届く声、届かぬ声

作者:洗井落雲

●声
 雑多な音が、町中に響いていた。
 それを構成する物。例えば車の音。例えば風の音。例えば足音。例えば――声。
 こんなにも、街には声が溢れている。高い声。低い声。素敵な声。
(「わたしだって――ただ欲しかっただけなのに」)
 胸中で、少女は呟く。しかしその表情に絶望の色はない。きり、と少女が顔をあげれば、そののど元がモザイクで包まれているのが見えただろう。
 なれば彼女はドリームイーター。その名を『エコー・ジャックス』。声なき、声を求める者。
(「ううん、絶対に、諦めたりしない! どんなことがあったって……わたしは、夢をかなえるんだ! わたしの声、わたしだけの声を手に入れる!」)
 そう言って見上げた空には、十匹ほどの奇怪な魚が浮かんでいた――。

●未来
「集まってもらって感謝するよ。では、今回の事件について説明しよう」
 ドリームイーターが出現する予知がなされた、と、アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は集まったケルベロス達へと告げた。
 ジグラット・ウォー、その戦いの結果、ドリームイーターの本星、ジュエルジグラットはケルベロス達によって制圧された。
 この結果、ドリームイーターは勢力として壊滅したのだが、残されしドリームイーターたちは、戦争で生き延びた『赤の王様』『チェシャ猫』らに導かれ、戦場から離脱したようなのだ。
「この残党たちは、デスバレスの死神勢力に合流しようとしているようだ。今回現れたドリームイーター、『エコー・ジャックス』も合流を狙っているようで、彼女を迎えるために、下級の死神……ザルバルクの群れが出現することも合わせて予知されている」
 となれば、彼女たちの合流を黙って見過ごすわけにはいかない。
 彼女たちの合流地点へと向かい、ザルバルク、エコー・ジャックス、共に撃破する。それが、今回の作戦である。
「敵は、前述したとおりドリームイーター、『エコー・ジャックス』と、下級死神の『ザルバルク』の群れだ。これを撃退してほしい」
 エコー・ジャックスは、死神の迎が来るまで隠れ潜んでいる。そのため、デスバレスへと移動しようとする子の瞬間のみが、撃破の唯一のチャンスでもあるのだ。
 そして、一つ、注意しなければならないことがある。
 エコー・ジャックスは、戦闘開始後6分(6ターン)が経過した時点で、デスバレスへと撤退してしまうと予知されている。
 ザルバルク達はドリームイーターの撤退支援に全力を尽くすため、ただ漠然と戦闘を行うだけでは、エコー・ジャックスの逃走を許してしまう可能性が出てくる。
「何らかの手段で、敵の撤退を妨げる必要があるだろうな。エコー・ジャックスへ集中して攻撃したり、あるいは敵の性格を利用して挑発を行ったり……まぁ、そのあたりは皆の作戦に任せるよ」
 そう言って、アーサーはひげを撫でた。
「ドリームイーターの勢力はほぼ壊滅状態だ。残党も残り少ない……とはいえ、彼らが死神勢力に加わるのを、黙って見ているわけにもいかないのでね。戦争の後処理的な作戦になるが、気を抜かずに頑張ってほしい。それでは、皆の無事と、作戦の成功を祈っているよ」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した。


参加者
シルク・アディエスト(巡る命・e00636)
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)
立花・恵(翠の流星・e01060)
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)
アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
レヴィン・ペイルライダー(秘宝を求めて・e25278)
小柳・玲央(剣扇・e26293)

