大阪地下ワーム伐採戦

作者:のずみりん

 それは深く、静かに迫っていた。
 広く深い大阪の街の更に下方。池の水を抜くように、するすると土が、砂が飲み込まれていく。
 ゆっくりと空洞が容積をましていく。
「ギ……」
 その中心にあるのは、二股に分かれた尾をもつ巨大な芋虫。
 その口から伸びる触手たちが螺旋を描くように振り回され、シールド掘削機さながらに地面を飲み込んでいく。
 やがて十分に空間が開かれると、その通路を抜けて奇妙な人型が飛び出した。樹人、あるいは蔦人。
 振り回す手が空間を削り、まかれた種が根を網目のように張り巡らせていく。
 深く、静かに、大阪の地下は攻性植物の拠点と化しつつあった。

「大阪城ユグドラシルに動きありだ。奴ら、次は地下から来るつもりだぞ」
 この地球上で人の目が最も届かぬところは深海と地下だと、リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は、大阪城周辺の地下鉄の状況を厳重に監視していた君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)の報告をケルベロスたちに渡す。
「彼が気付いてくれなければ危ないところだった……大阪で最も深い位置に大阪ビジネスパーク駅という地下鉄の駅があるが、そこで陥没事故が起きてな。そこでこの痕跡が見つかった」
 リリエが示したのは巨大な空洞。そこに予知されたのは二十メートル近い巨大なワームと、樹人めいた護衛の姿。
「この地下侵攻用の巨大攻性植物『プラントワーム・ツーテール』と護衛の『スロウン』、これを早急に排除しなければ大阪の地下は攻性植物に牛耳られてしまう」
 幸いというべきか、大阪の人間の世界は深く、広い。敵の侵攻ルートは地下鉄路線のすぐ下であり、発破で地面をぶち抜けば、掘り進むプラントワームたちを奇襲できるはずだ。

「発破の許は大阪市交通局からもらっている。そうそう崩れる造りは遠慮なくやってくれ」
 勢いよく言いつつも、ただし……とリリエは補足する。
 掘削中の地面はともかく、それを進める攻性植物はデウスエクスであり、落盤や発破でダメージを与える事は出来ない。
 ケルベロスたちが掘削現場に乗り込んで、グラビティで撃破する必要があるわけだ。
「デウスエクスは『スロウン』たちが八体、『プラントワーム・ツーテール』を庇うような布陣を引いて芸益してくる。どうもこのワームは攻性植物でも貴重なものらしいな」
 プラントワーム・ツーテールはメディックの位置にいるが、接近された場合の体当たりと前衛に傷を塞ぐ粘液を撒くくらいで、戦闘力は高くない。
「問題はこちらの……スロウンという攻性植物らしき相手だな」
 リリエが調べたところではエインへリアルが鹵獲、使役していたという攻性植物だが、どうやら大阪ユグドラシルの同盟により攻性植物の戦力に復帰したようだ。
「こちらは情報があまりないが……見た目や予知の動きを見る限り、攻性捕食やストラグルヴァインといった攻性植物の一般的なグラビティで攻めてくるようだ」
 一体一体は大したことのない戦力のようだが、数が数だけに厄介かもしれない。
 ワームを優先するか、まず護衛を蹴散らしていくか、作戦方針は決めておいて損はないだろう。

「今回の一見、間一髪ではありますが、敵の動きを察知できたのは幸運だったとソフィアは考えます」
 鎧装を穿いたソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)は言う。
「グランドロン城塞が破壊され地上の動きも弱まっている今、この地下からの一手を退けられれば反撃の機会もきっと」
 そのためにも、まずは地下に潜むワームの伐採だ。


参加者
ヴィヴィアン・ローゼット(びびあん・e02608)
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)

