ再びの問いにしばし間があき、
「えっとー……ごめん、さっぱりわかんないやー」
 曖昧な返しと共に体は重力のない空間をすいと泳いでいった。
 宇宙装備ヘリオンから降りたケルベロス達は各チームごとに戦いの準備を備えている。
 目前には数多のドラゴンがひしめき、その殿に構えるのは竜業合体した惑星スパイラス――螺旋業竜スパイラス。
「あれが星の如き竜ですか。なるほど巨大だ」
 遠くからでもわかるその巨大さにローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)の握る手に思わず力が入る。
 慈愛龍らドラゴンを撃破し螺旋業竜スパイラスの破壊するのが目的であるこの戦は絶対に負けられない。勝たねば甚大な被害が生じるだろう。数多の命が潰え、消えていくのだ。
「スパイラスに閉じ込められてた連中……こうも直接攻め込んでくるとはな」
「ドラゴン達の奇襲には驚いたけど、だからって怯んでもいられない。絶対に勝って帰るんだ!」
 尾を振るオルトロス・チビ助を傍らにハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)とフロッシュ・フロローセル(疾走スピードホリック・e66331)は言葉を交わし、
「我らの父祖より護り続けてきたこの地球、このような所で亡ぼしてなるものか」
「地球に辿り着かせるわけにはいかない……必ず倒します!」
 蒼き地球を背にカジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)と東雲・凛(角なしの龍忍者・e10112)は決意を胸に立ちはだかる。
 ――と、
「あれかえ?」
 気配を察したオルトロス・リキの様子を目に言う月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)が示した先。
 数え切れぬほどのドラゴンたちの中でひときわ輝くドラゴンがいた。
 きらきら輝く宝石を全身に纏い着飾るドラゴン――『ヘアルト・プレダトール』。
 当人さえも分からぬ因縁あるデウスエクスはこちらに気付いたようだ。
 煌めきは光のない空間を縫い、一直線に向かってくる。
 ケルベロス達は身構え、各々が武器を手に用意してきたアラームをセット。無重力空間でも動き回れるように準備はしているし、戦いやすい場所も選んだ。
 あとは戦うだけ。
 ローゼスに突きつけられた槍を宣戦布告ととったのだろう。美しきドラゴン、ヘアルト・プレダトールはその速度を上げ、咆哮を上げた。


「アアアアアァァァァァ……!!」
 美しい旋律が奏でられたかのような声が響き渡り、ヘアルト・プレダトールからは炎が放たれた。
 宇宙空間に美しい炎が広がるとケルベロス達へと牙を剥く。
「リキ」
 朔耶に応えるようにオルトロスは前へと向かい、焼き尽くさんとする炎をハインツと凛達で防ぎきると炎の中から二人が飛び出しヘアルト・プレダトールへと一直線。
「救世主さん」
「任せてー」
 ウィッカが放つ轟竜砲に煌めく足撃が在宅聖生救世主から放たれ、凛が宙を蹴り、一閃!
「アァアアアッ!!」
 死角から放つ形見の刃がヘアルト・プレダトールの胴をざぐりと抉るとチビ助を伴ったハインツが飛び出し息の合った攻撃を叩きつけ、
「皆、頼んだ」
 仲間達のためにカジミェシュはブレイブマインを展開させると共に援護に回るボハテル、そして後衛の仲間達へと視線を向けた。
「よしいくよ!」
 タイミングを計り攻撃するフロッシュにローゼスが続き重撃を打ち込む。ぎり、とめり込む一撃に手ごたえを感じたがまだ致命までには至らない。
 ばさりと翼を広げるヘアルト・プレダトールはゲルべロス達の攻撃を受けてもまだ余裕らしく、傷口から血を流しつつも機敏に動き回っていた。
 ぐるりと大きく旋回し――、
「来るぞ!」
 ローゼスの声に見ればヘアルト・プレダトールが己の尾を大きく振り上げているではないか。
「させるかっ!」
 がづんと鈍い音が響きライオットシールドを構えるハインツはその力に吹っ飛びそうになるのを耐えきり、痛みに耐える在宅聖生救世主もウィッカと共に攻撃に転じた。
 光の十字架と五芒星の魔方陣が浮かび上がり、
「……くっ」
 凛が放った攻撃はするりとかわされてしまう。こちらが全力で戦う以上は敵も本気なのだろう。
 フロッシュとローゼスの攻撃を耐えきったヘアルト・プレダトールは朔耶と在宅聖生救世主の攻撃を立て続けにかわし、ウィッカの一撃を受けつつも凛の攻撃を受け流して宙を舞う。
 チビ助と共に攻撃するハインツはふとアラームをセットしたリストウォッチへと視線を落とす。まだそれは鳴る気配はない。
 鳴る前に倒す。もしくは鳴るまでに致命となるダメージを与えなければ。
 どんな手段を使ってでも倒す。
「……絶対に勝つ!」
 ぎりっと拳を握るフロッシュが視界に入り、ハインツも力強く頷く中、しゃらんと輝く宝石が見える。それはヘアルト・プレダトールが纏う輝き。
 ケルベロス達の攻撃を受け、そして躱し、
「アア……ァァァ!!」
「救世主さん!」
 ディフェンダー勢をかいくぐった一撃は在宅聖生救世主の腕を鋭く切り裂いた。痛みを耐える姿にウィッカは思わず声をかけると、こちらに向くのはいつもの顔。
「これくらい大丈夫だよー」
 巨大な剣と化した光の十字架を握るとにこりと笑顔。
「ほらウィッカちゃん、攻撃いくよー」
「……そうですね、いきます」
 この表情が崩れぬよう、ウィッカは魔方陣を展開させ、衛星軌道上ではケルベロス達の戦いは続く。
「くるぞ!」
 攻撃に転ずる動きを見たカジミェシュの声に仲間達は身構え、守りに動くが仲間を守り続けた朔耶のオルトロスはついに限界を迎えてしまう。
 すうと消えていくリキを朔耶は見つめていたが、戦いの中である。武器を手に仲間達の攻撃に続いていく。
 凛の刃が閃き、チビ助と共にライオットシールドを構えたハインツの攻撃でヘアルト・プレダトールは吹っ飛ばされるも持ち直すと持ち前の速さを活かしたフロッシュの攻撃が撃ち込まれ、ローゼスの鋭い足撃がその身体を蹴り飛ばす。
 仲間達がそれぞれ役割を担当し戦う姿を目にカジミェシュの瞳ほんの少しだけ曇りを見せた。
 かつて故国に存在した重騎兵『フサリア』の後裔を自認する彼の戦いは守りを得意としている。仲間を守る為の盾。己の身を挺しても前に立つ自分は今は後衛にある。
 ヘアルト・プレダトールの攻撃をディフェンダー勢が守り切り、仲間達が攻撃を叩きつける。
 思わず庇いに動こうとする姿にボハテルがこちらへと瞳を向けてきた。
「大丈夫だ、ありがとう」
 小さな礼と共にカジミェシュの癒しは仲間達を守り抜く。

