●死翼の騎士と蒼玉の衛士
東京焦土地帯。かつての戦いで荒れ果てた末、死神勢力の集中に落ち、ヒールさえも不可能となった赤茶けた大地。
だが、そんな死神の勢力圏も『磨羯宮ブレイザブリク』の出現によって、今ではエインヘリアルの支配圏となっていた。漆黒の怪魚が遊泳する不気味な地は、ブレイザブリクの力によって、今では無数の剣に覆われた姿へと変化している。
もっとも、死神達が素直にそれを認めるはずもなく、彼らもまた東京焦土地帯を取り返すべく、エインヘリアルと日夜戦いを続けていた。
「敵襲だ! 敵襲だぞ!」
「怯むな! ブレイザブリクがある以上、地の利は我等にある!」
漆黒の鎧を纏った物言わぬ騎士を、エインヘリアルの精鋭である『蒼玉衛士団』が迎え撃つ。対する死神勢力の方は、こちらは『死翼騎士団』とでもいうのだろうか。顔の全面さえも甲冑で覆い、無言のまま剣や斧を振り回す様は、感情のない人形を相手にしているような不気味さがある。
エインヘリアルと死神、両勢力の戦闘力は、ほぼ互角。だが、やはり拠点となる場所を有している分だけ、守る側が少しばかり有利だったのだろうか。
「はぁ……はぁ……。まったく、手間取らせやがって……」
気が付くと、戦場に立っていたのは、5人ほどの『蒼玉衛士団』の兵士だけだった。残るデウスエクス達は撃戦の末に全て宝玉化し、剣の山と化した大地の上へ無造作に転がっているだけだ。
「……とりあえず、ここは守り切った。倒れた仲間を回収し、撤退しよう」
力尽き、宝玉と化した仲間を拾い集め、『蒼玉衛士団』の面々はブレイザブリクへと撤退して行く。この度の小競り合いは、僅差でエインヘリアルの側に勝利の女神が微笑んだようだ。
●焦土地帯介入作戦
「よく来てくれた、ケルベロス達よ。エインヘリアルが『磨羯宮ブレイザブリク』によって支配している東京焦土地帯に、死神の軍勢が攻め込んで戦いになっているようだ」
現状では、エインヘリアル側がやや優勢だが、実際には互いの戦力は拮抗している。考えようによっては漁夫の利を得るチャンスでもあると、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)は集まったケルベロス達に告げた。
「攻め込んだのは『死翼騎士団』という死神の集団だ。東京焦土地帯を守る第9王子サフィーロの『蒼玉衛士団』と、小競り合いを繰り返しているようだな」
幸い、戦いは東京焦土地帯のみで行われており、一般人の被害者などは出ていない。だが、この機に乗じて敵戦力を減らせれば、それに越したことは無い。
「お前達も知っていると思うが、東京焦土地帯は『磨羯宮ブレイザブリク』の影響で、剣山のような姿に変わっている。戦場となる場所の近くには倒壊した建物の残骸や、かつての下水道跡地などもあるので、身を隠すのに苦労はしないはずだ」
『死翼騎士団』と『蒼玉衛士団』は互いに攻撃し合っているため、放っておけば最後は手負いの『蒼玉衛士団』の兵士が5人ほど残るだけとなる。そうなれば、戦闘が終わって油断した隙を突いて倒すことは難しくないので、それまで身を隠して様子を窺うのが賢明だろう。もっとも、敢えて戦闘中に乱入することで『死翼騎士団』に有利になるよう戦いの流れをコントロールすれば、戦闘終了時に『死翼騎士団』の方を生き残らせることも不可能ではない。
「『死翼騎士団』を生き残らせた状態で、お前達が撤退すれば、東京焦土地帯の戦況が再び死神側に有利なものへと傾くかもしれんな。あるいは、サフィーロを焦らせる結果になるか……どちらにせよ、今後の戦況に大きな影響を与えることは間違いない」
ただし、どれだけ言葉をかけようと、『死翼騎士団』や『蒼玉衛士団』と共闘することは不可能だ。そのため、戦いが終わる前に乱入すれば、必然的に三つ巴の戦いとなる。
万が一、作戦に失敗しそうな場合は、撤退することもひとつの手だとザイフリート王子はケルベロス達に告げた。敵は死ぬまで戦うが、しかし逃げる敵は追い掛けないようなので、いつでも撤退可能なのは救いであるとも。
