ゆび雷刃突 美人女子大生を狙う

作者:大丁

 施術台にうつぶせになった女性客は、従業員から本日の予約が自分一人なのだと告げらえた。
 大学は春休みでヒマしていたから、久々に来てみたのである。
 簡易な服と下着を身に着け、準備的なマッサージを受けると、従業員はツボ療法の先生がまもなく来るので、と退出した。
 棚ひとつと小さなワゴンがあるだけの狭い空間である。女子大生は、入ってきた気配を施術者のものと勘違いした。
「アチャー!」
 怪鳥でも鳴いたような声がして、背中を一突きされる。女性はのけぞったが、着ていた服が千切れ飛んだとは気が付かなかった。
「アチャチャチャ!」
 続く、連打に心が、何かの階段を登り始める。
 指を突いていたのは、3mもの身長をもつ、半裸の巨漢だったのだ。

「真理ちゃんの想像が当たったのぉ」
 軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)を紹介した。
 ツボ療法のマッサージ店で、罪人エインヘリアル事件が起こると、集合しているケルベロスに伝える。
 罪人エインヘリアルとは、過去にアスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者。放置すれば多くの人々の命が無残に奪われるばかりか、人々に恐怖と憎悪をもたらし、地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅らせることも考えられる。
 虐殺を防ぐには、撃破しかない。
 調査を行った真理から、敵の情報がもたらされる。
「刀剣士のグラビティ、雷刃突を指で行うのです。巧みな指使いで攻めてくるエインヘリアルなのですよ。ゆび雷刃突は、近距離の1体に霊力を帯びた指で、神速の突きを繰り出してくるのです。その結果、服も防御力もピンチです」
 その出現について、冬美が注意点を挙げる。
「現場のマッサージ店は、雑居ビルの1フロアに入っていて、広さそのものは大きめの会議室くらいあるの。ただし、施術台ひとつの個室スペースになるように、カーテンで仕切られてる。どのスペースに罪人エインヘリアルが出現するかは判っていないのよぉ」
 そのかわり、出現の時刻が判明しているのと、1人以上のケルベロスが客として潜入しておけば、一般人の客が直接襲われずに済むとのことだった。
 本物の従業員が退席したあいだに、客を襲う予知になっているので、従業員も直接襲われることはないが、騒ぎが起これば、客の安全を守ろうとするだろう。また、予知に出てくる女子大生も、施術の順番がズレるだけで、他の個室で横になっている。
 襲撃を前もって店に知らせると、営業を取りやめにされる可能性がある。その場合、エインヘリアルは出現しない。襲撃後なら、事情の説明も可能なので、対応・対策を練っておく必要があるかもしれない。
 冬美の説明が終わると、真理は大事な話を付け加えた。
「対策と言えば、ツボ療法のマッサージ店です。着替えや、タオルなどは十分に備えられているのですよ」
 服がピンチになっても、帰り支度に不自由はしない、というわけだ。
「巧みな指使いって、ちょっと興味あるから、みんなの報告を待ってるよ。レッツゴー! ケルベロス!」


参加者
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
除・神月(猛拳・e16846)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
小柳・瑠奈(暴龍・e31095)
カフェ・アンナ(突風はそよ風に乗って・e76270)
 

