ここ、東京焦土地帯に一つの陣幕が張られていた。
「ブレイザブリクの攻略には、奴らの力が必要になるか……」
と、一体の声が聞こえてくる。死翼騎士団団長、シヴェル・ゲーデンだ。
「然り、ケルベロスは既にかの要塞の第二層まで攻略しているとの事、このまま攻略が進めば、我ら死神の悲願の達成も可能かと」
シヴェルの声に応えたのは、羽扇を持ち、うやうやしく頭を垂れる人物だった。
「フン、その悲願ごと、ケルベロスに破壊されれば元も子もあるまい」
「兄貴の言う通りだぜぇ?」
すると、白い髭を蓄えた二体が思い思いに口を開く。どうやらその二体は、その考えに同意しかねるようだった。その様子を見ながらも、シヴェルは次の言葉を制する。
「だが、戦力がズタズタにされすぎた。我らの力だけでは、力が及ばぬ」
シヴェルの口調は有無を言わせぬ迫力があった。しかし、羽扇の人物が恐れずに進言する。
「なればこそ、ケルベロスの力が必要になるのです。
奴らはデウスエクスを滅ぼす禍であるが、それ故に、その目的を正しく制御すれば、その隙をつく事は可能」
「正しく制御だと……?」
青龍偃月刀を持った将が言う。気に入らない、と言わんばかりの雰囲気がある。
「ケルベロスの優先順位は『人の命』と『ゲートの破壊』が第一という事です。ならば、互いに利用し合う事が叶いましょう」
「ん……? 良く分からねえ……。結局、どういう事なんだぁ?」
蛇鉾の将に至っては、その言葉の真意を測りかねているようだ。
「わかりました。まずは、彼らと接触せねばなりません。策は?」
知将の言葉に納得したのか、シヴェルは軍議に入るよう、そう言葉を発したのだった。
「さて、みんな集まってくれて、有難うな」
宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)は、目の前のケルベロス達にそう声をかけた。当然、こう切り出す時は、依頼の話に決まっている。ケルベロス達にその準備は出来ていた。
「今回、皆に集まってもらったんは、東京焦土地帯についての予知が出来たからや。ちゅうのも、みんなの調査とかが役に立ったんやけどな」
絹はそう前置きをした後、依頼の内容を説明する。
「まず、据灸庵・赤煙(ドラゴニアンの・e04357)さんの調査で、東京焦土地帯に攻め込んだ死神の軍勢の指揮官たちが『ケルベロスが接触してくるのを待っている』かのような不自然な動きをしているらしいっちゅう事が分かった。
そんで、天月・悠姫(導きの月夜・e67360)ちゃんの予測があって、東京焦土地帯の奪還の為にケルベロスの力を借りようとしているっちゅう可能性も高いみたいやな。
で、どうやら、隠密行動に特化した少数の部隊やったら、少数の護衛のみに護られた指揮官である三体の将に接触する事が可能な状況になってるみたいなんよ」
絹はそう言ってケルベロス達を見渡し、全体に情報が行き渡った事を確認する。つまり、罠である可能性が高いことが分かっている敵に対し、どう立ち回るかという事だ。
誘いにのっての交渉、逆に強襲や不意打ちなど、どういった作戦でも取れそうではある。
「当然、敵はデウスエクスや。新しい情報やと思っても、それがホンマかは分からん。せやから、その情報に価値はあんまり無いやろう。でも、死神の『エインヘリアルから東京焦土地帯を奪還する理由』が分かれば、案外共闘っちゅう作戦も、ありっちゃあありかな。まあ、一時的っちゅう事になるけどな」
死神との共闘。そんな事が果たして可能なのか? そう思うケルベロスもいただろう。
すると絹は、付け加えるように話す。
「そうそう、その『死神がエインヘリアルと戦う理由』については、豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアの・e29077)ちゃんが『東京焦土地帯の地下に死者の泉が存在する』ちゅう仮説をたてとる。
その仮説を真として考えると、エインヘリアルのゲートである『魔導神殿群ヴァルハラ』はここ東京焦土地帯地下にあるっちゅう事になるから、調査の価値はあるやろな」
絹の説明には、あらゆる可能性があった。ただ、動かなければ事は始まらない。ケルベロス達は絹に詳細の説明を促した。
「今回は3チームで動くことになった。さっき言った相手の指揮官は三体。知将と呼ばれる一体と、勇将、猛将と呼ばれる二体や。