「理由は分からぬが、東京焦土地帯はエインヘリアルだけでなく、死神にとっても重要な土地なのかもしれん。どちらにせよ、この戦いに乗じて敵の戦力を削って行けば、今後の戦いで有利となるだろう」
デウスエクス達が、時に種族の垣根を越えて同盟を組むような時勢だからこそ、対立する勢力の衝突を利用しないという手はない。そう言って、ザイフリート王子は改めてケルベロス達に依頼した。
参加者 | |
---|---|
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466) |
セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686) |
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231) |
曽我・小町(大空魔少女・e35148) |
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004) |
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102) |
狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604) |
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736) |
●両雄、激突す
赤く焼けた大地の上に、無数に突き刺さる鋼の刃。千刃地獄を絵に描いたような戦場で、ぶつかり合うのは二つの騎士団。
「行け! 我らが蒼玉衛士団の力、死神どもに思い知らせてやるのだ!」
督戦兵の指揮の下、残る兵士達が一斉に黒い騎士へと仕掛けて行く。この地を我が物にせんと勢力を拡大する蒼玉衛士団。その一方で、対する死翼騎士団は、あくまで寡黙に任務を遂行しようとするだけだった。
「…………」
言葉すら発さず、代わりに振るうのは巨大な斧。どれだけ身体を斬られ、撃たれ、幾度となく地に叩き伏せられても彼らは怯まない。それだけタフに作られているのか、それとも最初から痛みを感じることさえなくなっているのか。
互いに激突する二つの勢力は、正に実力伯仲の五分と五分。そんなデウスエクス間の小競り合いを、かつての下水道の跡地に身を潜めながら、ケルベロス達は静かに見つめていた。
(「東京焦土地帯ね。ここになにが秘匿されているのか、前から興味はあったんだけど……」)
今は、とにかくデウスエクスの排除が先決だ。そして、仕掛けるのは今ではないと、セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)は逸る気持ちをぐっと堪え。
「こんな時にデウスエクス同士で小競り合いなんて馬鹿みたいだね」
「腐った死体とゴミ虫共の喧嘩か。全く、なんど叩き潰されても懲りない奴等だな……」
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)と狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604)は、冷静に戦いの行末を見守りつつも、どこか軽蔑した視線を二つの騎士団へと向けていた。
「まったく……喧嘩は他所でやって欲しいものだけど。でも、潰し合ってくれるなら、ショバ代ってのには充分かしら?」
言いながら苦笑する曽我・小町(大空魔少女・e35148)。まあ、せいぜい勝手に戦って、互いの戦力を減らせばよいと、今はとりあえず様子見だ。
「ふむ……蒼玉衛士団の方は、割と無駄のないオーソドックスな布陣だな。それに比べて、死翼騎士団の方は……最初から、守りを捨てているのか? 確かに、攻める側としては、それも間違いではないが……」
戦いの行末を見守りつつ、ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)は冷静に二つの騎士団の戦い方を分析している。督戦兵を中心に纏まっている蒼玉衛士団は、良くも悪くも基本的な布陣。やや前衛過多な傾向は見られるが、中衛、後衛と上手く戦力を分散させつつ、それぞれが的確な動きにて敵を翻弄している。
