たとえば目の前にこたつがあるとして

作者:星垣えん

●蜜柑のススメ
「冬だからって! 好きに寒くなっていいわけじゃないんだからね!」
 とある民家に響くツンデレ風ボイス。
 その正体は、居間に据えたこたつに収まっているビルシャナさんだった。日本列島を襲った寒気にたいそうお怒りの鳥類はパクパクと嘴を動かして蜜柑を食っている。
 そしてその周りには、やっぱり信者の皆さまがいた。
「寒いとやっぱりこたつが大活躍ですねー」
「はー……もう出られない……」
「でしょでしょ。やっぱり冬はこたつでぬくぬくするに限るよ。蜜柑を食べながらこの怠惰を堪能しよう? こたつ蜜柑で寒い冬を乗り切ろ」
 背中を丸めて少しでもこたつの暖を受けようとする信者たちへ向けて、ころころと卓上に蜜柑を転がす鳥さん。
 それぞれキャッチした信者は、言われるがまま蜜柑を剥いて、食べた。
「こたつとの相性最強か……」
「あかん。止まらんくなるやつやコレ……」
「止めなくていい。蜜柑はいっぱいあるから。好きなだけ食べていいんだよ。手が黄色くなるとか気にしないでさ、蜜柑を食べようやないか」
 まるでカジノのディーラーのように、蜜柑を配りつづける鳥さん。
 こたつと蜜柑。
 その最高に日本的なコンビネーションから逃れることができるわけもなく、信者たちは魅入られたように蜜柑を食べ続けるのだった……。

●蜜柑だけがこたつじゃねえ
 身を切るような冷たい風が吹くヘリポート。
 そこに、1個の段ボール箱がいた。
「みかんといえば段ボールなのですー」
 がさごそと動く段ボール箱の中から、くぐもった声が聞こえる。
 何を隠そう、中身はマロン・ビネガー(六花流転・e17169)である。段ボールが大好きなオラトリオは『防寒性も高いのです』とか言いだして、猟犬たちが来るのを段ボール箱を被って待っていたのだ。
 ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)はその段ボール箱の上にそっと毛布をかけてやると、皆に振り返った。
「さて、仕事だ」
 何事もなかったように説明を始める王子。
 現場の状況やらを聞いた猟犬たちは、また阿呆な鳥が、とため息をついた。
「当分はこたつから出てこない気がしないでもないが、いつ外へ繰り出すかもわからんからな。億劫だとは思うが頼むぞ、ケルベロスたちよ」
 念を押すように、ひとつ首を肯ける王子。
 足元にずりずり移動してきた段ボール箱をさっと避けると、そのまま信者たちのことへと話を移した。
「信者たちはビルシャナの教えに納得し、こたつで蜜柑を貪っている。しかしそれより有意義な、あるいは快適な『こたつの過ごし方』を教えてやれれば目を覚ますはずだ」
 これまで生きてきた中で体得したこたつ道を見せてやれ――。
 とか適当なことを言って、王子は颯爽とターンしてヘリオンへと歩き出した。
 その大きな背中を見つめながら、猟犬たちは察した。
『あ、これこたつでぬくぬくしてれば良いやつですね』
 と。
 思い思いにこたつで怠惰を貪れば、なんかいい感じになっているんだろう。そのさまを見た信者たちが勝手にこたつ蜜柑派から改宗してくれるんだろう。
「こたつの過ごし方はひとつではないのです。真のこたつ道を手本を見せて教えてあげるのですー」
 周囲を徘徊する段ボール箱も、皆の考えを裏付けるように呟いている。
 いやー、楽な仕事ですなあ!
「では出発するぞ、ヘリオンに乗ってくれ。こたつで寝て風邪をひいたりしないように、くれぐれも注意するのだぞ」
 ヘリオンの搭乗口をひらく王子。
 中にはすでに『こいつを使うんだな!』とばかりに立派なこたつが積みこまれていた。
 かくして、猟犬たちはこたつでのんびりする仕事に出発するのだった。