 そして――アラームがケルベロス達に時間を告げる。
 それはこの戦いの制限時間が迫っている事を意味していた。
「よっし、ここで一気にたたみかけるよ!」
「そうじゃな」
 フロッシュに朔耶は応え、カジミェシュも静かに武器をとる。
 後方からの守りから攻撃に転ずるのだ。
「いざ、参ります!!」
 宙を蹴り、凛の形見の刀に螺旋と風の力を纏わせると武器を正面に構え、
「全てを穿て…!」
 凛の体は螺旋が包み込みながら突撃する。まるで龍が相手に食らいつかんと突撃する様に見えるその一撃は正に龍が食らいつく一撃。
 蓄積されたダメージによって回避もままならないヘアルト・プレダトールへ全力でハインツが突っ込んでいく。
「行くぞリキ、畳みかけるぞ!」
 わんと鳴く子犬とハインツとの連携が急所を撃ち、ようやくの攻撃に左手で抜いた得物はカジミェシュの狙い通りの急所を射抜いた。
 痛みにヘアルト・プレダトールが暴れだし、宇宙空間に紅の雫が散っていく。
「アアアアァアアアアアア!!」
「今がチャンスだ」
「任せてっ!」
 もがく姿へフロッシュが一直線で接近すると、とっておきの一撃を叩き込む。
「【疾走形態】の超加速―コレに乗せてぇ……打ち抜けっ!」
 加速エネルギーとガジェットの電光刃形態を組み合わせ殴るようにして撃ち放つをれを受け、大きくのけぞるその姿へ鍛え抜かれた躯体と共にローゼスは立ち向かう。
 ローゼスの技は地に立つ者を裂く技。だがここは無のみの空間である。
 地面が無いから震脚も衝撃も届かない? ならば地を揺るがす剛脚を直接竜の体に打ち込むまでだ。
「この剛脚の真の威を知れ」
 ず、ん!!
「アァァァアァアアアア!!!」
 煌めくアルト・プレダトールへと直に打ち込む重撃を受け、それでもなお戦う意思を失わなかった。
 残る力を振りかざし――、
「させるかよ! トドメ頼んだ!」
 受け止めたハインツは声を上げる。
 因縁を、ここで断つ。
「黒の禁呪を宿せし刃。呪いを刻まれし者の運命はただ滅びのみ」
 術文字を刻んだ魔剣で突き刺し致死の呪いを撃ち込むウィッカの視線を受け、頷く在宅聖生救世主に光の十字架が浮かび上がる。
「天よ天よ。遍く我等を見守り包む優しき光よ、我等を見届け慈しむ暖かき光よ。今一時、その身を刃へと変え、あれなるものを切り裂き給え!」
 ガルド流拠点防衛術には珍しい、敵単体との戦闘を想定した技は美しい竜を切り裂きすべてを断つ。
 ケルベロス達が畳みかける攻撃に再びアラームが鳴り、
「ア……アアアアアァァァァァアアアアァァァ……!!!!!」
 それは最期の咆哮。
 ケルベロス達の総攻撃を受けたヘアルト・プレダトールは遂にその命のともしびを消す。
 輝く宝石は宇宙に消え、死した身体もまた、宇宙に消えた。
「やりましたね、救世主さん」
「そうだねー」
 乱れた髪をはらりと払うウィッカに在宅聖生救世主は頷き応え。
 ローゼスは改めて視界に入る竜業合体した惑星スパイラス――螺旋業竜スパイラスを見つめた。
「では、討たせていただこう」
 誰に言うでもない声に仲間達は力強く頷いた。


