●都内某所
「俺は常々思うんだ! 中性的な容姿の女性こそ至高である、と! だって、そうだろ!? なんだか、ドキドキしねぇか? コイツは男か、女か。その事を考えるだけで、ドキドキする! 俺は男が好きなのか、それとも女が好きなのか、それとも両方好きなのか、考えるだけでもムラムラしちまう! だからイイんだ! たまらねぇな、オイ!」
ビルシャナが廃墟と化した施設に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
信者達はビルシャナによって洗脳されており、ビルシャナと同じように、ゲスな笑みを浮かべていた。
●セリカからの依頼
「四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ビルシャナが確認されたのは、都内某所にある施設。
この場所にビルシャナが信者達を集め、中性的な容姿の女性こそ至高であると訴えているらしい。
どうやら、ビルシャナ自身は、中性的であれば、男性でもアリ……な節があるものの、信者達の恋愛対象は女性のみ。
むしろ、男性との恋愛は、あり得ないと考えているようだ。
それでも、洗脳されている影響で、ビルシャナに話を合わせているらしい。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
信者達はビルシャナに洗脳されているものの、中性的な女性より、魅力的な相手が現れる事で、我に返る事だろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839) |
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384) |
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566) |
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764) |
●都内某所
「まさか僕が危惧していたビルシャナが本当に現れるとはね。……ちょっと驚きだよ」
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)は仲間達と共に、廃墟と化した施設にやってきた。
ビルシャナは信者達を前にして、中性的な女性こそ至高であると訴え、朝から晩までイケない妄想を膨らませているようである。
元々、この施設が何に使われていたのか分からないが、一言で言えば怪しさの塊。
一歩足を踏み入れたら、最後。
そのままノリと勢いで、何やら怪しげな商品を高値で買わされそうな感じであった。
「……中性的な女性かぁ。私も中性的なのには憧れるけど、女性の価値は見た目で決まるものではないわよね。それなのに、中性的な女性にこだわるのって、何か違うと思うけど……」
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)は、複雑な気持ちになった。
その上、ビルシャナの教義は、いい加減。
自分の欲望を正当化するために、適当な理由をでっちあげている感じなので、まったく納得する事が出来なかった。
「私は中性的でも無いですし、カッコよくも無いですけど、女らしさなら自信がありますよ! そういった意味でも、この教義は間違っています。中性的な女性だけが至高なんてありえません」
そんな中、兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)が、自分なりの考えを述べた。
しかし、ビルシャナは中性的な女性だけが至高であると訴えており、それ以外は論外であると決めつけていたようだ。
それが間違いである事は、誰であっても分かる事だが、信者達は洗脳状態に陥っているため、それがおかしいとは思っていないようである。
「確かに、中性的な女性だからと言って、安易に至高であると叫ぶべきでは無いな。まあ、俺は本当に女性らしい仕草をする女性が好みだが……」
紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)が、何処か遠くを見つめた。
事前に配られた資料を見る限り、ビルシャナは中性的な女性が好きというよりも、中性的であれば性別に関係なく好きなド変態。
