●気弱の王子
豪奢な宮殿のバルコニーに、彼はいた。
どこか気弱そうなその彼――ホーフンドは、眼下に集った無数の軍勢を眺めていた。
集うは自身の麾下、ホーフンドの軍勢。そこにレリとヘルヴォールの残党軍も集い、その規模はかなりのものである。
ホーフンドの背後には、秘書官ユウフラが控え、心配げにホーフンドを見守っている。その隣にはホーフンドの娘であるアンガンチュールがいて、これから起こるであろう戦に、期待を膨らませている様子である。
ホーフンドは、意を決したように、その口を開いた。
「僕の大切なヘルヴォールを殺したケルベロスを、倒しに行くよ!」
それは小さめの声であったが、部下たちに届かせるには充分なものである。
主の復讐に燃えるヘルヴォールの兵士たちからは熱狂的に。それ以外の軍勢からは、どこか心配げに。
その言葉に応える歓声が、辺りに響いていた。
●王子迎撃
「集まってもらって感謝する。それでは、今回の作戦について説明しようか」
アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集まったケルベロス達へと、そう告げた。
先の、死神の死翼騎士団との接触によって得られた『ブレイザブリク周辺のエインヘリアルの迎撃状況』に関する巻物を検証した結果、エインヘリアルの陣容に、不自然な点が発見されたのだという。
「得られた情報を検証した結果、エインヘリアルの迎撃ポイントや迎撃タイミングに、明らかに不自然な穴が見つかったんだ」
この情報だけならば、死神の欺瞞情報である可能性もあった。だが、副島・二郎(不屈の破片・e56537)ら、焦土地帯の情報を探っていたケルベロス達の情報から、焦土地帯のエインヘリアルの動きが、『大軍勢の受け入れの為の配置展開』によるものであると判明したのだ。
「その結果、予知を得ることができたんだ。東京焦土地帯に現れる大軍勢――それが、第八王子・ホーフンドだ。ホーフンドは、かつて大阪城のグランドロン城塞で我々が戦った三連斬のヘルヴォールの夫で、どうやら今回は、その報復が目的らしい」
ホーフンドは、大阪城で撃破したレリとヘルヴォールの軍勢の残党を吸収した大軍勢となっている。彼らがブレイザブリクに合流すれば、ブレイザブリクの攻略は難しいものとなるだろう。ホーフンドのブレイザブリクへの合流は、なんとしても阻止しなければならない。
そこで、君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)の作戦に従い、合流前のホーフンド王子の軍勢を奇襲する、強襲作戦を実行する事になったのである。
「では、作戦の概要について説明しよう。今回の作戦は、ブレイザブリクの警戒網の穴を利用し、ブレイザブリクに合流しようとするホーフンド王子の軍勢に対して、精鋭部隊による奇襲を行うものだ」
ホーフンド王子の軍勢は、戦力こそ高いものの、レリとヘルヴォールの残党軍を吸収し、前衛に利用しているため、各々の連携がうまくとれていない。そのため、各々の部隊の各個撃破が可能となる。
さらに、ホーフンドは臆病で慎重な性格であるため、ケルベロス達が本陣を強襲して危機を感じさせれば、撤退の判断を下すと予知されているのだ。
「敵部隊の配置はこのような感じだ。まず、前衛の右翼側に、レリ配下だった部隊。左翼側が、ヘルヴォールの配下だった部隊。後衛に、ホーフンド王子の部隊、といった形だな」
作戦の流れとしては、まず前衛部隊を壊滅させる。そうすれば、救援のためにホーフンド本隊が駆けつけてこようとするので、この部隊を迎撃、足止めする。
そうすることで、ホーフンド王子の軍勢、特に王子直掩の部隊が手薄になるだろう。そこへ派手に襲撃を仕掛け、ホーフンド王子の戦意を挫くわけだ。
「敵は臆病な所がある。我々の力を見せつけてやれば、怯えて撤退してくはずだ」