敵はうちらケルベロスを誘い出すかのように隙をわざと作っとるから、ある程度隠密行動すれば、接触までは簡単やろう。問題はそこからやな。
もし撃破を目指すんやったら、隙を付いての奇襲で、短期決戦で撃破、撤退の必要があるやろ。
そいで、何らかの交渉を持ちかけるっていう事もできる。まあ、デウスエクスやから信用はできんやろけど、何らかの情報は得られる可能性はゼロやない。ただや、何回も言うけど、相手は嘘なんか平気でついてくるし、約束なんかまあ、反故にされる。それだけは頭に入れといてな。
で、うちらの相手は猛将。蛇矛を持ったごっついヤツを担当する事になってる。その攻撃力は半端やないで。気をつけてな」
東京焦土地帯の戦いは、エインヘリアルが優勢で、死神側は劣勢であるという情報もある。そんな時に、この動きがあった。相手の出方にもよるかもしれないが、相手の策を利用し、逆に此方から策を練るという事は、十分に勝機になる。
ケルベロス達は作戦をそれぞれに考え始めた。
「デウスエクスを信用するってのはまあ、無いわな。でもや、理性が無い相手って訳でも無い。利害が一致した場合、約束を守ることもある。味方やない、けどな。
でもそれには、結構な交渉術が必要やろう。どうやって動くかは任せるから、頑張ってな」
参加者 | |
---|---|
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132) |
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172) |
黒住・舞彩(鶏竜拳士ドラゴニャン・e04871) |
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020) |
軋峰・双吉(黒液双翼・e21069) |
那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383) |
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102) |
ランスルー・ライクウィンド(風のように駆け抜ける・e85795) |
●死神の将
「こんな機会はめったにないからね。きっと成功させたいな」
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)は、そんな事を少し呟きながら、目的の場所へと進んでいた。
ケルベロス達は、絹の予知の通りの場所へと向かっていた。それぞれに目立たない気流等を纏いつつ、廃墟と化した東京焦土地帯に潜伏しているのだ。
「死を蔑ろにする死神なんかと共闘できるわけないと思うけど……。死神の大きな作戦を潰すには、情報も必要だよね」
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)もまた、シルディの呟きに頷いた。
「……と、まだ、あっちのビルの陰ほうがよさそうかな?」
リリエッタはそう判断し、後方にいる仲間に視線で合図を出した後、かつてビルであった建造物の陰へと風のように体を躍らせた。
「死神の将と交渉なあ……」
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)がオルトロスの『リキ』を撫でながら不安な表情を見せた。
「信用できない? だよね。でも、大事なのは情報を持ち帰る事だから、こちらからの誠意を欠く行動はしないでおこう」
すると那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)は、彼女に同意をしながらも、今回の作成の趣旨を、自分に少し言い聞かせるように呼びかけた。
「まずは情報というのをー、引き出すというのがー、重要ですのよぉー」
「そうね。これはチャンスだと思うのよね。この先何が起きるかなんて、わからないわけだし……」
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)と黒住・舞彩(鶏竜拳士ドラゴニャン・e04871)が話すように、ケルベロス達の今回の作戦は『情報収集をメインとした交渉』と決まっていた。約束を取り付ける為ではなく、あくまでも情報収集に特化する。勿論、戦闘になる事も考えて準備はしている。
