●災厄のサラダボウルへ
「先日の第九王子サフィーロとの決戦おつかれさま! ブレイザブリクを完全に支配下に入れた事でアスガルドゲートの探索も開始されている。準備含め時間はまだかかるだろうが、ゲートの位置が掴めれば此方から決戦を挑む事もできるだろう」
集まったケルベロス達に告げる雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)。
「だけどエインヘリアルがこの状況を見過ごすわけがない。ホーフンド王子勢力が持ち帰ったサフィーロ王子の裏切りという報告を受けてブレイザブリクの奪取に軍勢を動かしてくることは間違いないだろう」
白熊の表情はやや厳しく、続いた言葉の内容も厳しいもの。
「そして悪い事に、大阪城の攻性植物勢力が軍勢を整え侵攻の準備をしているという情報が齎された。エインヘリアルと攻性植物は長年の仇敵だったがケルベロスを共通の敵として対立関係が緩和されている、そして第二王女ハールがホーフンド王子に援軍を出していた動きからブレイザブリクの奪還に合わせて大阪城から侵攻を行う合同作戦を仕掛けてくる可能性はかなり高い。八王子も大阪城も大都市圏に隣接しているからもし作戦が行われれば人々に大きな被害が出る事は間違いない」
だけれどね、と知香は続ける。
「ケルベロスの皆の調査で大阪城側が準備不足で隙がある事が分かってる。だから複数のルートから大阪城勢力に攻撃を仕掛け、共同作戦の実行を阻止してほしいんだ」
大阪城勢力はプラントワーム・ツーテール事件で確認された地下拠点で侵攻準備を行っている様子だと知香は語る。
「そこに破壊活動を仕掛けて侵攻準備を遅らせるのが作戦になる。そしてその地下への攻撃は、別のチームが狙うハール王女への援軍阻止にも繋がる……とても重要な作戦だ。本命は要塞拠点のハール王女の撃破だが、そちらがもし失敗しても破壊活動が上手くいっていればエインヘリアルと攻性植物の共同作戦の実施を遅らせる事はできるだろうね」
ただし、と知香は付け加えた。
「この侵入作戦は敵拠点への潜入と破壊工作となる。だから深入りしすぎると帰還が難しくなる。出来る範囲で情報を探ったり大阪城勢力に更なる打撃を与える事が出来れば大成功、けれど撤退可能な範囲を見極めつつ慎重に。……何とも判断が難しいけれど皆なら上手くやってくれると信じてるからね」
そして知香は今回狙える敵勢力の資料を広げる。
「まずはドラゴン勢力、定命化で弱っていたドラゴン達は今もまだ完全な回復には至ってない。けれど攻性植物の力を取り入れたドラゴンの一派は力を取り戻し侵攻作戦に加わる為に準備を進めているみたいだね。敵としては攻性植物化したドラゴンが予想される。もしかしたら攻性植物や同族、本星から向かってきているドラゴンについて情報を得られるかもしれない」
次はダモクレス、ジュモー・エレクトリシアンの勢力だと資料を捲る。
「此方については大阪城に集まった他勢力の技術を利用したダモクレスの開発を行っていて、前線の要塞にも戦力を送っているから、戦力を集中させればジュモーを撃破するチャンスもあるかもしれない」
大きな勢力はこんな所で次は、と知香は頁を捲り説明を続ける。
「螺旋忍軍は戦力として壊滅しているし、リーダーも撃破されている。けれど様々な技術を利用して復興を目指している幹部や首領もいるようで、その情報を得る意味もあるかもしれない。勢力が壊滅しているといえばドリームイーターもだ。此方は生き残りのパッチワークの魔女勢力だけれども勢力としては弱いから、この二勢力は上手くやれれば滅ぼす事も不可能ではないだろう」
そしてさらに捲ったページにはレプリゼンタ、そして攻性植物の情報がまとめられていた。
「まずはレプリゼンタ・ロキだが……向こうに命懸けで戦う理由がない。だから一定人数以上で接触したら戦闘前に撤退する可能性が高い。一人でいるようだから少人数かつ隙を狙い、さらに不死の秘密を破れたらチャンスがあるかもしれない。そしてレプリゼンタ・カンギ、此方はカンギ戦士団が護衛についているから撃破は難しいだろう。ただ、カンギと接触する事で有益な情報を引き出せるかもしれないし、上手く長時間足止めできれば他チームの援護になるだろう」