……この時点で嫌な予感しかしなかった。
「まぁ、ビルシャナの主張に負けない様に、こっちも最善を尽くそう」
そう言って司が覚悟を嵌めた様子で、廃墟と化した施設に足を踏み入れるのであった。
●施設内
「いいか、お前ら! この世で最も尊き存在……。それが中性的な容姿の女性だ! さあ、目を閉じて思い浮かべてみろ! そこに居るのは、中性的な容姿の女性だ! そして、想像しろ! 中性的な女性と、いい感じになる自分の姿を……! さあ、どうだ! 興奮するだろ! それこそ至高という訳だ!」
施設の中にはビルシャナがおり、信者達を前にして、自らの教義を語っている最中だった。
信者達はビルシャナによって洗脳されており、瞳孔の開いた眼で、その言葉に耳を傾けていた。
「中性的な女性がお好きらしいけど、そんな風に男か女か分からない人を好きになって良いのかしら?」
そんな中、依鈴がビルシャナ達の前に立ち、真剣な表情を浮かべて訴えかけた。
「まったく問題が無いだろ。男性の良さと、女性の良さを兼ね備えているのだから……」
ビルシャナがまったく怯む事なく、当然とばかりに答えを返した。
「確かに、中性的な女性は素敵ですが、見た目が全てでは無い筈です。性格や仕草など、そういった面で女性らしい様子が見られた時に、ドキッとする事がありませんか……?」
紅葉がビルシャナ達の考えに、多少の理解を示した後、真剣な表情を浮かべて訴えかけた。
「まあ、その考えも一理ある。だが、そのすべてを兼ね備えた存在……。それが中性的な女性だ」
ビルシャナがキリリとした表情を浮かべ、キッパリと断言をした。
何を根拠にそこまで自信を持っているのか分からないが、とにかく自信満々であった。
「そこまで中性的な女性が好きなら、相手が男なのか、女なのか、区別できなくなっちゃうよね?」
司が含みのある笑みを浮かべ、ビルシャナの顔色を窺った。
「……何か問題があるのか?」
ビルシャナがイラっとした様子で、こめかみを激しくピクつかせた。
そんな空気を察した信者達が、ビクッと体を震わせ、まるで貝の如く口を噤んだ。
「それは相手が男性であっても……もしくは男の娘であっても、問題が無いという事か? それとも、例えどんな状況であっても、女性である事を見分ける事が出来るという意味か?」
雅雪がビルシャナの真意を知るため、核心を突くような質問をした。
「そもそも、相手の性別など些細な問題だろ?」
ビルシャナが表情ひとつ変えず、キッパリと答えを返した。
だが、信者達は、二度見。
『……えっ? そうなの!? 聞いていないんだけど……』と言わんばかりに、二度見であった。
「つまり、相手が、実は男だったとしても、好きでいられるって事? だったら、僕でも問題ないって事だよね?」
司が何やら察した様子で、ビルシャナに迫っていった。
「当たり前だろ! むしろウエルカムだ!」
その気持ちに応えるようにして、ビルシャナが物凄くイイ笑顔を浮かべた。
「じょ、冗談ですよね!?」
それとは対照的に、信者達は冷や汗ダラダラ。
『そんな話、聞いていない』とばかりに焦っていた。
「いや、本気だ。何の問題もないだろ」
しかし、ビルシャナはまったく空気を読まず、自分の考えを貫いた。
「どうやら、何も分かっていないようだな。そもそも、恋い慕っていた相手が、本当は男性だとわかったら、相当悲しい気持ちになるだろう? それが普通の反応だ」
雅雪が信者達の気持ちを汲み取り、ビルシャナに対して呟いた。
「普通……だと!?」
ビルシャナがムッとした様子で、殺意のオーラを漂わせた。
それだけで、信者達はドン引き状態。
本音を口にする事が出来ぬまま、部屋の隅でガタブルだった。
「……というか、実際に気持ちを伝えた末に待っていたものは『実は私、男なの』とか言われた日には、絶望と後悔の念しか残らないと思うわよ」
依鈴が生暖かい視線をビルシャナに送り、ゲンナリとした表情を浮かべた。
「そんな訳がないだろ!」
ビルシャナが激しい怒りを爆発させ、ケルベロス達を怒鳴りつけた。
だが、信者達はソワソワ、オロオロ。
何か言いたげな様子で、口をパクパクさせていた。
「皆さん、悩む必要なんてありませんよ? この教義は間違っていますから……。わざわざ、無理をして中性的な女性に固執するよりも、私と仲良くしませんか?」
