決戦! 螺旋業竜~絶望ニ嗤ウ

作者:朱乃天

 地球の遥か上空、宇宙空間に漂う惑星スパイラス。
 そこには慈愛龍に率いられたドラゴン達が、スパイラルウォーの敗北によって隔離されたまま、今も閉じ込められていたのであった。
 ――だが彼等はこの惑星で、人知れず恐るべき計画を実行していた。
 ドラゴン達は星の全てを喰らい尽くし、竜業合体を行うことで、巨大なドラゴンを生み出したのだ。
 その名は――『螺旋業竜スパイラス』。
 そして地球の衛星軌道上に螺旋業竜と共に出現した、大量のドラゴン軍団。
 彼らが位置する場所は、日本の真上。その中で、一体の竜が地球を見下ろしながら、小さくギギッと唸り声を上げ、腹部に浮かぶ不気味な口が舌舐めずりをする。
 背中に生やした翅と三対の脚。それらはまるで昆虫や甲殻類といったフォルムで、頭部はハエトリグサを思わせる。
 ドラゴンの中でもひと際異彩を放つ風貌は、得体の知れない不穏な気配を漂わせ、地球を更なる恐怖に陥れようとする――。

 ヘリポートに揃ったケルベロス達を前にして、玖堂・シュリ(紅鉄のヘリオライダー・en0079)がエインヘリアルとの決戦に勝利したことを祝福し、一連の作戦に関する労いの言葉を彼等にかける。
「第二王女ハールの撃破と、大阪城地下の探索、まずはお疲れさまだったね」
 ケルベロス達の活躍によって第二王女を撃破した事で、エインヘリアルと攻性植物による同時侵攻の危機を回避できたのは、まさに僥倖と言えるだろう。
 その一方、大阪地下では、ドラゴン勢力から、本星のドラゴン軍団が竜業合体によって、地球に到達しようとしているといった情報も得られている。
 しかし、地球に迫り来るドラゴンは、本星のドラゴンだけでは無かったようだ。
 サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791)が警戒していた、スパイラスに遺されたドラゴン達が竜業合体によって惑星スパイラスと合体し、地球の衛星軌道上に出現する事が予知されたのだ。
 この予知は、黎泉寺・紫織(ウェアライダーの・e27269)、エマ・ブラン(白銀のヴァルキュリア・e40314)が協力を要請していた天文台からの情報により、また死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)が注意を喚起していたNASAによる解析によって、より詳しい情報が確認されている。
 シュリが伝える詳細によれば、ドラゴン達は無茶な竜業合体を行なった事で、慈愛龍が率いるドラゴン軍団は殆どが失われてしまい、残ったドラゴン達も、グラビティ・チェインの枯渇によって、戦闘力を大きく損なっている状況である事が判明できた。
 しかし、慈愛龍は、竜業合体した惑星スパイラス――螺旋業竜スパイラスを、衛星軌道上から日本に落下させ、その衝撃で殺害する数百万数千万の人間のグラビティを略奪する事により、失った力を取り戻そうと企んでいる。
「もしこの計画が実現したら、地球は終わってしまう……その事だけは絶対阻止してほしいんだ」
 ちなみにドラゴンが出現する衛星軌道上のポイントは、既に割り出している。
「そこでキミ達には、グラビティチェインの枯渇で弱体化しているドラゴンを撃破し、螺旋業竜スパイラスの破壊をお願いしたいんだ」

 今回の作戦では、ドラゴンが出現する衛星軌道上まで、宇宙装備ヘリオンで移動を行い、敵が落下してくるより前に宇宙空間で迎え撃つ。
 無重力空間の中での戦闘になるが、ケルベロスの行動には何ら支障はない。
 そして戦闘では、各チームでそれぞれ1体のドラゴンを相手することになる。
「キミ達に戦ってもらうのは、『グラオザムアンラマユ・カタストローフェ』という名前のドラゴンになるよ」
 その姿は人と虫とを掛け合わせたような、何とも名状し難い異形の竜だ。性格は残忍で、『嘲笑死龍』の異名を持つとされている。
 敵の戦闘能力は、相手を腕で鷲掴みしてハエトリグサの頭で丸呑みしたり、胸から生えた槍のような赤い水晶で刺突攻撃を繰り出してくる。更には毒性の強い黒い粘液を、腹部の口から吐き出し、周囲に撒き散らしたりするようだ。
 また、動きもかなり俊敏なので、その点にも注意しながら戦いに臨む必要がある。
「それと螺旋業竜スパイラスの方だけど、竜業合体によって地球に移動する以外の戦闘力はないみたいだね」
 その巨大な質量を破壊するには、作戦に参加したケルベロス達が、最大出力のグラビティで一斉攻撃して破壊する必要がある。
 ただし、迎撃開始後から12ターン以内に『担当するドラゴン』を撃破できない場合は、スパイラス落下阻止の攻撃が間に合わなくなる。
 もし敗北あるいは時間切れで、スパイラス攻撃に加われなくなったチームが5チーム以上となった場合、戦力不足により、スパイラスの落下を完全に防ぐことが出来なくなってしまうだろう。
 慈愛龍を筆頭とするドラゴンは、弱体化しているとはいえ強大な敵であり、厳しい戦いになることは想像に難くない。
「この戦いは、地球の存亡を賭けた戦いになる。全てはキミ達の双肩に掛かっているから、どうか必ず勝利して……そして無事に戻ってきてほしい」


