荒ぶるホットカーペット!

作者:ゆうきつかさ

●栃木県某所
 とある山奥に大量のホットカーペットが棄てられた場所があった。
 その場所は、普段であれば、誰も近づく事が無い、寂しい場所……。
 それ故に、誰にも気づかれる事なく、深い眠りにつく……はずだった。
 そこに蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、ホットカーペットの中に入り込んだ。
 それと同時に、機械的なヒールによってホットカーペットが作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「ホット・ホット・ホットォォォォォォォォ!」
 次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、山を滑り降りるようにして、街に向かうのであった。

●セリカからの依頼
「モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)が危惧していた通り、栃木県某所にある山中でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが現れたのは、栃木県某所の山中。
 この場所は、以前から不法投棄が問題視されており、そこに棄てられていたホットカーペットがダモクレスと化してようである。
「ダモクレスと化したのは、ホットカーペットです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、グラビティ・チェインを求めて攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●栃木県某所
「山の中に、ほっとかーぺっとの、山? ……不法、投棄? 誰か、捨てた……? ゴミの、ように……?」
 兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)は大きなハテナマークを浮かべながら、仲間達と共にダモクレスが確認された栃木県某所にある山道を歩いていた。
 ダモクレスが確認されたのは、山奥。
 その場所は滅多に人が立ち寄らないような場所のはずだが、頻繁に車が出入りしているらしく、地面にはいくつもタイヤ痕が残っていた。
 そのタイヤ痕はダモクレスが確認された場所まで、真っ直ぐ続いているため、ホットカーペットを大量に不法投棄した者達が、車を利用して山奥まで運んでいる可能性が高かった。
 実際に、山中には処分に困ったと思しき電化製品が、あちこちに捨てられており、まるで墓場の如く不気味な雰囲気が漂っていた。
「そう言えバ、もうホットカーペットも使わなくなる季節デスネ。三寒四温の今日この頃、欲しくなる日もまだまだ御座いマス……。それなのに捨ててしまうのハ、何やら勿体ない気もしマスガ……」
 モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)が複雑な気持ちになりつつ、山道を進んでいった。
 山中に不法投棄された電化製品の中には、箱に入ったまま捨てられているモノもあるため、壊れたから捨てたというよりも、在庫の処分に困ったから捨てた可能性が高そうだ。
「これは……酷い……」
 そんな中、ジャスティン・アスピア(射手・e85776)が、大量に不法投棄されたホットカーペットを発見した。
 それは山のように積まれており、雨ざらしになって腐り、異様なニオイを放っていた。
「単独で捨てられているのはよく聞くが、複数というのはなかなかホラーだねぇ。ひょっとして、何処か業者が関わっているのかな? そうじゃなきゃ、あまりにも不自然だよね、この光景……」
 それを目の当たりにしたディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)が、気まずい様子で汗を流した。
 一体、どのような経緯で、ホットカーペットが捨てられる事になったのか分からないが、まるでミルフィーユの如く幾つも層が出来ているため、定期的に捨てられている可能性が高そうだ。
「何とも面妖な……」
 モヱが警戒した様子で、ホットカーペットの山に近づいた。
「ホット、ホット、ホット、ホットォォォォォォォォォォォォォォォオ!」
 次の瞬間、ホットカーペットの山を突き破り、ダモクレスがケルベロス達の前に現れた。
「ホッ・ホッ・ホッ・トォォォォォォォォォォォォォォ!」
 ダモクレスは全身に熱を帯びており、ケルベロス達に対して、怒りの矛先を向けていた。
「ホーホッホッホットットォォォォォォォォォォォォォォ!」
 それは本来、自分の事を捨てた者達に対して向けられるはずのモノだったが、ダモクレスと化したホットカーペットにとっては些細な問題であった。
 それよりも自らの怒りをぶつける相手がいればいいと言わんばかりに、殺気に満ち溢れているようだった。
「蜘蛛の、形、なんだ、ね。糸を、出したり、巣を作ったり、するのか、な?」
 十三が間合いを取りつつ、不思議そうに首を傾げた。
 一見すると、蜘蛛のように見えるが、だからと言って蜘蛛の特性を有している訳ではなく、形だけを模しているような感じであった。
 それでも、動きだけみれば、蜘蛛と酷似しているため、まったく別物という訳でもないようだ。
「人馬形態では炬燵に入れない俺たちセントールでもヌクヌク温まる、いい家電製品なのに、こんな事になるとはな。仕方ないから倒させてもらうぞ」
 その間に、ジャスティンがキープハウトテープを使って、人払いを終えた。
 少し残念な気もするが、ホットカーペットが、ダモクレスと化した時点で、やるべき事は、ただひとつ。
 被害が出る前に、破壊する事を優先しなければならないため、あれこれ考えている暇はなかった。
「残念、だけど、やる、しか、ない」
 そう言って十三がダモクロスを睨みつつ、殺界形成を発動させた。