そして情報収集について、と白熊は説明を続ける。
「まず攻性植物ゲート、かつての戦いで大体の位置は判明しているが状況の変化で地形が変わっているかもしれない。ゲート周辺には厳重な警備が敷かれているだろうから、その突破には多くの戦力が必要になるだろう。次に堕神計画。死神ネレイデスが画策していた計画で、それを利用して攻性植物が『十二創神』に関する何かを手に入れた可能性があるから詳しく調査するのもいいかもしれない。そして最後、攻性植物が大阪湾を通って瀬戸内海に出る可能性が指摘されていて、海底に向けて何か工作を行っているなら早期発見もできるかもしれない」
「多くのケルベロスが調査、探索してくれた事で多くの情報が得られた。導線力を配分するかはとても難しいだろうけど……その情報を活かし、大阪城への潜入作戦を成功させてほしい」
頼んだよ、と、明るい信頼に満ちた声で知香は説明を締め括った。
参加者 | |
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瀧尾・千紘(唐紅の不忍狐・e03044) |
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397) |
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412) |
岡崎・真幸(花想鳥・e30330) |
トリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351) |
アリアナ・スカベンジャー(グランドロンの心霊治療士・e85750) |
●螺旋忍者の領域へ
大阪地下で発見されたいくつもの地下鉄構内の亀裂、その先には大阪城勢力のデウスエクスが種族ごとに領域を分けて存在している。
螺旋忍軍の領域を調査・襲撃すると決めた三班のケルベロスは地下鉄に潜り、其々予知により割り出された最適な侵入経路により、別の亀裂より侵入を果たす。
「ここまでは来ても問題ないようだよ」
暗い道を静かに先行する緑のグランドロン、アリアナ・スカベンジャー(グランドロンの心霊治療士・e85750)が振り返り小声と手招きで促す。
生ける鋼の体躯は毒や真空の中でも問題ない、罠を警戒してのこの行軍だが今の所問題はないようだ。
金狐のウェアライダー、瀧尾・千紘(唐紅の不忍狐・e03044)も五感、特に聴覚と嗅覚を研ぎ澄ませながら忍者の痕跡を探っている。
ケルベロス達の他に足跡等は見当たらず、少なくとも最近は何かが通った形跡も見つからない、けれど油断は禁物だ。
そして三対の翼をもつ彼岸花のオラトリオは岡崎・真幸(花想鳥・e30330)。厳しい表情のままに過去に制作した地図を確認している。
アリアドネの糸があるとはいえルートを記録するに越したことはない。地図の精度を上げる為に真幸は地図にルートと所要時間を書き加えていく。
「今のうちにちと占っとくか」
飄々と卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)がコインを音もなく弾き、手の甲に落とす。
「ん、表か。この通り上手くいくといいんだが」
「あら、それは幸先がいいですわね。前の戦いも勝ちましたし♪」
熊本での戦いで戦場を共にした事のある二人。その時も趨勢をコインで占っていた。
「あー……あの時も嬢ちゃんも派手にやってたな」
「そんな事もありましたかしら?」
うふふととぼけ、千紘が微笑む。
(「世界全体を把握するには情報が不可欠だが、果たして何処まで暴く事が可能か」)
赤と灰に染まった聖職服を纏うユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)は禍々しい姿のミミック、エイクリィと共に静かに走る。ミミックの様子は母を慕う仔のよう。
その探求心までは狂気に冒されていないのか、はたまたそれそのものが狂気に由来するのか。それを裡に隠しながらサキュバスはその目で確かめるために歩みを早める。
暫く洞窟を進み、ケルベロス達の視界に僅かな光が差し込んでいる。