参加者
ゼフト・ルーヴェンス(影に遊ぶ勝負師・e04499)
ステイン・カツオ(砕拳・e04948)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)
板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)
ナクラ・ベリスペレンニス(ブルーバード・e21714)
櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)

■リプレイ

●絶望を嘲る死の使い
 ――此処は無限に広がる虚無の世界。
 ケルベロス達の瞳に映る景色は、どこまでも続く広大な宇宙(そら)。
 後ろを振り返って見てみれば、青く輝く綺麗な星が目に留まる。
 この美しい星を狙って、ドラゴン達がすぐ近くまで迫っている。しかも竜業合体の果てに生まれた嘗てない程巨大な竜――『螺旋業竜スパイラス』を隕石の如く、地球目掛けて落下させようと企んでいる。
 しかも標的とされているのは、ケルベロス達が現在暮らしている――日本。
 もし目論見が成就されれば地球は滅んでしまう。しかしそうはさせじと、ケルベロス達はドラゴン達が地球に落下するより前に、宇宙空間に出て迎え撃つ。
 彼らに与えられた時間は12分――それまでに、標的のドラゴンを討ち倒すべく、集った精鋭達は皆一様に気を引き締める。
「星を使い捨てにするとか流石ドラゴン、ビックスケール☆……なんて言ってる場合じゃなさそうだ」
 もはや手段を問わないドラゴン達の行動に、ナクラ・ベリスペレンニス(ブルーバード・e21714)の冗談めかした台詞も笑い事ではなくなっている。
 彼らは向かったその先で、一体のドラゴンの姿を視界に捉えた。
 ソレは上半身が人で下半身が昆虫のような、一般的に思い描くドラゴンとは異なる奇怪な存在。だがその異貌こそ、このドラゴンの不気味さを一層物語っていると言えそうだ。
「現れたな! グラオザムアンラマユ・カタストローフェ!!」
 ドラゴンを一目見るなり、板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)がその名を叫ぶ。
 残酷なる悪と大破局――仰々しくも、破滅を齎す化身の名として、正に異形の容姿に相応しい。
「長くて格好いい名前じゃと……? ぐぬぬぬ、わらわも負けておれん! わらわは今日からマーベラスジャスティススペ……ぐぇ……し、舌を噛んでしもうた……」
 アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)は対抗しようと即興で名乗りを上げるが、残念ながら呂律が回らず。しかしそれはそれ、すぐに気を取り直して武器を手に取り、戦闘態勢を整える。
「嘲笑死龍、か。本名が長いから付いた異名ではなかろうな」
 櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)が口にするのは、かのドラゴンのもう一つの名。
 その意味は、竜の腹にある巨大な口が、絶えず嗤っているからだろうか。
「属性てんこ盛りとでも言いましょうか。ま、ドラゴンとしての義に篤いお方ではあるのでしょう」
 ドラゴンと言えば、強さも然る事乍ら、最強種族としての誇り高さも兼ね備えている。
 ステイン・カツオ(砕拳・e04948)はそんなことを考えながら、気合を滾らせ、異形の竜と相対しても怯むことなく睨め付ける。
「ま、そちらの事情が何でも、地球で虐殺するのなら見逃すのはないね。星の海渡ってきた所悪いが、生存競争と行きましょうかだぜ……!」
 例え理由が何であれ、侵略するなら阻止するのみ。タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)が語気を強めて気炎を吐いて、お供のミミックを従えながら異形の竜に真っ向から挑む。
 左腕に装着しているガントレット状のハンマー、その拳に付けた水晶棘が碧色に輝き帯びて、打ち出す拳は光線を放ち、轟音を響かせながらカタストローフェの脚に見事に命中。
 この一撃が烽火となって、今ここに戦いの幕開けを告げるのだった――。