「東京焦土地帯は首都圏に近い。新たな王子が加わり、戦力が増強されることは避けておきたい。それに、復讐に燃えるホーフンド王子による、東京の民間人への攻撃も懸念されるからな……さて、それでは、以上だ。皆の無事と、作戦の成功を、祈っているよ」
そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出したのであった。
参加者 | |
---|---|
幸・鳳琴(黄龍拳・e00039) |
ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352) |
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695) |
ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706) |
源・那岐(疾風の舞姫・e01215) |
一式・要(狂咬突破・e01362) |
皇・絶華(影月・e04491) |
夢見星・璃音(災天の竜を憎むもの・e45228) |
●焦土地帯にて
かくて戦いの地へ、ケルベロス達は降り立つ。
ここは東京、焦土地帯。
7チームのケルベロス達は、その焦土地帯の最前線へと到達した。
「復讐か……」
呟くのは、皇・絶華(影月・e04491)だ。此度、この地を訪れたホーフンド王子の目的は、妻を殺害されたことへの復讐なのだという。
(「そう言った意味では……私も……我が弟を堕としたヴァルキュリアを、許せないかもしれないな……」)
静かに、その手を背へ、剣の柄を掴む。
ゆっくりと、抜き去った。刃が陽光を受けて、絶華の意志を現すかのように、冷たく輝く。
「そう聞くと、少し心が痛いわね……」
絶華の呟きに、ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)が言った。相棒のテレビウム、『シュテルネ』は、ローレライの足元でぴょんと飛び跳ねる。
「でも、私たちにだって、守らなきゃいけない人たちがいる。だから……」
決意を表すように、ローレライは頷いた。哀しいが、これは生き残りをかけた戦いでもあるのだ。
「クッソ面倒くせェ状況だが、しょうがねぇ」
ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)は、気合を入れるように、手のひらと拳を合わせて、指を鳴らした。
「せいぜい八王子野郎が二度と報復なんぞ思いつかねぇくらいに、思いっきり暴れてやるとするか」
ジョーイの言葉。前方を見れば、目標――旧ヘルヴォール軍であろう軍勢の姿が見て取れる。
間もなく、戦いは始まる。
「この戦いは、きっとアスガルドゲートに至る重要な道」
幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)が、ぐっ、と拳を握り、告げる。その拳には、今回の作戦にかける熱が、現れているかのようだった。
「必ず成功させましょう!」
鳳琴の言葉に、仲間達は頷いた。
(「東京焦土地帯……久しぶりに戻ってきたな」)
胸中で呟きながら、辺りを見回す夢見星・璃音(災天の竜を憎むもの・e45228)。だが、今回の作戦へ意識を戻すと、よし、と気合を入れなおすように頷く。
「覚悟決めて、いきましょうか」
他チームのケルベロスから届く、作戦開始を告げる言葉。璃音は頷くように、返事をした。
「了解だよ。お互い、無事に帰ろう」
そう告げる璃音の――ケルベロス達の前には、幾百のシャイターンの軍勢が、今まさに突撃の構えを取っていた。
ケルベロス達は駆けだし――やがて両軍は激突する。他チームから嚆矢のように放たれた焔が、敵陣営へと轟音をあげて着弾した。それを合図にしたように、ケルベロス達の攻撃が始まる。
「琴ちゃん、後ろは任せるからね」
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)は、鳳琴へ向けて、そう言った。返事の言葉はいらない。想いが二人の呼吸を繋げている。