■リプレイ

●声なき声
 とある市街地、ビルの屋上――。
 少女……ドリームイーター、『エコー・ジャックス』は、決意を込めた瞳で、空に浮かぶ、十匹の奇怪な深海魚を見つめていた。
 死神勢力への合流。そこにどんな結末が待っていようとも、かなえたい夢が、エコー・ジャックスにはあった。
 自分だけの声を手に入れる。
 喉元――声をモザイク化されたエコー・ジャックスにとって、失われた声を手に入れることは、何よりもかなえたい夢であったのだ。
(「夢をかなえる。絶対に」)
 そう決意する胸の裡。エコー・ジャックスはその手を伸ばし、深海魚――死神ザルバルクの迎えを受け入れようとして、はた、と止まった。
(「……だれ!?」)
 何者かがいる。そのような気配を察したエコー・ジャックスは胸中で叫ぶ。それはテレパシーのようなものとなって、そこにいた者たちの頭の中へと、直接ぶつけられた。
 だが、それは声なき声。響くそれは、声となって聞こえたのではなく、そのように語られた、という結果だけが叩きつけられたものだ。直接思いをぶつけてなお、声という特色は失われている。
「なるほど――声を失うという事は、こういう事なのですね」
 シルク・アディエスト(巡る命・e00636)は静かに頷いた。そこにいた者は、シルクをはじめとした8名のケルベロス達だった。
「よぉ! ケルベロスがやってきたぜ!」
 あえて声を良く通すように、響かせるように言ったのは、立花・恵(翠の流星・e01060)だ。
(「あなた達……ケルベロスなの!?」)
「――ええ。エコー・ジャックス、あなたをこのまま、野放しにしておくわけにはいきません」
 シルクが言うのへ、
「声を求めているだけ……だとしてもっ。逃がすわけには、いかないのっ!」
 続いたのはシル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)だ。エコー・ジャックスがそのモザイクを晴らすという事は、その間に多くの犠牲者を出すという事に他ならないのだ。
(「どうして……どうして、邪魔するの!?」)
 その想いを知ってから知らずか――理解できないのか。焦りと、怒りの感情を乗せたテレパシーが、ケルベロス達の胸の裡を叩く。
「お前の、声が欲しいって気持ちはわかるさ……けど、そのために犠牲者を出すわけにはいかない」
 頭のゴーグルを下げてかけながら、レヴィン・ペイルライダー(秘宝を求めて・e25278)はそう告げる。解ってくれたら、との思いは、しかし分厚い認識の壁によって阻まれた。
(「……そう、あくまで邪魔をするのね」)
 エコー・ジャックスにとって、ケルベロス達は、自分の夢を阻害する悪しき邪魔者でしかないのだろう。
(「でも、わたしは諦めない! 諦めなければ、夢は必ずかなうって信じてるんだから!」)
「良い言葉だね――でも、叶えてはいけない悪夢もあるものだよ」
 諭すように、小柳・玲央(剣扇・e26293)は伝える。
「それに、あなたのやり方じゃ……そのモザイクを消して、欠落を埋められたって、それで手に入るのは『あなたの声』じゃないんだよ」
 エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)もまた、告げる。だが、二人の言葉に異を介さず、返されたのは反対の言葉。
(「そんなの! やってみなければわからない!」)
 再び声をかけようとするエヴァリーナを、手で遮ったのはアウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)だった。
「ああ言う手合いは問答無用よ、エヴァ。エコー・ジャックス、私たちは、あなたの望む夢を邪魔し、同時にあなたの望む声を持つものよ」
 ビハインド『アルベルト』は、声をあげるアウレリアに侍る様に、傍に立つ。
「あなたの夢をかなえるというのなら――奪りにいらっしゃい。私たちの声を」
(「……おっけー。あなた達をやっつけて、声ももらうっ!」)
 ケルベロス達の登場に――そして何より、その声にひきつけられたエコー・ジャックスは、撤退の事を忘れたかのように、最前線へと飛び出してきた。その様子に慌てたように、しかし追従するザルバルク達。
「カウントは必要ないかしら。でも、念のため、数えてはおきましょう」
 アウレリアがかちり、とタイマーを起動させる。それは戦闘開始の合図になった。
「やれやれ、残念ですが――」
 据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)の呟き。両陣営が一斉に動いた。突出してくるエコー・ジャックスたちを包囲するように、ケルベロス達が陣形を組む。
 その包囲網から敵を離脱させぬよう、しっぽを大きく振るいながら、赤煙は続ける。
「死神の戦力が強化されるのも看過できません。ここで潰えていただきますよ」
「さぁて、始めようか!」
 高らかに恵が声をあげ――戦いは始まった。

