第九王子サフィーロ決戦~石榴将と猛将

作者:洗井落雲

●狙撃手、暗躍す
 ブレイザブリク、その近郊――。
 そこでは、今まさに幾百、幾千にも達するであろう大軍勢同士の激突が行われていた。
 片や、『石榴将・グラナート』率いる『蒼玉衛士団』。こなた、『死翼騎士団・猛将』率いる『死翼騎士団』である。
「敵の猛将は突出している――名前の通り、勇敢にね」
 石榴将・グラナートはぼやきつつ、その手にしたボウガン状の武器を構えた。その視力をもって猛将を捕らえたグラナートは、刹那、トリガーに指をかける。
 放たれた銃弾は、しかし猛将を捉えることは無い。反射的にであろうか、振るわれた刃が、その銃弾を斬って落としたのだ。
「やるね、流石は猛将。僕の狙撃を斬って捨てる、か」
 グラナートは涼やかな笑みを崩すことなく――しかし些か眉を潜ませて、頭に手をやった。
「とはいえ、褒めてばかりもいられないね。君たち」
 グラナートは、手近にいた部下へと声をかけ、
「猛将の狙いはブレイザブリクだ。僕も彼を追って、何とか狙撃を決めて見せるよ。前線の維持は任せたよ」
 そう告げると、猛将の後を追って、姿を消した。
●ブレイザブリク強襲
「集まってくれて感謝する。では、今回の作戦について、説明しようか」
 アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集ったケルベロス達へ向けて、そう告げた。
 まず、ケルベロス達の活躍により、第八王子強襲戦は見事成功となった。
「これにより、ホーフンド王子はアスガルドに逃げ帰ったようだ。さらに、皆の作戦の結果、ホーフンド王子達に『サフィーロ王子が裏切った』と信じ込ませることができた。そのため、エインヘリアル軍は、サフィーロ王子が裏切ったものだと信じ込み、サフィーロ軍を敵として、ブレイザブリクの奪還作戦の準備を始めたらしい。これは皆の戦いの素晴らしい成果だと感じるよ」
 些か興奮する様子で、アーサーはそう言った。それほどに、今回の戦果は良いものであったという事だろう。
「だが、この好機を生かすためなのか、死神の死翼騎士団たちが動き出したようだ。彼らは総力をあげて、ブレイザブリクの攻略を開始したらしい」
 この混乱の結果、第八王子強襲戦に参加したケルベロス達の撤退も容易に行えたわけであるが、このまま死神たちを放置しておくわけにはいかない。ブレイザブリクが、死神たちの手に落ちるのを見過ごすべきではないからだ。
「今回、死神たちを相手にする必要はないが、サフィーロ王子の撃破と、ブレイザブリクの制圧は、我々の手で行っておきたい」
 そのため、今回の作戦が実行に移されるのだという。
 まずは、全体の状況を説明しよう。
 死神たち死翼騎士団は、四方向からブレイザブリクへ進軍を開始している。サフィーロ王子は、ブレイザブリクの防衛を紅妃カーネリアへとたくし、自らと三人の将を筆頭に軍を四つに分け、ブレイザブリクの防衛に乗り出した。
 これは、本国からの増援が来ることを当てにした戦い方なのであるが、前述したとおり、本国はサフィーロを裏切り者だと信じ込んでいる。そのため、増援が来ることは無いのである。
「となれば、これは好機だ。敵は大部隊であるために、正面から戦えば我々の勝ち目はない。だが、この混乱した状況の中、将軍クラスを暗殺できる可能性が出てきた。サフィーロ軍の将軍を暗殺できれば、敵兵士たちは混乱するだろう。そうすれば、もとより敵対する間柄、死翼騎士団がサフィーロ軍をせん滅してくれる、という訳だ」
 このチームが暗殺を目指すのは、『石榴将・グラナート』。彼は死翼騎士団・猛将率いる部隊と戦っており、狙撃の名手なのだという。
 2チームで力を合わせ、このグラナートを撃破できれば、作戦は成功となる。
 とはいえ、死神たちも、此方の行動を黙って受け入れてくれるわけではなさそうだ。
 とりわけ、猛将などは、戦争に横やりを入れ、美味しい所だけをさらっていくように見えるケルベロスに、不快感を見せるかもしれない。そうなれば、無理やりにでもブレイザブリクを制圧するような行動に出る可能性もある。
「そのため、グラナートを倒すことができたら、すぐに猛将の下へ向かい、交渉を行ってほしい。或いは、グラナート暗殺前に交渉に入り、何らかの手助けを乞うのも手かもしれないな。いずれにせよ、相手の性格をよく考えて、交渉を進めて欲しい」
 そう言って、アーサーはひげを撫でた。
「エインヘリアルの王子と、配下の将軍たちを一気に撃破する、またとないチャンスだ。このチャンスを生かし、作戦を成功させてほしい。では、作戦の成功と、皆の無事を、祈っているよ」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した。


