シスター服こそ至高である!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「……俺は常々思うんだ。シスター服こそ至高である、と! だからこそ、俺は此処を選んだ! シスター服が最も似合う場所……ズバリ、教会だ! そして、シスター服を着た以上、清らかでなくてはならない! お前達も手を出すなよ、絶対にだぞ!」
 ビルシャナが廃墟と化した教会に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 女性信者達はシスター服に身を包み、まるで聖女の如く笑みを浮かべていた。
 一方、男性信者達は、女性信者達に尊敬の眼差しを向け、瞳をキラキラさせていた。

●セリカからの依頼
「エステル・シェリル(幼き歌姫・e51474)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが確認されたのは、廃墟と化した教会。
 女性信者達はシスター服に身を包み、清純そのもの。
 男性信者達も、表面上は哀れな子羊と言った感じのようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達の洗脳を解くためには、シスター服が清らかなモノでない事を理解させる必要があるようだ。
 洗脳さえ解けてしまえば、ビルシャナの味方をする事もないため、そのぶん戦闘を早く終わらせる事が出来るだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)
エレス・ビルゴドレアム(揺蕩う幻影・e36308)
リゼリア・ルナロード(新米刑事・e49367)
エステル・シェリル(幼き歌姫・e51474)

■リプレイ

●教会前
「……また見た目だけで本質を見ない教義ですか」
 エレス・ビルゴドレアム(揺蕩う幻影・e36308)は汚れの付いた生活感のある修道着の幻影を纏い、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている教会の前にやってきた。
 ビルシャナはシスター服こそ至高であると訴え、洗脳した女性を教会に集めているようだ。
「シスター服は確かに清純な感じがするけど、シスター服を着たからと言って、誰しもが清純になれるとは限らないものなのに……」
 リゼリア・ルナロード(新米刑事・e49367)が、深い溜息を漏らした。
 だが、ビルシャナはシスター服さえ着れば、純情可憐な乙女になると思い込んでいるようである。
「シスター服は清楚な感じがして素敵だとは思うけど、生半可な気持ちでシスターを目指すと、やっぱり大変だと思うんだよね」
 そんな中、エステル・シェリル(幼き歌姫・e51474)が、自分なりの考えを述べた。
 だが、ビルシャナ達は自らの欲望を満たすため、中途半端な気持ちで、女性信者達にシスター服を勧めているため、色々な意味で手遅れになる前に、手を打っておく必要がありそうだ。
「まぁ、神に仕える身ですから、憧れる方々も多いのでしょうね。……ですが、ビルシャナが布教しているなら、放ってはおけません」
 彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)が、廃墟と化した教会を見上げた。
 教会からは、何とも言えない禍々しい空気が漂っており、欲望全開フルスロットルと言った感じであった。
「……そうですね。ビルシャナの布教が広まる前に、決着を付けましょう」
 花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)が、覚悟を決めた様子で教会の敷地に足を踏み入れた。
 敷地内には色取り取りの花が咲き乱れており、ほんのりと甘いニオイが漂ってきた。
「こんにちは。バチカンの方から来ました」
 そう言ってジークリート・ラッツィンガー(神の子・e78718)が教会に足を踏み入れ、ビルシャナ達に対して自己紹介をするのであった。

