みんなでお花見!~デュアルの誕生日~

作者:白鳥美鳥

●みんなでお花見!
「実は、今日は俺の誕生日なんだ。で、やっぱり今って言ったら桜の季節だよね?」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、ケルベロス達に明るく笑いかける。
「桜の花がとても綺麗な場所をケルベロスのみんなで楽しめる様に一日だけ借りる事にしたんだ。折角、桜が綺麗な季節だし、みんなで楽しくお花見をしよう! 沢山の人達で集まっても良いし、お弁当食べたり、桜の花を愛でたりもしても良いしね。みんなが楽しい一日が過ごせたら良いな」
 デュアルはいくつか注意点を付け加える。
「まず、駄目なのは公共秩序に反する様な事は駄目だよ。それから、桜を傷つけるのも駄目。そして、他の人に迷惑をかける事はしない。……後は、皆の常識を信じる事にするよ。みんなで楽しく素敵な一日にしようね!」


■リプレイ

●みんなでお花見!~デュアルの誕生日~
 桜の花が爛漫に咲く場所。今日は、一日、ケルベロス達だけのお花見を楽しむ事が出来る。
 桜の花の様に、優しい色の一時が訪れますように――。

 淡いピンクの色をした桜を眺めるロコ・エピカ(テーバイの竜・e39654)。この花が咲くと四季の巡りを改めて感じる。
 桜を眺めているロコの傍ではメイザース・リドルテイカー(夢紡ぎの騙り部・e01026)が白猫ファミリアのキルケと共にシートを広げてお花見の準備をしていた。
 サンドウィッチとフルーツが入ったバスケットに、赤ワイン、ロコ御所望の甘酒、そしてキルケのおやつの煮干しと……。
「……猫じゃらし?」
「あ、猫じゃらしを紛れ込ませたのは僕」
 入れた覚えのない猫じゃらしにメイザースが首を傾げていると、声が降ってきた。
「犯人はシアンかい? キルケはしっかりと遊んでもらうんだよ。さあ、準備が出来たよ」
 そう言ってメイザースはキルケの頭を撫で、キルケも嬉しそうにニャアと鳴く。
「取り合わせが合っているかは分からないけれど、まあ、楽しんだもの勝ちだよね」
「取り合わせって何だっけ。でも、君の手製のサンドウィッチは油断していると空にするよ?」
 悪戯っぽく微笑むロコに、メイザースも笑う。
 メイザースは赤ワイン、ロコは甘酒でコップを上げて乾杯する。折角の花見酒だ。好きなだけ楽しみたい。万が一、メイザースが酔いつぶれたとしても、ロコが介抱可能だし、それはお互いに分かっている事。
「料理は得意では無いからサンドウィッチになってしまったが、次に備えて一緒に練習しよう。味見係も必要だ」
「練習してもダークマターしか作れなかったよ。……君が作った方が」
 そんなやり取りをしている時に、春の風がいたずらをする。花吹雪が彼等の周りを通り過ぎた。
「おっと、花弁がついているよ、シアン」
「メイザースにもついてる」
「帰ったら、この花弁を使って栞を作ろうか?」
「ああ、そうだね」
 そうして、二人は再び花見酒と盛り上がったのだった。

「桜を見ると春と言う感じがするね。今年も綺麗な桜が見られて良かった」
「春を楽しむ証、という気がするものね。記録もするけど……こうして直接見る瞬間が好き、かなあ」
 草間・影士(焔拳・e05971)と小柳・玲央(剣扇・e26293)は桜の木の下のベンチに座り、桜を見上げる。心の上では常に春の様な気もしていたりするのだけれど。
 影士にとって一番楽しみなのは、玲央が作って来てくれたお弁当だ。
 鰆の幽庵焼き。煮付けた筍。出汁入り卵焼き。そして、アスパラと花形人参は軽く塩茹でて彩り、俵型のおむすびは混ぜご飯(梅しらす、刻みたくあん、青のり天かす)という見事なお弁当だ。どれにしようか迷ってしまう、そんな素敵なお弁当。
「目にも鮮やかで美味しそうだね。何を食べるか迷ってしまうよ。お勧めはある?」
「おすすめは鰆かな。焼き物の火加減、練習もしてきたから、成果は確かめてほしいな」
「鰆か。結構手間がかかっていそうだね。勿論見た目も香りも凄く食欲をそそるよ」
 お勧めを聞かれて、玲央は『鰆』を選ぶ。それに、影士は頷くと、鰆の幽庵焼きを、ゆっくり美味しさを楽しみながら味わう。鰆の美味しさも確かだが、頑張って作った彼女の事を思うと尚更美味しい。
 ふと、視線を感じる。玲央がこちらをちらちらと伺っている事に気が付いた。きっと、評価を気にしているのだろう。影士は優しく微笑む。
「鰆、とても美味しかったよ。ありがとう」
「どういたしまして♪」
 満面の笑みを浮かべる玲央に、影士も微笑み返す。
「じゃあ、次は何を戴こうかな?」
「えっと……じゃあ……」
 こうして過ごせる時間はとても優しい。柔らかい桜と共に温かい気持ちに包まれた。