その一方で、死翼騎士団だが、これは純粋な力押しに等しい戦い方だ。20体はいるであろう黒い騎士は、全て前衛という前のめりな布陣。その半数は肉壁として敵の攻撃を引き受け、残る半数は攻撃に特化して捨て身の戦いを仕掛けて来る。
攻撃力だけなら、死翼騎士団の方が圧倒的に上だった。しかし、それを容易に通さないのが蒼玉衛士団だ。彼らもまた、前衛の一部を肉壁にしつつ攻撃を受け止め、その一方で後方から突撃銃の牽制射撃で相手の気を引くことで、その狙いを巧みに逸らしている。
哀れ、接近戦しかできない死翼騎士団の面々は、怒りに任せて剣や斧を振るうことしかできず、射撃を続ける後衛達に攻撃を仕掛けようとしては空振りしている。そして、その隙を突いて前衛の一般兵に守備態勢を取らせることで、体力の維持と堅牢な防御の二つを両立させていた。
「ふむふむ、強さが微妙に違う戦いなのです……。大規模戦の勉強になるのです……」
ウイングキャットのベルと共に、八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)もまた、二つの騎士団の戦いをじっくりと観察している。なるほど、確かに彼女の言う通り、20人規模で激突する戦いなど、ケルベロス・ウォーでもなければ、早々お目にかかれない光景ではある。
「戦争、か……。私としては、死神の不気味さの方が気になるが……」
戦いの基本をしっかり踏襲している蒼玉衛士団よりも、ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)は死翼騎士団の不条理なタフさが気に掛かるようだった。
倒しても、倒しても、何度も起き上がって来る相手と戦場で相対した場合、士気を保ち続けるのは容易ではない。死神だけに、正にゾンビ騎士といったところだろうか。終わりの見えない戦いというものは、それだけで気力を削がれるものだ。
「死神は許さないが……しかし、勝手につぶれるなら今は作戦優先だ。ひとまず捨て置こう」
微妙な戦力差から徐々に綻びが生じ始めた戦場を前に、ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)が呟いた。彼の言う通り、戦いは互いに手駒を失いつつも、徐々にだが蒼玉衛士団の方が優勢になり始めていた。
●漁夫の利の計
永遠に続くと思われた戦いは、しかし蓋を開けてみれば、最後は蒼玉衛士団が圧倒する形で勝利を収めていた。
「はぁ……はぁ……。まったく、手間取らせやがって……」
もっとも、何度叩き潰しても立ち上がって来る死神の騎士を相手に被った被害は甚大であり、蒼玉衛士団の兵士達も、5人を残すだけとなっていた。
「……とりあえず、ここは守り切った。倒れた仲間を回収し……!?」
宝玉化した仲間達を回収し、ブレイザブリクへ撤退しようとする蒼玉衛士団。だが、そんな彼らを逃すことなく、この瞬間を待っていたとばかりに、ケルベロス達は一斉にマンホールの蓋を跳ね上げて飛び出した。
「では本当の戦いを始めよう」
「な、なんだ!! 敵の増援か!?」
マンホールの蓋を囮に、飛び出したハルが強烈な蹴りを炸裂させる。突然のことで対応もできず、反応が遅れる兵士達。そこを逃さず、横薙ぎに払われたセルリアンの刃が、兵士達の防御を斬り捨てて行く。
「まずは、その厄介な衣を破壊させてもらおうか」
長引く戦いの上で、幾度となく重ね掛けされた攻防一体の加護。それらを残したまま戦うのは不利であると察し、火力を捨てても解除に入ったセルリアンの判断は正しい。
「悪いな……足元を掬わせてもらうぞ!」
続けて、高々と飛翔したジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)の斧が、兵士の脳天を兜諸共にカチ割った。彼らの纏う量産型の星霊甲冑は物理的な攻撃にこそ高い耐性を持つが、その反面、魔術的な力を駆使した攻撃には意外と脆い。それ故に、ルーンの呪力を纏った斧であれば、難なく装甲を貫くことも可能なのだ。
