決戦! 螺旋業竜~日本に竜を落とす日

作者:Oh-No

 ここまでの長い旅路で、目標は砂粒ほどにも見えはしなかった。その目標がついに今、眼下に大きく広がっている。
 蒼い星だ。美しい星だ。自分たちが求めてやまないグラビティ・チェインが、大量にある星だ。
 遙か遠き惑星スパイラスから、どれほどの距離を移動してきたことか。惑星スパイラスに閉じ込められた我々は、ようやくこの星へとたどり着いたのだ!
 振り返れば、螺旋業竜スパイラスの巨大な姿があった。数多の同胞を犠牲にして生まれたこの螺旋業竜の力で、我々はかろうじて星の海を渡ってきた。力を擦り減らすばかりの長く過酷な航海――、だがそれも遂に終わる。この螺旋業竜を、星に落とす。たったそれだけで脆弱な人間たちは死に絶え、グラビティ・チェインを我らに捧げることとなるだろう。
 『スプアヘルド』は眼を怪しく光らせて、周囲を睥睨した。
 ――衰えたといえど、我らはドラゴン。甘んじて滅びを受け入れるなど、あり得ぬことだ。


「第二王女ハールの撃破、それに大阪城地下の探索。どちらも成功だったね。おつかれさま、僕もほっとしたよ」
 ユカリ・クリスティ(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0176)が、集まったケルベロスたちを前にして柔らかく笑う。
「これでエインヘリアルと攻性植物による同時侵攻は阻止出来たはずだ。けれど、新たな危機に関する情報もあったね」
 大阪城地下には、竜業合体によって本星から到達する軍を待つドラゴンたちがいたのだ。いつか本星からドラゴンが襲来することは間違いないだろう。
「そして、竜業合体したドラゴンたちはそれだけじゃない。サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791)が警戒していたように、惑星スパイラスに遺されたドラゴン達が竜業合体によって惑星と合体し、地球の衛星軌道上に出現する事が予知されたんだ」
 この予知は、黎泉寺・紫織(ウェアライダーの・e27269)、エマ・ブラン(白銀のヴァルキュリア・e40314)が協力を要請していた天文台からの情報、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)が注意を喚起していたNASAによる解析によって詳細な内容が把握されている。
 その内容とは以下のようなものだ。
 無茶な竜業合体により、慈愛龍が率いていたドラゴン軍団は殆どが失われた。残ったドラゴン達も、グラビティ・チェインの枯渇によって、戦闘力が大きく損なわれている。
 そこで慈愛龍は、竜業合体した惑星スパイラス……螺旋業竜スパイラスを衛星軌道上から日本に落下させることを目論んでいる。巨大質量が大地に落ちれば、その衝撃がまき散らす破壊は桁違いなものになる。そうやって殺害する数百万数千万の人間からグラビティを略奪し、失った力を埋め合わせようとしているのだ。
「これが実現してしまったら、地球環境に壊滅的な影響が出ることは避けられない。だけど、ドラゴンが出現するポイントはすでに割り出されており、強大だった彼らは弱っている。阻止できるチャンスは十分にあるよ。だから皆には、出現するドラゴンの撃破と、彼らが落とそうとしている螺旋業竜スパイラスの破壊をお願いしたいんだ」
 ユカリは落ち着いた調子で説明を続けた。
「衛星軌道上までは、僕の宇宙装備ヘリオンで快適な旅を約束するよ。そこで担当するドラゴンを撃破し、そのうえで螺旋業竜スパイラスの破壊に挑んでほしい」
 この班で撃破を狙うドラゴンの名は、『スプアヘルド』。率先して先陣を切り、待ち構える敵へと飛び込む姿から、背竜(はいりゅう)の異名を持つドラゴンである。武人気質で落ち着いた性格をしており、結果を希求する粘り強さもある。
 姿かたちはヒトに近しくも見えるが、その体躯はドラゴンらしく巨大であり、ヒトの背丈では足首にも届くまい。錨の如き鋭く重い腕を振り回し、全身から魔力を噴き出して突進、そのいかめしい肩に敵を叩きつけようとする。
 極めつけは、胸部にある顎だ。ひとたびその顎に噛みつかれ内へと囚われたなら、まさしく力を『喰われる』だろう。
 戦闘は衛星軌道上で行われる。無重力空間での戦闘となるが、ケルベロスにとっては問題とならない。必要ならば、ジェットパッカーなどを用いてもいいだろう。
「弱体化しているとはいえ、相手はドラゴン。それも竜業合体に巻き込まれずに個を維持している有力な一体だ。けっして油断せず、けれど迅速な撃破を目指してほしい。……無茶を言っていることは自覚してるよ。でも、それでもだ。この危機にどうか立ち向かってほしい。――よろしくね」