●ダモクレス
「あなたの、相手は、じゅーぞーたちが、する、よ」
 すぐさま、十三が赤黒い刀身を持つ大太刀・妖刀【月喰い】の殺戮衝動を抑え、和風バニー衣装にも見える霊装姿でウサミミを揺らし、ダモクレスに斬り掛かった。
 しかし、ダモクレスのボディは硬く、傷をつける事が出来たのは、ホットカーペット部分のみであった。
「ホ、ホ、ホットカーペッェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
 それでも、ダモクレスにとっては、お気に入りの一張羅をボロボロにされたレベルで腹立たしかったらしく、ケルベロス達に対してホットビームを放ってきた。
 そのビームは適温ではあったものの、ムサイ親父達におしくら饅頭をされながら、耳元に熱い吐息を噴き掛けられるレベルの不快感があった。
「これは地味に厄介な攻撃デスネ」
 これにはモヱもドン引きした様子で、収納ケース(ミミック)の後ろに隠れた。
「……!」
 その事に腹を立てた収納ケースが飛び跳ねながら抗議したものの、モヱが両手でガッチリと受け止め、自分の顔をガードした。
「ホト・ホト・ホト! カー、カー、ペットットォォォォォォォォォォ!」
 それと同時に、ダモクレスがケモノにも似た機械音を響かせ、再びホットビームを収納ケースにぶち当てた。
「……!?」
 その影響で収納ケースはほんのり暖かくなっており、何となくオヤジ臭くなっていた。
「今日は大事な物を入れてなくてよかったデスネ……」
 モヱが必要以上に距離を取りつつ、収納ケースを何となく励ました。
 だが、加齢臭に全身を包まれた収納ケースは、怒り心頭ッ!
 親の仇と言わんばかりに、怒り狂っているものの、ダモクレスが空気を読まずに襲い掛かってきたため、それどころではなくなった。
「さすがに、この状況は楽観視できないな」
 ジャスティンが違う意味で危機感を覚え、スターサンクチュアリを展開した。
 おそらく、ダモクレスの元になったホットカーペットを愛用していたオトコ達のニオイが染みつき、ビームに影響を及ぼしているのだろう。
 まるで『愛用者の顔が分かるから安心ッ!』と言わんばかりの勢いで、ホットカーペットを利用したオトコ達が十二神将の如く、ダモクレスを守護しているような錯覚を覚えた。
 もちろん、それは単なる気のせいではあるものの、だからと言って生理的に嫌な感覚が消える訳もなく、早く家に帰りたい衝動に襲われた。
「まずは、その、沢山ある、足を、止める、よ」
 そんな中、十三がオトコ達の身体から放たれる加齢臭のバリアを突き破る勢いで、臥待月:狡兎・無形(フシマチヅキ・コウト・ムケイ)を使い、喰霊刀【月喰み】の内から数多の怨霊に術式を乗せて解放すると、ダモクレスの動きを封じ込めようとした。
「ホット、ホット、ホットット!」
 それに対抗するようにして、ダモクレスがホットミサイルを放ってきた。
 そのミサイルは雨の如くケルベロス達に降り注ぎ、まるで汗だくのオヤジ達が抱擁するかの如く勢いで、辺りが加齢臭に包まれた。
 それは単なる気のせいとして片づける事が出来ないほど臭く、この戦いに参加した事を後悔してしまう程の臭さ。
 一瞬『ああ、涅槃が見えるよ、パトラッシュ』と呟いてしまいそうになる程、辺りが臭くなっていた。
「うっ……、これは酷い」
 ディミックが反射的に体を仰け反らせ、俤偲ぶ蛍石(リメンバリング・フローライト)を発動させ、ダモクレスにビームをブチ当てた。
 その影響でダモクレスの動きが完全に封じられたものの、目には見えない沢山の加齢臭が入り混じるようにして、異様なニオイを放っているため、色々な意味で近寄り難い雰囲気が漂っていた。
 だからと言って、ダメージを受ける訳では無いのだが、完全に体の方が拒絶反応を示しているため、結果的に遠距離での戦闘を強いられる事になった。
 もちろん、ニオイさえ気にしなければ、ノーダメージ。
 しかし、『迂闊に近づいてニオイがこびりついたら、どうしよう』という考えが脳裏にチラついているせいで、巨大な壁に阻まれているような錯覚を覚えた。
「……ここで怯む訳にはいきマセン! それに単なるニオイなのですカラ、気にせずダモクレスと戦いマショウ!」
 それでも、モヱは怯む事なく、収納ケースを構えて、ダモクレスに迫っていった。
「……!」
 そのせいで、収納ケースが『えっ? 嘘? 嘘、嘘、嘘ぉー!』と言わんばかりに、ジタバタと暴れているものの、モヱに両側をガッチリと掴まれているせいで、逃げる事が出来なかった。
 そのため、御通夜にも似た状態に陥っており、収納ケースの魂がひょろりと抜け出ているような感じになっていた。
「……それじゃ、一気に、攻める、よ」
 それに合わせて、十三がシャドウリッパーを仕掛け、影の如き視認困難な斬撃を繰り出し、ダモクレスの動力部分を斬り捨てた。
「やっぱり、ニオイは元から断たないとね」
 次の瞬間、ディミックがディスインテグレートを発動させ、触れたもの全てを消滅させる不可視の虚無球体を放って、ダモクレスをこの世から完全に消滅させた。
「何とか倒す事は出来たが……。このまま放っておくのも、勿体ないな」
 ジャスティンが複雑な気持ちになりつつ、ホットカーペットの山を見上げた。
 山積みされたホットカーペットの大半が雨ざらしになって、使い物にならなくなっていたが、全部がダメになっているという訳ではないようだ。
 そのため、根気よく探せば、新品同様のホットカーペットを見つけ出す事も難しくないような感じであった。
「……とは言え、こういう面積を取るものは、自然への影響も大きいし、他に不法投棄されている分も適切に処分しておきたいねぇ。いっそ、軽トラでも借りてこようか」
 そう言ってディミックがホットカーペットの山を見上げ、物思いに更けるのだった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月25日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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