●教会内
「なんだ、お前達は……」
 その途端、ビルシャナが警戒した様子で、ケルベロス達を睨みつけた。
 それとは対照的に、女性信者達は天使のような笑みを浮かべていたが、まるで能面の如く張りついており、明らかに作り笑いであった。
「シスター服は綺麗ですし、シスターに憧れる方々も多いとは思いますが、シスターの道はかなり厳しい事は覚悟の上でしょうか? シスターになるには、私利私欲を捨てて、献身的な精神が必要となります。生半可な覚悟でシスターになったつもりでいたら、必ず後悔しますわよ」
 そんな中、紫がビルシャナ達の前に陣取り、シスターとしての道の厳しさを説いた。
「ええ、存じておりますわ」
 女神のような笑みを浮かべた女性信者が、躊躇う事なく答えを返した。
 だが、そこに感情は籠っておらず、予めプログラムされているセリフを吐き出しているような印象を受けた。
「シスター服は確かに素敵ですし、清らかなものに見えるかもしれません。でもそれは皆さんの美化したイメージです。本当の清らかさは服ではなく日頃の行いから来ます。私は定命化した時に保護して頂いた家の関係で他所のシスターの方々にお会いする事もありますが、人々のために色々と苦労をされていて服もすぐ汚れるそうです。神のために日々教会を綺麗に掃除し、迷える子羊達のために手を差し伸べて苦労を共にし、元気よく遊んできた無垢な子供達を抱き寄せる……当然ですね。そのため、服は清らかというよりは、むしろ土臭く汚れています。だからこそ美しく、尊い存在なのです」
 エレスが真剣な表情を浮かべ、女性信者達に語り掛けた。
 実際にエレスの修道服は泥臭く、薄汚れているものの、女性信者達のシスター服は、汚れなかった。
「それは誤解です。シスターは常に清らかにあるべき。決して、穢れる事のない存在……。それがシスターなのです!」
 しかし、能面のような笑顔を浮かべた女性信者は悪びれた様子もなく、『アイドルはトイレに行かない』的な理論でキッパリと断言をした。
「でも、シスター服はすぐに汚れてしまうから、着辛いと思うけど……。洗濯も大変な割には常に清潔を心掛けないといけないし、いっその事シスター服を止めた方が良くないかしら? それに、シスターも他の皆と変わらない、ごく普通の人間よ。シスター服を着ていても、お祈りをするのが面倒だ、とかシスター服は動きにくいなぁ、とか、色々と不平不満を心の中で抱いているものだから……」
 リゼリアが諭すようにして、女性信者達に語り掛けた。
 おそらく、女性信者達はビルシャナのビーム的なモノを浴び、常に綺麗なシスター服を着ているのだろう。
 そうでなければ、納得する事が出来ない程、女性信者達のシスター服は綺麗で、汚れひとつ見つける事が出来なかった。
「そんな事はありません。少なくとも、私達の心は清らかです」
 菩薩のような笑みを浮かべた女性信者が、慈愛に満ちた表情を浮かべ、自分達の正当性を訴えた。
 何やら和の雰囲気が漂っているせいで、違和感バリバリではあるものの、女性信者達に迷いはなく、色々な意味で真っ直ぐだった。
「だからと言って、シスター服にこだわる必要はないと思いますが……。それに、何もシスター服に拘らずとも、他にも私服とかでも可愛いものは沢山ありますし」
 紫が何やら察した様子で、女性信者達に答えを返した。
「いっそ海外の宗教よりも、日本伝統の仏教を始めてみませんか? 例えば、袈裟とか如何でしょうか? 落ち着いた色合いとデザインで、日本古来の風流のある、素敵な衣装だと思いますし、何よりお似合いだと思うのですが……」
 そんな空気を察した綾奈が、菩薩のような笑みを浮かべた女性信者に袈裟を勧めた。
「いえ、遠慮しておきます」
 菩薩のような笑みを浮かべた女性信者が、落ち着いた様子で答えを返した。
 そう言いつつも、『袈裟』と言う言葉に反応したため、何らかの形で仏教に関わっている可能性が高かった。
「そんな事を言わず、着てみるべきだと思うけど……。そもそも、ここは日本。だからシスター服だと変じゃないのかな? 日本人ならやっぱり仏教、そして仏教の女性なら比丘尼だよ! 厳しい修行にも耐える、女性の修行僧の姿は輝かしくて素敵だと思わないかな? 皆も、これを機に、仏教に移り変わっても良いんだよ」
 その事に気づいたエステルが、菩薩のような笑みを浮かべた女性信者に迫り、比丘尼の衣装を激推しした。
「まあ、そこまで言うのであれば……」
 菩薩のような笑みを浮かべた女性信者が、まんざらでもない様子で、比丘尼の衣装を受け取って、隣の部屋に入っていった。
 それを目の当たりにした女性信者達が、驚いた様子で声を上げたものの、どうしてそこまでシスター服にこだわる必要があるのか、まったく分かっていない様子であった。
「お、おい、ちょっと待て! そんなモノを着ようとするな! お前らもボサッとしていないで、アイツを止めろ!」
 ビルシャナが激しく動揺した様子で、女性信者達に声を掛けた。
 だが、女性信者達は、オロオロ。
 冷静になって考えてみると、どうしてシスター服を着ているのかさえ分からなくなっているらしく、頭の上には沢山のハテナマークが浮かんでいた。
「……そこまでです。ビルシャナさんは根本的な部分で間違えています。そもそも教会にシスターはいません。シスターがいるのは修道院ですわ」
 その行く手を阻むようにして、ジークリートがビルシャナの前に陣取った。
「……えっ? マジか?」
 ビルシャナが豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべ、女性信者達を二度見した。
 しかし、女性信者達の反応は、冷ややか。
 『なんだ、このクソ鳥。そんな常識も知らねえのかよ!』と言わんばかりにクールな表情を浮かべていた。
「……とは言え、修道女になりたい方がこれほどおられるとは、喜ばしい限りですわ。歓迎いたします。女子修道院は男子禁制ですわ。そう言う訳で、ビルシャナから離れて下さい」
 そんな中、ジークリートが女性信者達に声を掛け、ビルシャナから引き離した。
 ジークリートの一言で、女性信者達も我に返ったのか、誰ひとりとしてビルシャナの傍に残らなかった。
「ちょっと待て! そこまでだ! 誰も、ここから返さん! お前ら、全員……ここで死ねえええええええええええええ!」
 そう言ってビルシャナが殺気立った様子で、ケルベロス達にビームを放つのだった。

