●都内某所
「俺は常々思うんだ。ドレスを着た男の娘こそ最高である、と! 故に、お前らが今日から着るのはドレス! ドレスだけだ! それ以外は着るな! 絶対に着るな! そもそも、ドレス以外の服を着る必要はない! お前達はドレスを着ればいい!」
ビルシャナが廃墟と化した施設に男性信者達を集め、自らの教義を語っていた。
男性信者達は可愛らしいドレスを身に纏い、潤んだ瞳でビルシャナを見つめていた。
●セリカからの依頼
「皇・絶華(影月・e04491)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ビルシャナが確認されたのは、廃墟と化した施設。
男性信者達はビルシヤナによって洗脳され、ドレスを身に纏い、男の娘として生活をしているようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
男性信者達は洗脳によって、ドレスを着ているだけなので、その間違いに気づけば、我に返る事だろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。
参加者 | |
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伊礼・慧子(花無き臺・e41144) |
御囲・気吹(選択範囲エアブラシ・e44586) |
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678) |
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736) |
●都内某所
「一体、教祖の趣味はどうなってるんだ。ストライクゾーン広すぎないか?」
御囲・気吹(選択範囲エアブラシ・e44586)はゲンナリとした表情を浮かべながら、仲間達と共にビルシャナが確認された施設にやってきた。
ビルシャナはドレスを着た男の娘こそ至高であると訴えており、男性信者達を洗脳して禁断の世界に導いているようである。
そのためか、施設からは異様な雰囲気が漂っており、色々な意味で近寄り難い感じであった。
その上、室内からビルシャナのハイテンションボイスが聞こえているため、よほどの物好きでもない限り、近づく者もいなかった。
おそらく、信者と化したのは、よほどの物好きか、危機感ゼロの一般人。
一応、気吹も全力を尽くせば、男の娘っぽい雰囲気は出せるものの、どちらにも当てはまらないため、全力でご遠慮と言った感じであった。
それに、そんな事をしたところで、得をするのは、ビルシャナだけ。
しかも、舐めるような視線でガン見されるのがオチなので、ハッキリ言ってデメリットオンリーであった。
「……と言うか、ドレスを着るのと、男の娘になるのでは、結構ジャンル的に、段階を踏む都合上、結構違うわよね……」
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が複雑な気持ちになりつつ、何処か遠くを見つめた。
ある意味、これは奇跡のコラボ。
出会うはずのない二人が出会い禁断の恋に落ちたような感じの流れ。
この時点で何やら訳が分からなくなっているため、色々な意味で家が恋しくなってきた。
とりあえず、帰ろう。
帰ってから、言い訳を考えよう、と思ってしまう程、アレな心境。
理解不能なワンダーランドを見せられそうな予感のため、帰りたい気持ちでいっぱいになった。
「とても美しいタイプの男の娘さんだったら、私なんかよりとっても綺麗だと思いますが……。でも、そういう人たちも毎日ドレスという訳じゃないと思いますし……。必ずしも正しいとは思えませんね」
伊礼・慧子(花無き臺・e41144)が、気まずい様子で汗を流した。
場合によっては、自分よりも数倍可愛い男の娘がいるかも知れない。
万が一、そんな相手がいるような事があれば、気持ちがズーンと沈んで、立ち直れなくなってしまうだろう。
「まあ、似合う子はそれでも良いと思うが、私ぐらいになると全く似合わないからねぇ……。衣類を選ぶ自由は尊重したいが、調和も気にしたほうがいいと思うよ。私ぐらいになると全く似合わないからねぇ……」
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)が、何処か遠くを見つめた。
さすがに2mをゆうに超える巨体では、例えドレスを着たとしても、違和感しかない。
そういった意味でも、着る以前の問題であった。
そして、ケルベロス達は警戒した様子で、施設に足を踏み入れるのであった。
●施設内
「いいぞ、お前ら! その調子だ! みんな綺麗だ、美しい! だから、俺をもっとハッピーにしてくれ! お前達で導いてくれ!」
施設内ではビルシャナがドレス姿の男性信者達を見つめ、ゴキゲンな様子で大声を上げていた。
その気持ちに応えるようにして、男性信者達が一斉にセクシーポーズ。
みんな洗脳状態に陥っているため、まんざらでもない様子であった。
「いや、それは普段着じゃねぇから! そもそも、それって特別な日に着てこそのドレスだろ!? 普通の日があるからこそ特別な日が貴重なのであって、毎日着るなら、もっと機能性の高くて洗濯しやすい服のほうがいいと思うぜ」
そんな中、気吹が呆れた様子で、ビルシャナ達にツッコミを入れた。
「……えっ?」
その途端、男性信者達が、一斉にキョトンとした表情を浮かべた。
おそらく、洗脳されている影響で、何が正しくて、何が間違っているのか、冷静な判断をする事が出来なくなっているのだろう。
思わず、気吹を二度見してしまう程、驚いている様子であった。
「しかも、普段着にドレスというのは、とてもコストがかかります。汚れたりしたら手洗いしないといけませんし、ほつれやすいフリルやレースを直すのも大変です。その手間を担うのは、ご家族でしょうか? 知り合いのゴスロリさんはご自身でケアしていますが、それは服が大好きで仕方ないからライフワークとなさっているんです。こんな汚れて危ないところで活動している現状では、ドレスへの愛は感じられません」
