●忍び寄る恐怖
バレンタイン。それは一年に一度、恋人達が互いの想いを伝える日。夜の公園では、そこかしこでカップル達が人目を忍び、愛の言葉を囁いている。
「ねえ……この後、どうする?」
精悍な顔立ちの青年が、隣に座っている恋人に尋ねた。女性に好かれそうな雰囲気とは裏腹に、意外と奥手なのだろうか。どうにも、こういったことには手慣れておらず、少しばかり緊張しているのが傍から見ても分かるくらいだが。
「……もう! そんなこと、女の子の口から言わせるつも……り……?」
肩を抱かれたまま顔を赤らめ、女性の方が顔を上げた時だった。
「……ウジュル……ジュル……ル……」
「ひ……ひぃっ!?」
数秒の沈黙の後、息を飲むような悲鳴を上げて女性が固まった。そこにあったのは、先程までの青年の顔ではない。彼の頭部は無残にも食い千切られ、噴水の如く噴き出す鮮血が、彼女の頬へと降り注いで行く。
「あ……ぁぁ……」
完全に言葉を失ったまま、しかし女性は動けなかった。なぜなら、恋人の頭のあった場所には、見たこともない奇妙な怪物が、彼の頭部と思しき何かを咀嚼していたのだから。
「い、いやぁ……んぐっ!? ふぐぅっ……がっ……!?」
それでも、なんとか力を振り絞って悲鳴を上げようとする女性だったが、それよりも早く怪物の触手が彼女の口内を貫き、そして延髄を貫通した。
「ジュル……ジュ……ジュ……」
やがて、ひとしきり獲物の肉を食らったところで、怪物は大きく身体を揺すると、おぞましい分裂を開始する。現れたのは、全く同じ姿をした8体ほどの怪物。それらは次なる獲物を求め、夜の公園へと散って行った。
●鮮血のバレンタイン
「召集に応じてくれ、感謝する。大阪城の攻性植物に、新たな動きが確認された」
敵の狙いは、季節の魔力のひとつである『バレンタインの魔力』だ。そう言って、ケルベロス達に事の詳細を告げるクロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)の表情は、思いの他に険しかった。
「襲撃して来るのは『邪神植物トソース』という攻性植物だ。こいつはバレンタインを楽しむ男女を食い殺してバレンタインの魔力を強奪すると、その場で分裂して繁殖する、厄介な性質を持っているぞ」
正式名称、チョコレイ=トソース。なんともふざけた名前の攻性植物だが、しかしやろうとしていることは、なかなかどうしてえげつない。おまけに、その能力故に一体でも放置してしまうと、鼠算式に数が増えて、大阪都市圏は壊滅させられてしまい兼ねない。
「邪神植物トソースは、バレンタインの魔力が高まった場所に転移して襲撃を繰り返す性質があるようだ。この性質を利用して、お前達が囮になりつつバレンタインの魔力を高めれば、敵を大量におびき寄せる事が出来るはずだぜ」
複数組の囮が一ヶ所に集まっていれば、それだけ多くの敵を引き付けられる。そして、大量に集まった邪神植物どもを、一網打尽に撃破するという算段だ。
囮になるのは恋人や夫婦であることが望ましいが、そうでなくとも構わない。もっとも、本気を出さないと充分な効果は発揮できないようなので、下手な演技で誤魔化すのは厳禁である。
「邪神植物という大層な名前がついているが、こいつらの戦闘力そのものは、そこまで高いものではないようだな。一体ずつ、チマチマ倒しても効率が悪い。一度に纏めて大量の敵を叩き潰せるような戦い方をすれば、それだけ効率良く戦いを進められるだろう」
囮作戦が上手く行けば、敵は最低でも50体以上は出現すると見込まれている。バレンタインの魔力を高めることができれば、その度合いに合わせて敵の数も増えるので、討伐の効率も上がって来る。
「邪神植物トソースは、その無限ともいえる増殖力で、ユグドラシルとアスガルドの国境地域の防衛を行っていたらしいな。前線の防衛戦力を引き抜いたという事は……いや、今は余計な詮索は止めて、大阪の街を守ることに専念するべきか……」
もしかすると、攻性植物とエインヘリアルとの戦争に、何か変化があったのかもしれない。だが、それを探るのは後回し。今はバレンタインの魔力を狙う、邪悪なる攻性植物を退治することが優先だ。