暫く様子を窺いつつ潜伏していると、唐突に軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)が、全員に鋭い視線のあと、準備はいいか? と、口だけを動かした。
建造物と少し広い道の一画に、5体程の死翼騎士団の護衛兵。そして、その中心に大きな体をした死神の姿を発見した。片手に蛇のようにうねった矛を持ち、周囲を威嚇するように見ている。
「ああ」
そう答えたのは、ランスルー・ライクウィンド(風のように駆け抜ける・e85795)。ケルベロスとしては初陣となる。
「それに、この程度で見つかるようじゃ死神に笑われちまうからな」
ランスルーは、そう言って一歩だけ踏み出し、声を出した。
「お初にお目にかかる。我が名はセントールの騎士、ランスルー・ライクウィンド。この場にてまみえるとは光栄の至り」
声を風にのせ、建造物の間に伝播させる。すると死翼騎士団の護衛兵は一斉に武器を構え、戦闘体制を取った。だが、それを手で制した矛を持った死神が一歩前に出て、応えた。
「俺は死翼騎士団の将だ。ケルベロスだな?」
死神はそう応え、問いかけてきた。するとランスルーは続けて、声を張る。
「さて、ご存じの通り我らセントールはエインヘリアルの裏切りに遭い壊滅後、今はこうしてケルベロスの手によって解放され、かねてより復讐戦を挑みながらゲートを目指し戦いを続けております。
そこへきてエインヘリアルと戦う騎士団がおられると聞き及び、何やら不可思議な動きありとの報告を受けこうして確認に赴いた次第。
いまだ干戈を交えぬには何か理由がおありのはず。如何か?」
すると少しの時間の後、声が続けて聞こえてきた。
「話がある。まずは出てきてもらおうか!」
その声は、勇気のない者であれば足がすくむような威圧感があった。だが、潜伏しているケルベロスに、その勇気がない者などいない。
「そういうことであれば、此度は腹を割って話し合えれば幸甚にて」
ランスルーがそう返す。
「お呼びみたいだね。じゃあ、行こうか」
摩琴が言うと、ケルベロス達はそれぞれに頷き、気流を風に乗せて開放し、姿を堂々と明らかにしたのだった。
●思惑の交錯と
ケルベロス達の目の前には、巨大な死神の姿があった。体中から発せられる威圧感は、周囲の景色を揺らがせているように感じる。
「呼んだ……よね?」
シルディはその威圧感に気圧される事無く、ただ真直ぐに問いかけた。
「そうだぁ。お前達ケルベロス用がある……。確か、共闘……しねぇか? という事らしい」
その死神の言葉は、少し要領を得ていなかった。
(「明らかに本位じゃないみたいだね……」)
死神の様子から、その事をいち早く察知したリリエッタは、此方の予測通りである事を、仲間達にそっと知らせ、リリエッタ自身は周囲を警戒する。予測通りなのであれば、手筈通り事を進めるだけだ。
「何点か質問があるんやけれども……」
まず最初に朔耶がそう切り出した。
「まず、我々は貴方を何とお呼びすればよろしいですか?」
あくまでも丁寧に。作戦の遂行の為に此方に乗せる。そういう目的があった。その目的を達成する為には、相手の状態を確認する。その初手である。
「俺は『猛将』と呼ばれている」
すると死神はそのまま自分の呼び名を答えたのだ。朔耶は、あっさりとまあ、と感じながら、言葉を続ける。
「では猛将殿、一つ失礼があると困るので、答えて欲しいんやが、死翼騎士団の団長殿の性別を教えて欲しい」
猛将は、朔耶の問いの真意が全く分からないのか、首をかしげながらも答える。
「女だな。だが、それがどうしたんだぁ? おかしな事を聞くもんだな……」
シヴェルの性別は女性である。これはヘリオライダーの予知から朔耶が予め確認していた事となる。
(「なんやこいつ……ひょっとして、見た目通りちょろいんか?」)
そう思いながらも、笑顔で礼を返す。もし嘘であれば、それなりの策を講じる必要がある。だか、この死神はそういった素振りをまったく見せない。
「有難う御座います猛将殿。では、続けて他の者からも、何点か質問がありますので、よろしくお願いしますね」
そう言って朔耶は、ランスルーへと視線を移した。
「さっきの声の主……か」
猛将はランスルーを一瞥し、それだけを口に出した。
「先ほどは此方の声に応えていただき、感謝しております。ですが、私めに難しい話はわからぬ故、お話中はその場に控えておきます」