「……それじゃ、行ってきますっ!」
シルが駆けだす――戦場へ。ケルベロス達を飲み込まんばかりの軍勢が、一斉に襲い掛かってくる。
「張り切るのはいいけれど、あんまり他のチームと離れちゃだめよ!」
一式・要(狂咬突破・e01362)がケルベロスコートを脱ぎ捨てた。足を高く、蹴撃の構えを取る。テレビウム、『赤提灯』は、その言葉を強調するように、手にしていたおでん串を振るっている。
「いきましょう、皆さん!」
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)が声をあげ、軽やかな足取りによるステップ。呼応するように、エレメンタルボルトが輝きを放った――。
●激戦地
果たして、ケルベロス達と、旧ヘルヴォール軍、二つの軍勢の衝突は始まった。数で勝る旧ヘルヴォール軍であったが、個々の戦闘能力はケルベロス達に分があった。
「防衛兵は前に出ろ! 魔法兵、援護の魔法を放て! 狙わなくていい、とにかく弾幕を展開しろ!」
悲鳴にも近い、兵たちの命令がこだまする。果たして滅茶苦茶に放たれた魔の焔があちこちへと着弾するのを、ケルベロス達は直進する。
「防御は任せてください!」
那岐が踊るように跳ぶ。それは、神楽の舞に似た、荘厳なものである。エレメンタルボルトが呼応するように輝き、展開された属性の盾がケルベロス達を防御する――放たれた魔の焔の弾幕を、それがはじいた。
「使うのは初めてだけど……使いこなしてみせるっ!」
バスターライフル、『蒼翼砲』。大切な人からの贈り物であるそれを、シルは抱きしめるように構えた。トリガを引けば、放たれる光線が、防衛兵に着弾。手にした盾ごと貫き、吹き飛ばす。
「シルさん、合わせます!」
その防衛兵に、鳳琴の追撃の跳び蹴りがお見舞いされる。二つの攻撃をその身に受けた防衛兵は、そのまま吹き飛ばされて戦闘不能となった。
大軍勢に、ケルベロス達は切り込んでいく――戦場はすぐに乱戦になった。
「ハァッ!」
飛び込む絶華の蹴りの一撃が、一般兵の斧と交差する。絶華は空中で態勢を華麗に整えると、すぐさま二撃目の蹴りをお見舞いする。顔面を蹴り飛ばされた一般兵が、そのまま地に倒れ伏した。
「一人一人の力は大したことは無いようだが――」
絶華がぼやくと同時に飛びずさった。魔法兵より放たれた魔力の炎が、間髪入れずその場に着弾する。
「流石に数の多さが厄介だな」
ぼやきつつも、敵陣の動きから目を離さない。全体として、敵軍は正面から、此方を押しつぶすように戦っている。言い方を悪く言えば、真正面からぶつかる事しかできない、無策の突撃であるともいえた。
「敵も有力な将を失っているせいか……」
おそらくは、それも一因だろう。此方の登場に、細かな対応ができていないことから、それが見て取れる。同時に、敵兵が叫ぶ、「増援が来るまで持ちこたえろ」という悲鳴にも似た命令を見るに、相手は別部隊の増援が来ることを信じて戦っているようにも思えた。
「味方の増援か……そっちも、ケルベロス達で足を止めてるんだけどな……!」
手にした刃、『冥刀「魅剣働衡」』の刃を煌かせ、ジョーイが一般兵と切り結ぶ。一度、二度、交差した刃と刃が煌き、その肉体を切り伏せられたのは一般兵の方である。
「とは言え、俺達がつぶれちまったら意味がねぇ。気合入れていくぜ!」
ジョーイは吠え、次なる獲物へと斬りかかる。
「無茶しちゃだめよ!」
要は叫び、己のバトルオーラ、『水鏡』を練り上げ、変質させる。透き通った水のように変容したバトルオーラが、水の盾となって仲間達を守る様に展開される。
主と共に、仲間達を援護する赤提灯は、その顔面に応援動画をひたすら流して、仲間達の背中を押した。
「まだまだ先は長いんだからね」
要のいう通り、戦いはまだ始まったばかりだ。それに、この戦場を制圧した後も、別の仲間達の援護へと向かう必要があるだろう。
