第八王子強襲戦~臆病王子の復讐劇

作者:朱乃天

 華美に装飾された豪奢な宮殿。そのバルコニーに立つ鎧を纏った少年らしき人物が、この場に集いし多くの兵士を見下ろしながら、前に出る。
 彼はエインヘリアルの第八王子、ホーフンド。勇猛な戦闘種族にあって、彼の幼く華奢な容姿は気弱で頼りなさげな印象を受ける。
 それでも彼はこの軍勢を率いる指揮官として、勇気を奮って配下に指令を下すのだった。
 軍勢の中には、嘗てヘルヴォールの配下であった兵隊達も加わっている。そんな彼らが望む言葉は、唯一つ。
「僕の大切なヘルヴォールを殺したケルベロスを倒しに行くよ!」
 発する声は小さいが、必死に檄を飛ばして鼓舞する王子の言葉に、ヘルヴォールの配下達から歓喜の声が沸き起こる。
 この戦いは復讐戦だと盛り上がる、彼ら以外の部隊は素気無い態度で仕方なく、「おー」と声を上げるに留まるのみで。戦に賭ける温度差たるや、まるで対照的な雰囲気だ。
 片や、兵士に出陣を命じるホーフンドの後ろには、その様子を眺める二人の女性。
 秘書官のユウフラが心配そうに見守る一方で、ホーフンドの娘、アンガンチュールは戦争の幕開けに心弾ませながら、狂気の笑みを浮かべるのであった――。

 死神の死翼騎士団との接触によって『ブレイザブリク周辺のエインヘリアルの迎撃状況』に関する巻物を得たケルベロス達。
 そこに書かれた情報を詳しく分析した結果、エインヘリアルの迎撃ポイントや迎撃タイミングに、明らかに不自然な点が見受けられていた。
 この情報だけなら死神側の欺瞞情報である可能性も拭えなかったが、焦土地帯を調査していたケルベロス達の情報と照合し、焦土地帯のエインヘリアルの動きが『大軍勢の受け入れの為の配置展開』によるものであると判明したのだ。
「これらの情報を基に予知した結果、東京焦土地帯に現れる大軍勢の指揮官は、第八王子・ホーフンドだということが分かったよ」
 ケルベロス達に予知を伝える玖堂・シュリ(紅鉄のヘリオライダー・en0079)。その話によれば、敵の王子は大阪城のグランドロン城塞でレリ王女と共に撃ち倒した、三連斬のヘルヴォールの夫であり、今回は報復の為に出陣してくるとの事だ。
 軍勢の中には、大阪城で撃破したレリとヘルヴォールの残党も加わっており、高い戦力を持つ彼らがブレイザブリクに合流すれば、攻略は難しくなってしまう。
 更にホーフンド王子はヘルヴォールの復讐の為なら、東京都民の大虐殺も行いかねない。従って王子のブレイザブリクへの合流は、何としても阻止しなければならない。
「そこで、合流前の王子の軍勢に、奇襲を仕掛ける事が今回の作戦というわけなんだ」
 ホーフンド王子の軍勢は、レリやヘルヴォールの配下であった残党軍を前衛に配備されているが為、本隊との連携には少なからず隙がある。
 また、ホーフンド王子は嫁の敵討ちの為に出陣したが、王子を大切に思う配下達は、地球への進行に消極的なようで士気もそれほど高くない。
 それにホーフンド王子本人も本来は好戦的な性質では無く、むしろ臆病なまでに慎重だ。もしケルベロスの攻撃で本隊に危機が迫れば、狼狽して撤退の判断を下すだろう。
「それじゃ具体的にはどう戦うか、その内容を説明していくよ」
 前衛の右翼と左翼は、それぞれレリとヘルヴォールの配下であった部隊が担当している。
 この前衛部隊を壊滅させれば、本隊の部隊が救援に駆け付けてくる。そこでこれらの部隊を迎撃し、王子直属の部隊と合流させないように足止めさせる。
 そして救援を送ったことで手薄になったホーフンド王子を派手に襲撃すれば、王子は危険を恐れて撤退を余儀なくされることになるだろう。
 以上の点を踏まえた上で、どの軍勢と戦うか、敵戦力をどの程度まで削ぐかなど、作戦に参加する他チームとも相談しながら決めてほしいと、シュリは言う。
「因みにエインヘリアルと抗争している死翼騎士団だけど、この作戦を邪魔することはないみたいだね。もしかすると、死神の利益の範囲で援護も期待出来るかもしれないよ」
 シュリは最後にそれだけ付け加え、ヘリオンに乗り込むケルベロス達の背中を見送りながら、全てを彼らに委ねるのであった――。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
瀬戸・玲子(ヤンデレメイド・e02756)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)
アラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)
輝島・華(夢見花・e11960)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)
款冬・冰(冬の兵士・e42446)