参加者
セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
ティユ・キューブ(虹星・e21021)
朱桜院・梢子(葉桜・e56552)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ミルファ・イスト(美幼女ガンナー・e85339)

■リプレイ

●ぬっくぬくやで
 底冷えするような、寒さだった。
 ティユ・キューブ(虹星・e21021)はこたつ布団をお腹まで引き上げると、膝に乗っていたペルル(ボクスドラゴン)が布団からぴょこっと頭を出す。
「ふう……やっぱり寒い日はこたつだね」
「右に同じー」
 だらけきった姿勢で賛同するヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)。デグー(ファミリアロッド)の『アール』が丸まった背中を滑っても微動だにしない。
 完全に、こたつに屈しとるがな。
「おこた最高……」
「たまには、こんな感じでまったりするのもいい……」
 バター化してるヴィルフレッドにしみじみした吐息で応じたのは、セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)だ。
 連れてきた仔犬や仔猫、ハムスターたちが別に用意した小さなこたつでスヤァしてるのを見て、その吐息はますます深まる。
「最高の仕事だよ……」
「うん、こたつが最高なのは認めるけどさぁ……」
 セルリアンの呟きに応じたのは――鳥。
 猟犬たちがこたつでぬくぬくしている様子を、真横のこたつからずっとガン見していた鳥さんである!
「家主の許可も得ずにこたつ三昧とは……!」
「夏だったら通報されてるぞ!」
 隣でこたつ生活を始めた人たちへ、感心するしかねえ信者たち。
「むぅ、こたつにミカンはいいね」
 こたつに小さな体を埋めて蜜柑をぱくぱくしてたリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が、食べ終えた蜜柑の皮を脇に置く。
「けどこれ以上ビルシャナを増やすわけにはいかないよ」
「ええ、そうね!」
 リリエッタの言に頷く朱桜院・梢子(葉桜・e56552)。
「炬燵の可能性は蜜柑だけじゃないものね!」
「ミルファたちがコタツでの楽しみ方を教えてあげるの。あ、もちろんビルシャナ討伐は忘れないの。ほんとだよ? なの」
「それ本人聞いてるけど?」
 のんびり蜜柑むきむきしてるミルファ・イスト(美幼女ガンナー・e85339)の討伐宣言に、同じく蜜柑むきむきしながら鳥さんがツッコむ。
 しかしきっと、少し経ったら鳥さんはガチで消えているだろう。
 そう思いながら、マロン・ビネガー(六花流転・e17169)とシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)はずるずるとこたつに吸われていた。
「家ではホットカーペットなのでこたつはちょっぴり新鮮です」
「本当は脱げたら最高なんですが……いや脱ぎませんけどね? 最近、ほんとに脱ぎすぎだなと思ってるので……さすがにね?」
「誰に言ってるのです?」
「いえ気になる人もいるかと思いまして」
 もうそろそろただの全裸キャラになってしまう。
 そんな緊張感を持ってるらしいシフカさんの今日の目標は、服を着ていることです。