恋人達が愛を語らう夜に、血の涙は必要ない。そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。
参加者 | |
---|---|
天導・十六夜(逆時の紅妖月・e00609) |
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182) |
源・那岐(疾風の舞姫・e01215) |
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506) |
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339) |
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102) |
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107) |
ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834) |
●甘い一口を狙って
ひっそりと静まり返った夜の公園。少しばかり離れた場所に見えるビルの明かりが、街灯の明かりと合わさって、ベンチを優しく照らしている。
「バレンタインの時ぐらい、静かにしていればいいものを……まったく、はた迷惑な事だ」
恋人を狙った攻性植物の襲撃。あまりにムードのない事件だと顔を顰めつつも、しかし天導・十六夜(逆時の紅妖月・e00609)は心の奥で微笑んでいた。
囮とはいえ、公然で堂々と妻への愛情を表現できるのは、悪い気はしない。ベンチの上に腰かけて、妻である源・那岐(疾風の舞姫・e01215)を膝に乗せ、彼女から食べさせてもらうお手製のトリュフの味は格別だ。
「……うん、美味しいね。ほら、那岐も食べてみて」
「はい! ……あ~ん♪」
互いに食べさせ合うことで、何倍もの美味しさを感じられる。そして、そんなことを考えているのは、彼らだけではないようで。
「ムギさん……あ、あーん」
「えっと、あーーん……なはは、うん美味い」
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)と羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)の二人もまた、少し離れたベンチに腰掛け、互いにチョコレートを食べさせ合っていた。
「ほれ、こんな美味しいのを俺だけで食べるわけにはいかん。あーんだ紺!」
「え、そんな、私は別に……」
もっとも、こちらは二人とも慣れていないのか、どこか様子がぎこちない。顔を赤くしたまま固まっている紺だったが、しかしいつまでも硬直しているわけにもいかず。
「あーん……あの、美味しい、です」
ムギの行為を無下にもできずに受け取れば、甘い味が口の中いっぱいに広がって、肩の力も少しだけ抜けた。
「少し照れくさいが、それ以上に幸せでたまらんよ」
「私も、もう少しだけムギさんと一緒にいたいです」
互いに身を寄せ合う二人。ムギの大きな力強い手が、自然と紺の肩を抱き締める。このまま時間が止まってしまえば良いのにと……そう、考えているのかもしれない。
(「こりゃ皆熱々だね。冷やかしたいけど、水を差しちゃいけないしガマンガマン……」)
そんな仲間達の様子を、影ながら見守るステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)。その横では、何故か愛車のシルバーブリットが、何故か小刻みに車体を震わせていた。
「あれ? もしかして、リリちゃんとルーちゃんが仲良くしあってるのに妬いちゃってるの?」
そう言って、ステラが愛車のカウルの先に目を向ければ、そこには仲睦まじげにお菓子を食べさせ合うリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)とルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)の姿が。