■リプレイ

●いざ、地底へ
 地底深く、大阪市営地下鉄の路線に爆轟が響き渡る。
「オォォォォォ! 耳がビリビリッとしたゾ!」
「ざ、残響が……予想以上です……」
 グラビティ以外のダメージを受けないケルベロスだが、爆音に耳が痛い感覚はもちろんある。
 大穴を前にはしゃぐアリャリァリャ・ロートクロム(悪食・e35846)と、まだふらついた様子のソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)はそれぞれに退避した横穴から顔を出した。
「爆薬での穴開けはかっこいいけど、よく響きますねぇ……」
 準備に設置にと手を貸してくれた愛柳・ミライも、フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)と共に耳を抑えて頭を振る。
 耳と声はアイドルの命。防音はしっかりしているが伝わる衝撃は、その威力と結果を想像するに余りあった。
「これは飛び込んだ先の連中も気づいてますかね……」
「で、ござるなぁ。まぁ今宵は忍びなれど忍ばぬ時。SPを引き連れVIP待遇の攻性植物にレッツパーリィでござる!」
 北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)の警戒した声に、HAHAHA! と、楽しそうなカテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)。
 個性的な仲間たちに気後れながらも、と計都はまったくだ……と、飛び込むライドキャリバー『こがらす丸』のライトをロービームに入れ、ゆっくりと開いた侵入口へと足を入れる。
 カテリーナもまた同じだ。さて準備は出来たと声を落とし『局地戦用光源内蔵型追加装甲』からLEDライトを細く絞っていく。
 慎重になるに越したことはない。ここから先は敵の世界だ。

 TNT爆薬が爆破させた地下鉄路線の向こうには、明らかに地下鉄とは違う空気の巨大な空間があった。
「攻性植物の掘削跡を確認……敵影は……」
 マフラーの先端がほつれるようにピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)からナノマシンが散布され、空間に広がっていく。
「この壁……ワームの粘液でしょうか」
「うぇっ!?」
 フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)のかざしたライトが『アメジスト・シールド』ごしの薄紫で照らし出したのは不自然に艶やかな薄茶の壁面。
 質感を確認する彼女にヴィヴィアンとが思わず声を出す。
「ここはもう『舗装済み』ってこと?」
「あるいは真っ最中かもな」
 それを為したものを探し、ヴィヴィアンは『特製ハンズフリーライト』を壁から中心部へと走査する。
 ボクスドラゴン『アネリー』が唸り声をあげたのは、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)の指差した先。
 洞窟の壁面がただの土塊にかわる境界線上、空間中央をぶちぬいた巨大な柱……柱?
「うそ、この柱みたいのが……?」
「そのようだ……離れろ!」
 エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)の驚きに呼応するように、柱に見えたものがぐしゃりと歪む。
 ティーシャの声にケルベロスたちが侵入口を飛んだ瞬間、引き抜かれた先端がびちゃりと粘液をぶちまけた。
「今度はデッカイお好み焼きカ!」
 アリャリァリャがそう例えた粘液の大元、をばらまく先端は自然のものとはおよそかけ離れた無数の触手が伸びる口。
 身をくねらせて巨体が半回転すれば、それはもう柱などではない。芋虫めいた腹部を見せたそれは正にワームだった。
「こないだのチョコレイトソースといい、流石大阪ダナ!」
 更に無造作に切り払ったチェーソー剣が迎撃した『もの』にげっそりとエヴァリーナは声を吐く。
「シティオブ食い倒れオーサカはホントの地下鉄駅中グルメも美味しかったんだろうなぁ……」
 その蔦はワームの触手ではない。ワームの滴らせる粘液をくぐり、踊るような足取りで闇から染み出す樹木めいた人影。
「『プラントワーム・ツーテール』および『スロウン』八体を確認……擬似螺旋炉出力、第一戦闘態勢に移行」
「ダイナミックこんにちはケルベロスでーす! 草さんならお日様に当たって光合成しなきゃダメだよー」
 ピコの『増設型擬似螺旋炉』が出力を増幅させるなか、エヴァリーナも皮肉めいた挨拶と共に祝福の矢をティーシャたちに放っていく。
「出力臨界、起爆します」
「お願い! これ以上の侵攻、絶対に食い止めなきゃ!」
 触手がケルベロスたちを捕えるか否かの射程で炸裂するブレイブマイン。
 極彩色の炎をBGMにヴィヴィアン・ローゼット(びびあん・e02608)は『藍に宿る月の夜想曲』を奏でた。
「月よ その光は淡く白く 悠久の調べを運ぶ 今宵 魔法をかけてくれるなら……♪」
 スロウンの蔦をかわすステップに乗せたアップテンポアレンジの夜想曲が空間を満たしていくなか、フローネは力強く『アメジスト・ブレイド』を振り抜いた。
「地下からの侵攻とは考えましたが……ここで、止めさせて頂きます!」
 伸びる蔦を、触手を払う横なぎ一閃。
 斬撃の軌跡が地底を瞬間、薄紫に染め上げた。

