●都内某所
廃墟と化した施設に、電動アシスト自転車であった。
この電動アシスト自転車は、旧型の原付扱い。
そのため、新型の電動アシスト自転車が販売されたのと同時に、捨てられてしまったようである。
それが原因で、あちこちが錆びつき、負品が外れ、二度と使い物にならない状態になっていた。
その場所に蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、電動アシスト自転車の中に入り込んだ。
それと同時に、機械的なヒールによって防犯カメラが作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「デ、デ、デンドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化した施設の壁を突き破り、グラビティ・チェインを奪うため、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した施設で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが現れたのは、廃墟と化した施設。
この場所に設置されていた電動アシスト自転車が、ダモクレスと化したようである。
「ダモクレスと化したのは、電動アシスト自転車です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは無数の電動アシスト自転車が融合した蜘蛛のような姿をしているらしい。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
カタリーナ・シュナイダー(断罪者の痕・e20661) |
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690) |
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471) |
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251) |
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969) |
●都内某所
「ここって元は自転車展示場だったのかな? 何だか、ちょっと……不気味な感じがするけど……」
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された施設にやってきた。
ダモクレスが確認された施設は、何かの展示施設だったらしく、ショーウインドーのような場所に壊れた自転車が並べられていた。
おそらく、処分に困った自転車を、この場所に棄てていたのだろう。
まさに自転車の墓場と言わんばかりに、どんよりとした空気が漂っていた。
「あー、子供ん頃はどこにいくにもチャリ乗ってたなぁ。ちょい懐いわ。まぁ何を隠そう南中のスピードスターとは、オレのことだかんな!」
そんな中、柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が、自信満々な様子で胸を張った。
あの頃は、マブダチ的な存在である東戸君……いや、西戸君……とにかく仲のイイ友達とチャリで、あちこちを走り回っていた。
それ故に、チャリ勝負であれば、負ける気がしない。
それこそ、インターハイを狙える勢いで、自信があった。
「アスガルドに自転車は無かったと思うけど、セントールの皆さんがいれば、こういうのは要らなかったんだろうなぁ」
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が周囲を封鎖しつつ、何処か遠くを見つめた。
それでも、自転車があった方が何かと便利なような気もするが、ショーウインドーに並んだ自転車からは、人間に対する憎悪しか感じられなかった。
「そういや、アキバまでチャリ通したって吹いている奴がいたなぁ。まっ、さすがに嘘だろうけどな。なんか歌を歌いながら、チャリを漕いでいたしさ。あんなんでアキバまで行けるわけがねぇし!」
清春が眼鏡を掛けた少年の顔を思い浮かべ、軽く悪態をついた。
何やらヒメヒメ歌っていた気もするが、あれで速くなったら、誰も苦労はしない。
「俺は、どっちかというと光の翼で坂道をクライムするタイプですね。でも、これってロードレース的には反則なのかな……?」
右院が自転車に乗ったまま光の翼を生やし、箱根の道路を走る自分の姿を思い浮かべた。
「どうやら、話をしている暇はないようだな。まあ、電動機付きとはいえ所詮は自転車だ。たとえダモクレス化しようと、人の手を借りずに自由自在に動けると思っているようなら、戒めてやらんとな」
その途端、カタリーナ・シュナイダー(断罪者の痕・e20661)がダモクレスの気配に気づき、警戒した様子で間合いを取った。
「デ、デ、デ、デンドウキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスがケモノのような鳴き声を響かせ、施設の壁を突き破ってケルベロス達の前に現れた。
その姿は、まるで化け物。
沢山の電動アシスト自転車が寄せ集まり、巨大な蜘蛛のようになっているような感じであった。
そのため、電動アシスト自転車が悲鳴の如く、ギシギシと耳障りな音を立てていた。
「つーか、なんだよ、その姿は! まったくワクワクしねぇんだが!」
それを目の当たりにした清春が、あからさまにゲンナリとした。
一言で言えば、電動アシスト自転車を取り込む必要ナシ。
電動アシスト自転車の魅力をすべて取っ払い、蜘蛛である事を重視したようなデザインだった。
それ故に、本来の魅力が失われており、デザイン的にも、機能的にも、デメリットしか感じる事が出来なかった。
「まあ、どんな姿であれ、久々のダモクレスとの戦だ。……腕が鳴るぜ!」
そう言って柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)が、自分自身に気合を入れ、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
●ダモクレス
「デン、デン、デン・ドゥ・ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ダモクレスがケルベロス達を威嚇するようにして、超強力なビームを放ってきた。
そのビームはアスファルトの地面をガリガリと削りながら、ケルベロス達に迫ってきた。