●絶対太るやつ
「ほら蜜柑だよ。みんな食べる?」
『~♪』
 綺麗に剥いた蜜柑をちらつかせると、こたつでまったりしていた動物たちが途端に顔を上げてセルリアンのもとまで小走りしてくる。
「順番だからね。だめだめ袖を引っ張らないで」
「くっ、可愛すぎか……!」
 信者たちは小動物たちと全力で戯れるセルリアンを見て、悔しさに唇を噛む。
 ちっちゃな子たちがもふもふしている――それはもう明らかに理想郷だったんや。
「動物いいね……蜜柑を美味しそうに食べてる。やっぱこたつ蜜柑なんだよなあ」
 我が子を見守る親の顔を見せる鳥さん。
 けれどマロンはこたつから這いだすと、かぶりを振った。
「蜜柑は定番かつ旬な物ですし否定はしませんよ。しかしそれ以外にもこたつには色々あるのです。いつの間にか中に潜っている猫を追い出すとか、御馳走を囲むとか」
「ご馳走?」
 訊き返した鳥が振り向くより早く、マロンは卓上に土鍋を取り出した。
 昆布といりこで取った出汁に浸かっているのは、白菜と長ネギ、豆腐に茸、イカの足や鱈や海老のつみれ。カセットコンロの火でくつくつと煮えている。
 信者たちは生唾を飲んだ。
「美味そ……」
「蜜柑だけでは栄養が偏るのです。そこでこのお鍋! 様々な事を話して絆を深め、結束力も高まりそうですし良い感じになります」
「ミルファもマロンお姉ちゃんの意見に賛成なの。お鍋は良いものなの」
 ちょこんと横から顔を出してきたミルファの手元にもまた、鍋がある。
 コンロの上でぐらぐらと汁を揺らすその鍋の中身は――鶏肉と野菜がたっぷりと使われた水炊き風だ。箸でざっと取り上げて喰らうところを想像してしまった信者たちはやっぱり喉を鳴らしてしまう。
「水炊きもよき……」
「熱々の具をフーフーして、食べさせ合いっことか、みかんじゃ味わえないの。お兄さんたちも、ミルファたちと一緒に食べよなの」
「なんという笑顔!」
 天使のごとき笑顔で鍋に誘うミルファに、ぐっと胸を押さえる信者たち。
 そんな彼らを尻目に、リリエッタやセルリアンは遠慮なくマロンとミルファの鍋に箸を伸ばしていた。
「マロンの鍋は海鮮の出汁がすごい出てるよ。熱々で温まるね」
「水炊き風は優しい味で、強烈な海鮮鍋とバランスが取れてるなあ」
「お口にあって何よりなの」
「おうどんあるのでシメもばっちりです」
 生うどんを高々とかざすマロンへ、大きな歓声をあげる仲間たち。
 普通に宴である。いちおう説得にはなってると思うけど、たぶん7割ぐらいはガチで楽しんでる。
 しかし、だ。
 ヴィルフレッドや梢子は、物足りなさを感じていた。
「うーん、なんだかさ……甘い物も欲しくならない?」
「奇遇ねヴィルフレッドくん。私もそう思っていたのよ!」
 顔を並べて腕組みする2人。
 すると、その発言を予期していたかのようにマロンがフォンデュ鍋を出した!
「ならチョコフォンデュは如何です? 季節の果物やドーナツやワッフルをチョコにそっとくぐらせて……上に粉砂糖とか振っちゃうです?」
「チョコフォンジュ!」
「最高じゃないか……!」
「はっ、そうだわ! 私いろいろお菓子も持ってきてるから、それも使っちゃいましょう! ほら葉介もってきて!」
 梢子の手招きに応じて、大量の菓子を持ってくる葉介(ビハインド兼夫)。ビスケットやバウムクーヘン、ドーナツからカステラまで……財布が死にかける勢いで買いこんだ菓子は卓上に収まりきりません。
「バレタラシイデー用に大量に買ったちょこれいともあるわ! ちょこが足りなければこれ使ってちょうだい!」
「やったー! パーティーだー!」
「こたつで温まりながらチョコフォンデュ……くっ、なんて魔性なんだ。食べたら乙女として危ないってわかってるのに手が止まらない……!」
 万歳するヴィルフレッドの横で、なんか緊迫した顔でビスケットをチョコ鍋へと伸ばすティユ。
「美味しい……!」
「じゃあ僕はドーナツで!」
「私はかすていらにしようかしら!」
「苺があるなら、リリは苺にするね」
「んー、どれにしよう」
 顔を蕩けさせるティユを見るなり、競うように始動するヴィルフレッドと梢子。リリエッタとセルリアンも加わってチョコフォンデュは大盛況を博した。
 だが! これで終わりじゃねーのが猟犬たち!
「ふう、なんだかちょっと熱くなってきましたね」
 黙々と水炊き風(の野菜)を貪っていたシフカが、汗の浮かんだ額を拭う。
 あれこれ脱ぐ流れじゃ……と一瞬思ったが、シフカの指はスーツのボタンにはかからない。その指が触れたのは傍らに置いていたクーラーボックス。
「体を冷やすためにアイスでも食べましょうか。暖を取りながら食べるアイスなんて最高じゃないですか?」
「アイス……だと!?」
「いやー生き返りますね」
 ざわっとする信者たちに見せつけるように、アイスを口に入れるシフカ。オレンジ色の派手な容器に入ったそれは、鮮烈な蜜柑味だった。
「蜜柑の味だって、蜜柑アイスを食べれば味わえますよ。しかもアイスならチョコやイチゴ、抹茶もあります。棒アイスを舐めるもよし、カップアイスをすくって食べるもよしです」
 にやりと笑ったシフカが、スプーンをくわえたままクーラーボックスの中身を卓上にぶちまける。ひんやり冷気を放つそれは30個では下らない。
「色々用意しましたから、皆で甘くとろけるアイスをいっぱい楽しみましょう」
「こたつでアイスは乙だね……!」
「はっ……溶かしたちょこれいとをあいすくりぃむにかけるのも美味しそう!」
「アイスにチョコを……最高の最高じゃないか!」
 ペルルと一緒に身を乗り出すティユ。梢子が閃いたとばかりにくわっとすると、ヴィルフレッドは居ても立ってもいられずバニラの棒アイスを掴んだ。
 そっから、背徳のアイスパーティーは小一時間続きました。

