●夢見た絵本のように
箒に跨り、夜の街を翔ける。
緩く三編みにした赤毛が夜風に揺れた。
淡い花の彩を纏って飛ぶちいさな魔女の姿はまるでそのまま絵本から飛び出してきたような様相だ。エメラルドの瞳に頬のそばかす、目の下のクマが印象的な彼女――ドリームイーターの名前はマチルダ。
「どうして、どうしてマチが逃げなきゃいけないの」
箒から眼下を見下ろしたマチルダは無表情のまま深い溜め息を吐いた。視界に入った街の通りにはきっと憎悪を抱いた人間の子供がいるはずなのに。本当はその誰かの願いを聞いて、憎いものを消してあげられるはずだったのに。
「……戦いだって、嫌いなのに」
だってお洋服が汚れるから。片手で抱いた魔導書を持つ腕にぎゅっと力を込めたマチルダはちいさく呟き、街の高台へと降り立つ。
其処には人気がなく、代わりに奇妙な雰囲気が渦巻いていた。
「お迎えがくるのはこの辺りだったかしら。赤の王様とチェシャ猫の話なら、デスバレスからの使いがマチを連れて行ってくれるはず――」
辺りを見渡したマチルダは箒を降り、誰も居ない公園に歩を進めてゆく。
そして、昏い闇の中を見つめた。
すると其処から数体の深海魚型の死神が現れる。夜の最中をゆらりと泳ぐそれらはマチルダに近付き、此方だと誘うように先を示した。
「いきましょう。マチはまだ、こんなところでやられるわけにはいかないもの」
そして、夢喰いの少女は死神と共に姿を消す。
●魔女と死神
――という未来が視えた。
そのように語った雨森・リルリカ(花雫のヘリオライダー・en0030)は今の夢喰いを取り巻く状況についての説明をはじめる。
「先日のジグラット・ウォーによってジュエルジグラットを制圧した結果、ドリームイーター勢力は勢力として壊滅しました。ですが、戦争で生き延びた夢喰いが逃げ出しているのでございます」
マチルダもその一体。
彼女は嘗てのポンペリポッサと同じくデスバレスの死神勢力に合流しようとしており、マチルダを迎える為に下級の死神の群れが出現する。予知では彼女と死神は何処かへ消えてしまったが、今から現場に向かえばマチルダ達と対峙することが出来る。
「夢喰いがデスバレスに導かれれば、死神勢力に力を与えてしまうことになります。皆さま、撃破をお願いします!」
そして、リルリカは戦場となる場所と敵の動きについて語ってゆく。
「戦うことになるのは五体の下級死神とマチルダです」
死神はマチルダを守るように布陣している。だが、戦いが始まってから6ターンが経過すると、マチルダはデスバレスに撤退してしまう。
下級死神は彼女の撤退を支援する為に全力を尽くすので、ただ戦うだけではマチルダは簡単に撤退に成功してしまうだろう。
「それなのでマチルダを逃さないためには工夫が必要になります」
例えば下級死神を後回しにしてドリームイーターと戦闘を行う作戦。死神を全く無視することになるので戦線が崩れる可能性はあるが、引き止める手にはなるだろう。その他にもマチルダを止める手立てがあるならば、それを行っても構わないとリルリカは語る。
戦い方や声の掛け方は現場に赴く者に一任される。
「うまく行けばきっと、これが最後のドリームイーター勢力との戦いとなります。皆さまの力で決着をつけてあげてください……!」
祈るように両手を重ねたリルリカはケルベロス達に願う。
行き場を失った者に、そして夢に――相応しい終焉を、どうか。
参加者 | |
---|---|
シュリア・ハルツェンブッシュ(灰と骨・e01293) |
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020) |
マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289) |
ティユ・キューブ(虹星・e21021) |
鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532) |
カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629) |
款冬・冰(冬の兵士・e42446) |
ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503) |
●邂逅
夜風が遊具を揺らし、軋んだ音が響く。
誰もいない――否、夢喰いの少女と夜を泳ぐ怪魚だけしかいない公園。
敵の気配を捉えたシュリア・ハルツェンブッシュ(灰と骨・e01293)は敷地内に飛び込み、此度の予知で発見されたマチルダの元へ向かった。
「ガキは、とっくに寝る時間だってママに教わらなかったかい?」
「……誰?」
シュリアが掛けた言葉に反応して振り向いたマチルダが訝しげな視線を向ける。
同時にカロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)とミミックのフォーマルハウトをはじめとした仲間達がマチルダを包囲する形で動き、怪魚も彼女も逃さぬよう布陣した。
