植物蟲の溶解液が地下を征服する!

作者:大丁

 蟲は、何股にも別れた触手から、溶解液を分泌した。
 岩盤がベトベトのグズグズになると、触手先端にあいた口からムシャムシャ喰うことで、掘り進む。
 地底世界が、このプラントワーム・ツーテールによって広げられているのだ。
 できた空洞を、あとからついてくる10体の人型植物体は、スロウン。護衛の兵士だ。
 策謀は、深く静かに進行していた。

「大阪城の攻性植物勢力が、城の地下にでっかい空洞を作ってね。拠点を広げてるって、判ったのよお」
 集合したケルベロスたちの前で、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は、情報を提示した。君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)の調査によるものらしい。
「そうそう。眸くんは、大阪城周辺の地下鉄をしっかり見張っていてくれたのねぇ。感謝よお」
 その報告によれば、攻性植物たちは、掘削能力に特化した巨大攻性植物『プラントワーム・ツーテール』を使い、現在も地下拠点の拡大を進めている。
 地下拠点は、地下鉄の路線のすぐ下まで拡張されており、地下鉄の路線を爆薬で爆破すれば、拠点を掘り進める敵に奇襲をかけられる。
「爆薬はこっちで用意したから、忘れず持って降りてね。封鎖された地下鉄線路に潜入し、予定地点で爆破させれば、敵拠点とつながるよ。作業中のプラントワーム・ツーテールと、10体の護衛デウスエクスを倒しちゃってねぇ」
 プラントワーム・ツーテールは、全長20mという巨体で、戦闘になれば複数人を相手に溶解液を吹きかけてくる。命中されれば、防具を溶かされてしまうだろう。
 ただし、拠点工事に特化しており、知能や戦闘力はあまり高くない。
 10体の護衛、スロウンは、木のような特徴をもつ、人型デウスエクスだ。
 両腕が長く、地面に届くほど。ムチのようにしならせて、1体を叩いてくる。こちらの攻撃でも、防御力を削られることになる。
「グランドロンをこっちの味方にして城塞を無くしたのに、攻性植物はあの手この手を使ってくるのよお。バレンタインのときも大成功だったし、今回も地下なんか掘ってる敵をやっつけちゃって! レッツゴー! ケルベロス!」


参加者
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)
除・神月(猛拳・e16846)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)
レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)

■リプレイ

●奇襲作戦
 暗闇にふたつの光が揺らめいた。
 高低、段違いのそれは、銀のスジを浮かび上がらせる。地面に敷かれたレールへの反射だ。
 ひとつは、地下鉄整備員の格好をした盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)の、ヘルメットについたライトだった。
 低いほうは、レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)の胸元にぶら下がる、首掛けの照明具。
「地下でコソコソ作業している悪い植物には、お仕置きが必要ですね!」
「ふわりもねー。プラントワームさんをやっつけるのー♪」
 後続の光が、コンクリート打ちの壁を示す。廃棄された地下鉄路線内に、8人のケルベロスが潜入しているのだった。
「このヘンじゃねーカ? 予定地点てーのハ?」
 怪力無双で除・神月(猛拳・e16846)が運んできたのは、爆薬だ。
 ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)が、もこもこ気味に着込んだケルベロスコートのポケットから資料を取りだし、ベルトに固定したライトにかざす。
 神月(しぇんゆぇ)を手伝い、設置を済ませると、スイッチを入れた。
 どおん、と結構な音が響く。
 地面にあいた大穴には、ひしゃげたレールがまだ掛かっている。新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)が、覗き込んで叫ぶ。
「真下だ! 工事中のやつらが揃ってるぞ!」
 すぐさま、持参したランプを構内に投下する。神宮・翼(聖翼光震・e15906)は、パッと明るく言った。
「はーい! ノリノリで戦闘スタートして、いーんだね!」
 穴の中を長々と潜んできたストレスがあったらしい。アームドフォートのイルミネーション機能で、岩肌をカラフルに照らす。
 演奏時の演出用だ。
 人型植物種スロウンは、あたふたと見上げてくる。
「奇襲、成功したみたい……」
 空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)は、10体いる護衛へと飛び込んでいった。
 数体は、巨蟲の尻尾を背にしようと動いている。当のプラントワーム・ツーテールはまだ、岩喰いに熱心のようだ。
「今度は地下の拡張とかいろんなことやるなぁ」
 峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)もライト付きヘルメットで縦穴へと降りた。コートは羽織ったままだが、前がはだけて黒ビキニが露わになる。
 敵からみれば、天井が崩れてきたのだ。破片の散らばりがLEDで判別つく。
「ボクの狙いは、キミだよ!」
 防御に動いたスロウンを標的に、石つぶてを蹴り飛ばした。ケルベロスたちはまず、敵のディフェンダー陣を崩しにかかる。