参加者
レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
中条・竜矢(蒼き悠久の幻影竜・e32186)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)

■リプレイ

●戦場へ
 死翼騎士団。サフィーロ軍。
 両者の激突する戦場へ、ケルベロス達は到着した。
「この数、まるで戦争だな」
 ある種感心したような様子で、渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)が声をあげる。その言葉通り、大軍同士の激突が、今まさに目の前で繰り広げられているのである。
「戦局は生き物……一分一秒ごとにその表情を変化させる」
 マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)が声をあげる。マークの言う通り、てをこまねいていては、乗り遅れる。その言葉へ頷いたのは霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)だ。
「分かっています……すぐにでも行動に取り掛かりましょう」
 死神と交渉し、敵指揮官を倒し、さらに死神の行動を抑えるべくの交渉を行う……やるべきことは多い。とはいえ、嘆き、恐れても始まらない。和希は内心で意気込みつつ、そう告げた。
「とは言え、この数だ。猛将の居場所を探るのも――」
 一苦労だろうな。そう言いかけたレーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)だったが、戦場に響き渡らんばかりの雄たけびが、その耳をつんざく。
 声の方を見てみれば、前線にて手にした矛を振るい、怒涛の戦いを見せる猛将の姿が目に入ったのである。レーグルは、思わず肩をすくめて、
「容易だったようだ」
 苦笑する。
「分かりやすくて助かるけど、巻き込まれないようにしないとですねー」
 朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)がうんうんと頷きながら、言った。死翼騎士団兵も、巻き込まれることを恐れてか、あるいは命令によるものか、猛将からは距離を取って戦っているようだ。あの将の隣に立って戦える者がいるのだとしたら、それは相応の実力者でなければ務まらないだろう。
「行きましょう。隠密気流をお願いします」
 中条・竜矢(蒼き悠久の幻影竜・e32186)の言葉に、
「了解、だよ。あまり離れず、まとまって動こう」
 アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)は頷き、隠密の幕を展開する。ケルベロス達はなるべくまとまりながら、暴れる猛将へと向けて移動を開始した。
 道中に、妨害行為の類は一切ない。充分に姿を隠せているという事だろうか。あるいは。
「……導かれているようにも感じるわね」
 動物変身を行って、隠密の衣に隠れた円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)が呟くのへ、オルトロス『アロン』が、わう、一声鳴いた。果たして、猛将の近くへと、ケルベロス達は到達する。隠密の衣を脱ぎ捨て、その姿を現したケルベロス達。声をあげたのは、アンセルムだった。
「お初にお目にかかります。ボクはケルベロス、アンセルム・ビドー。猛将殿に、お話を持ってきた」
 その言葉を耳にした死神――猛将は、近場にいたサフィーロ軍兵士を矛で斬り飛ばしたのちに、此方へと視線を向ける。
 にぃ、と笑って、声をあげた。
「ハッ。本当に来やがったかぁ」