一方、ローレライは『An die Freude』を展開し、それを一斉に撃ち放った。放たれたキャノン砲の弾丸は、寸分たがわず魔法兵を狙い、撃ち貫く。
「だが……とにかく今は、全力で敵を討ち続けるしかない!」
ローレライの言葉に頷くように、シュテルネの鋭い凶器攻撃が、一般兵を斬り捨てた。
「なら、最初から全力全開でいくよ! ステラーっ、グラディオー!」
高く掲げる璃音の手に、八つの属性を一つと束ねた、巨大な光の剣が現れた。間髪入れず、それを振り下ろす。巨大な衝撃と共に、斬撃は防衛兵を飲み込み、そのまま光の中へと消滅させた。まさに、全力全開の一撃である。
ケルベロス達は勢い止めず、破竹の勢いで敵陣へと切り込んでいく。果たして数百に及ぼうとしていたシャイターンの軍勢は、瞬く間にその数を半数以下へと減らしていった。
戦いの趨勢は、ケルベロス達の方へと傾いていく。敵軍は、自分達が不利に置かれてなお、真正面からの徹底抗戦を続けていた。援軍を待っているようだが、それが訪れる様子は見受けられない――来るはずがないのだ。
「あの身長……気を付けてください、勇者兵です!」
那岐の声が響く。周囲を確認してみれば、此方に今馳せ参じようとしている、1人の兵士の姿がある。
「これ以上、味方をやらせるわけにはいかん……!」
兵士――勇者兵は叫び、その刃を手にケルベロス達へと突撃してきた。とっさに飛び出した要が、バトルオーラを変質させた盾を構え、勇者兵の斬撃を受け止めた。
薄氷を踏むような澄んだ音が、盾から発せられた。
「本命、ね……!」
腕を振るい、盾を利用して剣を振り払う。ぱらり、と綺麗な音を立てて、はらはらと砕けた盾の破片が散った。
「私はフラメー、豪炎のフラメーだ! 貴様たち個人に恨みはないが――」
フラメーと名乗る勇者兵は、手にした刃をケルベロス達へと突き付けた。
「貴様らケルベロスは、ヘルヴォール様の仇。此処でその首、もらい受けるぞ!」
宣言とともに放たれる殺気は、なるほど、配下のシャイターン達の比ではない。どうやら相応の実力者のようである。
「弔い合戦のつもりなのかもしれないけど、生憎、こっちも弔い合戦なんだよね」
璃音はゆっくりと息を吸って、言った。
「誰のかって? ――無辜の地球の人達のだよ!」
此方にも守るものが、守り切れなかったものがある。
故に――今ここに、立っているのだ。
「なるほど」
フラメーは静かに笑った。嘲笑ではない。納得の笑みだった。
「ならば、もはや、言葉は不要だろう」
フラメーの刃に、爆炎が舞う。ケルベロス達は、構えた。
そしてどちらともなく――両者は戦場を、駆けた。
●勇者と勇者
「燃え尽きろ、ケルベロスッ!」
振るわれたフラメーの刃から、炎の波が舞い散り、戦場を嘗め尽くす。奔る炎が、ケルベロス達の身体を焼いた。
「すぐに回復します……!」
那岐は舞う。その身体より放たれる花弁のオーラが、仲間達の身体にまとわりつく炎を浄化して回った。
「琴ちゃん!」
「はい! シルさん、合わせて……いきますよっ」
シル、そして鳳琴が、同時に飛び上がった。空中で交差するや、間断なく放たれる、二人の息の合ったコンビネーション。二つの流星のような跳び蹴りが、フラメーに襲い掛かる。
「ちいっ!」
フラメーは舌打ちしつつ、二人の跳び蹴りをその腕で受け止めた。衝撃が走り、たまらず足を止める。
シルは/鳳琴は、上空へ/後方へ、それぞれ飛びずさる。上空へと飛んだシルはそのまま砲撃支援の構えを取った。
「続けて――逃がさないっ!」
打ち放たれる、シルの砲撃魔法が、辺りに着弾した。構え、足を止めるフラメー――そこへ迫る、一陣の影。
「悪いが、こっちが本命だ」
身体能力を向上させるという、魔法少女の衣装へとチェンジした絶華が、フラメーへと接敵する。手にした『霊剣「Durandal Argentum」』による斬! それは、雷の如き鋭さと勢いを持つ、一撃である!