●触手と粘液
 神月(しぇんゆぇ)は、無月(なづき)と恵(けい)を追って、二丁拳銃でスロウン群に混じった。
 全方位射撃のリベリオンリボルバーはいいのだが、自分も全方位からの触手叩きで、着衣は散りぢりだ。
 胸や尻にはミミズ腫れを起こしている。
「あたしを調教でもしよーってのかヨ♪ 100年早ーゼ、木偶人形!」
「神月ちゃん、愉しんでるねっ。あたしも『V☆B☆V』でシビレさせてあげる♪」
 翼は、アームドの電飾に楽曲も加えた。
 前衛の股間へとノックしようとした触手は、硬直して止まる。
 さらに、破れた布地を、紙兵が繕いはじめた。
 散布した腕型祭壇を、レイファは着替えにも使う。縛霊手は、離れた岩だなへと、コートを投げた。
「ダメになる前に脱ぎ捨てたの。ほら、もう中衛のみなさん、触手や溶解液でひどいでしょう?」
 とはいえ、大きな胸をどうにか抑えるマイクロビキニ姿。下げたライトは、谷間に挟まっている。
 工事を諦めたプラントワームは、溶かす相手を変えてきていた。
 ドボドボと降り掛けられた液に、翼のフィルムスーツは透けてくる。構わずに踊ると、右の乳房がプルンとまろび出た。
 ふわりの作業着も、溶けかけだ。
 甲冑騎士が、その前にでる。ガートルードのドレスアーマーは崩れたが、もこもこコートがまだ、身体を隠してくれる。
「どうやら、狙いどころは判ったようですよ……!」
 ガートルードは、同じ防御役として、スロウン10体のうち、同ポジションには5体が配置されていると、看破した。
「ありがとうなの! ふわりのこと、いっぱいいっぱい愛していいの♪」
 それは身体が蕩けるような、甘く漂う情欲の香り。
 『メイク・ラブ・パフューム』をお返しされてサンライズブリンガー、ガートルードの持つ切っ先は威力を増し、宣言通りに敵ディフェンダーの一角を撃破した。
 斬り飛ばした根っこのような触手からも、生臭い樹液が飛び散る。
 翼は、ふわりと自分の回復に、『ブラッドスター』を唄う。
「服がピンチになってもギャラリーがいないから気は楽かも?」
「ふわりも、汚れないために作業着だったの。もうへっちゃらなの♪」
 ドロドロのついた作業着と、白いフィルムスーツは、べちゃっと地面にほうりだされた。
「そ、それだけは嫌です! 早く振り解かないと……は、放せ。嫌だ、放してーっ!」
 目を離した隙に、ガートルードがうつ伏せに押さえ込まれていた。コートの裾をめくられた生尻に、樹液を先走らせた枝があてがわれている。
「またまたピンチだよっ。『ブラッドスター』♪」
 紡ぎ出される翼の、生きる事の罪を肯定するメッセージ。
 人は生まれた時はみんなハダカなんだからハダカでもいいじゃない、と全裸を肯定して恥ずかしくなくする。
 もこもこコートごと、暴漢スロウンはハジケとんだ。
「女性陣をなるべく視界に入れないようにしてだな……」
 恭平は、とても大事で難しい戦法に取り組んでいた。