●届かぬ声
(「いくよ!」)
 声なき声が、直接脳裏に響き渡る。それは声なきノイズと化して、ケルベロス達の頭を激しくかき乱した!
「聞かせてあげる、わたし達の声をっ」
 そのノイズをかき消すように、シルは声をあげた。エコー・ジャックスへと届くように。自分たちの声を魅力的に見せるという事は、それ自体がエコー・ジャックスへの囮として、そして足止めとして機能するという事だったからだ。
 シルはグラビティを編み上げ、氷河期の精霊を召喚する。突撃してきた前衛のザルバルク達が、その勢いに押され、たたらを踏む。
「いくわよ、二人とも」
 アウレリアの言葉に、アルベルトとエヴァリーナ、二人が頷いた。『Thanatos』の銃口が光るや、放たれた無数の銃弾がザルバルクへと降り注ぎ、その足を止めた。そしてその隙を逃すアルベルトとエヴァリーナではない。アルベルトの放ったポルターガイストの礫がザルバルクを打ち付け、
「皆の声、すごく綺麗だよ!」
 エコー・ジャックスにアピールするように声をあげながら、エヴァリーナのオーラの翼が、槍の突撃と共に羽ばたき、灼熱と化してザルバルク達を焼き払う。
「では、合わせましょうか!」
 続いて放たれる赤煙の炎のブレス――混ざりあう二つの炎は獄炎と化して、ザルバルク達を焔の中へと閉じ込める。
 ぎちぎちと悲鳴を上げて、ザルバルク達が炎の中から飛び出してきた――その口をバクバクと開けながら。ディフェンダーたるシルクが、その前面に立ちはだかる。
 シルクの周囲を浮遊する大盾が、突撃するザルバルク達を正面から受け止め、あるいは受け流した。深海魚たちの攻撃を涼しげな顔で受け止めるシルクの守護は鉄壁だ。
「まだまだ! まとめて焼き魚にしてやるぜ!」
 レヴィンの投げつける如意棒が、炎を伴って回転。焔に焼かれるザルバルク達を飲み込み、さらなる炎へと晒す。じりじりとその身を焼かれるザルバルク達が、苦しげにぎゅいぎゅいと息を吐いた。
「自分たちは火を吐く癖に、やっぱり焼かれると苦しいかい?」
 その様に、ニヤリと笑うレヴィン。
「じゃあ、代わりに冷やしてやるか!」
 バスターライフルを構えたのは、恵だ。放たれる凍結光線が直撃したザルバルクが、今度は身体にまとわりつく氷に悲鳴を上げる。
「輝きに眩んだ瞬きの合間に、君の心に入り込んでいた♪」
 マイクを手に、歌うように戦うのは玲央だ。普段は舞うように、リズムに乗って戦う玲央にとって、歌いながら戦うという事は造作もない事。
 もちろん、歌を歌うという行為も、エコー・ジャックスへのアピール――声の魅力のアピールだ。
 リズムに乗って放たれた光輪が、ザルバルク達を切り裂く。ダメージの蓄積していたザルバルク達は、そのまま空中で泡のように消えていく。数度にわたる攻撃の末、敵の陣形に穴が開いた――エコー・ジャックスが、ケルベロス達の眼前へと現れたのだ。
「皆さん、道は開かれました」
 シルクは声をあげながら、アームドフォート、『適者生存』のミサイルポッドから、無数のナパームミサイルを放つ。残るザルバルクへのけん制射撃を撃ちながら、
「ここで必ず……エコー・ジャックスを討ちます」
(「くっ……だけど、まだまだ!!」)
 放たれたテレパシーを、再びシルクは受け止めた。直接叩き込まれる攻撃は、シールドを貫いて、シルクの身体を傷つける。
「それだけの意志を持ち……それでも、道を違えねばならないのは、少し、残念ですね」
 だが、シルクはエコー・ジャックスの前へと立ちはだかる。
 エコー・ジャックスは倒すべき敵。定命ならざる者。それは、シルクにとってかわらぬ事実である。
「故に――貴女の夢、私達が砕きましょう」
(「負け……ないっ!」)
 放たれる破壊の意志を、ケルベロス達はその身に受け切った。しかし怯むことなく、エコー・ジャックスへと突撃する!
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ……。六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 シルはその両手を、エコー・ジャックスへと向けてかざした。途端、放たれるのは強大な魔力砲。魔力の渦はエコー・ジャックスを飲み込み、そして放たれた砲撃の反動を抑えるかのように、シルの背中には、一対の蒼白い翼が現れ、大きく羽ばたいた。
「誰かを犠牲にして何かを得ようなんて、そんなの間違ってるっ!」
 放たれる、追撃の一撃――二発目の砲撃がエコー・ジャックスを包み込み、その身体を焼いた。
(「わたしは、間違ってなんかないっ!」)
 悲鳴にも近い、拒絶の言葉――エコー・ジャックスと分かり合えることは無いのだろう。せめてそのモザイクを晴らす力があれば。しかしその手段は、今この場にはない。
「間違ってないと思うなら、それでもいいわ。私たちはあなたを全力で阻止するだけよ」
 アルベルトと共に、アウレリアが攻撃にうつった。アルベルトの金縛りがエコー・ジャックスの身体を痺れさせ、その隙をついたアウレリアの手刀が、エコー・ジャックスの防具を切り裂く。
「続くよ、義姉さん!」
 エヴァリーナが追撃をお見舞いする。オウガメタルを纏った拳による一撃が、エコー・ジャックスの防具をさらに抉り取る。
(「何で……あなたには、そんな優しそうで柔らかな声があってっ! いいじゃない! その声が、わたしのでも……っ!」)
 流れ込む、エコー・ジャックスの思考。エヴァリーナは刹那、悲しげな顔をしつつも、しかし頭を振った。
「ううん、この声は、私の声なんだ」
(「うう……ううっ!!」)
 ダメージからか……いやいやとするように頭を振るエコー・ジャックス。守る様に、残るザルバルク達が飛来する。
 放たれる炎の弾丸を、赤煙は投げつけた如意棒の大車輪ではたき落した。そのままの勢いで、ザルバルク達を炎の渦へと叩き込む。
「邪魔をしないでもらいましょうか……!」
 うごめくザルバルク達をけん制する赤煙。エコー・ジャックスをここで討伐するためにも、邪魔をさせるわけにはいかないのだ。
「宜しく頼むよ……!」
 レヴィンは、手にした銀色の銃にそう呟きながら、銃口をエコー・ジャックスへと向けた。
「全弾プレゼントだっ!」
 放たれる、神速の早撃ち――爆発的に放たれた無数の銃弾が、エコー・ジャックスの身体を貫いた。
(「く……ぅっ!」)
 その身体を無数に傷つけながら、しかしエコー・ジャックスの目から輝きは消えない。
 愚直なまでに、希望を、夢を、信じている眼だった。
 諦めなければ、此処で屈しなければ。きっと、自分だけの声が手に入ると。
 そう、心から信じている眼だった。
 それ故に、悲しいと感じてしまう。綺麗な瞳だった。
「なんて目ぇしやがるんだ……!」
 恵は『T&W-M5キャットウォーク』を構え、エコー・ジャックスへとポイントする。
「こうなった以上、戦うしか道はないんだぞ……!」
 どれだけ苦しかろうと、しかし戦う事だけは――相手を倒すことだけは、止めてはならない。
 恵は舌打ち一つ、エコー・ジャックスへと肉薄した。文字通りのゼロ距離から放たれる、闘気を込めた銃弾が、エコー・ジャックスの腹部を狙い――銃声。
 貫いた。
 かふ、と、エコー・ジャックスは息を吐いた。
 そのまま、ぐらり、と体躯を揺らし。
 エコー・ジャックスは、走り出した。
 夢への道を。
 諦めずに。
 ただ、真っすぐに。
 諦めなければ――屈しなければ。
 夢はかなうのだから――。
(「そう、手に入れる。絶対に、絶対に、諦めない」)
 瞳は輝きを残したまま。
 エコー・ジャックスは走り――。
「残念です。貴女は、最期まで気づかなかった」
 ゆっくりと――シルクは、己のアームドフォートを――『適者生存』の砲口を、エコー・ジャックスへと向けた。
「『奪う』という発想の時点で、貴女は『既に諦めている』のですよ。自分の声を」
 打ち放つ、一撃。
 砲弾が、エコー・ジャックスの身体を貫いた。
 それは、無慈悲で、優しい、真実という名の弾丸。
(「あき……らめ、な……」)
 断末魔のテレパシィを残しながら――エコー・ジャックスはその身体を、宙へと消していく。
 護衛対象の消滅に、残るザルバルク達に間に焦りと困惑が走った。
「この歌声が届くなら、何度でも繰り返して見せるから♪」
 玲央の歌声が、レクイエムのように響き、地獄の炎で作り上げられた青の爆竹が、ザルバルク達の注意をひく。
「――っ!」
 放たれた、シルの氷河期の精霊が、足を止めたザルバルク達を飲み込んだ。次々と凍り付き、息絶えていく深海魚たち。
 やがて、歌声だけが静かに響く中――。
 戦いは、終わりを告げたのであった。