「とても綺麗な本ですね。もしかして魔術師でしょうか」
「ね、魔法は好き? お迎えがくるらしいけど、本当に行くの?」
匣竜のラーシュを連れたマイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)も声を掛け、マチルダに問いかける。
二人はとても友好的に振る舞う。
だが、相手は警戒していた。無理もない。いきなり現れて包囲されたならばどんな相手だって警戒はする。気付かれぬように囲むことはかなり難しい。
「どいて。マチは、行くわ」
少女から滲む敵意。
それに気付いた鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)はオウガメタルを左腕から胴体に纏い、取り繕うのも無駄だと感じて率直に問いかける。
「死神達を頼ってまで貴女は何がしたいんです?」
それは行動原理を探る為。
「死神の下で働かずに済むとは思っていないだろう?」
ティユ・キューブ(虹星・e21021)は外様の扱われ方等そうは変わらないと告げ、款冬・冰(冬の兵士・e42446)も静かに頷く。
「相手が死神……という時点で目的は類推可能。しかし、それに貴女が付き合う必要はあるだろうか」
ケルベロス最大の敵は可憐なデウスエクスと味方。そんなジョークもあったと回想しながらも、冰は敵の出方を窺う。
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)も現状を説明する。
「今キミがここにいるのはボク達が原因だけど……ジグラットはモザイクを悪用する人達の作用で皆の大切を奪うだけの存在になってしまっていたんだ」
「それがどうしたの?」
するとマチルダは書を掲げて身構えた。
同時に死神怪魚が此方を敵と見做し、即座に襲いかかって来る。咄嗟にシルディと奏過、カロンが光輝く粒子で仲間の援護に入った。
体当たりを仕掛けてくる怪魚に対し、ティユとボクスドラゴンのペルルが前に出ることで攻撃を受け止める。
その間にルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)はマチルダの様子を探った。
彼女が身勝手で危険な個体なのか。それとも危険度が低いのか。後者ならばコギトエルゴスム化しての保護を考えているのだが――。
(どう転ぶのであれ、最優先はデスバレスに合流させないこと……)
ケルベロスとしての使命を思い、ルイーゼはしかと敵を見据えた。
そして、戦いの幕があがる。
●交渉
「戦うのか? お洋服が汚れちゃママに怒られちゃうぜ?」
なんてな、と告げたシュリアは提案する。
こんなところでやられる前にお姉さんたちと交渉でもしてみないか、と。
「どういうこと?」
「死神の知らないお姉さんのところへ行くか、知らないあたしたちのところへ来るか。あたしたちとの約束が守れるのなら、そのかわいいお洋服が汚れることはないぜ」
それから絵本も読んであげよう。
「悪い提案ではないと思うぜ? マチちゃん」
「……子供扱いしないで。確かにマチは子供よ。でも、誰しもがそうやって扱われるのを望んでいるわけじゃないわ」
「そうか……」
すまなかったとシュリアが謝る中、カロンが敵の攻撃を防ぐ星の陣を描いていく。すぐさまフォーマルハウトが死神怪魚を穿ち、其処に続いたマイヤとルイーゼが星を宿す一閃で以て追撃に入った。
そんな中、シルディは言葉を続ける。
「ボクも含め何とか助けられないか行動した人もいたけど……助けられなかった。でも今だって助けたい気持ちは変わってないんだよ」
争いを好まず、大切を取り戻したいと願うなら手伝いたい。
キミを守りたい。手を取り合う事について考えて、とシルディは願う。しかしマチルダは首を横に振る。
「別に助けてもらわなくてもいいわ」
「それでいいように利用されて、あなたの好きなものを奪われちゃうかもしれないのに? 死神は戦いになったら、真っ先にあなた達を借り出すんじゃないかな」
「いいえ、マチは戦いに出ないもの」
マイヤの言葉を聞いたマチルダは素知らぬ顔だ。するとティユも死神勢力についていくデメリットを諭していく。
「相手はドラゴン相手にサルベージの実験をしていた連中だ。今のこれが実験体を運ぶ段取りでない保証や、君に死神へ行くよう言った者も信じられるかい?」
「そうです。貴方がしたい事がデスバレスに行けば本当にできるのですか?」
奏過は他勢力であるゆえにやりたいことができない、という点を突いた。だが、それはマチルダの心には響いていないようだ。
メリットとデメリット。
其処から合理的に判断するような相手ではないらしい。
冰はそう判断し、切り口を変えてみる。
「抗争の矢面に立たされかねない場に向かうよりは、いっそ我々の中で強かに生存するのは如何?」