●地の底を蠢くもの
 フローネに切り払われたスロウンの傷口がどす黒い体液を噴出させる。
「っ、これは!」
 振り抜いた勢いで転回、構えた『アメジスト・シールド』のビームに音を立てて体液が爆ぜる。
 およそ地下に不似合いな葉の緑を染めながら、スロウンの振り回される蔦がにじみ出た体液を飛沫とまき散らす。
「気を付けろ、毒液だ!」
「毒……!」
 いよいよかわしきれぬ範囲にふりまかれる体液へ盾をかざそうとしたソフィアは、後詰めに当たっていた相馬・泰地の警告に咄嗟で身を反らす。
「これは……!」
 泰地の『巨人の足』が放った震脚の衝撃が飛沫ごとスロウンを弾くなか、彼女はその威力を見た。
「ぬぅっ、これが話に聞く毒遁の!」
 毒液の飛び散った地面に壁、更には僅かに撥ねたソフィアの鎧装さえもスロウンの血色が深々と浸食した様子にはカテリーナも唸る。
 攻性植物の毒は想定済みだが、それでもこれはかなり強い。
「数も多いし、かわしづらいし、塵も積もればだね……その前に流すよ!」
「頼む!」
 次々と振るわれるスロウンの蔦と毒液が、『機巧刀【焔】』で切り払う計都の『グラビティアームズ』に音を立てて弾ける。光学迷彩外套『アクアカーモ』をも外套にしのぎ、エヴァリーナが構えるは薬液の雨。
「後衛にプラントワーム・ツーテールがいますが、この毒蔦に背を向けるのは危険です」
「作戦通り、まずはスロウンから叩くぞ!」
 メディカルレインをくぐり抜け、ピコとティーシャが突進する。
「アネリー、御願い!」
「きゅっ」
 解毒はメディカルレインで、癒し切れぬ負傷はヴィヴィアンとボクスドラゴン『アネリー』がそれぞれのヒールで補う。
 属性を纏い、ピコの『母のユニット』が頭部センサーを通した指令に高機動形態をとる。ティーシャの鎧装には共生するオウガメタル『カリュプスレベリオン』が彼女の闘志に答えた。
「切り裂かせてもらう!」
 プラントワームの前に敷かれたスロウンたちの防御陣形を粉砕するキャバリアランページ。
 ピコの展開した『多重分身の術』の残像も加えた圧倒的な機動力が敵防衛ラインをズタズタに切り裂くなか、今こそと計都は愛騎と共に飛び出した。
「ラインを上げるぞ!」
「おォッ! 全部喰っていいカ!? 食うぞ!」
 分断されたスロウンの一体ををアリャリァリャが捉える。猛烈に振るわれるチェーンソー剣の連撃が破塵を炎と化して木人を焼く。
「ダイ、コン――おろーし!!!!」
 完成する『名物・大魂颪焼』、その『おかわり』はまだまだ控えている。