●ビルシャナ
「もしかして、修道服を綺麗にしてくれたのですか?」
 そのビームを喰らったジークリートが、キョトンとした表情を浮かべた。
 多少の変化はあるものの、強いて言えば修道服がキレイになっただけ。
 一言で言えば、ノーダメージのようである。
「い、いや、そういうつもりでは……」
 ビルシャナが動揺した様子で、激しく目を泳がせた。
 だが、ここで退く訳にも行かないため、半ばヤケになりつつ、再びビームを放ってきた。
「豊穣の恵みよ、奇跡の実りよ、皆にその神秘の力を与え給えー」
 すぐさま、エステルが黄金の果実を使い、黄金の果実を宿す収穫形態に変形すると、その聖なる光で仲間達を進化させた。
 その拍子に、エステルの服装がシスター服に変化したが、ジークリート同様ノーダメージ。
 ほんの少し動きづらくなっただけで、戦闘に支障はなかった。
「美しい虹を纏う蹴りを、受けてみなさい!」
 その間に、紫が天高く飛び上がり、ファナティックレインボウを放って、美しい虹を纏う急降下蹴りをビルシャナに浴びせた。
「ぐおっ!」
 そのため、ビルシャナは受け身が取る事が出来ず、間の抜けた声を上げて尻餅をついた。
「貴方のトラウマを、見せてくれるかしら?」
 それに合わせて、リゼリアがトラウマボールを仕掛け、黒色の魔力弾を撃ち出し、ビルシャナに悪夢を見せた。
 その悪夢はシスター服の女性信者達に囲まれ、口汚く罵られる悪夢。
 ビルシャナが何を言っても全否定され、ゴミ蟲の如く扱われているらしく、涙目になりながら、何度も悲鳴を上げていた。
「どうやら、壊れてしまったようですね」
 次の瞬間、エレスが斉天截拳撃を仕掛け、ヌンチャク型如意棒で、ビルシャナの脳天をカチ割った。
「うごご……」
 そのため、ビルシャナは悲鳴を上げる余裕もなく、間の抜けた声を上げ、血溜まりの中に沈んでいった。
「結局、何がしたかったのでしょうね……」
 そう言って綾奈がビルシャナだったモノを見下ろした。
 おそらく、ビルシャナにとって、望まぬ最後。
 不本意な形で命を落とした事もあり、その表情は抗議に満ち溢れているような感じであった。
 だが、ビルシャナが命を落とした事で、女性信者達の洗脳が解け、次々と我に返っていった。
「ん……?」
 そんな中、菩薩のような笑みを浮かべた女性信者が、比丘尼の衣装に着替え終え、まったく状況を理解する事が出来ぬまま、頭の上にハテナマークを浮かべていた。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月20日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。