「くうっ!」
フラメーは呻きつつ、左手で防御用の小刀を繰り出すと、その斬撃を受け止めた。衝撃が身体を走る――それに耐えきれなかった小刀が、粉砕される。
「一発デケェの行くからしっかり受け止めろよ? ……でぇりゃァァァ!!!!」
続くジョーイが、「魅剣働衡」を手に、駆けた。身体を覆う、鬼神の如きオーラ。振るわれる、重い一撃が、フラメーの身体を切り裂いた。
「ぐ……う!? だが、まだだ!」
斬撃はしかし、命を取るには一歩届かない。
「図に乗るなよ、ケルベロス!」
反撃に振るわれた、焔を纏う刃が、ジョーイの身体を切り裂く。がふ、と息を吐きながら、しかしジョーイは不敵に笑った。
「この程度でよォ……俺が止まるわけねェだろうがァァァッ!!」
気合の雄たけびと共に、ジョーイの傷がふさがっていく。実力だけではない、その気迫すら、ケルベロス達は上回っているのだ、そう宣言するかのようであった。
「ここが踏ん張りどころよ! 援護は任せなさい!」
要は粉砕された水鏡の盾を、再度展開した。シールドが仲間たちを守るべく浮かび上がり、フラメーの攻撃に備える。赤提灯も負けてはいない。胸を張り顔を張り、気合を入れて応援動画を流し続けるのだ。
「貴殿の苦しみもわかる……だが!」
ゾディアックソードを手に、ローレライはフラメーへと接敵する。視認不能の死角より放たれる斬撃。その一撃が、フラメーの腕を薙いだ。間断なく、シュテルネの凶器攻撃が突き刺さり、ちい、とフラメーが舌打ちを一つ、
「言葉は不要だと言ったはずだ、ケルベロスの騎士よ!」
刃を持って、フラメーは二人を振り払う。間髪入れず、着弾したのは璃音の蹴りの一撃である。
「やっつけるっ!」
「おの……れぇっ!」
フラメーは璃音の蹴りを、その腕で振り払いながら、右手の剣を振り上げた。
「沈めぇっ!」
再び襲い来る、炎の波! 焦土すら焼き尽くすその炎を突っ切って、ケルベロス達は駆けた!
「舞え、勝利の花、戦友に力を……!」
たん、と舞踏を踏む、那岐。舞い起こる炎に決して焼かれぬ、美しき月桂樹の花が、鳳琴へと降り注いだ――。
「おねがいします!」
那岐の言葉に、鳳琴が頷く。
「援護は任せて、琴ちゃん!」
シルが叫び、その手を掲げた。四つの属性を束ねた精霊魔術が、今、その手の中で強大な力となる。
「汎用性はこっちのほうが上だいっ!」
言葉と共に放たれるは、『精霊収束砲(エレメンタルブラスト)』の一撃! 放たれた光線が、フラメーを飲み込む――!
「だが、まだッ!」
フラメーはボロボロになりながら、その一撃を耐えて見せた。だが、その時には、シルの背に蒼白い一対の羽が展開されている。
「琴ちゃん!」
「了解、ですっ!」
すぅ、と鳳琴は息を吸い込んだ。拳に纏うは龍状のグラビティ。力強く構え――、
「これが――幸家の拳ですっ」
踏み込む! 放たれた、遠当て、龍の拳。それはシルの追撃と共に、フラメーへと迫りくる!
「ここまでか。無念だ……」
フラメーは小さく呟いた。二つのエネルギーは混ざりあい、一つの巨大なエネルギーとなって、フラメーを飲み込む。
やがてそのエネルギーが爆発して消滅したとき、フラメーの肉体もまた、この世から消滅していたのであった。
●次なる戦場へ
勇者兵を失ったヘルヴォール軍に残されていたのは、戦闘能力的に劣る、シャイターンの一般兵たちのみであった。残敵の掃討は、瞬く間に完了した。あれほどいたシャイターンの兵士たちは根こそぎ討ち取られた。1チーム、50名ほどを相手取ったのだ。まさに快進撃と言っていいだろう。
「ひとまず、此方の役目は果たせたか」
絶華が言うのへ、
「そうね。でも、まだやれるでしょ?」
ウインク一つ、要が言う。ケルベロス達は、まだ全員が無事のまま。ならば、ホーフンド王子軍の下へと向かうのみだ。
「面倒クセェが、もうひと働きだな」
ジョーイが言うのへ、
「うん、もう一息だよ!」
璃音が笑って返す。
「では行きましょう、皆さん!」
ローレライの言葉に、仲間達は頷いた。
次なる戦場が、彼らを待っていた。
作者:洗井落雲 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年4月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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