●防御陣突破
 無月は、破鎧衝でスロウンの樹皮を削っていた。薄い胸や股を晒しながらでも。
 危うく桜色の突起が見えそうになったとき、呪句を刻んだ石板が積みあがって、そっと隠す。
 割れ目が開きかけても、同様だ。
 恭平が初手で放った、『黒曜氷壁(オニキスウォール)』が効果を現していた。本来なら、壁が出来上がるのだが、激しい前線では石板程度が関の山なのである。
 ピトッと石の角が当たって、無月はわずかに反応する。
「うん……、冷たい……ね」
 加えて、視線を塞いでおけるのは、主に恭平とのあいだでだけだ。レイファは、メディックとして後衛に陣取り、無月だけでなく、神月や恵のカラダも眺めて、興奮していた。女の子が好きだから。
 マイクロビキニは、紙兵に守らせている。ただし、痛みを伴わないように、触手を押さえつけた際に、布脇から敏感なトコロへと滑り込ませてしまった。
「あはん、そこダメェ!」
 嬌声に、恭平がギクリと動揺したようだが、あくまでも振り返らない。レイファも男性は気にしていないし、人様に見せて恥ずかしい体ではないと、普段から豪語している。
 けれども、恭平へのディフェンスにガートルードが踊り出たときには、胸が高鳴った。
 つつしみ深い彼女が、どうしたわけか男の前で、全裸を晒している。『ブラッドスター』を唄った、翼の暗示なのだが。
 大股に構えて、ソードを振るうと、木人の触手を右へ左へと斬った。
「ウッ、くう。はんっ!」
 まだ攻めてくる敵、いやすでに太いモノの一本が挿入され、責めさせるままになっていたのだ。
 それを知ったレイファは、達した。お節介な紙兵が、後ろの穴にも刺してくる。
「出ちゃいますぅ!」
 ビキニのボトムにはシミが広がり、布脇からは吸いきれなかったぶんが、溢れた。
「絶望せよ!」
 気合いに、ランプが吹き消える。恭平は、共生したオウガメタルに任せることで、視覚と聴覚を閉じていた。
 ライジングダーク、黒い太陽が、元より闇だった地底世界に、絶望の黒光をもたらす。
 足の止まったスロウンの1体に恵は、マインドソードを突き立てて滅する。
「第一段階は、もう一息だよね!」
 ヘルメットのライトが、軌跡を描いてプラントワームの周囲を巡る。
「おう、攻めきってやんゼ!」
 神月は、制圧射撃で敵防御陣の残りを瓦解させる。
 硬い相手だったが、これで本丸のほうこそ、まるはだかにできるのだ。恵は、これ以上ないくらいにバストを揺らして、5体目もソードで刺し貫いた。
 第二段階、とプラントワームを見ると、掘削用の触手が岩肌を縫うように、中衛へと延ばされている。
「なになに、なんなのー? ふわり、ヌルヌルで、トロトロなの……」
 粘液の感触に、快楽に溺れた表情で、ふわりのからだが揺れていた。
 ワームの触手は、垂直に降り立つ。悪夢に彷徨う人形は、丸呑みにされた。
「えええー?!」
 恵は、駆け寄り、持ち上がった触手がピュッと吐いたものを、両手で受止める。それは、ふわりが被っていた、恵のと似たライト付きヘルメットだったのだ。