その先に見えるのは植物の根が張り巡らされた奇妙な施設、その周りには警戒している三人の腕に攻性植物が纏わりつかせた螺旋忍者。
知人達が怪我をする事を嫌い参戦した仏頂面のオラトリオは、その攻性植物を取り込んだような敵の姿に纏う雰囲気を一層険しくさせる。
他の班が向かった場所にも別の技術があるのかもしれないが、それらを共有する力を螺旋忍軍は持っている。
弱小だからこそ、残った技術を結集させる可能性を考えると辟易してしまう。
(「全て潰してしまいたいが」)
それは戦力の関係上難しいだろう。仮にもっと戦力を集中し根絶やしにする覚悟で臨んだなら別かもしれないが。
それでも拠点を潰せるこの機会を真幸は活かしたい。
表にいる人数は少数、そして向こうは気付いていない絶好の先制のチャンスだ。
視線を交わし同意を取った千紘が可愛らしく誘うようにキツネの尻尾を揺らせば、羽毛のように軽い真っ白でふわふわな毛玉がふわりふわりと拠点の方へ。
そしてその毛玉が防衛の螺旋忍者に触れた瞬間、強烈な閃光と大爆発が地下空間に響いた。
「さー、派手にぶっぱいこっか!」
蒼いヴァルキュリアのトリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)が黒い骨のようなボクスドラゴンのギョルソーと共に飛び出し、五人がそれに続いた。
そして、襲撃は開始された。
●囮、速攻
「アナタ達って弾を無駄遣いするのに最高ね!」
そう言いつつガトリングガンから弾丸を惜しみなく螺旋忍者にバラまくトリュームの姿はまさしくトリガーハッピー。
アイテムポケットにみっちり詰めた弾薬箱由来のそれを継戦おかまいなしに使い捨てにする。
ギョルソーも怪獣の如く赤黒いブレスを吐き主を支援する。
「皆の力になっとくれ」
緑のグランドロンがスイッチを押し込めば士気を鼓舞するカラフルな爆発が前衛の真後ろに巻き起こる。
今回の目的は敵の数を削り、注意を惹き付ける事。だからこそ派手に戦う必要がある。
多くの情報を拾う為に、六人は他の二班の調査を円滑にする為の陽動を務める事に決めていた。
その身を投げうってでも成し遂げる覚悟を決めている者も多い。
だけれども。
「別に倒して殲滅しちまってもいいんだろ?」
敵を惹きつける陽動だけ終わるつもりのケルベロスはいない。ぶちのめすまでを考えている。
リスクは前提、それをひっくり返してこそのギャンブル。
勝負師たるレプリカントはその異形の左腕に装着したライフルより重力を中和する光線を放てば、千紘が連携しタイラントレディの砲門から炎を放ち忍者を焼き払った。
奇襲で一人撃破、しかし『繰草忍』金狐繰草忍衆という名の二人の螺旋忍者は反撃に移る。
その腕に纏う――腕から直接生やした攻性植物が蔓のように展開し、そして忍者の速度で泰孝を捕らえんと二人が飛び込み捕縛しようとする。
だが、黒の骨竜とユグゴトが割り込み庇う。同時ギョルソーは自分自身に、チビはユグゴトに属性を付与し傷を治療。
「来たれ神性。全て氷で閉ざせ」
冷徹な声で真幸が詠唱すれば、召喚された異星の神性の一部が標的た忍者を周辺ごと凍結させる。氷を割り這い出そうとする植物の忍者に強烈な鉄塊剣の一撃が炸裂。
「貴様等を仔と認識する日々だが、自身の想いは如何に。騒々しい戦場で問答するのは難しいか」
ユグゴトが腕力のみで振るったその一撃は彼女にとっての抱擁、お仕置きであった。穏やかな口ぶりの彼女を満たす、デウスエクスすらも仔とみなす狂気。
彼女にとって仔は抱擁すべき存在であり、そして捕食すべき存在だ。なぜならば、母は仔の幸せを願うもので、胎内への回帰こそが快楽の極みであるのだからそれを実行する事に何の間違いがあるのだろうか。
螺旋の力を掌に宿した忍者に無数の八尾の螺旋手裏剣が降り注ぐ。千紘が頭上に放ったそれは前衛を足止め、追加でトリュームの竜のハンマーから放たれた砲弾が追撃する。
そして足を鈍らせた忍者に一本の白い棒が突き刺さる。黒い八つの点が刻印されたそれは泰孝の魔力で生み出された麻雀の百点棒。
「テメーを蝕む一本場……今回は一撃で三本場分、遠慮せずに八連荘、役満分までくらっとけ」