「しょーがないなぁ……。はい、チョコじゃないけど天然オイル。あたしからの、バレンタインプレゼントだよ?」
とりあえず、高級燃料を与えることで満足させておき、改めて敵襲に備えて警戒開始だ。まあ、互いの首を長いマフラーで巻いているリリエッタとルーシィドの姿を見た者であれば、羨ましくなるのも当然と言えば当然なのだが。
「あら? リリちゃん、ほっぺたにチョコがついていますわ」
「ルーも、ほっぺにココアつけてるよ。リリも舐めたほうがいいんだよね?」
それぞれ、お互いの頬についたチョコを軽く舐め合えば、どこかこそばゆい感じがする。ちょっとした悪戯心が湧いて来るが、これ以上のことは、まだ少し我慢だ。
(「先程は、ついつい邪心が動きそうに……。でも、折角のバレンタインですし……」)
一度、エスカレートしてしまうと、もう止められないのだろう。徐にチョコのついた棒菓子を取り出して、ルーシィドはリリエッタに、少し大人のゲームをしないかと提案し。
「ん? 両端から食べていけばいいんだよね。リリ、最後まで頑張るよ」
棒の端と端を、それぞれ口に含んで少しずつ食べて行く。それに合わせ、だんだんと二人の顔も近づいて……。
(「邪心が疼いてしまいますけれど、ギリギリで止めないと……ひゃあ!?」)
唇が触れるか、触れないかといった瞬間、ルーシィドは途端にリリエッタに押し倒され、声にならない悲鳴を上げた。
「……ルー、大丈夫? どうやら、お邪魔虫が現れたみたいだね」
身体を起こし、リリエッタが尋ねる。いつの間に接近されたのか、ベンチには既に多数の攻性植物が姿を現している。先程、リリエッタがルーシィドを押し倒したのは、不意打ちを避けるためのことだったのだろう。
「ええ、平気ですわ。それと……その……」
菓子を最後まで完食したリリエッタの姿に、ルーシィドは少しだけ言葉を濁らせた。最後の最後で、まさか本当に二人の唇が……否、今は余計なことを考えている場合ではない。一刻も早く、この薄気味悪い化け物を退治して、街の安全を守らねば。
「すみません、デウスエクスが出て危ないので、避難をお願いします」
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)が人々の避難を続ける中、囮を務めていた者達もまた、それぞれに公園の中央広場へと集まって行く。夜の闇に紛れて現れた、不気味な触手。人々のいなくなった公園にて、恋人達の素敵な一夜を守るための戦いが始まった。
●守りたいが故に
バレンタインの魔力を感じ取り、大挙して出現した攻性植物。邪神植物の二つ名を持つチョコレイ=トソースの群は、個々の強さこそ大したことはないものの、圧倒的な増殖力に任せた数が武器である。
総勢、150体は下らないだろうか。今までになく凄まじい数の敵を前に、ケルベロス達は善戦しつつも、徐々に追い詰められつつあった。
「ここが正念場ですよ。皆さん、頑張りましょう」
極彩色の爆発を以て味方を鼓舞する恵だったが、前のめりになって戦う者が多過ぎるためか、効果は十分に発揮されない。不測の事態はナノナノのらぶりんが補ってはくれるが、それでも多数の敵の攻撃に晒され、らぶりんにも余裕はなさそうだ。
「こりゃ、思った以上に面倒だね。手数が多い分、機動力を重視した方が良かったかも……」
シルバーブリットに騎乗しつつ、木の葉を纏ったステラもまた爆風で味方を鼓舞するも、やはり十分な効果が発揮できているとは言い難い。一発でも成功させれば効果は絶大なのだが、ステラにしろ恵にしろ、サーヴァントの維持に力の半分を持っていかれているため、大人数を纏めて強化しようとしても、思った程の効果を発揮できないのである。
「近づかれる前に、少しでも数を減らさないと拙そうですね……」
ガトリングガンを取り出し、後方から敵を纏めて狙い撃つ紺だったが、倒せど倒せど、敵は更に奥から湧いて来る。おまけに、敵の触手は無限に伸びて、間合いを取っているからといえど油断はできない。