紅葉が信者達の緊張を和らげるようにして、ニコッと優しく微笑んだ。
「もしくは……私みたいに清楚で女性らしい女の子と付き合ってみるとか」
依鈴も信者達の逃げ道を塞ぐようにして、ジリジリと迫っていった。
「それは……ちょっと」
そのため、信者達はタジタジ。
本音を言えば、ガッツポーズで、OKしたいところだが、ふたりの後ろでビルシャナが鬼のような形相を浮かべているため、愛想笑いしか浮かべる事が出来なくなっていた。
しかし、それでも答えはひとつ。
このままビルシャナに従っていても、未来は真っ暗。
最悪の場合は、男性同士で愛し合う未来しか、思い浮かべる事が出来なかった。
「どうやら、みんな答えが出たようだね。もう何をやっても無駄だよ。これ以上、信者達にプレッシャーを与えても、心が離れていくだけだから……」
そう言って司が信者達を守るようにして、ビルシャナの前に立つのであった。
●ビルシャナ
「そんな訳がないだろ! 信者達が俺を裏切る事なんて……お、おい! 何故、みんな視線を逸らす! まさか、俺を裏切るのか! そんな馬鹿な……」
その途端、ビルシャナが鬼のような形相を浮かべ、信者達をジロリと睨みつけた。
だが、信者達は誰ひとりとして目を合わせようとせず、ケルベロス達の後ろに隠れて、ガタブルと身体を震わせた。
「……無駄だ。少なくとも、信者達が好きだったのは、中性的な女性であって、中性的な存在ではないのだから……。中性的な男性でもアリだと答えた時点で、答えは出ていたという訳だ」
雅雪がビルシャナの言葉を遮るようにして、信者達の本音を代弁した。
「ならば……死ねえええええええええええええ!」
その答えにイラっとしたのか、ビルシャナが逆ギレした様子で、超強力なビームをケルベロス達に放ってきた。
「まさか、自分の仲間まで巻き込もうとするとはね」
司が呆れた様子で溜息をつきながら、超強力なビームを避けた。
そのビームはケモノにも似た音を響かせ、施設の壁を破壊した。
「……」
それを目の当たりにした信者達が、完全にビルシャナと決別した様子で、必要以上に距離を取った。
「どうやら、考えを改めるつもりはないようだな。だったら、やる事はひとつ。強力な一撃をお願いするぞ!」
その間に、雅雪がブレイブマインを発動させ、依鈴の背後にカラフルな爆発を起こして士気を高めた。
「神速の突きを、見切れるかしら?」
それに合わせて、依鈴が雷刃突を仕掛け、雷の霊力を帯びた武器で、神速の突きを繰り出した。
「そ、そんな馬鹿なっ! 俺が苦戦している……だと!」
その攻撃を喰らったビルシャナが、悔しそうにクチバシを震わせた。
しかし、思うように体が動かず、全身の震えが止まらない。
それでも、身体を動かそうとしたものの、覚悟を決めた時には、紅葉が目前まで迫っていた。
「卓越した技術の一撃を、食らいなさい!」
すぐさま、紅葉が達人の一撃を放ち、ビルシャナを追い詰めた。
「さあ、覚悟はいいかい?」
続いて、司がブレイジングバーストを仕掛け、爆炎の魔力を込めた大量の弾丸をビルシャナの身体に撃ち込んだ。
「うぐぐ……、負けて……たまるかああああああああああ!」
それでも、ビルシャナが全身の筋肉を隆起させ、再び超強力なビームを放とうとした。
「だったら、これで焼き鳥にしてあげます!」
それと同時に紅葉がグラインドファイアを仕掛け、ローラーダッシュの摩擦を利用し、炎を纏った激しい蹴りをビルシャナに放った。
「ぐぎゃああああああああああああああ、熱いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
その一撃を喰らったビルシャナが炎に包まれ、悲鳴を上げながら、床をゴロゴロと転がった。
「ブラックスライムよ、敵を飲み込みなさい」
次の瞬間、依鈴がレゾナンスグリードでブラックスライムを捕食モードに変形させ、ビルシャナの身体を丸飲みにした。
そして、ケルベロス達は我に返った信者達に事情を説明した後、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年4月24日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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