ロングヘアのお嬢様こそ至高である!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ! ロングヘアのお嬢様こそ至高である、と! やっぱり、ロング! 誰が何と言おうがロングしかねぇ! その上で、お嬢様ってのが、条件だ! 絶対にお嬢様じゃなきゃ意味がねぇ! ある意味、俺達にとっての女神ッ! 崇めるべき存在だ! そのためなら、手段を選ぶな! 狙うは、女子高! しかも、屈指のお嬢様校に通うお嬢様だ!」
 ビルシャナが廃屋に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 廃屋の傍には女子高があり、そこに通うロングヘアのお嬢様が、ビルシャナ達のターゲットであった。

●セリカからの依頼
「天司・桜子(桜花絢爛・e20368)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが確認されたのは、都内某所にある廃屋。
 ここでビルシャナ達はイケない妄想を膨らませており、このまま放っておくとてロングヘアのお嬢様を襲って、連れ去ってしまう事だろう。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達はビルシャナの言葉より、ロングヘアのお嬢様の言葉に従うため、最悪の場合はカツラを被って、説得しておくと良いだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
天司・桜子(桜花絢爛・e20368)
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)

■リプレイ

●都内某所
「また頭の悪いヤツが湧いてきたようだな? ビルシャナじゃなきゃ、このまま放っておくところだが、絶対に……面倒な事になるよな、これ」
 柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)はゲンナリとした様子で、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている廃屋にやってきた。
 ビルシャナはロングヘアのお嬢様こそ至高であると訴え、とある女子高に通うお嬢様を誘拐するつもりでいるようだ。
 そのためか、廃屋からは如何わしい雰囲気が漂っており、思わず通報したくなる感じになっていた。
 そのせいか、近隣住民も廃屋には近寄らず、人気が少ないせいで、何やら寂しい印象を受けた。
「……ロングヘアのお嬢様か。ロングヘアは確かに綺麗だし、憧れる気持ちも僕にも分かるよ。だからと言って、女子高を襲うのは許せないけどね」
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、嫌悪感をあらわにした。
 ビルシャナ達にとって、お嬢様とロングヘアは、切っても切れない関係。
 それ故に、ふたつがセットで無ければ、意味がないようである。
「それだけロングヘアが綺麗で、皆から人気があるという事、でしょうね。もちろん、女子高を襲う事自体は許されない事ですし、絶対にあってはならない事ですが……」
 花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)が、何やら察した様子で答えを返した。
 実際にビルシャナはロングヘアと言うだけで、大興奮ッ!
 そこに、お嬢様と言うワードが加わる事で、最強の存在になるようだ。
 それをゲットするためならば、手段を択ばず。
 例え、危険を冒しても、自分のモノにしたい存在のようである。
 その思いを現実のモノとするため、女子高の襲撃を計画しているらしく、信者達共々大興奮しているという話だった。
「でも、ロングヘアって手入れが大変だから、ちょっと苦労するんだよね。それなのに、汚すって……。何か違うと思うけど……」
 天司・桜子(桜花絢爛・e20368)が、深い溜息を漏らした。
 その苦労も分からず、ロングヘアのお嬢様を汚そうとしているのだから、許すわけには行かなかった。
「まあ、ロングヘアが好きである事は間違いないようですから、信者達にもロングヘアの天国を見せてあげましょうか」
 そう言って綾奈が仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている廃屋に足を踏み入れた。

●廃屋内
「いいか、お前ら! 作戦の決行は、今日! お嬢様が帰宅する時間を狙って、ガバッと行くぞ! 此処まで来たら、躊躇うな! 何故なら俺達がしているのは、正しい事! 世のため、人のためになる事だ! ある意味、これはお嬢様のためでもある。ロングヘア故に、俺達の手で汚さなければならないんだ!」
 廃屋の中にはビルシャナがおり、信者達を前にして、自らの教義を語っていた。
 その教義は偏っていたものの、ビルシャナに洗脳されている影響で、誰ひとりとして異を唱える信者はいなかった。
「皆、ロングヘアがお好きなんだね。ほら見て、桜子もロングヘアだよ。しかも、桜子は髪の手入れとか、きちんとしているから、サラサラの髪が自慢だし、礼儀作法も、それなりに習っているから、お嬢様だよ」
 そんな中、桜子がロングヘアを揺らしながら、ビルシャナ達の前に陣取った。
 それに合わせて、清春がフローレスフラワーズを発動させ、戦場を美しく舞い踊って、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせ、より可憐に桜子を見せた。
「私も、多少はウェーブ掛かっていますが、ロングヘアの部類には入ると、思います。それに、お嬢様がお好きなのですか……? 私も同様に、一通り礼儀作法などのお嬢様の要素は兼ね備えているつもりですので、貴方達の要望に応えてあげる事が、出来ると思います……」
 綾奈もロングヘアを掻き上げ、ビルシャナ達に視線を送った。
 それと同時に、清春が黄金の果実を発動させ、神々しい光をロングヘアに当てて、より美しく見せた。
「い、いきなり、何だ! 一体、何が目的だ!」
 その途端、ビルシャナが動揺した様子で、激しくクチバシを震わせた。
 それとは対照的に、信者達はガッツポーズ。
 今にも襲い掛かってきそうな勢いで、ウェーイな感じであった。
「目的も何も、ロングヘアがお好きなら、僕達と一緒に遊んでみないかいって、みんなを誘っているだけだよ? ここにはロングヘアのお嬢様も多いみたいだし、わざわざ女子高を襲わなくても、皆で楽しくお話ししたり、騒いだりできると思うから」
 その間に、司がロングヘアのカツラを被り、女の子っぽい声色を使って、ビルシャナ達を誘惑した。
 清春もメタリックバーストを使い、全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出し、より麗しく司を見せた。
「いや、そうは言っても……。いきなり過ぎるだろ。何と言うか、ほら……心の準備とかあるし……。俺だって、その選ぶ権利が……」
 ビルシャナがしどろもどろになりながら、困った様子で視線を逸らした。
 ターゲットにしているのは、ビルシャナにとって、理想の相手。
 それ故に、諦める事など、論外ッ!
 そう思っているせいか、信者達と反応が異なり、悩んでいる様子であった。
「だからと言って、わざわざ女子高を襲うだなんて、ハイリスクな事をしなくても、桜子が貴方達の望む様なポーズとか取ったりしてあげるよ」
 そんな空気を察した桜子が、ビルシャナ達に流し目を送った。
「「「「「「「「た、確かに……」」」」」」」」
 それだけで、信者達は生唾ゴックリ。
 ビルシャナに至っては、『どうする、俺! マジで、どうする!? 妥協すべきか!?』と言わんばかりに、両目をギョロかせた。
 この様子では、自分がターゲットにしていたロングヘアのお嬢様と、ケルベロス達を天秤にかけているのだろう。
 まわりにいた信者達も、『どうする、ビルシャナ様! どうする! どうするよ、これ……!』と言わんばかりに、期待の眼差しを送っていた。
「もう一度、冷静になって考えてみてください。女子高を襲ってしまえば犯罪ですよ。それで貴方達の人生は終了してしまいます。それよりも、そういったリスクのない私達が貴方達のお願いを聞いた方が良いと思いませんか?」
 そんな空気を察した綾奈が、含みのある笑みを浮かべた。
「さぁ、女子高を狙うのと、桜子にお願いするの、どっちが良いかな?」
 桜子もロングヘアを揺らしながら、ビルシャナ達に迫っていった。
「もう我慢できねぇ! 俺はコイツらを選ぶぜ!」
 モヒカン頭の男性信者が、桜子達に駆け寄った。
「俺も!」
「俺も!」
「私も!」
 それが引き金となって、信者達がワラワラと桜子達に駆け寄った。