参加者
立花・恵(翠の流星・e01060)
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)
軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)
レヴィン・ペイルライダー(己の炎を呼び起こせ・e25278)
如月・高明(明鏡止水・e38664)

■リプレイ


 ヘリオンの外壁に足をかけ、ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)は暗い宇宙へと飛び出した。モーメントを受けてゆっくりと回るピジョンの視界に、周囲の様々なものが入り込んでくる。連れてきてくれたヘリオン、巨大な螺旋業竜、周囲を取り巻くドラゴンたち、そして蒼く美しい地球。ピジョンはジェットパッカーを軽く吹かし、回転を止めてドラゴンたちへと向きながら、今見たばかりの地球の姿を思い返していた。
(「……僕たちの星を傷つけさせるものか」)
 その想いは、ここにいる皆が共有しているものだ。
(「私はみんなが生きる世界の存続を望む。2度と地球を割らせはしない」)
 ――かつて地球は滅亡したのだという。その時は『巻き戻し』されて助かったけれど、今度は自分たちで守るのだとイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は意気込んだ。
「CQCQ、感度どうか?」
「おーけー! ちゃんと聞き取れてるよ!」
 アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)が送った試験通信に、マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)が明るい声で応じる。大気などない衛星軌道上での意思疎通を心配していたが、ごく短距離なこともあるのだろう、通信に乗せた音声はややノイズ混じりながらも、互いに問題なく聞こえている。これなら不都合はなさそうだ。
 そうして準備を整えている間に、倒すべき相手スプアヘルドもまたケルベロスたちを見定めたようだ。こちらへと接近してくる姿を、立花・恵(翠の流星・e01060)の眼が捉えた。
「宇宙空間だと遠近感が狂って、スケール感がわからなくなるな……。人型のせいで、人間サイズに意識が引っ張られてるのもあるかな?」
 適切な比較対象もなく、すぐ傍にまで近づいているようにも感じて、恵は戸惑う。
「人間よりかなり大きいんだよな? なら、まだ少し距離はありそうだけど……」
「奴さん、さらに速度を上げて向かって来てやがるぜ。お前ら、歓迎する準備は十分か?」
 自分の手と見比べて距離を見積ろうとする、レヴィン・ペイルライダー(己の炎を呼び起こせ・e25278)を遮って、軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)が声を張り上げる。
 もちろん、ヘリオンから飛び出した時にはもう、いつだって戦える準備ができていた。
 スプアヘルドはいよいよ目前まで迫り、その威容を示している。
(「さぞかし強力な敵でしょうけれど、こちらも負けるわけにはいかないのですよね」)
 けれど如月・高明(明鏡止水・e38664)はドラゴンが放つ圧にさらされても、あくまで冷静に刀の柄に手をかけて、敵が間合いへと入る瞬間を待つ。