「地球の命運を賭けたゲームか、面白い。ギャンブラーとしての腕の見せ所だな」
 負ければ地球が終わってしまう。ゼフト・ルーヴェンス(影に遊ぶ勝負師・e04499)は極度の緊迫感を楽しむようにほくそ笑み、絶対負けられないと意気込みながら、闘志を宿した粒子を散布し、仲間の戦闘感覚を研ぎ澄ます。
 ――嗚呼、此れこそ竜だ。
 ドラゴンを目の前にして、リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)が感嘆しながら呟きを漏らす。
 リューデにはドラゴンと因縁浅からぬ過去がある。その一方、仲間の為なら生命も厭わぬ信念に、敬意を抱いているのもまた事実。だが先の大阪城で見た、贄として、仲間に喰われるだけの存在でしかないニーズヘッグは、今までのドラゴン像を覆す程の衝撃だった。
 けれども今回は、異形とは言え己の姿と意志で戦う竜。これなら哀れむことなく戦える。
 リューデは心の中で安堵しつつ、思う存分力を出せると――地獄と化した心臓が、炎を形作って噴き上がり。黒い翼の細工を施すレイピアに、獄炎を纏わせ、振り抜く炎の刃は嘲笑死龍の肩を裂く。
「ギイイイィィィッッ!?」
 傷口を炎に灼かれて血も蒸発し、爛れた火傷の痕が刻み込まれたドラゴンに、リューデは鋭い眼差しを向けつつ真剣な表情で、身構えながら正々堂々と戦いを挑む。
「いざ、尋常に――勝負」

●生存と滅亡
「絶望ね、何わろてんねんという話ですよ。地球の礼儀をぶっ叩き込んでやりますよ」
 番犬達を嘲るように、腹部の口がニタリと嗤う。その挑発じみた行為を受けて、えにかの闘志に火が点いて。脚に力を溜めて高く跳び、無重力空間も関係なく、軽やかに舞って空中で回転。落下の加速に勢いを乗せた蹴撃を、カタストローフェの脇腹狙って炸裂させる。
「最強とまで謳われたドラゴンが、誇りを失った悪行とはこれほど惨めなものはないのぅ。じゃが、どんな悪であろうと正義は見過ごしはしないのじゃ!」
 種の生存の為なら、気高き信念すらも捨てるドラゴン達。アデレードはそんな彼等を憐れみつつも、ここは正義の番犬が、悪に鉄槌を下してみせると意気込んでみせる。
 巨大な槌を握り締め、小柄な身体を大きく使って振り被り、纏った竜の力が高速噴射。推進力で加速しながら接近し、威力を増した一撃を敵の脳天目掛けて振り下ろす。
 えにかの蹴りとアデレードの打撃を続けて浴びて、ドラゴンの巨体が一瞬揺らぐ。しかしすぐさま元に立ち直り、邪魔者を排除しようとカタストローフェが反撃に出る。
 筋骨隆々とした四本指の竜の手が、アデレードに伸びて襲いかかる。ヴァルキュリアの少女は光の翼を翻し、捕まるまいと逃げるが相手の速度が上回り。伸ばした腕がアデレードの身体を掴もうと――。
「おっと、そうはいかないよ」
 そこへナクラが素早く割り込み、身を挺してアデレードを庇うが、代わりにナクラ自身がドラゴンの腕に捕まってしまう。
「今すぐその手を離しやがれだぜ!」
 すると今度はタクティが、右腕のリングに念じて光の剣を生成し、ナクラを掴むドラゴンの腕を刃で一閃、斬り払う。
「せいぜい掠り傷ってところか、流石に頑丈だぜ」
 握った腕が開かれて、ナクラはドラゴンの手から解放される。片やカタストローフェは、腕から零れる赤い血を、腹部の口から伸び出た舌でペロリと拭い、ケルベロス達の方を向いて唾液を滴らせながら舌舐めずりする。
「……コイツはヤバい相手だわ。意思の疎通なんて絶望的に無理かもね」
 敵の薄気味悪さに、ナクラも思わず背筋に寒気を感じる程だ。だがそれでこそ、倒し甲斐があると不敵に微笑み、賛歌を口遊むと、腕に巻き付く雛菊の攻性植物が、聖なる夜明けの光を発して仲間の眠れる力を呼び覚ます。
 竜業合体をしてまで存続の道を選んだドラゴン達は、生に囚われている執念の塊のようだと千梨は思う。
 生きる為なら仲間も喰らう、ある意味尊敬すら覚える強さであるが――。
「だが、お前に相対しているのもまた命だという事を。矮小な身で示してみせようか」
 千梨は意識を高め、宇宙の力と共鳴し、エクトプラズムを圧縮させて造った霊気の弾を、嘲笑死龍の腹部の口に狙い定めて、撃ち放つ。
「まだまだです――掬え!」
 敵が僅かに怯んだ隙を狙い、ステインが指で銃の形を作って竜に向け、秘めたる悪意を指先に集めて凝縮し、一発の弾を発射する。
 ステインの放った弾丸がカタストローフェに当たった瞬間、黒い嵐が巻き起こり、視界を遮るように相手の動きを鈍らせる。
「グギギ……シャアアアッッ!!」
 嘲笑死龍は度重なる番犬達の攻撃を、撥ね退けようと腹の口から何かを吐き出す。それは黒いタールのような粘液だ。
「毒か。だが俺達には無駄だ」
 宇宙空間に撒き散らされる死の毒液に、リューデが対抗すべく念動力で鎖を展開。足元に広がる鎖で魔法陣が張り巡らされ、淡い光が加護の力を付与させる。
「ああ、本当の勝負はこれからだ」
 回復役のゼフトも魔法のパズルを組み合わせ、召喚された光の蝶が宇宙を舞い、振り撒く癒しの鱗粉が、ドラゴンの毒を浄化する。
 ――ケルベロスとドラゴンの戦いは、まだ序盤が終わったばかり。
 限られた時間の中で、彼等は強敵相手に打ち勝つことができるだろうか――。