●蔦壁を切り裂いて
 キャリバースピンの勢いを載せた喰霊斬りがスロウンたちの蔦を切り裂き、後ずらさせる。
 撃破一体、他も相応に……その時、木人たちが初めて声を上げた。
「オォォォォォ……!」
「オォォォォ……」
 それは声というよりは鳴き声だろうか。
 応じるようにプラントワームが巡らせてくる触手と滴る粘液を咄嗟、計都は『機巧刀【焔】』で払い受ける。
「なるほど、接着剤か……!」
 師から受け継いだ喰霊刀の刃を見れば、粘液は侵入時に見た壁面を思わせる薄茶で刃先を鈍らせている。
 スロウンたちに穿たれた傷痕を塞ぐプラントワームの粘液に、計都は敵の意図を察した。
「だが、この程度」
 計都が機巧刀のトリガーを引けば粘液は炸薬の衝撃に崩れ、残るは傷一つない炎に似た刃文。
 補修粘液は範囲こそ広いが、そう頑丈なものでもなさそうだ。
「シールド工法のアイデアになったフナクイムシは、木材を食い進みながら石灰質の粘液で固めて巣穴を作るそうです。恐らく、このプラントワームも」
「ならば刻んで釣り餌にしてやるでござるよ!」
 ソフィアのどこから仕入れたかの知識に対し、カテリーナの答えは至ってシンプル。
「読者サービスにはマニアックに過ぎるが、いざ尋常にマッパになれい!」
 それは大回転と共にスロウンたちへと放たれる、物理法則を超越した手裏剣の雨。
 古の忍びに曰く、一発の手裏剣でダメなら千発を放つべし。補修されるなら、それより早く打ち砕けばいいだけだ。
「質問です。マッパとは?」
「素っ裸って……素っ裸だね、うん」
 ヒビいったスロウンの一体に螺旋氷縛波を叩き込みながらのピコの疑問に、ヴィヴィアン答えて曰く。
 庇い受けたスロウンの蔦触手からは、生い茂る緑がすっかりと散らされていた。
「HAHAHA、マッパ改め丸ボーズの術でござる!」
 無論、破くのが服でも表皮でも、カテリーナの秘術が衰える事はみじんもない。
 補修粘液ごと生皮剥がされたスロウンたちの幹に、エヴァリーナは容赦なく殺神ウイルスを食いつかせていく。
「もう光合成できなくなっちゃったね……でも地下に引きこもってたら、どのみちしてない?」
「エインヘリアルが鹵獲していたそうですし、私たちの攻性植物のように形態が少々異なるのかもしれません、ねっ!」
 彼女と掛け合いながら飛び上がるフローネの『ダイヤモンド・ブースター』が一気にワームへと進路を詰めた。
 白銀のダイアモンド・フロストに追加装備された黒光るパワードユニットがグラビティを噴射、放たれるレガリアスサイクロンの暴風が追いすがろうとするスロウンを二体をまとめて砕く。
 今こそ勝機。
「残り半死二つ、先に本命にいくぞ!」
「ウチもだ! 食べるゾ!」
 もはや死に体のスロウン二体を残し、『カアス・シャアガ』重砲を打撃モードに構えたティーシャは後衛のプラントワームへと飛び込んでいく。
 そこに続くアリャリァリャが取り出したのは真っ赤に染まった『ボルトキムチ』、上質なトウガラシでじっくり漬け込んだ『激辛』属性。
「隠シ味、だゾ!」
 炸裂するボルトストライク。プラントワームの『節』に撃たれた激辛ネジが、跳躍したティーシャのドラゴニックスマッシュに叩きこまれて深々とめり込んでいく。
 叫ぶように、ワームの巨体が大きく暴れた。