「ケ、ケルベロスだと! 何故、このタイミングで!?」
「くそっ! こっちはもう、戦力がズタズタだってのに!!」
ようやく気付いた兵士達だったが、もはや状況は彼らにとって最悪な方向に傾いていた。なにしろ、周囲を完全に包囲されてしまい、撤退することさえできなくなっていたのだから。
「えぇい、怯むな! 相手がケルベロスであれば好都合! その首を取って凱旋すれば、我々は英雄だぞ!」
指揮官の督戦兵が必死に残る兵士達を鼓舞するも、消耗した状態で数的にも不利となれば、そう簡単に士気は戻らない。そして何より、彼らと同じくケルベロス達の布陣もまた、基本を踏襲した無駄のないものだったのである。
「隙だらけなのです! ……そこっ!!」
「ぎゃぁっ! 痛ぇっ!!」
あこの放った矢に加え、ベルの投げたリングが後頭部に炸裂し、兵士が頭を抑えながら振り返った。
だが、それは彼女達の仕組んだ巧妙な罠。あこへと目をやったことで、長身の兵士達は、小柄なリリエッタが接近していることに気が付かず。
「……甘いよ。膝の裏、ガラ空き……」
「おわっ!! あ、足が……!!」
強烈な周り蹴りを膝裏に食らわされ、バランスを崩して倒れ伏す。恐らく、人類史上最強クラスの破壊力を誇る膝カックン攻撃だ。
「……隠れてコソコソとか結構ストレスなのよね。ってことで、派手に行かせてもらうわ!」
「腐った死体共に興味はねぇ。だが……てめぇらだけは別だよゴミ虫共がぁ! 心の蔵えぐってやらぁ!」
膝裏を抑えたまま倒れている兵士に、小町とジグが殺到した。ウイングキャットのグリも加わり、四方八方からフルボッコ!
「うぎゃぁぁぁっ!!」
哀れ、早くも蒼玉衛士団の兵士が一人、何もできないまま戦線から離脱した。全身をズタズタに引き裂かれた挙句、最後は稲妻の竜に食われて丸焦げ状態。先程までの戦いのダメージもあり、さすがにケルベロス達の怒涛の猛攻を受けては、耐えられなかったようだ。
「おのれ! こうなれば、一人でも多く、地獄への道連れにしてくれる!!」
残る蒼玉衛士団の兵士達が一斉に襲い掛かって来るが、しかしケルベロス達は冷静だった。
地の利はあちらにあるかもしれないが、数的有利はこちらにある。そしてなにより、守護の力を使えるのは、蒼玉衛士団だけとは限らない。
「ここは私の出番だな。敵が騎士であるならば、こちらも城塞を以て迎え撃つまで!」
ディミックの身体が激しく輝き、戦場に出現する光の城塞。それはケルベロス達の身体を守る砦となり、蒼玉衛士団の放つ突撃銃の弾丸の威力を、悉く弱めて減衰させた。
●最後の勝利者
奇襲に成功した時点で、この戦いはケルベロス達の勝利と決まっていた。
度重なる猛攻を前に、一人、また一人と数を減らして行く蒼玉衛士団の兵士達。確かに、彼らの布陣は無駄がなく、そのまま戦ったら苦戦は必至だっただろう。遠距離から接近戦しかできない相手を挑発して攻撃を空振りさせるという戦い方も、日々、模擬戦に明け暮れている者からすれば、珍しくもないが効果的な戦法ではある。
しかし、それでも蒼玉衛士団の面々は、気が付けばケルベロス達に圧倒されていた。原因は、彼らが敵の守護を破壊するための術を満足に持ち合わせていなかったことだ。ディミックが防御を固める傍ら、セルリアンが相手の防御を砕くことで、戦いが長引けば長引く程、蒼玉衛士団の方が不利になる。
「ここまでだな。互いに連携して事に当たるまでは良かったが、相手の守りを崩す術を持たずして、容易に勝てると思わぬことだ」
セルリアンの刃が、空間諸共に兵士を斬り捨てる。未だ2体の兵士が残っていたが、既に彼らも満身創痍な状態であり、これ以上の攻撃には耐えられず。
「だいぶ静かになってきたじゃねぇか。蚊が飛ぶみてぇにギャンギャン吠えやがッて……」
ジグが、ニヤリと笑った。もう、遊びの時間はおしまいだ。一度に纏めて食らえるというのであれば、それに越したことはなく。
「んじゃ、この世に別れを告げな! やっちまえ!」