■リプレイ

●復讐者達の進軍
 斃された妻の仇討ちの為、大軍勢を率いてケルベロスに報復戦を挑むエインヘリアルの第八王子。そうした敵の動きを阻止すべく、ケルベロス達は合流前の軍勢に奇襲攻撃を仕掛ける作戦に出る。
 最初に狙うは、前衛に配備されている旧レリ軍。その襲撃役を担う計6チームの面々が、機先を制して敵軍勢に向かっていった。
「次の相手は第八王子ですか……撃退してもその度に次の戦力が出てくるエインヘリアルは底が知れませんね」
 ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)は尽きることないエインヘリアル軍の戦力に、脅威を覚えながらも、倒していけば何れは枯渇するはずと、目の前の敵に専念すべく、意識を集中させて魔力を高める。
 まずは敵を足止めしようと、2つのチームが立ち塞がって進路を阻む。
 先陣を切って戦う以上、決して失敗は許されない。款冬・冰(冬の兵士・e42446)は最悪の事態を嘆くのは、全てを終えてからだと思考を凍結。今はただ、任務をこなすことだけ考えようと、鮫めいた風貌のアームドフォートを身構える。
 相手となる敵前衛は、白百合騎士団指揮官、ハティ軍とスコル軍との混成部隊。
 『レリの思想に共鳴した狂信的な白百合騎士団』を率いるハティ軍とは対照的に、スコル軍は『白百合騎士団だが、ハールに鞍替えした』部隊で編成される。元は同じ白百合騎士団出身とはいえ、仲が良好だとは言い難い。
 配置的にも、2つの部隊は連携が取れる場所にはおらず、スコル軍は更に下がった位置で待機している状況からも、統制は取れていないことが推測される。
 ――だからこそ、そこに付け入る隙がある。
「……作戦、開始」
 冰のアームドフォートが火を噴いて、撃ち放たれた光線は、ハティ軍の騎士を狙って見事に命中。同時にもう一つのチームも攻撃を仕掛け、今ここに、一大作戦の戦いの幕が切って落とされた――。