「……ウジュル……ジュル……ジュ……」
「ジュ……ジュル……ル……」
討ち漏らした敵の触手が、一斉に紺目掛けて伸びて来た。さすがに、あの数に殺到されては無事では済まない。咄嗟に避けようと身構える紺だったが、それよりも先にムギが動いた。
「させるかぁっ!!」
「ム、ムギさん!?」
紺に代わり、ムギの身体を無数の触手が貫いた。どう考えても、胸を貫通されているとしか思えない状況。だが、そんな紺の心配とは裏腹に、ムギは胸板で受け止めた触手を跳ね飛ばし。
「やらせねえよ、その為に鍛えた筋肉だ!」
燃える炎に包まれた槍を構え、敵陣へと突っ込んで行く。その勢いに押され、次々と吹き飛ばされて行くチョコレイ=トソース達。
「大好きな人が共にいるんだ、悪いが今日の俺は無敵だぜい!」
多少の怪我など、ムギは物ともしていなかった。もっとも、防御に重点を置いた彼の戦い方では、一撃で敵を倒せるとは限らない。いくら彼が屈強な肉体を持っているとはいえ、さすがに一人で戦い続けるのは不可能だ。
「このままだと、ちょっと拙いかも……。ルー、後ろは任せたよ」
殲滅に必要な火力が足りていない。それを悟ったリリエッタは、独り愛銃を手に、敵の真っ只中へ飛び込んだ。
「逃がさない……全部、やっつける……」
両腕を水平に構え、左右に銃口を向けたまま、激しく回転して敵を撃つ。包囲された状態から相手を殲滅する、ローリング射撃だ。
「リリちゃん、無理は禁物ですからね!」
途中、どうしても被弾が避けられない状況には、ルーシィドが華麗に絵を描くことで傷を修復してフォローするので問題ない。それでも、リリエッタ一人に殲滅を任せてしまっては、彼女の負担は増すばかり。
「しつこい敵ですね。こうなったら……」
那岐が剣を高々と掲げ、足元に広がる星辰の力によって、敵の一団を凍らせて行く。それでも、中には全く凍ることなく、果敢に反撃を仕掛けて来る者もいるわけで。
「やはり、少しばかり火力不足のようだな。ならば、せめて自分の身くらいは自分で守らねば……」
少しばかり防御に力を注ぎ過ぎたと、十六夜は今の状況から察していた。
大切な誰かと一緒に囮を務めるのであれば、その誰かを守りたいと思うのは当然だ。しかし、その想いが強過ぎたのか、今回の布陣は蓋を開けてみれば、随分と前のめりにも関わらず防御重視の持久戦仕様。
多数の雑魚を相手にする場合、これは必ずしも良い作戦とは言い難い。単発では大した威力を持たない攻撃でも、何度も食らえば傷も増え、なによりも疲労が増して来る。だが、絡みついた触手を適切に払えるのがルーシィド以外にいないとあっては、やはり戦況は苦しくなる。
「我知恵の識竜よ……顕現し、其の力解放しろ!」
せめて、他の者に負担はかけまいと、十六夜は伝説の蛇竜を顕現させた。それは瞬く間に周囲の敵を蹴散らすと、その命を奪い、十六夜の下へと還元した。
戦いは、ここからが本番だ。未だ終わりの見えない殲滅戦であったが、それでも十六夜の攻撃によって生じた敵集団の綻びに、僅かな希望が見え始めていた。
●絆は断たれず
夜の公園で繰り広げられる大乱闘。長引く戦いはケルベロス達の体力だけでなく精神も削っていたが、しかしそれは敵とて同じこと。
気が付けば、チョコレイ=トソースは数を大幅に減らし、残り僅かとなっていた。もっとも、長期戦になってしまったが故、らぶりんやシルバーブリットといったサーヴァント達は、既にその姿を消している。討ち漏らした敵の攻撃を受け続け、ダメージが蓄積してしまったが故のしわ寄せだ。
「ジュル……ジュ……ジュ……」
本能に導かれるがままに、チョコレイ=トソースは触手を伸ばし、ケルベロス達の命を奪わんと襲い掛かって来る。だが、それらが仲間達の身体に絡み付いたところで、ここぞとばかりにルーシィドが動いた。
「ご安心下さい。茨の棘に刺されても、あなたがたは決して死にません。ただ、眠り続けるだけ……」
瞬間、敵の触手を上から絡め取るかのように、多数の茨が出現する。不思議と、触れられても全く痛くはない。それどころか、茨は敵の触手を取り込むと、それによる拘束を強引に解除してしまった。