 少し離れてゆっくりした場所に陣取るのは、甲斐・ツカサ(魂に翼持つ者・e23289)と新城・瑠璃音(相反協奏曲・e44613)。
 瑠璃音が用意してきたお弁当は重箱入り。中身は桜色の俵結び、ふわふわ出汁巻き卵、鳥モモ肉の唐揚げ、ブロッコリ、プチトマトだ。
「ツカサさん、あーんしてくださいませ」
「え? ……えっと、あーん」
 瑠璃音の行為に、ツカサは恥ずかしくなるが、同時に凄く嬉しいのも確かだ。
 ツカサに食べさせている内に、彼の口元にご飯がついている事に気が付く。無意識の内にそっとついばむように口で取り、その後、瑠璃音は自分のした事に気が付いて真っ赤になった。その行動には、勿論、ツカサもびっくりで。
 ……でも、彼女への愛おしさが勝って、ツカサは瑠璃音にありがとうの言葉と共に唇を重ねる。そして、照れを隠す様に、慌てて言葉を付け足した。
「こんなに綺麗な桜なんだけど、海外にも名所があるんだって。いつか、一緒に行こうね?」
「ええ。外国の桜も見てみたいですね。……一緒に」
 温かい気持ちと共に、遠い国の桜に思いを馳せる二人だった。

「デュアルさん、お誕生日おめでとうございます。色々な料理を作ってきたのでどうぞ!」
 ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)からのデュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)への贈り物は様々な種類のお弁当らしい。
「味の好みがわからないので、色々な味付けで作りましたが……どれが好みでしょう?」
 ……ただ、猫用の味付けのものもかなりあるので……どうやらデュアルはミリアにとって『猫』の認識の方が強いようだ。
「……ええと、俺はウェアライダーだから、人間の味付けの方が好きかな。実際、俺が作る料理も人間とか他の種族が食べやすいものにしているし。味付け自体は何でも好きかな、どんな料理も好きだし作るし。……でも、やっぱり素材の味が生きている料理が一番好きかな」
「……成程、デュアルさんは人間用の味付けが好み……。でも、集まってきた猫さん達にも配りたいですね。……それともデュアルさんが、全部食べちゃいます?」
「……いや、猫の食事は減塩してるし身体にも悪くは無いだろうけれど……大きさの問題が! 栄養バランスも……!」
 デュアルの方は、お弁当を用意してくれた事自体はとても嬉しいし感謝しているのだけれど、このままではウェアライダーというより『猫』の扱いだ。……いや、猫のウェアライダーである事は間違いが無いのだれど、それとこれとは話が別の訳で。
「仮眠室も持ってきましたよ」
 そういうミリアが取り出したのは、猫ちぐらに毛布等。既に動物変身を前提にされている。
 ……確かに、猫姿で昼寝をする事が大好きなデュアルであるが、これ以上、ミリアに勘違いさせない方法を考えないとならない。そう、真剣に考えるデュアルだった。