●プラントワーム討伐戦
 全長二十メートルに及ぶワームのもがきに、地下道は揺れに揺れた。それでもなお崩落を起こさない強度はさすがデウスエクスの陣地構築といったところか。
「好き勝手に掘り進んでくれちゃって……見てなさい、逆にこっちが攻め込むための糸口にしてやるんだから」
 ボクスドラゴン『アネリー』のボクスタックルと共にスターゲイザーをさく裂させたヴィヴィアンは、押しのけられたプラントワームの後方を睨み、見えない彼方に宣戦布告を呟いた。
 無論、有言実行のためにはまずこの植物の工兵たちを叩きのめさなければ、だが。
「ナノマシン残量が枯渇しつつあります。残敵は後方で掃討しますので、クラッシャーの方はワームを」
 状況は優勢なれど、余裕はない。ピコは既にマフラーの大半を使い切り、引き抜く『忍者刀【紅竜鱗】』の背部ラッチも露わとなっていた。
「お願いします。ソフィアさんは、ピコさんを」
「任されました、ピコ殿の支援に回ります」
 ダイヤモンド・ハンマーへと換装し突入するフローネの後詰めから、ソフィアは両手のゾディアックソードにスターサンクチュアリを描かせる。
 結界の加護を受け、ピコの忍者刀から打たれた螺旋氷縛波が迎撃するスロウンを蔦触手もろともに凍結破壊。苦し紛れに振り回されるプラントワーム・ツーテールの名の由来の尻尾が、スロウンだったものを更に粉々に砕いていく。
「共食いカ? 行儀悪いゾ!」
「もっとも拙者らも他人事ではないでござるな、ハァーッ!」
 一応気にしたのか、どうか。叫ぶアリャリァリャとカテリーナが壁面を三角飛びに身をかわす。二人の足場を薙ぎ払い、打ち砕く尻尾。
「見た目ほどの威力ではないですが、このまま暴れまわれるとさすがに……っと!」
 挟撃する計都が言った傍からの落石。『強襲用追加スラスター』を吹かせてかわす彼の傍ら、不幸にもつまづいたスロウンを『こがらす丸』のデットヒートドライブが容赦なく跳ね飛ばした。
「これで残り一つ……あと一押し、いけますか!?」
「届かせますよ……!」
 計都の声に応えたのはフローネ。切り離したアメジスト・シールドをダイヤモンド・ハンマーへと叩きつけ、そのまま押さえつけるようにプラントワーム・ツーテールの横顔へ。
「よーしいきましょう! ハンマーでがつーんと!」
「ミライさん……いきます!」
 拘束されたプラントワームに構えられるのはダイヤモンド・ハンマーと、ミライの『クッキーちゃんハンマーモード』。
 二人がかりの『紫黒金剛撃』が長大なプラントワームを救い上げるように天井へ叩きつけ、貼り付ける。
 を引きはがしながら自重で落ちだす瞬間、計都が飛んだ。
「こがらす丸、ストライクフォーム!」
 より正確には、ライドキャリバー『こがらす丸』と共に。捻り込んだ『レイヴンズコア』の指令に、鴉の大脚へと変形するサーヴァントを押し込むように、計都の右足が接続。
「これが……俺達の精一杯だッ!」
 緩降下の機動での飛翔蹴りがプラントワームの口へと飛び込み、そのまま二つに裂いて飛び出していく。
 穿たれた傷痕は正に『凶鳥の一撃』。断末魔の体液を振り払い、サーヴァントと主が着地した後ろにデウスエクスの動く姿はなかった。

 やる事を終えた後は早々に引き上げるのみ。
「退路を確保しました、お急ぎください」
「ウチはおかわりいいんダけどナー……」
 協力者たちと潜入口を確認、固定したソフィアに、食い足りないといった顔のアリャリァリャをヴィヴィアンがそっと制する。
 その思いは彼女もまた強いものだったから。
「今は退こう、この向こうは大阪ユグドラシルか。それに近い場所のはずだから」
「攻め込むにしても万全を期して、だね」
 エヴァリーナに異論をはさむ者はいない。
 上りながら最後、ヴィヴィアンは穴を振り向き見る。
「必ず開放しに戻るから…そう遠くないうちに」
 誓うような一声は洞穴の彼方へと消えていった。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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