●ビルシャナ
「うぐぐ……。マジか。マジなのか! なんで、裏切る! あんなに約束したのに……! 何故、俺を裏切るんだ!」
 ビルシャナが悔しそうな表情を浮かべ、激しくクチバシを震わせた。
「……」
 だが、信者達にとって、ビルシャナは、不要な存在。
 ガン無視的な存在と化しているため、誰もビルシャナを見ようとしなかった。
 それどころか、ケルベロス達を新たな指導者として選び、その指示に従っている様子であった。
「さぁ、行きますよ、夢幻。サポートは、任せましたからね……!」
 すぐさま、綾奈がウイングキャットの夢幻に合図を送り、ヴァルキュリアブラストで光の翼を暴走させ、全身を光の粒子に変えてビルシャナに突撃した。
「ぬぐおっ! よくも、やったな! これでも、喰らえ!」
 その一撃を喰らったビルシャナが、超強力なビームを放って、清春をロングヘアにした。
「……って、需要があるのか、これ! 痛くもねーし、かゆくもねーし! ただ、すっげぇイイ匂いがするんだが……」
 その途端、清春が複雑な気持ちになりつつ、ビルシャナにツッコミを入れた。
「もちろん、アリだ! 俺的にはアリだ! 大アリだ!」
 その問いにビルシャナが、躊躇う事なく答えを返した。
 一体、何を根拠にそんな事を言っているのか分からないが、この様子ではシャンプーのニオイが好みという事だろう。
 それを証明するようにして、ビルシャナが鼻をクンクンとさせていた。
「テ、テメェ……!」
 そのためか、清春もイラっとした様子で、激しくこめかみをピクつかせた。
「やはり、御仕置きする必要がありそうですね」
 綾奈が何かを悟った様子で戦術超鋼拳を発動させ、全身を覆うオウガメタルを鋼の鬼と化すと、ビルシャナを容赦なくブン殴った。
 続いて、夢幻がビルシャナに迫り、鋭い爪を振り下ろした。
「ちょ、ちょっと待て! 俺は何も悪い事は……」
 その事に危機感を覚えたビルシャナが、涙目になって言い訳をしようとした。
「そんな遠慮しなくてもいいから……」
 その間に、司が一気に距離を縮め、グラインドファイアでビルシャナの身体を炎に包んだ。
「うわっちっちっちっ! 俺は別に悪い事は……」
 ビルジャナが涙目になりつつ、炎から逃れるようにして、床をゴロゴロと転がった。
「悪い事をしようとしていたんだから、こうなる事も分かっていたでしょ?」
 そこに追い打ちをかけるようにして、桜子がドラゴニックスマッシュを仕掛け、ドラゴニック・パワーを噴射すると、加速したハンマーをビルシャナに振り下ろした。
「ぐぎゃあああああああ! 痛い、痛い、痛いィィィィィィィ!」
 これにはビルシャナも涙目になりつつ、部屋の隅まで転がった。
「それじゃ、終わりにしようか。キミだって、その方がいいでしょ?」
 次の瞬間、司が螺旋氷縛波を仕掛け、氷結の螺旋を放って、ビルシャナを凍りつかせた。
「何だか凄い顔で凍っているけど、仕方がないよねー。このまま放っておいたら、間違いなく女子高を襲っていたと思いしー」
 桜子が凍りついたビルシャナを見つめ、深い溜息を漏らした。
 ビルシャナは間の抜けた表情を浮かべ、虚空を見つめていた。
「……とは言え、女の子の風になびく艶髪っていいよなぁ」
 そんな中、清春がシャンプーの甘い香りが漂うロングヘアを揺らしながら、しみじみとした表情を浮かべるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月9日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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