「ぼちぼち見頃かと思っていたが……いい時期に来れたな」
 桜の綺麗な場所にシートを引きながら、準備を整えるのはゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)。その上にはおにぎり、卵焼き、ウインナー入りのお弁当を置いて。皆、何かしら作って来る予定なので、それに期待していたりする。
「おお~、桜綺麗……! 天気もいいし絶好のお花見日和だね~!」
 ヴィヴィアン・ローゼット(びびあん・e02608)の声と共に、皆が集まって来た。
「おっはなみー! お花見と言えば、お弁当なんだよ! 肉を焼いてー、肉を詰めてー、肉をあえてー、じゃーん! ひなみく特製肉弁当!」
 火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)のお弁当は肉メインのお弁当。……だが、既視感が有る。前にもこんなお弁当を作ったような。そんな訳で、今回は野菜を詰めたお野菜弁当も持参した。
 愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053)が用意したのは沢山の巻き寿司に唐揚げ等のおかずだ。こういう集まりだからこそ皆で分け合える楽しみがある。
「あたしはピンチョスを作ってきたよ! 串刺しだし食べやすいと思って! こっちがシーフードと野菜を焼いたのメインで、こっちがフルーツ!」
 ヴィヴィアンも持って来たお弁当を皆に披露する。
 メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)が作って来たものはさくらミルクプリン。ミルクプリンの上に桜ゼリーを散らしたものだ。それからくるくる巻いたコンビーフサンドも。肉が大好きな人達がいるので、それに合わせて。
 レンカ・ブライトナー(黒き森のウェネーフィカ・e09465)が作って来たのはプレッツェル。スナック感覚で食べられる所が良い。甘いものが好きな者の為にチョコ味も用意した。
 そして、ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)は、桜餅。
 一通りの料理が並んだところで飲み物を配り、早速お弁当タイムだ。
「肉や魚はこっちに寄越してくれ」
「ここはがっつり肉! 肉くれ!」
 ゼノアとレンカからは肉や魚の要求が来て、ひなみく特製弁当の威力が発揮される。他、心恋の唐揚げにメリルディのコンビーフサンド、ヴィヴィアンのピンチョスも。逆に肉は避けて野菜とフルーツが欲しいのはロナ。でも、肉は無理でも魚は食べられるらしい。ここも野菜のひなみく特製弁当とヴィヴィアンのピンチョスの出番だ。
 皆でそれぞれのお弁当を分けて食べ合って、団欒して、さくらミルクプリンや桜餅をデザートに戴いて……と、楽しい時間が流れる。
「お弁当は美味しいし、桜は綺麗だし……贅沢なひとときだね~」
 ヴィヴィアンの言葉通りだと思う。こうして、皆で楽しく過ごせばお弁当はより美味しくなるし、桜も一層美しく感じる。
「……お前ら歌えるんだろう? 盛り上げに一曲頼む」
 簡易カラオケセットを取り出したゼノアは心恋とヴィヴィアンにマイクを渡す。
「カラオケ? わー! 盛り上げ役になるんだよ! みよ、わたしの渾身のオタ芸を……!!」
 ひなみくは既に踊る準備、万端の様だ。
 はにかみながらマイクを受け取った心恋は、流行の歌を歌う。本職がミュージックファイターなので、歌は勿論本気だ。
 メリルディはカラオケが苦手なので合いの手や拍手で盛り上げ、ひなみくは踊りで盛り上げる。ただ、ひなみくの踊りはオタ芸の踊りなので一風変わっている為、ゼノアは吹き出しそうになり、レンカは驚きを隠せない。激しい踊りなので、メリルディは逆に心配になってくる。
 二番手はヴィヴィアン。
「桜の花びらは気まぐれ まるで猫のよう~♪」
 ヴィヴィアンの歌う歌は、どこよりも新しい桜ソング。流れるメロディに乗せて即興で歌う。そう、本当にどこよりも新しい桜ソングだ。
「ゼノアちゃんも歌おうよ?」
「いや俺は……」
 ヴィヴィアンに勧められて遠慮がちに断ろうとしたゼノアだが、ロナに捕まる。
「ゼノのおうた……? ききたい、ききたい……! だってゼノ、もとミュージックファイター……だったもん。きっとうまいよ、ききたいな、ききたいな……」
 きらきらと輝いた瞳で見られるとゼノアも流石に断る訳にはいかず、披露する事に。
「最後はみんなで歌おっか?」
 ヴィヴィアンの呼びかけで心恋とゼノアで歌を披露する。ひなみくは情熱的に踊りを繰り広げ、メリルディは合いの手を入れ、ロナは楽しく歌を口ずさみつつ聞いている。
 ドイツ人のレンカも皆の様子を見て楽しい気持ちになる。どの国の人達でも綺麗な花を見て浮かれるのは変わらない、そう思いながら――。