●猛将との交渉
「おい! 俺はこいつらと話がある……しばらく雑魚を散らしてろ!」
 猛将は配下の兵士にそう告げると、ケルベロス達へと向き直った。
「おう、何か話があるんだろう。聞いてやるぜ」
(「『本当に来た』に、『話しがあるんだろう』か……これは、此方の登場を予測していたな?」)
 マークが胸中で呟く。
(「あるいは……誰かに言い含められていたか。猛将の性格からすると、此方だろうな」)
 猛将は、猪突猛進型、言い方を悪く言えば、考えるのは苦手なタイプだ。となれば、自分で考えた、と言うより、誰かにそう伝えられている、と考える方が自然だろう。
「まず伝えておくと……こちらの戦場にいるのは、ここに居る8名だけではありません。標的たる『石榴将・グラナート』、これを討伐するためにまた8名、僕たちを含めて16名のケルベロスが、ここに参戦しています」
 和希の言葉に、猛将は腕を組んで、ゆっくりと頷いた。
「そして私達の主張ですが――我々にも、この戦いに参加する権利がある、と言う物です。第九王子討伐は、私達の目的でもありますから」
 竜矢の言葉に、猛将は再び、ゆっくりと頷いた。
「続けろ」
 猛将が続きを促す。続いたのは、レーグルだ。
「理由としては、この状態……つまり第九王子の窮地を作り出したのが、我々ケルベロスだ、という事だ。となれば、この戦いは我々としての戦いと地続き……我々が参戦すべき戦いである、と」
 ふむん、と猛将は唸った。あごに手をやり、ヒゲを撫でる。
(「分かってるのか分かってないのか。読めないわね」)
 キアリが胸中でぼやく。猛将は考えるよりも戦いたがる傾向がある。いつ交渉を切り上げられるか、予測がつかない。そのため、ケルベロス達も簡潔に、分かりやすく、此方の意志を告げているわけだ。
「俺達は、今、死神と争う気はないし、攻撃もしない。これは約束するよ」
 数汰の言葉に、環が続いた。
「つまりまとめますとー。私達に敵対の意志はない。グラナートとサフィーロ軍、ブレイザブリクは、私達に任せて欲しい。出来るならグラナート討伐に、力を貸してほしいなー、って感じです」
 その言葉に、猛将はにぃ、と笑った。
「条件がある」
 猛将の言葉に、ケルベロス達は身構えた。
「こっちの状況も話さないとフェアじゃぁねぇな……実は知将の奴から、お前らの話は聞けって言われててな……まぁ、そう言うわけで話は聞いたわけだが」
(「やはり、知将の存在があったか」)
 マークが胸中で呟いた。
「だから、お前たちの言う通り、共に戦うのは良いだろう。だが、俺自身のやり方で、お前たちを試させてもらうぜ! 俺に認めてもらえたければ、武勇を見せてみろ!」
 戦闘か……! ケルベロス達が構えようとするのへ、猛将は頭を振った。
「戦うのは俺じゃねぇ。敵の将軍、グラナートだ。競争だ! お前たちがもし、グラナートを倒すことができれば、俺はお前たちの言う事を聞こう。まぁ、グラナートは俺が、一騎打ちで討ち取ってやるがな!」
 ケルベロス達は、思わず目を丸くした。最悪の状況として、競争を持ち掛け、此方が勝てばブレイザブリクから手を引くように伝える……そのようなプランも考えていたのだが、まさか猛将側から、そのように持ち掛けられるとは!
「話は終わりだ! さぁ、今から始めるぜ! 用意!」
 豪! 猛将は雄たけびを上げる――これが競争の始まりの合図だった。猛将が、戦場へと駆けだす――ケルベロス達は、慌ててそれを追いかけた。
「ゴー! って、猛将さん、グラナートの居場所、分かってるんですかー!?」
 環の言葉に、猛将は頷く。
「応! 俺の直感が、こっちだって言ってるんでな!」
「勘かよ……!」
 数汰がぼやきつつも、遅れまいと走る。
「ですが、このまま猛将を放っておくわけにもいきません。グラナートを探しつつ、同行すべきでしょう」
 和希が言うのへ、ケルベロス達は頷いた。猛将の直感が正しいかは現時点では不明だが、かといってフリーにして本当に見つけられ、一騎打ちをされても困る。
 グラナートの発見は別チームに任せ、いっそ猛将を見張りつつ暴れるのも、一つの手だろう。
「やれやれ、妙なことになりましたが……!」
 竜矢が言うのへ、レーグルが続いた。
「まぁ、予測はしていた通りだ。奴より先に、グラナートを撃破する!」
 キアリがこくり、と頷き、アロンが、わん! 吠えた。
「では、猛将の言う通り……武勇を示すとしようか」
 アンセルムの言葉に、ケルベロス達は一斉に武器を手にした。
 ほどなくして、敵の一群と接敵した一同は、ここに戦端を開くこととなった。
「SYSTEM COMBAT MODE」
 戦いの始まりを告げるマークの呟きが、静かに響いていた。