「ありがとうございます」
 傷は癒え、凛はカジミェシュへと礼を告げる中、ちらりとローゼスが見れば螺旋業竜スパイラスはゆっくりと移動し続けていた。
 ここから見えるあの遅さなら攻撃が届きそうだが、実際はものすごい速度なのだ。接近して攻撃するのも難しいほどに。
「一斉砲撃で攻撃しなければ破壊は不可能だな」
 ぽつりと呟きながらその様子を見つめていると、時間は迫ってくる。
「そろそろ時間です」
「じゃあ行こっかー」
 ウィッカの声に在宅聖生救世主も続き、仲間達は動き出す。
 衛星軌道上には他のチーム達が散開しており、攻撃準備を整えている。自分達もそこに加わり前を見れば、螺旋業竜スパイラスはこちらへと、地球へ落下すべく近づいてくる。
「地球を守るには、今このチャンスしかないんだぜ。一気呵成に行くぞ!」
 ハインツに応えるようにチビ助は吼え、さあ――今だ!
「天よ天よ。遍く我等を見守り包む優しき光よ、我等を見届け慈しむ暖かき光よ。今一時、その身を刃へと変え、あれなるものを切り裂き給え!」
 在宅聖生救世主が引き抜いた巨大な光の剣が螺旋業竜スパイラスを穿つとぼうと浮かび上がる五芒星、ウィッカの魔方陣からレーザーが放たれる。
「解放……」
 ロッドから本来の姿へと戻る梟へ魔力を込めると朔耶の魔法弾は放たれた。
 どうと音が響き炎が上がったが、まだだ。
 再び梟へと魔力を込める様子を目に凛は周囲を見渡した。
 それは光弾であり、レーザーであり、砲弾であり聖光であり。
 仲間達の一斉攻撃が宇宙の中で輝いている。
 左腰のホルスターに提げた武器をカジミェシュが抜くと引き金を引き、新たな輝きの一つとなった。
「星を穿つ一撃、とくと味わって果てよ!!」
 セントールの自由騎士に仲間達は再度攻撃を叩き込み、
「瞬走駆輪炉機動、全速力っ!」
 フロッシュは一直線に駆け抜ける。
「【疾走形態】の超加速――コレに乗せてぇ……打ち抜けっ!」
 数多の攻撃の中に加えられる更なる攻撃。
「まだだ! いくぞ!」
「いっけえーっ!!」
 ローゼスとハインツもそれに加わり――。


 はじめは巨大な爆発音だった。
 それは一つ、また一つと増えていく。
 そして――、
「離れるのじゃ」
 鋭い朔耶の声に離れると、ケルベロス達がいた場所が音を上げ爆炎に包まれた。
 見ればそれはそこかしこで起きており、大きな音を上げて螺旋業竜スパイラスは砕け、爆発し、消えていく。
 だが、全てを粉砕しきれた訳ではない。見れば消滅しきらなかった大小さまざまな破片が地球へと向かっているではないか。
「大丈夫でしょうか」
 大きな破片が地球へ向かっていくのを目にする凛が不安げに言うが、それを追う光がある。
 仲間だ。他のチームが燃え尽きないであろう大きな破片を砕きに向かっているのだ。
「私達の地球はこの脅威から無事に守る事が出来たようだ」
「頑張ったな、チビ助」
 ボハテルを傍らにカジミェシュは遠くに見える爆発を見つめ、ハインツに撫でられ小さな子犬は嬉しそうにしっぽを振る。
 地球へと向かう大きな破片もまた爆発し、破片は流星群となって地上へと降り注ぐだろう。
「救世主さんの宿敵も倒したし、地球のピンチも救えて一件落着ですね」
「ウィッカちゃんのサポート助かったよー」
 ウィッカと在宅聖生救世主は言葉を交わし、
「さあ帰ろう。アタシ達ケルベロスの勝利だ!」
 フロッシュは自分たちを迎えに来たヘリオンへと手を振りながら向かっていくと、仲間達も向かいだす。
 ドォ……ン!!
 爆破音に振り向くとケルベロス達の瞳に最後の爆破が映り込む。
 最期。螺旋業竜スパイラスの終わりの瞬間。
 この先ケルベロス達を待ち受けるものは一体何か。
「この先何があろうとも、私達は戦うだけだ」
 闇に咲く炎を背にローゼスは呟き、ケルベロス達は帰還する。

 竜の野望はそらで砕かれ地上へと降り注ぐ。
 これから何が起こるかはまだ誰も知らない。
 だが、何があろうともケルベロス達は必ずその牙を突き立てるだろう。
 何度でも、何度でも。

作者:カンナミユ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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