 君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)の提案で、お花見とサンドウィッチパーティーを行うのは伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)、フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)、ジェミ・ニア(星喰・e23256)、尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)、エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)。
「ワタシはカットした苺と生クリームを挟んで、苺サンドをつくってきタぞ。クリームが出やすいかもしれなイので気ヲつけて食べテくれ」
 眸が用意したサンドウィッチは苺と生クリームを挟んだデザート系。同じくデザート系は勇名。勇名はバナナとチョコソースと生クリームをパンで巻いたものだ。
 ジェミが用意したものはロールサンド。ツナマヨをメインにトマト、アボガドを供えた逸品。……昨年、年齢的に花見酒を一緒に楽しめなかったジェミだが、今年も残念ながら成人になる為には一ヶ月持たない時期だったので、今回もお相伴に預かれないのが残念でもあるのだけれど。広喜は卵のサンドウィッチ。初めて作ったものだから形は変だけれど愛情と具は一杯に詰め込んで。エトヴァはトマトにチーズ、バジルソースを挟んで焼いたトーストサンド。フローネは照り焼きチキンサンド。挟むマヨネーズは好みに合わせて、からしマヨネーズと普通のマヨネーズも用意した。
 並んだ沢山のサンドウィッチ。それぞれ、各人が用意したサンドウィッチを戴く。
 ジェミのロールサンドは食べやすい、彩りも栄養も豊か、味も美味しいと皆に好評なのだが、一人だけそうではない人がいる。勇名だ。だが、周りの様子を見たり、ジェミが一生懸命作ってきたものだから……。
「やさいもだいじか。んう、だいじょうぶ、たべるぞ」
 その言葉に、皆も微笑む。
 広喜の卵サンドは定番もの。初めてとはいえ、愛情をたっぷり込めた事が皆に届いたらしく、優しい味と好評だ。
 エトヴァのとろとろチーズのトーストサンドは、食欲がそそるし、皆、チーズが大好きな様で喜びの声が高い。
 フローネの照り焼きチキンのサンドウィッチはマヨネーズの気配りが大変嬉しかったらしく、皆、各々の好みのものを選んで戴いている。
 そんな中、皆のサンドウィッチが美味しすぎて頬張り過ぎた広喜が目を白黒させていた。
「ヒロキ、お茶デスヨ」
 慌ててエトヴァが広喜にお茶を差しだし、そのお茶を飲んで、広喜は一旦落ち着きを取り戻す。
「はー、苦しかった。だって、どれも美味いんだもん。どうしても一杯食べたいっていうかさ」
 先程まで苦しんでいたのはどこへやら、満面の笑顔で言う広喜に、皆も笑ってしまう。
「慌てなくても、まだまだ有るノだから……」
「ええ、ゆっくり戴きましょウ?」
「そ、そうだな! ゆっくり食べた方がより美味い……んだけど、我慢できるかな」
 眸とエトヴァに言われるが、広喜は少々自信が無いようだ。でも、より美味しく味わいたいので頑張りたい所だ。
 皆もエトヴァのお茶と共に、皆のサンドウィッチを心行くまで楽しむ。
 最後に戴くのは、デザート系。
「勇名のすげえーっ、ケーキみたいだっ」
「君乃さんの苺、伏見さんのバナナチョコ……どちらも甘くて美味しいです」
「皆でこうして食べると、本当に美味しさマシマシだね」
「ああ、そうダな」
 ジェミの言葉に、眸も同意する様に頷く。
 各々が持ち寄ったサンドイッチは被る事無く、一通り揃っていてどれも美味しくて。
「君乃のいちごサンド、あまいのはやっぱりじゃすてぃすーだなー」
「甘くて美味えー」
 眸の苺サンドを頬張っている勇名と広喜がとても幸せそうな顔をしている。
 皆で楽しく桜の下でサンドウィッチやお茶を戴いていると心穏やかになって、とても幸せな気持ちになる。色々な事があるけれど、今の幸せな一時はとても温かくて優しくて穏やかで……幸せで。
 淡い桜の花の中のとても優しい一時を――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月18日
難度:易しい
参加:20人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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