黄昏の怪異

作者:崎田航輝

 陽光が傾いて、景色が夕刻色に染まる。
 濃密な橙に沈んでゆく市街は、文字通りの黄昏で──瞳を細めるほど眩いのに、同時に暮れの暗さも同居した不思議な時間帯だった。
「……?」
 そんな道を歩んでいた長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)は、ふと足を止めて周囲を見回す。
 逢魔が時──こんな時間には何か魔の者や怪異に遭遇するという。
 だから予感を覚えた、という訳ではないだろうけれど。少なくとも何か不可思議な気配を感じたのは確かだった。
 気の所為、ではないだろう。何故なら一瞬後には──。
『トン、トン、トンカラ、トン──』
 何処からか、拍を取るような唄声が聞こえてくる。
 奇怪な響きを持ったそれは、人のものではないのだと直感できる。はっとしてゴロベエが振り向くと、道の向こうからそれは現れた。
 日本刀を差し、自転車に乗る人影。全身を包帯に包んだそれは、口遊むように、けれど同時にどこか不気味な声音で歌を続けていた。
「こんなところで妖怪に遭遇……なんてな」
 ゴロベエは呟きながら、しかしすぐに首を振っている。
 それがデウスエクス──ドリームイーターであることは判っていたから。
 いつしか周囲に人影はない。トンカラ、トン、と謡いながら、その怪異だけが真っ直ぐにゴロベエを目指して来る。
 だからゴロベエは──それに対峙すると気合を入れるよう、拳を打ち鳴らした。

「長篠・ゴロベエさんがデウスエクスに襲撃されることが判りました」
 黄昏のヘリポート。
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へと状況を説明していた。
「予知された出来事はまだ起こっていません。ただ、時間の猶予も残されていません」
 ゴロベエは既に現場にいることが判っている。
 その上でこちらから連絡は繋がらず、敵出現を防ぐことが出来ない。そのため敵と一対一で戦いが始まってしまうところまでは覆すことは出来ないという。
「それでも今から急行し、戦いに加勢することは可能です」
 合流するまでに時間の遅れは生まれてしまうだろう。それでも戦いを五分に持ち込むことは充分に可能だと言った。
「現場は市街にある細道です」
 周囲にひとけは無く、一般人への被害については心配は要らないだろうと言った。
「敵はドリームイーターである事が判っています」
 その詳細な目的など、敵については判らないこともある。ただ、放っておけばゴロベエの命が危険なことは事実。
「だからこそ猶予はありません。ヘリオンで到着後、急ぎ戦闘に入って下さい」
 周囲は静寂で、ゴロベエを発見すること自体は難しくないはずだ。
「ゴロベエさんを救うために。さあ、急ぎましょう」