「レッツ、ロック! ケルベロスライブスタートデスよー!」
 戦端が開かれ、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)は己の存在をアピールするかのように、ギターを派手に掻き鳴らして歌い出す。
 天高らかに、世界を変えてみせると願いを込めて――シィカの奏でるロックな音色が戦場中に響き渡って、仲間の戦意を鼓舞させる。
「来たなケルベロス共、レリの仇!」
 対するハティ軍はレリに心酔している者が集い、この戦いに賭ける闘志は並々ならぬものがある。復讐心を抱いて突撃してくる敵部隊、その攻撃を、真っ正面から受けて立とうと、護り手二人が前に出る。
 白百合騎士団との戦いは、フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)にとって言葉に出来ないくらい、ココロに去来するものが多くある。だからこそ、復讐に駆り立てられる彼女らを、せめてこの身で受け止めること、それが盾役としての役目であると。
「――アメジスト・シールド、最大展開!!」
 手を翳し、フローネのココロに呼応するかのように眩い光が溢れ出て。前線で戦う仲間を覆うが如く、紫水晶に輝く光の盾が防護展開されていく。
「復讐戦……ですか。お互い譲れないものがありますから仕方ないですよね」
 こちらも住むべき世界と人々を、守る為にも敵の思うようには決してさせない。
 輝島・華(夢見花・e11960)は抱く決意を杖に篭め、発する力は紫電となって周囲に雷の壁を張り巡らせる。
「皆様をお守りして頑張ろうね、ブルーム」
 花咲く箒のようなライドキャリバーに跨りながら、この作戦は必ず成功させてみせると気を引き締める華。
「また新しい王子ですか。今回の相手は今までの王族とは少し毛並みが違うようで」
 今度の敵は戦闘種族らしからぬ、気弱なエインヘリアルの王子とあって、瀬戸・玲子(ヤンデレメイド・e02756)は敵も様々な事情があるのだろうと納得しつつ。例えどんな思惑があるにせよ、この戦いに勝つことだけと、癒し手として仲間を支える為に力を揮う。
 オウガメタルの鎧を身に纏い、玲子の全身から輝く光の粒子が放出されて、仲間の戦闘感覚を研ぎ澄ます。
 敵を迎え撃とうと態勢を整え、仲間の支援を受けながら、アラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)がお供のウイングキャットと一緒に攻勢を掛ける。
「行こう、先生!」
 風の加護を纏ったアラタが、高く跳躍しながら宙でくるりと一回転。鮮やかな赤いリボンを靡かせて、重力載せた蹴りが騎士団兵の一体に炸裂し、シューズの猫脚ヒールが敵の鎧を打ち砕く。
「ドローン各機、座標指定完了……レーザー発射と同時にグラビティフィールド展開。リソースはドローン軌道、レーザー反射角演算に回せ」
 次いでリティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)が、狙いを定めて敵兵を追撃。光学迷彩を施したドローンの群れを飛ばして取り囲み、ドローンに向けてレーザーを照射。
 グラビティフィールドによって乱反射するレーザーは、予測不能の軌道で敵を追い詰め、全方位から撃ち抜かれた騎士団兵は力尽き、ケルベロス達は幸先良く最初の一体を仕留めるのであった。

●勝負の分かれ目
 主君の仇と、復讐心に燃えるハティ軍。多数の敵が相手であっても、ケルベロス達は臆する事無く互角の勝負を繰り広げ、確実に数を減らしながら機を窺う。
 しかし犠牲も厭わず決死の覚悟で突撃してくるハティ軍の猛攻に、さしものケルベロス達も手間取るものの、もう一つのチームが攻撃を受け止めながら、敵の注意を引き付ける。
 ここは彼らが抑えてくれる。ならば自分達が成すべきことは――。
「この場は任せて、私達はスコル軍を追いましょう」
 どうかご武運を――と、ウィッカが礼を言いつつ、後ろへ下がるスコル軍を目で追って。急いで追跡しながら、リングを回転させると冷気を呼び込み、氷の刃を帯びた戦輪を、投擲させて敵の兵士を斬り刻む。
「敵兵捕捉。逃走は不許可」
 冰が折紙型ナノマシンで作った巨大な槌を肩に担いで、ロックオン。目を眇め、大砲と化した槌から魔力の弾が撃ち込まれ、着弾すると竜が吼えるが如く爆発音が轟き響く。
「連中の後を追っていけば、スコルの許に辿り着けるというわけね」
 ハティ軍とは異なり、スコル軍は積極的に仕掛けてくる気配は今のところない。それならこちらは前進あるのみと、リティもライフル片手に後退していくスコル軍の兵を狙い撃つ。
「くっ……早くスコル様の指示を仰がねば!」
 ケルベロスへの反撃よりも、スコルの指示を最優先するスコル軍。その為か、被害も軽微に留まり、余力を残した状態で、逃げる敵軍勢を追いかける。
「ボクのロック魂、見せてやるのデスよ!」
 シィカがギターを弾いて奏でる曲は、勇壮なる英雄達を讃える歌だ。
 迷う事なき信念を、胸に抱いて前へと進む。シィカの熱い思いが敵を怯ませ、動きを鈍らせ、ケルベロス達は勢いを加速させて攻め込んでいく。
 回復役の玲子も攻め手に回り、銃と魔導書を携えながら、力を発現。魔術を記した書物が光を帯びて、捲れる頁が一枚また一枚と宙に舞う。
「全術式解放、圧縮開始、銃弾形成。神から奪いし叡智、混沌と化して、神を撃て!」
 全ての魔術を解き放ち、構えた銃に魔力を集束。圧縮させた魔術は一発の銃弾となって放たれて、容赦なく白百合の騎士を撃ち倒す。
「敵の指揮官はダモクレスの技術で強化されていると聞く。でも、フローネの因縁に決着を付けられるなら――」
 元はダモクレスであったアラタにとって、その心境は複雑だ。けれどもこうした感情を持てるのは、心を教えてくれる皆がいたからなのだと、だから仲間の力になりたい、と。
 アラタが腕に巻き付く鈴蘭型の攻性植物に、力を注ぐと蔓が触手のように伸びて敵を捕縛し、絞め付けて。白い釣り鐘状の可憐な花が、リンと儚げに鳴る。
「フローネ姉様の力添えとなる為にも、ここは絶対逃しませんの!」
 ライドキャリバーを駆る華が、魔法の箒で一掃するかのように敵集団を薙ぎ払い。魔力を込めた掌を、開くと光の花弁が咲き乱れ、嵐のように舞って花弁の刃で斬り裂いていく。