終焉の怨鎖。再臨する絶廻の豪牙。(リィ・ザレクション・エンドロウル)。己の身に宿したあらゆる怨嗟を瞬間的に暴走させて解き放てば、それは憤怒の怪物と化して、あらゆる希望を蹂躙する狂気と化すのだ。
「ひっ……! ぎゃぁぁぁぁっ!!」
抵抗空しく、残る兵士達は、全てジグの具現化させた怪物達に食われてしまった。これで、残すは指揮官である督戦兵のみ。しかも、彼は後方で指揮していたが故、攻撃に特化した間合いに就いていない。
「くそっ! 役に立たない連中め!」
歯噛みする督戦兵だったが、もはや勝敗は覆せぬところまで確定していた。指揮官であるが故、攻撃よりも回復や味方の強化を優先していた彼は、唯一ケルベロス達の防御を砕ける位置にいながら、しかし一度に多数を相手取るための術を持っていないのだ。
「牽制するよ。……合わせて」
二丁拳銃を構えたまま、敵の懐へ飛び込んで行くリリエッタ。銃口は、敢えて正面に向けない。なぜなら、弾の軌道を変えるためには、おあつらえ向きの刃がそこら中にあるからだ。
「ぬっ……な、なんだ、この動きは!? 軌道が読めぬ!!」
大地に突き刺さった刃を狙って弾を撃てば、それらは絶妙な角度で跳弾し、次々に督戦兵の身体へと食い込んで行く。小回りの利く拳銃を武器に、機動力を生かして立ち回るリリエッタにとっては、むしろ千刃地獄は有利に働き。
「今よ! やっちゃいなさい、グリ!」
「ベル、あなたも行くのです!」
銃弾に気を取られた隙を突いて、二匹のウイングキャットが同時に督戦兵の顔面へと襲い掛かった。
「「ウニャァァァァッ!!」」
「ぎゃぁっ! 目、目がぁぁぁっ!!」
それぞれ、左右の瞳を狙っての盛大な猫ひっかき攻撃。不意打ちとはいえ、これは痛い! 顔面を抑えて転がる督戦兵の姿には、もはや威厳の欠片もなく。
「ついでに、これも持っていくのです!」
続けて放たれたあこの矢が、転げまわる督戦兵の尻に突き刺さった。
「ぎぇぇぇぇっ! こ、今度は尻がぁぁぁぁっ!!」
今まで、後方で指揮ばかりしていて、自分が狙われることなど少なかったのだろう。経験したことのないダメージを受け、督戦兵は完全に自分を見失っている。思い上がったエリートの末路としては、これ以上になく滑稽だ。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか。この手に宿れ、生命の光! ――グリッター……グラインドッ!」
「了解だ。私も合わせるぞ!」
小町の放った光の拳に合わせ、ディミックは自ら光の弾丸と化し、そのまま敵に突っ込んで行く。やがて、二つの光は重なって一つになり、光の拳を纏ったかのような状態で、弾丸と化したディミックが督戦兵を高々と打ち上げ。
「落下してくるか。ならば……」
「これで決めるぞ! 薙刀モード……E.N.D・Breaker!!」
下で待ち構えるのは、ハルとジョルディの二人。殺界に己が心を映したハルの髪が白く変わり、ジョルディもまた全身のブースターを解放し。
「境界収束――光を束ねて空を断つ。解放、蒼空断絶(ブレードライズ・デストラクタ)ッ!」
「HADES機関フルドライブ! 戦闘プログラム『S・A・I・L』起動! 受けよ無双の必殺剣! ライジィング……サンダァァァボルトォォォッ!」
刃に収束された光が、必殺必中の斬撃が、督戦兵へと炸裂する。さすがに、これだけの攻撃を受けては耐え切れず、督戦兵は悲鳴を上げる暇もなしに、空中で木っ端微塵に爆散した。
「さよならだ。そして……」
「それが……お前達の終焉だ!」
ハルの呟きに合わせ、互いの背中を向ける形で着地し、ジョルディが続けた。戦場に残された宝玉もケルベロス達に手によって破壊され、憂いは何一つ残さない。
東京焦土地帯。その小競り合いを制したのは、エインヘリアルでも死神でもなく、地球を守りし地獄の番犬達だった。
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年3月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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