参加者
ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
清水・湖満(氷雨・e25983)
長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●遭遇
 夕陽色の景色に長い影を伸ばし、不可思議な唄声を細道に反響させる。
 その文字通りの怪異を、長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)は見据えていた。
「日本刀、自転車に、ミイラ、か」
 半ば無意識に分析するよう呟く。相手の近づく速度が緩く、まるで様子見でもしているかのように見えたからだが──。
「なるほど、あれはトンカラトンか……。あ、しまった」
 と、ゴロベエが零した直後。その包帯の夢喰い──トンカラトンは加速。刀を抜き放ち剛速で振るってきた。
「おっ、と」
 ゴロベエはとっさにスマートフォンの角で受け止める。衝撃は軽減したが、それでも滑るように大きく後退させられた。
(「ああ、言えという前に名前を言うと襲い掛かってくるんだった」)
 思いながら、視線を向け直せば──トンカラトンは既に明確な殺意を見せている。
 包帯に隠れた表情から、意図は窺えない。
 が、戦いが始まったのは事実。
「しかたない」
 これが予知されているなら、数分も待てば助けが来るはずだ。だからそれまで堅実に生き残る方向で行こうとゴロベエは決めた。
 無論、誰も来ない可能性もある──それでも今は守りに徹する他はないから。近づく敵から逸れるよう、横っ飛びに動いた。
 だがトンカラトンも漕ぎながら方向を変え、こちらの判断を鈍らせながら連撃。追い込みながら確実に斬りつけてきていた。
「……やはり楽な相手じゃないな」
 裂かれた脇腹を押さえつつ、ゴロベエは息を吐く。
 傷は深く、足元は血に濡れていた。対して相手に傷はない。それは敵が優勢である証左だった──が。
 ここまで耐え抜いている時点で、ゴロベエの狙いもまた果たされていた。トンカラトンが次撃を狙って刃を振り上げた、その時。
「見つけたぜ! オラァ!」
 夕陽の光を切り裂くように、声と共に高速で接近する影がある。
 鋭い業物を抜き放つ、ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)。一直線に敵前へ駆けると一閃、強烈な斬撃で敵の刃を弾き返していた。
「今だ!」
「ええ」
 声に応え、閃光が閃く。
 飛び退いたジョーイの後方から、源・那岐(疾風の舞姫・e01215)がガトリングを向けていた。眩く明滅するマズルフラッシュと共に、衝撃の雨がトンカラトンを下がらせてゆく。
 トンカラトンは僅かによろめきながら、それでも刃を握り直していた、が。
 ひらりと、朱の空より蒼い影が舞い降りる。
 それは高い跳躍から鮮やかな旋転を見せるソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)。爽風を吹き下ろすように、ハイヒールで鋭い蹴りを叩き込んでいた。
「……トンカラトンって言えばいいのかな?」
 そのまま着地すると、敢えていざなうように声を投げる。
 するとトンカラトンはゴロベエから視線を逸らし、ソロへ奔り出した。それは狙い通りでありながら、ソロに危険が向かうことでもある、が。
「させへんよ」
 そこに敵を阻む、靭やかな影が一人。
 真白い着物に、黒絹の艷やかな髪を靡かせて鞘を握る清水・湖満(氷雨・e25983)。
 高い下駄でそろりとすり足をする仕草は嫋々として、怪異に劣らず幽霊じみた印象であったろう。
 トンカラトンが僅かに惑う一瞬に──放つ一撃は苛烈。真っ直ぐの刺突で肋を砕いた。
 敵が大きく吹き飛ばされると、その間隙に源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)はゴロベエの傍らへと駆け寄っていた。
「大丈夫?」
「……ああ、何とか」
「今すぐに治療をするから」
 頷くゴロベエへ、瑠璃は手を翳して光を凝集する。
 月光を抱く空のような、その白銀の輝きは──苦痛を拭い去るように優しく溶け込み傷を治していた。
「では、私も助力をさせて貰おう」
 と、微かな駆動音と共に機械の掌を当てるのはディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)。
 ぼう、と淡く燿く光に治癒の力を内在させ、意識を蝕む不調も浄化していく。
「あと少しといったところか」
「ではお任せを」
 最後まで癒やしきってみせます、と。
 意志をオーラの輝きに宿していくのはイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)。
 痛みを消し去り、護りきる。その心を体現するよう、光の中に傷を消失させていた。
「これで万全となったはずです」
「救援が間に合って良かったな」
 ディミックが言えば、頷くゴロベエは皆を見回し礼を述べている。
「こんなに援軍が来るとは、世の中捨てたものじゃないな」
 引きこもりの人見知り、それを自覚するゴロベエは嬉しくて泣きたい心持ちだった。
 それでも涙は出さず、すぐに前を向く。敵が斃れず、こちらへの接近を試みていたから。
「気をつけてくれ、中々に厄介な相手だ」
「みてェだな」
 相手の立ち位置の取り方を見て、ジョーイも声を零す。回復に攻撃に、どちらも操る敵との戦いは楽なものではないだろう。
 ただ、それが退く理由になりはしない。
「とりあえずぶった斬るさ」
 地を蹴ると同時、鬼神を彷彿させる兇猛なオーラを纏って『鬼神の一太刀』。振りかぶった刃を直下へ振るい、比類なき斬力で夢喰いの膚を切り裂いた。