 接近するスプアヘルドは一切速度を緩めることなく、待ち受けるケルベロスたちのただ中へ飛び込んできた。巌のように硬い巨体で以て、蹴散らしてしまおうという算段か。
 その巨体が薙ごうとする軌道上へ、アジサイとイッパイアッテナ、やや後方へ双吉が恐れもせずに立ちはだかった。身体の要所を固めるオウガメタルが放つ粒子に照らされて、彼らの鍛え上げられた身体が虚空の中に浮かび上がっている。
 スプアヘルドはまるで燐光に誘われるように、突き出した肩を前にして、アジサイたちの正面へ突き進んでいった。
「今日の天気は快晴だ。生憎だが、何一つとして降るものがない一日となる」
「幾条もの流れ星だけが空の彼方へ消えていった、ですね」
「そうなると大気圏で綺麗に燃え尽きるように、粉々にしてやらなきゃいけねぇな!」
 アジサイが静かにつぶやいた一言に、イッパイアッテナと双吉が応じた。
 奴はもう目前。真っ正面には、交差させた二本の腕を突き出して、受け流す構えをとるアジサイがいた。
 ――大きさは違えど、どこか似た雰囲気がある二体の竜が激突する。
 身体を貫く衝撃。アジサイは自分の身体が軋む音を聞いた気がした。翼をいっぱいに広げ、発する推力で僅かでも勢いを殺しにいく。
 けれど、それは瞬く間のことでしかない。二体の竜はぶつかり合ったビー玉のように、すぐに弾きあって分たれる。
 すかさずマイヤの相棒、ボクスドラゴンのラーシュが癒しの力をアジサイに飛ばした。そんな相棒のひたむきな姿が、マイヤをいつも以上に勇気づける。
「ラーシュ、わたし達も気合入れるよ! 頼りにしてるんだから」
 ジェットパッカーをフルスロットル、白い翼で虚空を切り裂いて、マイヤは飛び出した。目指すは、スプアヘルドが弾かれていった先。加速したマイヤは手足を縮めてくるっと半回転、軌道が交叉する場所目掛けて足先を突き出し、一条の流星と化す。
 さらにもう一条、高明もまたスプアヘルドの巨体を穿つ流星となるべく宙を駆けていた。
「まずはその動き、封じさせて頂きますよ!」
 虚空に散らばるオウガ粒子が、自身の輝きでスプアヘルドの軌跡を描き出す。その輝きに導かれて放たれたマイヤと高明の鋭い蹴撃が、スプアヘルドを挟み打つようにして炸裂した。
 巨体が僅かに傾ぎ、バランスを崩したように見える。見逃せば、すぐに立て直されてしまいそうなほどのわずかな隙だ。
 巨体の陰に隠れるようにしてすぐ傍まで迫っていたケルベロスは、そのわずかな隙を見逃さずに追撃を仕掛けていく。
 ギリギリまで近づいた恵は、あえてスプアヘルドの視界に身を晒し、己へと注意を引き付けた。その間にピジョンが巨体の死角から忍び寄って、逆手に握った青瑪瑙の刃に魔力を込めて振り下ろした。
(「少しは鈍ってもらわないと、怖いからねぇ」)
 脆く見える刃だが、強化された短剣はスプアヘルドの硬い表皮を易々と突き破り、無惨な傷跡をそこに残す。ピジョンが仕掛けた機に合わせ、恵も起こりを読ませない練達した動きで懐へと入り込み、エアシューズのブレードで斬りつけた。
 さらにやや遠間で位置取りを探っていたレヴィンが、あわよくばさらなる追撃を、と狙ったけれど。
 スプアヘルドは自らにまとわりつく者たちを弾き飛ばすように激しく回転し、あまつさえ周囲に浮かぶものすべてを禍々しい両腕で薙ぎ払った。碇の如き腕を叩きつけられ、あるいは不幸にもその鋭い切っ先で切り裂かれた前衛陣は、攻撃の組み立て直しを余儀なくされた。
「そう簡単に付けこませては貰えないか。――だがオレ達の作戦は、まだまだこれからだぜ」
 レヴィンは呟いて、抜き放ったチェーンソー剣を手に、荒れ狂う嵐の中心を目掛けて飛び込んでいった。