●依頼の完遂
「盾と! 不破の盾となれ!!」
 恭平が、黒曜氷壁の石板をドカドカと、掘削触手の開口部に放り込んでいた。
 ふわりを呑んだ口である。
 他のメンバーは、プラントワームを弱らせようと、攻撃を繰り返す。耐性付与が届くんだから、無事に違いない。
 信じたとおり、触手の内側から、巨大な刃が突き出てきた。ワイルドブレイドで表皮を切開し、ふわりは自分から脱出してきた。
 ヌラテカの彼女のカラダを抱き留めると、恭平は持参していたマントを着せる。
「ふわりは、あやうく、気持ちよくなるとこだったの……」
 オイオイとみんなでツッコミをいれて、戦闘に戻る。
「親玉倒すまで、ひと頑張り! あたしがトラウマになりそーだったけど、次はコレよ♪」
 翼は、トラウマボールを巨大デウスエクスにぶつけていく。
「雑草って根こそぎ退治しないとダメなんだよねー」
 ヘルメット二枚重ねで瓦礫を集めては、恵のブーツがプラントワームにむけて蹴っ飛ばす。
 掘るために喰うことはできても、受け止めたりはできないようだ。
 溶解液やら触手叩きやらに、服を破かれはしたが、石板や紙兵、そして唄による耐性を、厚めにしてきた。
 レイファは、さらにステルスリーフを与えて、回復力をさらに増す。前後の穴の塞がりは放置。
「困った敵でしたね。脱げたついでですから……」
 ガートルードに、ドレスアーマーと一緒に羞恥心が戻ってきた。ガントレットの外れた左手を、鉤爪に変化させる。
 『ワイルド・タービュランス』は、プラントワーム・ツーテールの胴体側に突き立った。
 背中に沿って、片側の尻尾までの20mを引き裂いてしまう。
 もこもこコートは、レイファが拾って着せてやった。都合、3本の根っこも引き抜く。ちょっと名残惜しい。メディックは、皆に声をかける。
「まだ、余力はありますでしょうか? 第三段階、いきましょう」
 着衣もおおむね再生されている。
 護衛対象を失って、大阪城まで逃げ帰ろうとするスロウンは混乱ぎみで、攻撃を当てていくのは簡単だった。
「……凍てつけ」
 無月の『烈凍槍(レットウソウ)』が貫き、神月の降魔真拳が幾ばくかの返済を徴収すると、この辺りの地下を拡充する策謀は潰えたのであった。

●地下の底から
「……」
「う、……」
 恵は、コートの前を掛け合わせ、速やかに帰る支度を始めている。無月も武器を収めると、もじもじし始めた。
 戦っているときは無視できても、任務が終わりに差しかかるれば、恥ずかしくもなる。
 服破りを受けるとは、そういうことだ。
 平静を取り戻したガートルードと翼であっても、隠してきた着替えに至るまでは、安心できない。
「コートは羽織ってるし、鎧も再生されてるけど……」
「グラビティによる仮のものだからねー。防御低下無視の全裸肯定ほどヒドクはないけど」
 自分でやった超理論である。
「地上まで、また地下鉄線路をたどるんだもんね。でもでも、帰りはイルミネーション全開でいいのね♪」
 翼がまたハシャギだしたので、ガートルードは、もこもこコートをギュッと抱いた。
「光源が必要だからって、……余計なところ照らしたりしてはダメですよ?」
 路線内まで登り、歪んだレールを見た恭平は、穴は塞いで帰りたいが、とこぼした。
 いまだにお姫さま抱っこして、マントにくるんだ、ふわりがいる。真っ赤な顔して、はぁはぁ言ってる。
 そんなにくっついているからですよ、とは誰も指摘しない。
 ともかく、神月とレイファが残って処理するからと、請け負ってくれた。
「まア、穴開けたのは、アタシだシ。ちゃんと警戒しながら慎重にやっかラ」
「メディックで参加した以上、ヒールグラビティは任せてください」
 礼を言った6人の照明が、コンクリート壁をつたって、遠のいていく。
 神月は、新たに懐中電灯を取りだして、輝度を最大にした。
 大穴と底までが一望できる。
「見た時すぐにさア、ヤッてみてーと思ったんヨ」
 レイファは、ぷいと横を向いてから、上目遣いに視線を戻した。
「バレないように、こっそりとするつもりだったのに。神月さんたら……」
 しぶしぶを装って、マイクロビキニの上下を、無事なほうの線路に置いた。神月もまた全裸になっている。
 穴の上に掛かる不安定なレールを渡り、中央でふたり、向かい合ってしゃがんだ。
「せーノ!」
「ウッ……出ますッ!」
 しゃああああああ……。
 地下に向けて、清めの聖水が撒かれる。電灯の明かりにきらめき、黄金のように。
 封じられた底で、えもいわれぬ解放感であった。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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