妨害手としての呪縛の増幅、三倍増しの魔力の百点棒は分身による回復の効果を抑制するもの。
呪縛を受けた忍者は螺旋の力を宿した掌で反撃にかかるがエイクリィが飛び込み防がれる。
しかしその間、後衛が救援を求め施設に飛び込もうとケルベロス達に背を向けようとし、
「そら、逃がさないよ! とっときな」
アリアナが警告と共にプラズムキャノンを放つ。同時に六翼のオラトリオがエイクリィのエクトプラズムに殴られた前衛の懐に飛び込み、紅い鋼の鬼の一撃で守りごと打ち砕いた。
奇襲の成功、それだけでなく目標が統一されていたため殲滅も早い。
「ハーイ、今週のビックリドッキリなヤツはコレ!」
じゃーんとトリュームが取り出した魚雷のようなオサレアイテムは古代兵器。ばしんと尾の方を叩けばもくもくと煙を吐きながら忍者へと加速し命中、盛大に炸裂し最後の忍者を吹き飛ばした。
「凄い! イカした武器ですわね!」
トリュームのグラビティに千紘がはしゃぎつつ、負けじと炎の魔力を纏う弾幕を忍者に炸裂させる。
元来、千紘の知識欲は旺盛である。螺旋の技術を継ぐ業があるから故か、つい新しいモノにははしゃいで目を輝かせてしまう。
「向こうにも在るようだ」
拠点入り口を遠間に見たユグゴトが速やかに駆け出す。
向こうが態勢を整える前に、ケルベロス達は躊躇わず施設へと飛び込んだ。
●劫掠、殲滅
流れるように拠点の中へと飛び込んだケルベロス達の前には慌てて飛び出してきたような忍者達。派手に暴れたからか、数多くの姿が見える。
「纏めてぶっ飛ばすよ!」
役割としては癒し手、けれど性格的には突っ込んでいく方が性に合っているアリアナが超加速し重戦車のような突撃をぶちかます。
忍者を蹴散らし出鼻を挫けば、ガトリングガンの二連奏がそれに続きデウスエクスをハチの巣にする。
「此処に集うのは呪いの血。知性を有した結晶体は『生命』の芯を変質させる」
ユグゴトの手に集い、悍ましき呪いの結晶となった血が一人の忍者に注がれる。
「其処に在るのは凝固の最期。さあ。我が仔よ」
美しく固まれ、艶然と嗤い謳う彼女の言葉と共に徐々に忍者の体が結晶へと変換されていく。
停止し、麻痺し、動きが束縛され。呪いに込められた何かの侵蝕を拒む忍者は黄金の輝きと分身の業で対抗しようとする。
しかしチビが小柄な体でタックルを食らわせれば忍者が纏った残像を霧散。
さらにトリュームの流星の軌道の飛び蹴りと千紘のタイラントレディの真紅のハート型弾丸の嵐が重ねられ、忍者を正確に撃ち抜いていく。
妨害に回復に、チビは十分に働いている。それに負けじと真幸が兄妹の名をもつ二振りのナイフを舞うように踊らせれば、忍者の体は苦痛を感じる間もなく正確に解体される。
そんな彼を狙い嵩を増した攻性植物が押し潰すように伸ばされるが、ギョルソーが食い止める。付与した属性による耐性で毒を祓い、黒竜は自身を再び治療。
そして、拠点内の忍者の頭上から無数の八尾の手裏剣が降り注ぎ、足を止めさせた直後にエイクリィが偽の財宝をばらまき忍者達を惑わした。
けれど施設の奥から次々に忍者が飛び出してきてキリがない。
もしかするともっと範囲攻撃があった方がよかったかもしれない、とそれを見たトリュームの頭に一瞬ちらつく。
今回の方針から多数の敵を想定した方がより安定した戦況となっていたのかもしれないが、ないもの強請りはしょうがない。
泰孝のニートヴォルケイノの溶岩が忍者の飛び込む気勢を削いだ所に病的な二振りの鉄塊剣が叩きつけられ、ぐちゃりと忍者の首がへしゃげた。
しかし二人の螺旋忍者が彼女に螺旋の一撃を叩きこむ。強烈な一撃を喰らったユグゴトの表情は、それでも穏やかなまま。
母は強い。あいは重く酷い、それらが狂気の産物であろうとも。
「気力溜めだよ、頑張っておくれ」
治療は戦乱の頃からの手慣れた仕事、消耗をしっかりと見極め回復手段を切り替えるアリアナは、オーラの塊をユグゴトに放出しその傷と呪縛を解除する。
数の不利をごまかしながら、ケルベロスは次々に忍者の屍を重ねていく。
十数分が経過した頃。
忍者の放った攻性植物が真っすぐ千紘へ喰らいつかんと伸びるが、八尾の手裏剣を斜めに構えた金狐はそれを受け流し、ハート型の弾丸をお返しにする。