●惑星墜つ
「我は告死天使! 悪に終焉を齎す正義の使徒じゃ!」
 アデレードが広げた光の翼を輝かせ、白銀の大きな鎌を握って嘲笑死龍に体当たり。
 速度が増す度、光が尾を引くように煌めいて。振るう刃は魂を刈り取り、悪を断つ。
「私達がいるのに地球に落下してくるなんて――飛んで火に入る夏の虫よ」
 余裕の笑みを覗かせながら、えにかが魔法の霧を発生させてドラゴンを包み、揺らめく炎の幻影が、相手を攪乱するかのように攻め手を阻む。
「俺達も行くぜ、ミミック!」
 タクティが相棒のミミックに声を掛け、ドラゴンに対して同時に仕掛ける。
 最初にミミックが、開いた口でガブリと噛み付き、タクティが左腕の拳を放とうと――。
 その直前、カタストローフェが手を伸ばしてミミックを掴み、力を入れると宝箱の身体がミシミシと、嫌な音を立てながら圧し潰されていく。そして動かなくなかったミミックを、ハエトリグサの口へと放り込み――。
「くそっ! よくもミミックを!」
 相棒が倒され、タクティは抑え切れない怒りを拳に宿し、嘲笑死龍のハエトリグサの顔を殴打する。ミミックは間一髪、竜に喰われるところを逃れるが、損傷がひどくこれ以上戦うことはもう無理だ。
「……ったく、胸糞悪い。殺るんなら、遠慮しないで私んトコに来な」
 仲間の犠牲にステインが苛立ち、乱暴な口調で声を荒げ、溢れんばかりの殺意を向ける。
 燻る怒りを巫術に込めて、繰り出す『御業』が放つ炎の弾が、嘲笑死龍を包んで燃やす。
「確かにな……ニーカには指一本たりとも、俺が絶対触れさせはしない」
 ナクラが娘のように大事に思うナノナノを、ちらりと見ながら、大丈夫だからと頷いて。ハートのバリアに包まれながら、燦燦と耀く愛の闘気を漲らせ、時間を凍結させる冷気の弾を、矢を射るように放ってドラゴンを穿つ。
「お前達も必死だろうが、俺達も命を賭けているんでな」
「故にここは一歩も譲るつもりは、毛頭ない」
 千梨とリューデが口を揃えて、ドラゴンに負けじと闘争心を昂らせる。
 茫とした灰色の刃の鎌を携えながら、千梨がそれを振り回して投げ飛ばす。投擲された死の鎌は、不思議な軌道で旋回しながら、血肉を喰らうが如く嘲笑死龍を斬り刻む。
 次いでリューデがレイピアを突き刺し、傷口を重ね広げるように深く裂く。
 ――ケルベロス達は攻撃を緩めることなく、手数の多さで攻め立てる。片やドラゴンは、高い火力で圧倒するが、番犬達も連携力を活かした戦い方で、互角の勝負を繰り広げる。
 戦況はやがて熾烈を極め、残り時間も次第に少なくなっていく――。