 双吉の懐にしまい込んだ時計が鳴動した。残存時間はもう半分ほどか。
「……こうも好きにやられると嫌になるな」
 短期決戦を求められる勝負だが、ケルベロスたちはけして焦らず、与えられた時間を限界まで使い切ることを意図していた。そういった堅実さを前面に押し出す作戦において、双吉がここまでに果たした役割は大きい。巨体を生かして暴れまわりつつも、時にクレバーさを垣間見せるスプアヘルドの攻撃に対し、癒しの力を使い分けて確実に戦線を支え続けていた。
「だが、十分に布石は打ち終えたはずだぜ。そろそろ成果を刈り取りにいかねぇとなあ? おら、景気づけの一発だ!」
 双吉が握りこんだスイッチが、周囲の仲間たちの背後に色とりどりの爆発を花開かせる。
 その派手な爆発の中から、巨大な槌を振り上げたピジョンが飛び出した。ピジョンは弧を描くように飛翔し、スプアヘルドの側面から攻撃を仕掛けようとする。
 すると、ピジョンの動きを追って、スプアヘルドの頭部が振り向いた。ピジョンは向けられた視線の中に、敵対する確かな意思を感じた。
(「……いいね。話す知性を失ったような敵よりずっといい!」)
 脳裏に先日見たばかりのドラゴンの姿がよぎる。彼らとは違い、この相手とは真剣に戦う価値がある。
「いざ勝負!」
 槌の片側から噴出される竜の力で爆発的な加速を生み、スプアヘルドを鎧う硬質の肌へ槌を叩きつけた。この一撃を確実に当てられるのも、ここまでの積み重ねがあってこそ。
 アジサイはスプアヘルドの顔をひたと見据えた。更なる沼の底へとスプアヘルドを引き込むべく、
「まだ最悪ではない。――そして、最悪程度で終わると思うな」
 高く持ち上げた足で虚空を踏み抜く。それが呪詛発動のトリガーであり、対象に降り積もった『悪いもの』を倍加させ、底を抜く。
「私もそろそろ、反撃させてもらいましょう」
 ジェットパッカーを全力で噴射して進むイッパイアッテナは、スプアヘルドの巨体に衝突するかというあわや寸前で、鋭角に向きを変えて、敵の頭上へと抜け出した。
「いきますよ!」
 そしてドワーフらしい頑健な躰から繰り出された、戦斧の重い一撃を頭部へと叩きつけたのである。

 ケルベロスたちは次第にギアを上げていく。攻撃は十分に当てられるようになった。ならば、今度はより傷を深くすることが重要だ。
 一撃一撃があまりに重いスプアヘルドの攻撃に耐えながら、盤石の態勢を形作る。視界の隅にどうしても映る、巨大な螺旋業竜スパイラスの姿は気持ちを焦らせるけれど、心を静めて目の前の強敵をどうにか討ち取ることへと集中した。

 ――そして最後の鐘が鳴る。鳴動するアラームが、作戦最終段階への移行を皆に促した。
 即ち、総攻撃のタイミングが来たのだ。
 メディックの双吉までもが、攻撃に打って出る。
「まだ十分な徳が積めてねえからな、こんな所でやられるわけにはいかねえんだよ」
 前方に伸ばした双翼で捕食形態と化したブラックスライムを叩きつけ、オウガメタルのグローブで連打を浴びせた。
 ピジョンも拳も武器として、属性を乗せた一撃でスプアヘルドの腹部らしき場所を打ち抜く。そして他の仲間たちが後に続き、スプアヘルドへと着実にダメージを重ねていった。
 けれど、竜はなかなか墜ちない。思うように動かなくなってきた身体を窮屈そうに振るってケルベロスたちを弾き、その巨大な顎で力を喰らわんとする。
「仲間は食べさせませんよ!」
 だが顎の前へイッパイアッテナが身を挺し、仲間を庇った。だが甘んじて喰われはしない。両手で握った戦斧を、鋭い牙が生えそろった口蓋へと叩きつけ、閉じようとする顎に抵抗する。
「最後まで勝負を捨てないことには敬意を表するが、俺達の地球に僅かたりとも傷はつけさせん」
 それでもなお噛み切らんとする顎を、側面からアジサイが全力で殴りつけた。
 無造作にも見える一撃。だが、叩きつけられた拳は確実に弱点を射抜いており、イッパイアッテナは顎が弛緩した隙に乗じて危地から抜け出す。
「スプアヘルドも必死なんだよな。――でも、もう終わりにしよう」
 レヴィンの手には、銀色の銃が握られている。『箒』という女の子の形見だ。レヴィンはそっと距離を詰め、至近距離でどうしても重く感じてしまう引き金を引いた。
 遠間からは、恵が高速で飛翔しながらリボルバーを連射する。
「炸裂しろ! 灼熱の星の衝撃よ!」
 動きながら放たれた弾丸は、込められた闘気をエネルギーへと変えて加速し、狙いのスプアヘルドの頭部、ただ一点を目指し突き進む。そしてあたかも命中したのが、ただの一発であったかのような銃創を残した。
 マイヤはふと、構えた金色の斧に映り込んでいた、蒼い星に目を止めた。かけがえのない人たちが待っている、とてもとても大事な星。彼らと重ねた想い出の数々がマイヤに力を与え、ここまで戦い抜く原動力となった。
 目前に立つ敵は、こんなに大事な星を壊そうとしているのだ。
「わたしね、護りたい大切な人達がいっぱいいるの! 好きにはさせない!」
 マイヤはスプアヘルドに突き刺すような鋭い視線を向けて、叫びとともに時空凍結弾を放った。みんなを護りたいという、強い願いが込められた弾丸は、竜の身体を打ち抜いて凍らせる。
 ――今度こそ、スプアヘルドの命の火が燃え尽きようとしていた。不利になってから尚も粘り続けた強さも、失われようとしている。
 高明は命の火を確実に刈り取るために、納刀した刀の柄に手を添えて目をつむった。精神を研ぎ澄ませれば、意識上にスプアヘルドの姿が像を結ぶ。
 その瞬間、眼を見開き、刀を走らせた。
「――私の剣からは逃れられません。お命、頂きます」
 意識上の姿と、現実のスプアヘルドの姿はぴたりと一致して重なり合っている。その二重の像が奔った剣閃に切り裂かれ、二つに分かたれた。
 弱体化して尚、有力で巨大だった背竜に、ケルベロスたちはこうして最期を与えたのである。