■リプレイ

●布に囲われて
 女性が仰向けに寝た施術台を、エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)は、見下ろしていた。
 白いワイシャツと黒のズボンは、マッサージ店の制服とは違ったが、従業員にも見えなくはない。
 カーテンとついたてに囲まれたスペースに侵入できているのも、プラチナチケットのおかげだ。
 このまま、エインヘリアルから守ろうと、見よう見まねでマッサージをはじめたのだが。
「今日のお姉さん……ステキですぅ」
 美人女子大生は、艶っぽい声をあげた。
 色々と際どいところに、エメラルドの指が入ってしまって、弓なりにのけぞらせる。
「つ、強すぎはしなかったか?」
「ちょーどイイわぁ~……ムチュ」
 心配になって近づけた顔に、キスまでされてしまった。
「でで、では、ツボ療法の先生に代わる……。カフェ殿、頼んだ」
 ちょうど、その長身の影が立ったので、気持ちよくなってしまった被害予定者の護衛を任せる。
 カフェ・アンナ(突風はそよ風に乗って・e76270)も、プラチナチケットで潜入しており、他の施術スペースを覗いて周っていた。
 仲間の配置を確認するためだ。その、いずれかに敵が出現する。
「はい。……お客さま、準備は整っておいでですね」
「あああ、スゴ、スゴイぃ」
 制服もなにもない。隆々とした器具だけを腰に装着して、ナカまで押した。
 適当な前施術よりも、本番であった。
 見回りを交代したエメラルドが、カーテンの隙間に目をやると、客役で潜入した小柳・瑠奈(暴龍・e31095)が、うつ伏せになって背中を擦られていた。
 服は取り除かれていて、紙パンツいっちょうだ。
 ベッドに押さえつけられた胸が、脇からムッチリとはみ出し、従業員の手が背を上下するたび、弾力を返している。
 瑠奈は視線に気が付いて、合図を送ってきた。
 マッサージを受けながらも、ちゃんと警戒している。仕切りによって視界が効きにくい現場だから、聞き耳を立てているのだろう。
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)も客役で、四つん這いからお尻を突きだすような姿勢を取らされていた。
 簡素な服をまくられ、紙パンツはスケスケである。
 本物の先生は、この場所を担当中だった。
 むしろ小柄な中年女性だったのだが、強い力を込めた指で骨盤を押されると、真理はびゅるっと湿り気を足してしまう。
「ふわ、ソコ、とってもいいのです……!」
「でしょう? 最近、立て続けにムリな行為をしてませんでしたか?」
 真理のギクッとした態度も、隠しようがなく。
「これでまた、全力が出せるようになりますよ」
 もちろん、襲撃への備えまではバレてないはずだ。
 店舗内では中央寄りの施術スペースで、除・神月(猛拳・e16846)は準備マッサージを受け終わったところだ。
「ツボ療法の先生がまもなく来ます。お待ちください」
 従業員は、神月(しぇんゆぇ)の簡易服の乱れを直すと、退出した。
(「さテ、手順どーりなラ、ここいらじゃねーカ?」)
 あえて隙を見せるように、施術台で横になる。
 投げ出した足裏でさえ、気配を感じ取った。ついたての間から入ってきた、巨漢を。
「アチャー!」

●拳法勝負
 怪鳥の声と共に突きだされた指は、しかし神月には当たらなかった。
 真理が、背中で庇っている。
 ピリッと縫い目がほころんだ。感電したような小刻みな痺れが広がると、振動に布地が裂けていき、簡易服は四方に千切れ飛ぶ。
「想像したとおりの攻撃なのです。でも、防ぎきったのですよ!」
 振り返って、小さめの胸を見せる。早くも頂点を固くして。
 真理が、通ってきたために、神月が頭を向けていたほうの、仕切りカーテンが何層にもわたってぶち抜かれている。
 まるで、白い布のトンネルだ。
「おイ、指圧野郎、待ってたゼ。あたしらケルベロスが相手してやんヨ!」
 起き上がって神月は、中華拳法の構えをとる。
 巨漢の半裸は、会話のかわりに叫んだ。
「アチャチャー!」
「ひょおおおォ!」
 指同士を交差させる。
 神月が足を向けていた側の、つまりは罪人エインヘリアルの後ろにあった、ついたてが吹っ飛んできた。
 自分の施術スペースから瑠奈が、駆け付けたのだ。
 零式鉄爪を両腕に装備し、彼女も指先に雷を纏わせて、つきかかった。
 白布は破れ、筋肉質な肩口にめり込む。
 辺りには、ついたての枠のほかに、ひしゃげた衣類カゴも転がる。
 中に入っていたであろう、瑠奈の私服が、セーターにコート、スラックスに下着と散乱した。
 急行の際に蹴飛ばしたらしい。
「マッサージ店で奇声を上げる子にはオシオキしないとね?」
「アチャチャチャ……」
 聞く気も、黙るつもりも毛頭ないらしい。
 3人のケルベロスを相手に、フットワークを利かせ始めた。
 ほうぼうでガタガシャンと設備が、どけられたり、壊されたりする音をたてる。