 味方の消耗が激しくなる中、ゼフトが癒しの力で仲間を支え、この戦線を耐え凌ぐ。
 短い時間の戦闘で、ケルベロスもドラゴンも、力をすり減らしているのは間違いない。
 後はどちらが先にくたばるか――ゼフトが時計を確認すると、既に10分が経過した。
 彼等に残された時間は後僅か――ここは一気に畳み掛けようと、声を張り上げ合図する。
「総攻撃開始、さあ、チェックメイトだ……!」
 ゼフトが号令を掛けると、ケルベロス達はドラゴン目掛けて一斉に火力を集中させる。
 直後にゼフトが瞬時に相手に急接近。ドラゴンの頸に銃を突き付け、トリガーを引く。
「――ゲームを始めよう。運命の引き金はどちらを選ぶかな」
 銃声が一発、響き渡って――弾丸は一直線にドラゴンの喉を撃ち抜いた。
「分の悪い賭けは嫌いじゃないんだぜ?」
 タクティが右手に結晶を集中させて、握った拳で竜の首筋狙って叩き込む。その衝撃が、拳に伝わり結晶の剣が生み出され、力を更に加えて捻り、遂に嘲笑死龍の頸を断つ。
「ヒギャアアアァァァッッ!?」
 頭をもがれたものの、カタストローフェはまだかろうじて息がある。しぶとい生命力は流石にドラゴンと云わざるを得ない。とは言え、もはやその命も風前の灯火だ。
 嘲笑死龍は残った最後の力を振り絞り、鳩尾の赤く輝く水晶の槍で、番犬達を道連れにしようと突撃してくる――が、盾役のステインが、身体を張って赤水晶の槍を真っ正面から受け止める。
「てめえの相手なんざ腕一本ありゃ十分なんだよ。何度来ようが、ぶちのめしてやる」
 ステインが螺旋の力を解き放ち、突進してくるドラゴンにも動じることなく、掌に篭めた渦巻く螺旋で嘲笑死龍の槍を砕き、渾身の打撃を食らわせる。
「この一戦に、えにか板餅の全てを賭ける!」
 このまま一気に決着を付けようと、えにかが気力を奮わせながら、巧みに二本の棍を操って、舞うかのような怒涛の乱打で烈しく攻める。
「――我が深淵なる瞳を見よ。其即ち其方の罪を映し出す冥府の鏡なり」
 更に続けと、アデレードが地獄を帯びた大鎌で、薙いで刻んだ傷から炎を流し――奔る炎は血を廻り、ドラゴンの魂までも灼き焦がす。
「生憎だが、俺達は諦めが悪いんだ」
 ナクラが攻性植物の蔓を伸ばして、ドラゴンの四肢に絡めて、締め上げて。相手の動きを捕らえたところで、身動きの取れなくなった瀕死の竜に、止めを刺すべく二人のケルベロスが勝負を賭ける。
「――紅に、惑え」
 千梨が巫術を用いてドラゴンの周囲に結界を張り、そこに御業を降臨させる。
 御業が視せる幻は、鮮烈なる紅い世界――紅葉が儚く舞い散って、視界を覆う紅落に、隠れた鬼が隙間を縫って、鋭い爪の斬撃放ち、手負いの竜を追い詰める。
 そしてリューデが間合いを詰めて、死に逝く竜に手を翳す。せめて最期の餞に、はらりと小さな花弁が宙を舞う。ただその色は、彼の髪に咲く白でなく――地獄を宿した炎の赤だ。
「乱れて、散れ――」
 無数の炎の花弁が降り積もり、身体を灼き尽くされた嘲笑死龍は、灰と化し、骸は宇宙の塵と消え散った――。

 斯くして彼らはドラゴン撃破に成功し、後はスパイラスを撃ち落とすのみ。
 一行は他のチームと合流し、螺旋業竜目掛けて全てのケルベロス達が一斉射撃。
 この圧倒的な火力の前に、スパイラスは爆発を起こし、消滅し切れなかった部分は小さな破片となって大気圏に落下する。
 この結果、ケルベロス達は完全勝利を見事に収め、回収に来たヘリオンに乗って宇宙を後に離脱した――。

作者:朱乃天 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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