●せっかく顔を突き合わせたなら
「むぅ、お腹いっぱいになったら眠くなってきたよ」
 あらかた鍋やスイーツを食べ終えたリリエッタが、満腹のおなかをさする。
「まあ眠くなることはあるよね。特にこたつって」
「うとうとしちゃうんだよなあ……」
 目をこするリリエッタの姿に、いたく同感する信者たち。
 そんな彼らの前で、リリエッタは言った。
「こんなときは、猫さんみたいにこたつの中で丸くなるに限るよ!」
「猫さんみたいに!?」
「ああっ、するっとこたつ布団の中に潜って!」
 信者らが視線が集まる中、すぽっとこたつ内部に潜りこむリリエッタ。もぞもぞと全身を収めてから顔だけを出すと、少女は心なしか脱力した表情になる。
「こたつは暖かいけれど上半身はちょっと寒かったりするからね。その点、猫さんみたいに入り込めば全身ぬくぬくだよ」
「そりゃぬくぬくだろうけど……」
「いいのか? それは人として……!」
「気持ちいいものは気持ちいいよ」
 頑として猫化をやめないリリエッタ。そのさまはティユの膝上で丸まって眠りかけてるペルルと何ら違いないのんびり感である。
「なんて幸せそうなんだ……!」
「しかしこたつで寝るのはご法度!」
 リリエッタたちが見せる誘惑になんとか堪える信者たち。
 だがそこに「はぁ」と小さなため息が聞こえた。
 セルリアンだ。相変わらず小動物たちの愛らしさを堪能していたセルリアンは、もふもふの仔犬を抱き上げて信者たちへ目を向ける。
「ならこの子達と過ごすっていうのはどう? いっしょにごろごろまったりしたりするのもいいし、動物たちの幸せそうに蕩けている顔を見てるとこっちも幸せになるよ?」
「ごろごろ……」
「まったり……」
 抱き上げられた仔犬を見つめる信者。
 くりくりつぶらな瞳、短い手足、もっふり柔らかそうなお腹……。
「いかん! なんという可愛さだ!」
「ほら、ちょっとこっちに来てこの子達と戯れてみない? みんなもふもふあったかで、すっごく気持ちいいんだよ?」
「やめて! すりつけないでぇ!」
 セルリアンが押しつけてくる仔犬たちの感触に悶絶する男たち。いや狂喜と言うべきかもしれない。顔がにやけてるから。
「気持ちよさそうですね……やっぱりこたつは各々好きなように過ごすべき……」
 体の疼きを抑えるべく腕を抱くシフカ。
 あまりに服を着てしまっているので禁断症状が出ているのかもしれない。なにせ平時ならば全裸でこたつインしている女である。ここまで肌を晒していないことがミラクル。
 と、そんな折だ。
「あ、そうだ!」
 ぽん、と両手を合わせたヴィルフレッドが荷物を探る。
「此処にはめっちゃ近くに人が居る。これを使わない手は無いよ。ということで……ここはTRPGしかないね!」
 と言って、彼が出したのは大判のタブレット。
 その画面には――『DARK SAVIOR』と題されたルールブックが!
「最近発売されたゲームなんだけどね、とっても簡単で初めての人でも楽しめるんだ!」
「TRPG……聞いたことはあるけどなぁ」
「ほら! ちょっとお試しでさ! ね!」
「急に押しがすごい!!?」
 筆記具やら10面ダイスやらを神速で用意したヴィルフレッドくんが、ぐいぐいと信者をその道へ引きこまんとする。なんという上客。