「また……随分と乱暴な……」
それに気づいた右院がエナジープロテクションを発動させ、『属性』のエネルギーで盾を形成すると、ダモクレスが放ったビームを防いだ。
「俺はオウガ、柴田鬼太郎! 言葉が通じるかは知らねえが、全力でやりあうや!」
その間に、鬼太郎が自ら名乗りを上げ、メタリックバーストを発動させ、全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出し、味方の超感覚を覚醒させた。
「デン、デン、デンドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その言葉に応えるようにしてダモクレスが、電動アシスト自転車型のアームを伸ばし、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
ダモクレスのアームは、幾つもの電動アシスト自転車が融合したような形をしており、タイヤの部分が上を向いているような感じになっていた。
「……受けて立つと言ったところか。まあ、どんな状況であっても、負けるつもりはないが……」
それに合わせて、カタリーナがバスタービームを放ち、ダモクレスのアームを破壊した。
「デン、デン、デ、デ、デン!」
だが、ダモクレスは全く怯んでおらず、別の場所から再び電動アシスト自転車型のアームを伸ばしてきた。
そのアームは先程と比べて頑丈そうで、妙にメタリックであった。
それが大量の光を浴びてキラリと輝いたものの、破壊力よりもスタイリッシュさが増しているような印象を受けた。
「ふっふーん、そんなアーム。問答無用で、へし折ってやるわ!」
すぐさま、レイが光の翼を生やして勢いをつけ、ダモクレスにスターゲイザーを放って、自慢のアームをへし折った。
その影響で、へし折れたアームが振り子時計の如く、ブラブラと左右に揺れた。
「ほら、見ろ! そんな姿をしているから、電動アシスト自転車の良さを活かす事が出来ねーんだろうが! せめて車輪にしろよ、車輪にさ。一体、その車輪は何のためにあるんだ! 単なる飾りか? それで、いいのか! 本当によぉ!」
清春がダモクレスに駄目出しをしながら、煽って、煽って、煽りまくった。
「デンデン・デ・デン・デン!」
その途端、ダモクレスが両側のアームを地面につけ、戦車のような姿になって、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
「……って、マジか! 正気か! シャレにならねぇ! 全然、笑えねーって! つーか、俺……余計な事を言っちまったか! だとしたら、ヤバイぞ、この状況ッ!」
それに気づいた清春が身の危険を感じて、その場から飛び退いた。
そのおかげで何とか攻撃を避ける事が出来たものの、ダモクレスのスピードは増しており、弾丸の如く勢いで迫ってきた。
これにはビハインドのきゃり子も、呆れた様子で頭を抱えたものの、幸か不幸か死亡フラグが立ったのは、清春だけだった。
「……まったく問題ないわ。だって、あたしはカウガールだもの。こんなヤツ、乗りこなしてやるんだからっ!」
レイが自信満々な様子で、ダモクレスに飛びつき、フラフラとしながら、ハンドルをガシィッと掴んで、バランスを取った。
「デ、デ、デ、デンデン、デン!」
そのため、ダモクレスが激しく体を揺らし、レイを振り落とそうとした。
しかし、レイが上手くバランスを取ったため、ダモクレスがどんなに跳ねても、暴れても、途中で振り落とされる事はなかった。
「……愚かな。それでは、いい的だ」
次の瞬間、カタリーナがゼログラビトンを発動させ、ダモクレスのグラビティを中和し、弱体化するエネルギー光弾を射出した。
「とりあえず、怪我はない……ようだね」
その間に、右院が清春に駆け寄り、フローレスフラワーズを発動させ、戦場を美しく舞い踊って、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせていった。
「……残念だったな。せっかく、速くなる事が出来たのに……。だが、これで元通りだ」
それに合わせて、鬼太郎が鬼神角を発動させ、黄金の角を伸ばして、車輪ごとダモクレスのボディを貫いた。
「これで自由に走り回る事が出来なくなったわね。その代わり、思いっきりPOPなイラストを描いてあげるわ」
続いてレイがダモクレスに乗ったまま、ペイントラッシュを仕掛け、激しく塗料を飛ばして、POPな感じに塗り潰した。
「デ、デ、デ、デ、デンデン、デ、デ、デ……!」
その攻撃を喰らったダモクレスが、どす黒いオイルを撒き散らし、大量の電動アシスト自転車を雨の如く降らせてきた。
それは、何処からどう見ても、電動アシスト自転車であったが、アスファルトの地面に落下すると勢いよく爆発した。
「おい、こら! 変な改造して、爆発させるんじゃねえよ! 勿体ねぇだろうが! どれも安くねえんだぞ!」
清春がイラっとした様子で、ダモクレスを叱りつけ、きゃり子と連携を取るようにして、次々と攻撃を仕掛けていった。
「……と言うか、本体が無防備になっているぜ! まさか、あんな攻撃で、俺達を一掃できると思っていたのか」
鬼太郎もウイングキャットの虎と連携を取りつつ、オウガナックルを発動させ、力任せの単純なパンチでダモクレスのボディをヘコませた。
「デ、デ、デ……デ、デ、デ……デ、デ、デ……」
だが、ダモクレスは思うよりに動き回る事が出来ず、悔しそうに何度もアスファルトの地面を蹴った。
「その様子だと動力部分がヤラれたか。そもそも、自転車如きが人の手を借りず自由に動けるはず。自転車らしく人の手で操られ、人の手で屑鉄となれ」
カタリーナがダモクレスに冷たい視線を送り、ガトリング連射でハチの巣にした。
「じゃあね。もう会う事はないと思うけど……」
それと同時に、レイがクイックドロウを仕掛け、目にも止まらぬ速さで弾丸を放ち、ダモクレスのコア部分を破壊した。
「デ、デ、デ……デ、デ、デ……」
その途端、ダモクレスが崩れ落ち、物言わぬガラクタと化した。
「役に立つために造られたのに、法改正で別モノ扱いになるのは悲しいですね……」
そう言って右院が複雑な気持ちになりつつ、ダモクレスだったモノに視線を落とすのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年4月30日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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