●夢と、声と
「……次生まれてくる時には、モザイクなんて無くなってればいいな」
 くるり、とリボルバー銃を手で回し、ホルスターへと収めた恵が、静かに呟く。
「残念、か……こちらに交渉の材料でもあれば、話し合いもできるのでしょうが」
 赤煙はふむ、とあごに手をやりながら、続けた。
「真に、残念ですな」
 残念――戦いの始まりに自分が言った言葉だった。
「声を求める……形は違えど、その気持ちは、痛いほどわかるわ」
 アウレリアが呟く。そんなアウレリアへ、アルベルトがやさしく、肩へと触れた。
「義姉さん……」
 エヴァリーナは心配げに、アウレリアの顔を覗き込むが、アウレリアは優しく微笑んで、大丈夫、と告げるのであった。
「なんだか……憎めない奴、だったのかもな」
 レヴィンが呟くのへ、シルクは頭を振った。
「それでも――敵でした」
 敵だった――のだ。
 戦う事は、避けられなかった。
 それがどこか、もの悲しかった。
「何かが違えば、結果も変わった……の、かな」
 シルは左手薬指の指輪に触れながら、言った。なにか――寂しい気持ちになったのだ。
「……~♪」
 玲央は静かに、歌を歌った。戦闘中のような、エコーを足止めするためのアピールのための歌ではなかった。
 静かに、それはレクイエムのように、辺りに響いていた。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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