●武勇を示せ
「うおおりゃぁあ!」
 猛将の雄たけびと共に、重い矛が振り下ろされ、サフィーロ軍兵士を文字通りに一刀両断にした。
「無茶苦茶ですねー! でも、負けられないですよ!」
 環が放つオーラの弾丸が、敵兵士に食らいついた。フッ飛ばされた兵士が後方へ下がるのへ、入れ替わる様に剣を持った兵士が飛び込んでくる。
「させないッ!」
 カウンターのように、飛び込んできた兵士へと、火球を見舞う数汰。爆発する炎が兵士たちを飲み込み、炎の中へと消していった。
 一行は敵を蹴散らしつつ、敵軍奥深くへと進行していく。コンパスは、猛将の直感である。
「猛将の奴、単に暴れられる方へ向かってるだけじゃないのかな……?」
 苦笑しつつ呼び出した、アンセルムの龍の幻影が、敵群を焔で薙ぎ払う。大半が焔に焼かれ、倒れていくが、果敢にも焔を潜り抜け、雄たけびを上げ突進してくる兵士もいる。
「TARGET IN SIGHT」
 それとは裏腹に冷静な呟きと、冷徹なるビームの光条が、飛び出してきた兵士を撃ち落とした。
「だが、今は、他に導はない」
 マークが言うのへ、
「仮にそうだとしても、今は猛将のお守りをするしかないでしょうね……!」
 和希は牽制射撃を放ちつつ、続けた。足を止めた敵兵士たちを、レーグルの巨大な光弾が嘗め尽くした。光弾により薙ぎ払われた敵兵士たちが、次々と戦場へ斃れていく。
「ついでに武勇を示すか。良いだろう、存分に示してやろうじゃないか」
 レーグルの言葉に応じるように、両手の地獄が激しく燃え盛る――手にした縛霊手から放たれる光弾が、次々と敵を消し飛ばしていく。
「ハハ! やるじゃぁねぇか、ケルベロス! だが、グラナートは俺が貰うぜ!」
 ケルベロス達の勇猛果敢な戦いを、猛将は褒めたたえる。本当に、戦う事も、戦う者も、好きなのだろう。
「ん……アロン」
 かちり、とキアリが爆破スイッチを押し込む――同時に巻き起こる爆発が、敵兵士を飲み込んでいく。主の言葉に応え、アロンは地獄の瘴気を敵軍に解き放った。蝕む瘴気が、兵士たちの体力を奪い、その膝を地に付けて行った。
「み、皆さん、前方……まさか、本当に、グラナートです!」
 敵兵士たちを魔法の霜で地に貼り付けにしながら、思わず声をあげたのは竜矢である。声の通りに前方に顔を向けてみれば、そこには敵将、グラナートの姿があった。
「猛将の直感……侮れないですね……!」
 竜矢が呟く。まったくもって、破天荒な存在であった。そして猛将の様子に驚いたのは、グラナートも同じであった。
「冗談だろう? こんなに早く見つかるなんて……!」
「ハッハァ! 見つけたぜグラナート! 我こそは死翼騎士団、猛将! お前に一騎打ちを申し込むぜ!」
 グラナートはその眉をひそめると、
「それこそ冗談だろう? 僕は一騎打ち、なんてガラじゃない」
「逃げるつもり? 石榴将」
 キアリは静かに、声をあげた。
「実はついこの間、最低なエインヘリアルの騎士が居たのよね。主君の仇を前に、一合すら剣を交えず全力逃走。残された同僚(スコル)が涙目で戦線を維持しようと必死になっていたわ」
 じっ、とキアリは、グラナートを見据える。挑発するように。
「……それと同じ輩ではないわよね、石榴将?」
 その言葉に、グラナートはくすりと笑った。
「そう言われると、僕にもプライドと言う物がある。けれど、同時に、僕は自分がどういう戦い方をすれば力を発揮できるかを知っている。自分が十全に力を発揮できるなら、そのプライドも今は捨てるよ、お嬢さん」
 その言葉に、グラナート配下の直掩部隊が姿を現し、グラナートを庇うように立ちはだかった。
「プライドを捨てて勝てるなら、安いものさ。僕は狙撃手。卑怯と罵られるのには慣れているよ」
「逃げるのか! グラナート!」
 猛将が吠える。
「御機嫌よう、ケルベロス、そして猛将殿!」
 グラナートは直掩部隊の影に隠れるように、姿を消した。