「このまま押し通しましょう。その先にスコルは必ずいるはずです」
 先頭に立つフローネが、ライフル銃でビームを撃って威嚇しながら仲間と共に突き進む。目指す視界のその先に、彼女達が目撃したのは――スコル軍と交戦している2つのチームの姿であった。
 戦力的には、ハティ軍の倍以上もの兵が配備されているスコル軍。数の多さを武器にケルベロス達を包囲して、一進一退の攻防戦が続いていたが――。
 その時、フローネ達から逃れるように退避してきたスコル軍の一団が、自軍の味方を押し込むように雪崩れ込み、結果的には陣形を崩して混乱がそこに生じてしまう。
「好機です。こちらも加勢に入りましょう」
 布陣が乱れたその隙を、逃しはしないとウィッカがコートを翻し、細身の剣を振るえば刃の先から花の嵐が吹き荒れて。スコル軍はその美しさに目を奪われてしまい、武器を持つ手が止まってしまう。
「――お待たせ。これより反撃に移行する」
 冰は表情を変えずに淡々と、戦況を確認しながら、討つべき敵へと目を向けて。髪に飾った侘助椿の攻性植物を、掌に乗せると花が一気に巨大化し、敵兵目掛けて喰らい付く。
「ここからは、ボク達も援護するデスよ!」
 シィカが全力疾走しながら駆け付けて、スコル軍の一団に向かって飛び掛かる。
 頭部が魚を模した螺子を握り締めると、水の魔力が拳を覆い、相手を狙って打ち込めば。解放された力が海嘯となって、荒ぶる水の奔流が、敵兵達に襲い掛かって呑み込んでいく。

●業炎の騎士
 スコル軍と交戦していたチームと合流を果たした事で、戦いの流れは一転し、戦局はケルベロス側へと大きく傾く。
「ここは俺達が抑え込む! 今のうちに行ってくれ!」
 泰地が敵と組み合いながら、高らかに声を張り上げ、キソラ達に誘導を促す。
 血路が開かれ、キソラ達のチームがスコルの許へと直行し、残った2つのチームが騎士団兵と対峙して、戦闘はいよいよ乱戦の様相を呈していった。
「私達も力を貸すわ。連中に思い知らせてあげようじゃない」
 リティがライフル銃にカプセルを込めて空中に発射。打ち上げられた薬液が、癒しの雨となって降り注ぎ、傷付く仲間を治療する。
「ええ、やられた分はやり返さないとね」
 玲子も禁断の魔術を紐解いて、詠唱される呪文は仲間の脳細胞を刺激させ、眠れる力を覚醒させる。
 負傷を癒し、強化を施し、ケルベロス達は戦線を立て直しながら万全の備えでスコル軍を次から次へと蹴散らしていく。
 戦闘が更に白熱し、熾烈を極めていく最中――突然、敵軍勢に動揺が広がっていくのが、ケルベロス達にも伝わってくる。
「向こうはハティが逃げたみたいね。でも、こっちの方は逃がさないわよ」
 愛用のオートリボルバーに弾丸を詰めつつ、玲子の眼鏡の奥の瞳がスコルの姿をはっきり映す。
「今が絶好の機会ですね。すぐに私達も行きましょう」
 ウィッカが理力を脚に溜め、星のオーラを宿した蹴りで、行く手を遮る騎士団兵を撃破する。彼女と視線を交わした冰は、くるりと振り向き、ウィッカと背中合わせになりながら、赤毛の少女を見送るようにスコル軍との戦いを選ぶのだった。
「ウィッカ達は先に行ってもらって構わない。冰も後で追いつくから」
「ボクも騎士団の相手をシマス。ココは二手に分かれまショー!」
 戦線を維持するには、8人全員で向かうより、戦力を分散させて均等を図った方が良い。シィカも居残る事を選択し、スコル軍を抑える事に力を尽くす。
「全機、突撃……いざゆけ、遥かレアヒの麓まで」
 戦友を無事に送り届けるよう、冰が折紙型ナノマシン製ドローンの群れを周囲に展開。高出力のオールレンジ攻撃で、迫るスコル軍を駆逐していく。
「私達の事は大丈夫ですから。フローネさんも早くスコルの所へ」
 盾役として敵の攻撃を防ぐ華の言葉に、フローネは大きく頷き、後はお願いと、正面だけを見据えて前へと進む。そうして遂に、敵指揮官のスコルの許に到達し――最後の対決の時を迎えるのだった。