「今です、リリちゃん!」
「ん……わかったよ」
ルーシィドに頷き、再び敵の集団に飛び込んで行くリリエッタ。後ろをルーシィドが守っていてくれるなら、絶対に負けない。負けたくない。
「リリの攻撃は簡単には止まらないよ!」
迫り来る触手の怪物を、リリエッタは巧みな銃捌きで撃破して行く。やはり、こういう敵は攻撃に特化した間合いから、強力な範囲攻撃を仕掛けるに限る。
「こうなったら、一気に全部、吹き飛ばしちゃおう!」
「ええ、そうですね。まとめて爆破処理です」
ステラと恵が互いに頷き、手にしたスイッチのボタンを押した。瞬間、凄まじい爆発が巻き起こり、敵の集団を情け容赦なく飲み込んで行き。
「うぉぉぉぉっ! 俺の筋肉を舐めるなぁぁあああ!!!」
爆風が静まるのも待たずに、ムギが敵集団へと飛び込んで行く。一見、槍しかまともな武器がなさそうに思われるが……それでも、彼には勝算があった。
「吼えろ筋肉、全て纏めて打ち貫け!」
空気中の振動を利用する振動波によって、見えない力で敵を討つ! 敵の反撃? その程度、今のムギには通用しない。
「悪いが俺は一人じゃない、トドメは任せたぜ紺」
「は、はい! わかりました!」
ニヤリと笑って親指を立てれば、それに答えた紺のガトリングガンが、一斉射によりチョコレイ=トソースの群を粉砕して行く。これでもう、本当に敵の数は数えられる程しかいなくなった。後は、強力な攻撃を以て、一気呵成に叩くのみ!
「行こうか那岐。背中は頼んだよ」
この化け物どもに、最後に本当の愛や絆とやらを見せてやろう。そう言って十六夜が剣を掲げれば、那岐もそれに応えて返し。
「力ある武具よ、彼方より出でて敵を穿て」
「これが私の……いえ、私達の力です!」
天空より放たれし無数の刀剣。それらは驟雨の如く降り注ぎ、残る敵を全て纏めて葬った。
●改めて愛を
バレンタインの魔力を狙って現れた、恐るべき攻性植物は退治された。大阪の街はケルベロス達の手によって守られ、人々が怪物の餌食となる未来は回避された。
「お疲れさん、今日は紺が一緒で良かったぜい」
互いに背中を預けて戦えたこともあるが、囮であっても楽しい時間を過ごすことができたと、ムギは紺に向かって言った。そして、折角のバレンタインが、これで終わりではつまらないとも。
「さあ、行こう。今日はまだ終わりじゃない。二人で楽しもう!」
「え……? ふ、二人でって……その……」
色々と頭の中で妄想……もとい、想像が膨らみ、紺の顔が瞬く間に赤くなった。どうやら、ここから先は、二人だけの時間を過ごさせてやった方がよさそうだ。
「ふむ……それでは俺達も改めて、二人だけのバレンタインを楽しもうか」
「そうですね。皆様も、良い夜をお過ごしになれますように……」
折角の雰囲気を邪魔しては悪いと、十六夜と那岐は互いに微笑みながらも二人で公園を後にする。そして、同じく残されたルーシィドやリリエッタ達もまた、それぞれにバレンタインを楽しもうと場所を変え。
「あ、そういえば、ハーブティーを持って来ていたんでした」
ルーシィドが水筒に入れたハーブティーを振舞えば、リリエッタは用意していたバレンタインのプレゼントを取り出した。
「はい、これ。ステラとシルバーブリットにも、バレンタインのプレゼントをあげるね」
同じ寮に住んでいる仲間へと、プレゼントを用意するのも忘れない。そんなリリエッタの心遣いに感謝しつつ、ステラはこっそりとルーシィドに向かってカンペを見せ。
(「……えぇっ!? そ、そんなこと……ほ、本当に、やっていいんでしょうか……?」)
カンペを見たルーシィドが思わず赤面しながら硬直していたが、それはそれ。いったい、何が書かれていたのか。ここは敢えて、詮索しないでおいてあげるとしよう。
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年2月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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