●怪異
 陽が焼け落ちる時間は決して長くはない、だが──。
(「世界が赤く染まる光景はなんとも不安なものだ」)
 単色に彩られた景色を、ディミックは微かに仰いでいた。
 急場こそ凌いだが、まだその感覚もなくなりはしない。
 視線を下ろせば、トンカラトンが未だ健常に、間合いを測るように自転車で円周を巡っているのが見えるから。
 ソロも蒼玉の瞳でその姿を見つめていた。
「ドリームイーターは相変わらず個性的な敵が多いな……」
「判ってる人も居るみたいだけど。あれはトンカラトン──多分、名前通りの怪異を下地に生み出されたんだろうな」
 ゴロベエの言葉に、湖満はふぅんと顎に細指を当てる。
「物の怪やとか、そういったこの世ならざる者については明るくないのやけど……ちと、興味もあるかな。不思議な見た目やしね」
「見かけに反して理不尽で恐ろしくもあるようだけど──」
 と、ソロが呟けば、ゴロベエも頷いた。
「元々そういう話だからな。ただ……それだけじゃないものを感じる」
 脳裏に浮かんだのは幼少時のこと。
 記憶にある、一人の魔女の姿。
「俺は嘗てドリームエナジーを抜かれたことがある。その時は助かった、と言えるか判らないが──それ以来夢を見なくなった。なんとなくアイツから、あの子っぽいナニカを感じる」
「……そんな恐ろしい事が」
 瑠璃は息を呑むように声を零す。
「また命を狙われている、ということなのかな」
「判らない。ただ、さっきも言ったように警戒したほうが良い。トンカラトンに斬られると自分もトンカラトンになる、なんて話もあるからな」
「ならば、すべきことは一つですね」
 那岐は静かに言った。
 ゴロベエにとってはきっとただの敵とは言えないのだろう、だからこそ自身も真っ直ぐに戦意を込めて。
「悪夢の連鎖は止めましょう。そのためにあの物騒で不気味な存在を──倒します」
「そうやね。今は目の前の敵をやっつけるだけ」
 湖満もまた、涼風の声音でそっと刃の柄を握る。
 敵に対して恨みはないけれど、それが必要なことであるならば。
「──さ、いくよ」
「よし!」
 頷きを合わせて、ソロは両手に槌を握っていた。
 それは肉球から爪が突き出た形の、猫の手を模したにゃんマー×2。
「こんな見た目でも性能は折り紙付きだよ。トンカラトン! この二刀でボコボコにして……貴様を倒す!」
 瞬間、ダブルにゃんマーの構えで疾駆して肉迫。
 友人から勝手に借りてきた武器だが、まあ許してくれるだろうと遠慮なく。片方の肉球で敵を捕らえると──もう片方を全力で振るい、どむっと重い衝撃を与えた。
「さあ、頼むよ」
「もちろん」
 と、ソロに応じてトンカラトンへ素早く迫るのが湖満。敵が距離を取ろうとするより疾く、まずは抜き放つ一刀で胸部を裂く。
 敵が堪らず下がっても、執拗に追い縋って。文字通りの『死の舞踏』を踊るよう、剣閃と血飛沫を際限なく舞わせていた。
 呻いたトンカラトンは、自身の幻影に声を木霊させる。トンカラトンと言え、と。
 けれど前面に出たイッパイアッテナはそれに応えない。攻撃が来るなら来るで、自身が受け止めればいい話なのだから。
 直後に無数の斬撃が来れば、狙い通りに身を挺して受け止めながら──その最中に本体の場所を見切って相箱のザラキに噛みつかせていた。
「敵はあそこです」
「ああ」
 頷くゴロベエも、幻影を縫って敵本体へ。
「そっちも厄介な技ばかりだが──こっちも斃れていられないからな」
 腕を引き絞ると、濃密な降魔の力を込めた拳を直撃させ、魂と体力を喰らっていく。
 トンカラトンが転倒すると、その間にディミックは脚部と腕部の機巧を動かし、下方に向けて魔力を放出していた。
 するとその力に誘い出されるよう、大地に眠る魔力が爆発的に立ち昇り──幻影を払う程の治癒力へ変遷する。
「もう一手、治療を頼みたい」
「うん」
 応えた瑠璃も、既に眩い光のヴェールを生み出していた。
 ゴロベエを助け、仲間も傷つけさせはしない。その鋼の意志で己が魔力を増大させて。煌めく七彩の輝きで皆を撫ぜ、傷を癒やしていった。
 そのまま瑠璃は那岐へ視線を向ける。右腕として少しは貢献できただろうかと、思いを抱きながら。
「那岐姉さん、攻撃を」
「ええ」
 頷く那岐は、向けられる敬慕と愛情、そして信頼にしかと応えるように。澄み渡る空の如き蒼の光を撃ち出して──トンカラトンの体を穿っていた。
 トンカラトンも反撃の刃を突き出す。が、同時にジョーイも刀を振るって衝撃を相殺してみせた。
 そのまま鍔迫り合いとなる、が。
「力比べだってんなら、別に構わねェぜ」
 負けるつもりはねェからな、と。
 ジョーイは膂力で相手の刃を押し戻し、返す刀で一閃。弧月の斬線で足元を裂き、自転車ごとトンカラトンの体勢を傾がせる。
「今のうちに撃ち込んでやれ」
「判りました」
 応えて力を集中するのはイッパイアッテナ。
 癒やしの為のオーラを、純な心で悪を討つ光へと変えて。弾丸の如き速度で輝きを発射して、敵の体を貫いた。