●戦いの果て
「クソが! グラナート! 出てこい!」
 猛将は雄たけびを上げ、直掩部隊へと矛を振りぬいた。真空の刃が、次々と直掩部隊を斬り捨てていく。
「やれやれ、相当お怒りの様だ」
 暴走する獣の如き様相を見せる猛将に、レーグルがぼやいた。同時に、振るった両腕から地獄の炎が飛び、敵をからめとり、呪詛をまき散らす。
「ま、気持ちはわからないでもないけどね。これからって時に獲物に逃げられたら、ね」
 アンセルムは苦笑しつつ、龍の幻影で敵を焼き払った。
「あー、アンちゃん、物騒ですよ?」
 環は構えたロケットランチャーから、真っ白な、月のような砲弾を射出する。直掩部隊にあたる寸前で、砲弾ははじけ小さくなった。雨あられのように降り注ぐ砲弾に、直掩部隊が次々と倒れていく。
 ケルベロス達+猛将と、直掩部隊の戦い。ケルベロス達の実力もあり、怒り狂う猛将の力もあり、直掩部隊は次々と地に倒れていく。
 とはいえ、足止めを任されただけのことはあり、すぐさまグラナートの討伐に向かうことは出来ず、それが猛将をさらに苛立たせていた。
 そんな暴れ狂う猛将の傍に立ち、共に戦う事の出来るケルベロス達の実力は、やはり相当なものなのだろう。
「張飛について尋ねてみたかったけど……これは無理そうかな」
 数汰が思わずぼやく。放つバスターライフルの光線が、直掩部隊兵を貫き、地に倒した。
「聞いても答えてくれなさそう」
 キアリが言いつつ、轟竜砲をぶっ放した。竜砲弾が直掩部隊兵に突き刺さり、はるか遠くまで吹き飛ばしていく。
「この様子ですからね……怒気だけで、肌がピリピリするようです」
 竜矢が呟く。猛将からは、怒りが湯気のように立ち上っているかのように感じる。
 怒れる猛将、そしてケルベロス達の猛攻により、直掩部隊は瞬く間にその数を減らしていった。そして、やがてその数が10人、5人、2人となり。
「これで……」
 和希の放つ爆破の一撃が、残る兵士を破裂の果てに葬る。続いたマークのバスターライフルの光線が、最後の敵を討ち貫いた。
「クリア」
 マークが呟く。同時に、怒れる猛将がグラナートを探すべくあたりへ睥睨した瞬間。
『石榴将、グラナート。討ち取ったぞ!』
 あたりに、そんな声が響いた。同時に、敗走したかのように引いていく、敵群。
 その瞬間に、猛将は、察した。
 負けた、のだと。
「畜生!」
 その雄たけびは、ケルベロス達の肌をびりびりと震わせた。
 猛将は、声のした方向を見やる――刹那、悔し気な、しかしどこか納得いった様子で、声をあげた。
「ああ、前のあいつらか。まぁ、あいつらと、お前達がタッグなら、当然の結果かもしれねぇな」
 一息ついてから、猛将が続ける。
「クソ忌々しいが……俺の負けだ。約束通り、軍は退いてやる」
 猛将は部下たちに撤退を命じると、己もまた、撤退すべく踵を返した。
「次は負けねぇ……覚えてやがれ、ケルベロス」
 どこか悔し気な……しかし、どこか楽し気な言葉を残して。

 ケルベロス達の作戦は、こうして成功を導き出したのであった――。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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