ランスルーはそれだけ言い、後方へと下がっていく。
「一つだけ。確認しあわなければいけない事があるわ」
そう切り出したのは舞彩だった。
「私は黒住舞彩。猛将殿、まず私達はそれそれ、ただケルベロスの一人になるわ。そちらと共闘と言っても、すぐに決めれるわけじゃないの」
「何が言いたい?」
「そっちも、死神の中で上がいないって程に偉くないでしょう?」
「……」
「こっちも同じ。ケルベロス全体と話さないと、確約はできないわ。でも、私としては、利のある話に思えるし、仲間の説得の為に、もっと教えてもらえないかしら?」
舞彩の話は、お互いを確認する為に、情報交換が必要。と持ちかけているのだが、当然何処までが本当かは分からない同士である。元々、お互いに嘘であろうが、マイナスは無いのだ。
「決定権……そんなものはないな」
猛将は顎に手をあて、少し考える素振りを見せながらそう答えた。
「じゃあ、今度はボクから。ボクは那磁霧・摩琴。キミたちはボクたちケルベロスが協力する場合、どういう見返りをしてくれるのかな?」
丁寧に名乗りつつ、警戒は解かない。だが、こちらは少し話を聞く用意がある。それをほのめかす。
「あと、脅しは論外だよ? キミ自身はどう思ってるの?」
すると猛将は、少し気だるそうにしながら返す。
「さあな。そっちの利益はしらねえ。それに、それは俺が考える事じゃねえ」
摩琴の意図は、どこまでの情報を持っているのか、そして猛将の立場を知るためだった。それを言葉のなかにいれこんでいたのだが……。
(「あー、どうやら脳筋みたいだね。騙そうという気もない。それに、本当にそんな立場じゃないのかな?」)
摩琴は、面倒くさい話だと思っていることを隠そうともしない猛将に、笑顔で礼をしつつその場を双吉に明け渡す。
「じゃあ、こっちが共闘するために、幾つか質問するぞ。まず、お前達にエインヘリアルと戦える力があるのかということと、その為の策があるかどうか。
具体的に、どうブレイザブリクを攻略するつもりなのか。あと、想定されるエインヘリアルの戦力と、攻略において双方がそれぞれどんな役割を担うか。そういった事だな」
すると猛将は、苛立ちを持った言葉で双吉に答える。
「さっきのヤツにも言ったが、策に関してはしらねえし、興味もねえ。
だが、俺達だけでアスガルドのゲートは破壊できねぇだろうな。……エインヘリアルもデスバレスを破壊できないのだから、お互い様だな」
最後に猛将は、少し口角を上げて言い放った。
「じゃあさ、ブレイザブリク浮上前後にキミ達とエインヘリアルで何があったのか知ってるかな?」
そう尋ねたのはシルディだった。シルディは何とか話の糸口を掴もうと、ブレイザブリクの情報を持っているのかを素直に聞いた。
すると、猛将は少し思い出すかのように遠くを見るが、暫くしても答えは返ってこない。
「ボクの質問の仕方が悪かったかな? エインヘリアルにとって、ここが重要ならもっと前に浮上させてたんじゃないかと思うんだけど、なんで今だったのかなって。
……もしかして相手が急に約束を破ったとか?」
そんなことを考えているんだ、とシルディは続けた。すると、猛将は、……確か。と、前置きをして答えた。
「ケルベロスからゲートを守るための行動だそうだぜ。そんな理由だったはずだな」
猛将の言葉の真意はわからないが、嘘をついているようにも思えなかった。そして、その態度から、本当にそう言ったことに興味が無いのだと、シルディはそう感じた。
「一つだけ、忠告というかさ、念のために言っておくけど……」
次にリリエッタが周囲への警戒を解かずに、言葉だけを投げ掛ける。
「例え共闘するとしても利害が一致している間だけだよ。敵の敵が味方だなんて思わないことだね」
「ふん、当たり前な事だ。何を言うのかと思えば……」
「いや、ハッキリはさせておくべきだしね。裏切りたければ裏切ればいいよ。ただ、リリ達ケルベロスを出し抜けると思わないことだね」
リリエッタはそれだけ言った。そしてまた、少しの沈黙が流れた。ケルベロス達の質問の答えは、大体が予想できたものだろう。
これ以上、情報は出ないのか。そう思った時、フラッタリーが呟いた。
「このやり方に見覚えがー。やはりイグニスという方がー、絵図を描いてますわねぇー」
この言葉にピクリと猛将の体が動いた事に、双吉は見逃さなかった。