●戦いの果て
「ああ、お客様がいなくなって……何が起こっているの?」
 小柄な治療師が、ボロボロになったカーテンの囲みでうろたえているのを、エメラルドが呼び止めた。
「先生殿、私はケルベロスだ。この店はデウスエクスに襲撃されている!」
 客の安全は守るから、と自身の避難を促すと、またしてもカフェが来てくれた。
「一般の方たちの避難は任せてください」
 抱っこしている女性は、素っ裸なものの、被害予定者の女子大生だ。ふたりの従業員も連れられている。
「うむ、今日は何から何まで任せきりだな。こちらの先生殿を頼む」
 エメラルドは、白布の迷路に戻った。
 傍らに、ライドキャリバーがついてくる。真理のプライド・ワンが迎えに来てくれたのだ。
 敵が意外に素早くて、小部屋から小部屋へと戦場を渡っているようだ。
 一輪と共に、仲間に追いつくと、神月が荒い息で、ゆび雷刃突と渡り合っていた。
「はぁ、はァ……。心の奥底、骨の髄まデ、あたしのサイキョーを刻みこんでやるゼェ」
「アチャチャチャ、アチョー!」
 エインヘリアルの両手が交互に繰り出され、それぞれに伸ばした人差し指が、神月の胸もとを突き、オッパイの膨らみを露呈させる。
 ぐにぐにとカタチをかえる肉に、さすがの神月も頬を赤らめるが、徐々に巨漢の懐に入り込んでいたのだった。
「ひょおおっ! 至天一孔綺羅星金剛指(シテンイッコウキラボシコンゴウシ)!」
 神月の右手に剣指がつくられ、敵の刺突をくぐりながら、相手の左胸に突き立つ。
 両者の技のキレに、エメラルドと瑠奈は感嘆の声をあげた。
「指での突きをあそこまで昇華させるとは、敵もある意味で優秀な武人なのかも知れないな」
「世の中広いね。素手で雷刃突やったら、自分自身が痺れないか?」
 罪人を評価しつつも、神月が一歩ヌキに出ていたと、確信していた。
 剣指は、心臓を狙ったのではなく、左乳首をこねくり回している。
「アチョッ、ちょっ、ちょっとヤメテ!」
 巨漢は身をよじるが、金剛指の愛撫からは逃れられない。昇り詰めると、腰布の中で情けなくも暴発してしまう。
 一撃に賭けた神月にかわり、瑠奈が前に出た。エメラルドはメディックとして、仲間の回復にまわる。
「我はヴァルキュリア、雷鳴と共に駆け、勇気ある者を選定する使いなり!」
 『雷鳴流勇者選定術(ライメイリュウ・ユウシャセンテイジュツ)』は、雷を身に帯びて、傷ついたものを抱擁する技である。
 すでにじゅうぶん痺れた真理を、逆から刺激を与えて正常に返そうと試みた。
「ひん! あふう、アッ!」
 ディフェンダーとして、何度も庇ううち、彼女もナニカを昇らされており、抱かれた仲間の胸のなかで、はしたなくも繰り返してしまう。
 紙パンツは溶け落ち、治療者の黒いズボンに染みをつくった。
「もう少々、このままでいて欲しいの……ですよ」
「汝の道が切り開かれん事を願う」
 守り続けるように、雷が纏われた。
 真理は、敵の攻撃でイき、味方の回復でイった。
 光る苦無を携えて、瑠奈がエインヘリアルを見上げる。
「面白い技を見せてくれたお礼も兼ねて、私からも派手にイかせてあげないとね。……Hasta la vista!」
 忍者が放ったのは、光と影。
 数本の影苦無が、罪人の手足を縫い留めて、×字の磔刑に処す。トドメに光の一本が、下腹部から刺さった。
「アーッ!」
 ゆび使いは、からっぽになるまで吹き出して、命も果てた。

●営業再開
 四つのお尻を並べて、護りきった充足感にカフェは、大きく息をついた。
 視界が効きにくいなか、移動する敵に対処するため、客の女子大生と従業員、ツボ先生を担いで隠れ回っていたのだ。
「大変な目に合いましたね。お店は仲間が修復するので、もうしばらく待ってて下さい」
「びっくりしたけど、ケルベロスさんのおかげでイイ思いもしたよ」
 美人は、まだして欲しそうな表情を浮かべる。
 従業員や先生でさえ、カフェのモノに物欲しそうな眼をむけるのだった。
 やがて、エメラルドのフローレスフラワーが広がると、破れたカーテンは花びら模様で引き直された。
 その施術スペースのひとつで、なぜか瑠奈がまた寝そべり、神月をまたがらせていた。
「おかげさまで、戦闘でのダメージは残ってないよ。いや、なんだか肩が凝ることが多くてね」
「あたしの指使いも中々なんだゼー?」
 金剛指は、治療にも使える。
 首筋から肩甲骨へと施術を施したあと、脇からはみ出したお肉を掴んだ。
「おいおイー。こんなデカいの、肩こりの原因じゃねーカ」
 後ろからかぶさり、添い寝の位置にもってくると、金剛指は瑠奈の左乳首をこねくり回した。
「あああ、私まで、イカせるの?」
 火が付いたら激しい。
「依頼は成功なのですよ。改めて、お客さんとしてツボ療法をお願いしたいのです」
 真理が、従業員に頼むと、やってきた先生は白衣ではなかった。
「カフェさんから、いいツボを教わったので、さっそくサービスさせていただきます」
 全裸にハーネスを巻き、双方に隆々としたものを生やしている。
「は……はいです?!」
 敵と味方、そして一般人にイかされる日であった。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月7日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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