「千紘一人では運べません。みんなで逃げる!」
消耗が重なってきている仲間を鼓舞するよう千紘が叫ぶ。
花のモチーフを柄に刻んだナイフが走り、花が咲くかのように鮮血が舞い散る。返り血にその身を染め生命力を奪い取った真幸が気づく。
(「援軍が止まった……打ち止めか?」)
無尽蔵に湧き出しているように感じた忍者の援軍が止まっている。
もしかしたら陽動と看破され他に援軍を向けたのかと一瞬思考が過る。
だが、看破されようと関係ない。他に行くならばここを徹底的に破壊するまでだ。
トリュームの砲撃、それを起点に多くの忍者が倒れたそれに続き魔力を纏った小動物が衝突。既に突き刺さっていた百点棒、そして呪縛が一気に増幅される。
「どうした、早く回復しねーと動けなくなっちまうぞ?」
さらに、かかった呪縛が一気に増幅させながら泰孝が挑発。
分身の回復が重ねられるが六本に増幅された百点棒の阻害が働き治癒も僅か。そこに爆炎のハート型の弾丸が殺到、焼け焦げ崩れ落ちた。
「っと、もうハコか。ご愁傷様」
残り少なくなった忍者が反撃、蔓が彼に絡みつこうとするも名状し難い叫びで傷を癒したユグゴトが前に出、庇う。 蔦を潜り齧りながらその忍者にエイクリィが噛みつき、さらにふわりと舞う白い綿毛が舞う。
「触らぬ神に祟りなし♪」
くるりと決める千紘の尾からゆらゆらと放たれたそれは突入時と同様に派手に炸裂、目と耳がおかしくなりそうな閃光と轟音に足を止めた螺旋忍者に、ユグゴトの鉄塊剣の一撃が突き刺さった。
そして後には静寂。気づけばこの場に立っている忍者達もういなくなっていた。
●得たモノは
一時の静寂を取り戻した空間を、ケルベロス達は敵襲を警戒しつつ手分けして資料の強奪を行う。
トリュームとギョルソーはひっくり返った机や棚から目ざとく怪しげな物品を見つけ、片っ端からアイテムポケットに放り込んでいる。
中身の精査は持ち帰ってからで十分、元々弾薬をたんまりと入れていたスペースが溢れんばかりに埋まっていく。
アリアナは妖精八種族としては防衛と秘匿を司るグランドロン。その性質を活かし重要そうな物にアタリをつけながらアリアナは彼女サイズの小物入れに資料を放り込む。
ユグゴトも植物めいた装置の辺りに散らばった資料を興味深げに眺め拾い集めている。
(「それにしても指導者はいなかったか」)
少々気になる事があった真幸は援軍に来るデウスエクスの構成を観察していたが、攻性植物の領域だからか植物化した忍者ばかりだった。
数の多い領域に攻め込んだのならその忍者と当たる割合も必然多くなるという事なのだろうが――それを統率する指導者は襲撃を察知して逃走したのだろうか。
「さ~て、ブッ壊しましょう!」
千紘が元気よく金の尾を振って言う。
この螺旋忍者の技術は人道に反したもの。粗方資料を回収した今、この場に残したり理解する価値はない。
故にケルベロス達はこの領域を其々のグラビティを派手に放ち破壊する。
そしてケルベロス達は、アリアドネの糸を辿り慎重に帰路につく。
「アタシらの働き、少しは役に立ったかね?」
残党の奇襲を警戒しながらアリアナがごちる。
「上出来だろう?」
怪力無双で大岩を動かし道を塞ぎながら泰孝がそう返す。
入手した資料の有用性については分からないが、少なくとも数多くの忍者の拠点を潰し、討伐した影響は大きいだろう。
(「どうやら賭けには勝ったみたいだな」)
その時、同居している少女の顔がレプリカントの頭に浮かび、思わず苦笑してしまう。
多くの螺旋忍者を討ち果たす事はできたが、その中に有力な指導者と思われる忍はいなかった。
しかしこれだけの配下を撃破し拠点も潰されたとあっては、例え逃げ延びたとしても当面何もできないだろう。
役割を果たしたケルベロス達はこうして地上へと帰還したのであった。
作者:寅杜柳 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年5月15日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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