(「イグニス! やはり、関係しているのか!?」)
猛将が反応したのは、その一瞬だけだった。
「しらねーな。そういうのは、他の奴に聞け」
そして、それだけを言う。
(「少し、かかりましたでしょうかー。イグニスと言えば復活、ですからねー」)
フラッタリーはそう言って、それ以上の言及は避けて、そうですかー。わかりませんかー。とだけ、言葉を繋いだのだった。
●手合わせ
情報はもうこれ以上出てこない様であった。様々な問いかけをしても、猛将の返事は知らない、の一点張りだった。
「話はそれだけか?」
「そうだね。ボク達の用事は済んだかな。舞彩も言ったけど、この話は持ち帰らせてもらうよ」
摩琴はそう言って、話を締めくくろうとした。すると、猛将は己の槍をぶんと、水平に構え少し前かがみになった。
「これで終わりって事はねぇよな」
「戦うのかい?」
「そうだな。少し、手合わせといこうじゃないか?」
「いいけど、長くはダメだよ?」
摩琴がメンバーに目配せをして、武器を手に取った。ケルベロスの準備は出来ていた。絹から話を聞いた時から、予測できた事だった。
「おう……お前達はもういい」
猛将は、そう言って部下を撤退させていく。
「あらー。戦いにー。なってしまうんですのー?」
フラッタリーはそう言いつつも、すかさず紙兵を撒いていく。
「まったく。たこ焼きでも焼こうかと思ったんだけど……」
そして舞彩もまた、狙いを澄ます様に目を細める。そして、双吉がすっと前に出た。
「なあに、ちょっと揉んでやるだけよぉ!」
ブン!!
最初に放たれたのは、上段からの大きな一撃だった。矛を分かりやすく振りかぶり、ただ振り下ろす。
ゴッ!!
それを双吉は、袖に隠していた惨殺ナイフ『火花小柄』で受け止める。その力の強さに、全身で受け止めなければ、吹き飛ばされそうである事を悟りながら、双吉は耐え切った。
何度か打ち合った後、初めは軽い様子だった猛将だったが、次第に言葉に熱を帯びる。
「はっはぁ!! お前等、つえーな!」
猛将が次に打ち放ったのは、矛による真空の刃だった。
前衛に打ち放たれた刃を、フラッタリー、リキ、双吉、シルディが受ける。だが、その切れ味は、最初のような手を抜いた空気とは違い、本物の力だった。もし、何か他に傷を受けていたなら、更に大きな傷となっていたはずだ。
すぐに朔耶と、摩琴、ランスルーが回復させていく。
「そうだよな。デウスエクスはそうでなくちゃ!」
ランスルーは思わずそう叫んだ。戦いが本格的なものになっていく。
ケルベロス達は、あくまでも防御に重きを置いた。その為、敵の一撃の力は大きかったが、すぐに対処、そして対抗策を繰り出すことができた。
力の差はほんの少しだけ、ケルベロスに傾き始めた。だがその時、摩琴が全員に聞こえるように、声を出した。
「ストーップ! はい、ここまでだよ!」
全員が戦いへの没入していくタイミングだった。
「長くはダメって言ったよね? 潰し合いじゃないから」
摩琴の言葉は、ケルベロス達に冷静さを取り戻させるには、十分だった。
「そう……ね。今日は話を聞きに来ただけだもの」
舞彩は自分自身に言い聞かせるように、そして全員に納得してもらうように呟いた。
「リリ達の力は、まだまだこんなもんじゃないけど、力がある事は示せたんじゃないかな?」
リリエッタはそう言って、『銃身改造デスバイリボルバー』の構えを解いた。
手合わせはこれで終了だった。猛将はまだ戦いたいようであったが、攻撃をしてくる様子は無かった。
ケルベロスが一人一人この場を離脱していく。最後に、シルディがそうだ……。と、振り返った。
「あの……ボクはね。皆が地球に来る原因のピラーの故障の問題を解消してね。住み分けしていけたらって思うんだ。その為に話し合って協力してあえたらって。
キミは……どう思う?」
返事は無かったが、彼の本気の言葉だった。
こうして、ケルベロス達はこの場をあとにした。
この遣り取りが、今後どうなって行くのか。
それは誰にも分からないままで。
作者:沙羅衝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年3月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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