「ルールわからないけど、リリもやってみるね」
「歓迎するよリリエッタさん!」
「もーこれ逃げられない空気じゃん……」
 リリエッタも交えて始められるプレイ。
 それに信者仲間が引きこまれるのを、他の信者は眺めるしかなかった。
「引きこまれてしまった……」
「あいつ地味にエンジョイしてね?」
「ふふふ、やってみれば意外にはまっちゃうことってあるわよね!」
「ん?」
 背後からかけられた声に信者が首を回すと、そこには卓上で百人一首に興じている梢子と葉介の姿があった。
「あまつ――」
「ちぇーーい!!」
「!?」
 読み札を持ったマロンが3文字目を読むや否や、弾丸のような速さで梢子の手が札を払う。葉介は身じろぎする間もなかった。
 うん、ワンサイドゲーム。
 和服をたすき掛けまでしちゃうガチ勢の梢子さんに勝てる道理がなかった。
「あれ、もう梢子さんの勝ちです?」
「まったく……もう少し骨のある人はいないのかしら!」
 場を見たマロンが首を傾げ、梢子は盛大に肩を竦める。無理やり相手させられてここまで言われる葉介はきっと泣いていい。
「百人一首かー。昔やったなー。弱かったけど」
「あらそうなの? でもほら、ならできるでしょ! やってみましょ!」
 強引に手を取る梢子さん。
 こうしてこたつ上では、TRPGと百人一首が催される運びに。
 しかし、アナログゲーに抵抗がある信者たちもいた。
「よくできるなぁ……」
「面倒くさそう……」
 手間を惜しみ、黙々と蜜柑を食べる現代っ子。
 そんな彼らの隣に、ティユはゲーム機を携えて座った。
「君たち、蜜柑も勿論否定しないが、ひとつに決めることはないんじゃないかな? 自分にあったものを探したりしても、炬燵は怒らないさ」
「は、はぁ……」
「という訳で、このゲーム機で皆で対戦でもしないかい? こういうのって人数が多いほど楽しめると思うんだ」
「あーこれなら」
「馴染みがあるからなー。いっすよ! やりますか!」
「ふふ。お手柔らかにね」
 ティユの誘いに、あっさりと信者たちが陥落した。
 もとより鍋やらアイスやらで蜜柑信仰は薄れていたのだ。
「蜜柑うま……あれ?」
 ずっと蜜柑食ってた鳥がふと顔を上げれば、誰も蜜柑を食っていない。
 その状況にしばらくぼーっとしていると――やがてミルファの手が彼の肩を叩いた。
「おまえの気持ちも、言いたいことも、よくわかるの」
「お嬢さん……ってその手に持ってるそれは?」
 鳥さんが訝しげに見つめる先には、女の子っぽいぷりてぃーなハンマー。
 自分専用のハンマー『べるぜえる』を、ミルファはゆっくりと振りかぶった。
「ちょ、あの!」
「でも、ビルシャナは見かけたら即討伐、がケルベロスのルールなの。お空の向こうまで、ぶっ飛びな。なの」
「アァァーーッ!!?」
 腰の入った全力のスイングが、容赦なく決まったぁぁー!

 ちなみに言うまでもなく、鳥さんはその後ボッコボコに討伐されました。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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