●夕暮
 微かな土埃が、沈んでゆく陽光に薄っすらとした影を作る。
 倒れ込んだトンカラトンは、包帯の隙間から苦しげな瞳を覗かせていた。モザイクは明滅し、息は浅く──命が死に近づきあることを如実に表している。
 それでもトンカラ、トン、と戯れのような聲を響かせれば、傷は徐々に塞がり不調までもが消えていくようで。
「ったく、いくらやっても解除しやがる……」
 敵の治癒力にジョーイはため息を吐いていた。
 無論、だからといって傾いた形勢を敵に譲り直しはしない。
「クッソ面倒くせェったらありゃしねェ……なァ!」
 乱暴に言いながらも刃を振り回し──トンカラトンを袈裟に切り裂きながら、纏う加護までもを粉砕していく。
 たたらを踏むトンカラトンへ、ディミックも間断を置かず連撃。『俤偲ぶ蛍石』で淡くも美しき光を生み出していた。
 それは蛍石を媒介にした幽かな幻。過去か執着か、敵にしか見えぬ像が、確かにその心を留めるように動きを止めていく。
 その隙に瑠璃は月光を差し込ますよう、鮮烈な光弾を撃ち出し敵の体を灼いていた。衝撃にトンカラトンの体が煽られれば──。
「さあ、那岐姉さん」
「ありがとう」
 この機をしかと活かしてみせようと、那岐が銀色の羽を抱く妖精靴で軽やかなステップ。空色の風を巻き起こしていた。
 麗しくも鋭いその舞いは、『風の戦乙女の戦舞・空』。翔ぶように敵に迫り、棍での打突を加えていく。
 地に墜ちたトンカラトンは、よろよろと自転車に乗ってこちらを惑わそうと試みた。が、イッパイアッテナが凛然と首を振る。
「誰も迷わせはしません。全てを、撥ね返して見せます」
 その『護言葉』が確かな力となって、魂を奮わすように皆を守護して癒やしていた。
 仲間が万全となれば、イッパイアッテナは即時に攻勢。戦斧を振るって脳天へ斬打を叩き込む。
「怪異の夢喰いトンカラトン──夕日と共に沈め!」
 トンカラトンは血潮と共に膝をつく。
 苦渋に唸りながら、それでも尚抗おうと刃に手を伸ばす、が。
「させないさ。くらえ、必殺の光の剣!」
 ソロが煌きを纏わせたにゃんマーで連打。ボコボコと容赦なく体を打ち据えて地に転がせていた。
「光になれ……!」
 そのまま掬い上げる一撃でトンカラトンを宙へ飛ばすと、息を合わせて湖満も抜刀。風も凍らせる剣圧を放ち、深々と体を抉り裂いてゆく。
「詳しいことは、私には分からんけど。因縁は断ち切っておいで」
 湖満が振り返ってそう声を贈ると、ジョーイもゴロベエに向いていた。
「ああ、トドメは自分で刺すのがいいだろ?」
「そうだな」
 ゴロベエは己が体から緋色のオーラを揺蕩わせ、陽炎を立ち昇らせている。それを巨大な光の塊にしながら、トンカラトンへ声を向けた。
「おまえはあの魔女に近いナニカを感じる。何か言いたい事はあったりするのか?」
 しかし夢喰いは物言わず、トンカラトン、と唄を游ばせるのみ──ただ与えられた役割を全うするかのように。
 そうか、と呟いたゴロベエは、拳を振りかぶって緋色の輝きを撃ち出す。
 自宅警備闘気 『スカーレットメテオライト』。隕石の如く降り注ぐ衝撃の塊で、跡形もなくトンカラトンを焼き尽くした。

 夕陽が摩天楼の彼方に沈み、世界が暮れていく。
 静寂が戻ると、湖満はしゃなりと静やかに武器を収めていた。
「終わったね」
「うん。皆、無事?」
 ソロも軽く息をついて、仲間達へ視線を巡らせる。皆が健常な言葉を返す中で、ゴロベエもまた頷きを見せていた。
「皆が来てくれたから、勝てたよ。助かった」
「うむ、怪我が残らず何よりだ」
 ディミックは鷹揚に応えて視線を返す。
 イッパイアッテナもまた頷きながら、ゴロベエを見遣っていた。この敵を倒したことで、何かを奪い返せただろうか、と。
 ゴロベエにはまだ、はっきりとした感覚はない。ただ、気にかかることはあった。
「……斬り捨てた被害者をトンカラトンに変える、か」
「とりあえず目の前のトンカラトンは倒したけど。……その話を聞くと、また出そうだよね。何となく」
 瑠璃は少しだけ考え込むように周囲を見渡している。
 今はただ、平和の戻り始める街並みが見えるばかり、だが──。
「気を付けていようか」
 那岐が瑠璃に言葉をかけると、瑠璃はうん、と静かに応えた。
 ゴロベエもまた、心持ちは同じ。
 ただ、今この戦いに勝てたのは事実だから──ジョーイは歩を踏み出して。
「ま、帰るとするか」
「ああ」
 ゴロベエもその言葉に応えて歩み出す。
 辺りは暗くなり、逢魔が時は過ぎてゆく。空には星が見え始め──今宵ばかりは、澄んだ夜になりそうだった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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