「全くしつこい犬共め……こうなれば、片っ端から始末するだけよ!」
 『日輪』の力をその身に取り込む、敵将の放つ気迫は『あの時』感じたプレッシャーと変わらないほど総毛立つ。
 海底探索で圧倒的な敗北を蒙った、当時の悔しい思いが脳裏を過ぎる。
 しかし今回は、決して同じ轍を踏みはしない――そう覚悟を決めたフローネの、全身から燦爛たる紫色のオーラが迸る。
「その力! 負ける訳には、いきません……!」
 スコルの気迫に感化され、闘志を奮い立たせるフローネに、同じく日輪への雪辱を秘めるレスターも、心を一つに合わせて打倒スコルを胸に誓う。
 斯くしてケルベロス達は総力戦でスコルに挑み、怒濤の猛攻撃で一気呵成に攻め立て――激戦の末に追い詰める。
「――汝、動くこと能わず、不動陣」
 ウィッカが指で虚空をなぞり、描く五芒星がスコルの足元に浮かび上がって、発する光が敵の動きを封じ込む。
「妹すらも捨て駒にしてるんだから、お前らを捨て駒にする位朝飯前だな」
 これで決着を付けようと、リティが挑発じみた台詞を吐き捨てながら、アームドフォートの主砲を敵指揮官に突き付ける。
「……アラタは人というものを、皆の笑顔を守りたい。だからお前を――撃つ」
 地球に来てから、人の心を得たアラタ。それは様々な出会いによって齎され、故に人々の日々の生活を、命を守り抜くのが今の自分の使命だと。
 竜の力を宿した大槌を、構えて照準合わせて――アラタとリティ、灰とアトリの合計4人の狙撃手が、スコルに対して一斉射撃。
 烈しい弾雨に曝されて、スコルは回復出来ない程の深手を負う。それでも最後の気力を振り絞り、残った生命の炎を燃え上がらせて紅蓮の刃を振り翳す。
 赫灼たる地獄の業火の如き炎嵐に、フローネは恐れる事なく強いココロで一歩も引かず、立ち向かう。
「派手にやれ。奴に――日輪に届くぐらいに」
 レスターの掛ける一言に、更なる勇気を漲らせ、銃を持つ手に力を篭める。
「これで全てを終わらせます――さようなら」
 盾を発動させる動力を、転換させてライフル銃に力を装填。装着されたボルトが火力を高め、トリガーを引き、最大出力からなる一撃が――スコルの『豪焼炎河』の剣を破壊し、彼女の胸を貫いた。
「……どう、して……こんな事に…………ハール様!!!」
 生命果て、崩れ落ちていく日輪の騎士。その悲痛な最期の叫びが木霊して、機械化された彼女の身体が爆散し――炎と煙に包まれながら、スコルの骸は灰燼と化して消滅していく。

 ――敵指揮官を討ち取ったケルベロス達、後は残存しているスコル軍を排除するのみ。
 死闘を終えて尚、休む間もなく武器を手に取り、彼らは再び戦いの場へと足を踏み出すのであった――。

作者:朱乃天 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。