 スプアヘルドは倒したけれど、スパイラスを破壊可能な刻限は間近に迫っていた。
「ギリギリだけど、待ち合わせには遅れずに済んだかな」
「ボクスドラゴンさん達には悪いが、とんでもない災厄――全てを犠牲にし迫り来る螺旋業竜を、いまこそ破壊する! 勇気ある民に報いる為に!」
 軽口をたたくピジョン。イッパイアッテナは強敵に打ち勝った高揚のままに、スパイラスを振り仰いで叫んだ。
「銃をホルスターに収める暇もないな。一気にスパイラスを叩くぜ!」
 周囲の空域では、すでにスパイラスへの攻撃が始まりかけていた。流れに遅れじと、恵は手の中で1回転させたリボルバーの銃口を、スパイラスへと向けて引き金を引く。
 ほかの仲間たちも、即座に続いた。
 レヴィンの足先からは星形のオーラが、マイヤが手にする錐からは竜を象った雷撃が放たれる。
 アジサイは虚空を踏み抜く動作でスパイラスを呪詛にかけ、高明は抜刀術から放たれる剣閃で彼方にあるスパイラスを切り裂かんとする。
 そして、スパイラスを半球状に包むようにあちらこちらから放たれた種々の破壊力が、次々と炸裂していった。

 ――螺旋業竜スパイラスが、燃えていく。
 光が、魔力が、銃弾が、刃が、炎が。ありとあらゆる力がスパイラスを穿ち、方々で爆発を生じさせる。はじめは散発的に始まった爆発が新たな爆発を呼び、スパイラス全体が加速度的に爆炎に包まれていった。爆発が生んだ粉塵がスパイラスを覆い隠し、やがて再び姿を現した時、スパイラスはその過半がすでに消滅していた。
 双吉はその過程をじっと見ていた。姿は変わり果てていたけれど、螺旋忍軍の本星だったもの。自分の右腕に宿る螺旋の力が、起源とする星だ。
 ……螺旋の力を得たのは、荒んでいたあの頃。力を得てケルベロスとなった双吉は、どうにか生き方を見出すことができたのだ。
「ありがとよ、螺旋の星。俺達螺旋忍者のケルベロスも、螺旋忍軍のデウスエクス共だってきっと、これからもこの力で何かを為し続ける。螺旋ってモンを伸ばし続けていくよ」
 僅かに残った欠片すらも爆発で散って、大気圏に落ちていく。それらの欠片もきっと大気に抱かれて燃え尽きて、形すら残らずに消えるだろう。
 双吉はヘリオンが回収に来るまでの間、その光景を見続けた。その瞳にこの光景を焼き付けるように。

作者:Oh-No 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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