慧子が嫌悪感をあらわにしながら、ビルシャナ達に視線を送った。
普段からドレスを身に着けて、生活をしているためか、どれも皺だらけになっており、まったく愛を感じる事が出来なかった。
「それは誤解だ! 俺はドレスを……男の娘を愛している!」
ビルシャナが無駄にピュアな瞳で、躊躇う事なくキッパリと断言をした。
何やら含みがあるものの、知ったところでゲンナリする事は、確実……。
そこまでして知る価値もないため、あえて触れない事にした。
「私だって、そういうの着たいけど、ケルベロスだとすぐ破いちゃって大変だから着られないの!」
そんな中、ことほがビルシャナ達を見つめ、情に訴えかけた。
「……ならば、俺が直してやる! これでも、裁縫技術はプロレベルだからな!」
ビルシャナが自信満々な様子で、懐から裁縫道具を取り出した。
男性信者達も、プロ級の裁縫技術を持っているのか、みんな揃って自信満々であった。
「例え、ドレスを直す事が出来たとしても、着ているだけじゃ意味がないわ。髪型も! 靴も! 立ち振る舞いも! 全部含めてドレスなの! それなのに、ただドレスを着ただけで満足するなんて……」
ことほが心底呆れた様子で、ビルシャナ達を見つめた。
一言で言えば、上辺だけ。
それ故に、ドレスを着ているというよりも、ドレスに着られているような感じであった。
「ついでに言うと、体型に合わせた服のほうが過ごしやすいぜ。ウェストきついとか胸が何か余るとか、ドレスは何かと不便じゃね? ……そこで俺がお勧めしたいのはスーツと学生服だ。こっちのほうがフォーマルな雰囲気は保ちつつ、今よりずっと楽に過ごせるぜー。だから、こっちにしようぜー」
気吹がイイ笑顔を浮かべながら、男性信者達に学生服を薦めた。
しかも、気吹が薦めたのは、男子用。
そのため、男性信者達が互いに顔を見合わせ、不安げな様子でザワついた。
「それ以前に、ただドレスを着ただけで、『男の娘』になれるわけではない。たとえば、私のような鋼の大男がそのような薄絹を纏ったところで、意味不明なオブジェクトが完成するだけだ。程度の差はあれど、君たちもただ袖を通しているだけでは、本質的に同じことではないかね? 本当に好きで着ているのかどうか思い出してみたまえ」
その事に気づいたディミックが物腰穏やかに、男性信者達を諭すようにして語り掛けた。
「それは……その……」
金髪のカツラを被った男性信者が、気まずい様子で口ごもった。
そもそも、どうしてこんな格好をしているのか分からない。
それまでは自分の意思で、ドレスを着ていたつもりになっていたが、よくよく考えてみると……記憶にない。
まるで頭の中に霧が掛かっているような感じで、夢を見ている間にドレスを着てしまったような感覚だった。
他の男性信者達も同じような気持ちになっているのか、みんな不安げな表情を浮かべていた。
「……そこまでだ! お前達は信者達にとって、害でしかない! だから、ここで死んでもらう!」
その事に危機感を覚えたビルシャナが、ケルベロス達に対して、問答無用でビームを放ってきた。
●ビルシャナ
「まさか、信者達を巻き込むつもりかい?」
すぐさま、ディミックが男性信者達を庇いつつ、ビルシャナが放ったビームを避けた。
そのおかげで男性信者達に怪我は無かったものの、ビルシャナが放ったビームの影響で壁にポッカリと大きな穴が開いていた。
「その時は、その時だ! 最悪の場合は、洗脳し直せばいい! そうすれば、例え怪我をしたとしても、全部お前達の仕業に出来るからな! ……と言うか、実際にお前達が来たせいで、信者達がおかしくなったんだから、当然の報いだろ!」
ビルシャナが邪悪な笑みを浮かべ、再びビームを放ってきた。
しかも、あえて男性信者達を巻き込むようにして……。
「……見た目通り、性格も最悪ね」
ことほが即座にプラズムキャノンを放ち、圧縮したエクトプラズムで大きな霊弾を作り、ビルシャナのビームを消滅させた。
「……え……」
それはビルシャナにとっても、衝撃的な光景。
まさかビームが消滅するとは思わなかったため、ポカンとした表情を浮かべたまま、自分の身を守る事さえ忘れているようだった。
「それじゃ、トドメといってみっか!」
次の瞬間、気吹が惨劇の鏡像を仕掛け、ナイフの刀身にビルシャナのトラウマを映し出した。
「んぎゃああああああああああああ、女こわい!!!!!!!!」
その途端、ビルシャナが驚いた様子で悲鳴を上げ、腰を抜かして驚いた。
その間に、惨劇の鏡像によって具現化された女性達が、サディスティックな笑みを浮かべ、執拗にビルシャナの股間を踏み始めた。
それは見ているだけで、男性陣が内股になってしまい、ブルーな気持ちになってしまう程、ハードな光景。
まるで自分が同じような目に遭っているような感じで、みんな微妙な表情を浮かべていた。
そして、絶命。
ビルシャナが身も心もズタボロになり、魂の抜けた表情を浮かべて……息絶えた。
「んあ……俺達は一体……って、なんだ、この恰好は!」
それと同時に男性信者達の洗脳が解け、自分達の恰好に驚いて、間の抜けた声を響かせた。
みんな、どうしてドレスを着ているのか分からず、半ばパニックに陥っている様子であった。
「……えーっと、とりあえず……、せめて上着ぐらいはまともなのを着てください……」
そんな中、慧子が何やら察した様子で、男性信者達にコートを配っていくのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年3月2日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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