それは本気も本気。憎悪を抱く子供は番犬の中にも存在している、と告げる。
穏当な手段で憎悪を晴らしてみるだとか。安全は保証し、モザイクを晴らす別手段も模索できるだろうと話す冰。
ルイーゼも頷き、このままではマチルダを倒すしかないのだと伝えた。
「人を襲う以外でモザイクを晴らせるかもしれないよ。人を襲わないと約束できるならケルベロスが協力することもやぶさかでない。しかし、死神に合流するならわれわれはお嬢さんと戦い、滅ぼさねばならない」
「だから――未だ見ぬ頁に、手を伸ばしてみない?」
冰はそっとマチルダへ腕を伸ばす。
その様子をカロンはじっと見守り、仲間達も怪魚の攻撃を凌ぐことで耐えている。そして、マイヤとティユは最後の後押しを告げた。
「わたし達の事、信じられないかもしれないけど……じゃあ、死神の事は信じるの?」
「その先を行けばもう後戻りは出来ないだろう」
だが、少女は無表情のまま肩を落とした。
「あのね、マチは別に仲良しごっこがしたいわけじゃないわ」
欲しいのは、憎悪。
その感情を知らないからこそ求める。
だが、番犬達が語るのは遠回しで曖昧な希望だ。死神勢力の評価を一方的に論じ、自分達ならば大丈夫だと主張しながらも結局は、できるかもしれないという確かではないことを告げる。果たして、それが誰かの心に届くだろうか。
見守るカロンは解っていた。
否定と曖昧な提案で引き入れられる者など何処にもいないのだ、と。
そして、更にマチルダは語る。
「今までたくさん、マチくらいの子供の憎悪をみてきたわ。目の前で憎い人をころしてもみせた。けれどマチにはその感情がまだわからない。あなたたちは、それを教えてくれるとも思えないわ」
「殺した……?」
「戦いが嫌いなのではないのですか」
シルディが疑問を抱き、奏過も問いかける。対するマチルダは、一方的に殺すことを戦いとは呼ばないと答えた。子供を狙うのも自分と同じくらいの見た目であるがゆえに話しかけやすいという理由だった。
無自覚で無邪気な悪意。夢喰いの少女に宿っているのは、そんな歪んだものだ。
「……シュリアさん」
首を振ったカロンはシュリアの名を呼び、最終的な判断を仰ぐ。シュリアはマチルダを見つめたまま唇を噛み締め――そして、結論を出した。
「分かってる。倒すしかないよな」
その間にも死神怪魚からの体当たり攻撃は続いている。
ティユとペルルが受け止め、奏過が傷を癒やす。ルイーゼとマイヤも夢喰いの防護に当たる怪魚を狙い、冰も戦いながらそっと頷いた。
●交戦
憎悪を知らぬがゆえに憎悪を求める。
それはきっと、相手が相容れぬ存在だという証だ。
既に時間は二分も経過していかる。
このままでは何も得られずにただ夢喰いを逃してしまうことになる。それだけは阻止せねばならないとマイヤが決意すると、冰も敵をしかと捉えた。
「戦闘継続。目標捕捉……発射」
ナノマシン・ペーパーを両袖から撃ち出した冰。その目標は怪魚ではなくマチルダだ。相手は幻想の花を咲かせて番犬達に対抗してくる。
だが、冰はくるりと回って避け、その序に更に折紙を羽撃かせる。ルイーゼ、と次を願った冰は仲間を呼んだ。
その声に応えたルイーゼは髪に左手を添え、魔女を見つめる。
響くは口伝の聖句より始める序曲。
泥濘の音色はマチルダに届き、足元が覚束なくなるほどの強い不安を与えた。
其処にカロンによるファミリアの追撃が加わり、フォーマルハウトは変わらず怪魚達を相手取り続ける。
「マチの邪魔をしないで」
「人を殺めたのなら許してはおけません」
魔女からの言葉にカロンが首を振ると、怪魚達が次々と襲いかかってきた。だが、ティユがカロンを庇い、その傷は奏過が癒やしていく。
「回復します……皆さんは自分が為したい事に専念して頂いて構いませんよ」
「ありがとう、助かるよ」
逆式の力が受けた痛みを和らげる中、ティユは礼を告げた。そして彼女は反撃の機を掴み取り、ペルルと共に一気に駆ける。
怪魚が邪魔をしてきたが、死神の相手は匣竜が引き受けた。ティユ自身は轟竜の一撃を全力で魔女に叩き込み、その身を大きく揺らがせる。
「本当に良いのかい? 向こうの遣いにも誠意を感じるとは思えないけどね」
ティユは死神を見遣った。
一体目はラーシュに、そして二体目がシルディによって地に落とされている。シルディは死神から視線を外し、マチルダを見つめた。
「ポンペリポッサおばーちゃんや星の住人の優しさがあったから今回の勝利があった。優しい人もいるのは間違いないんだよ」
手が届くのなら一つでも多く助けたい。それがシルディの思いだ。
しかし、マチルダは優しくなどない。それに母星を滅ぼしたことを勝利だと言われて気分が良いわけがなかった。
彼女は子供の感性を抱いているからこそ純粋な悪意のままに動けるのだろう。絵本を掲げたマチルダは幻影の猫を戦場に走らせ、鋭い爪を振るわせていく。
「残念ね、あなたも子供だったら良い憎悪をつのらせてくれそうなのに」
魔女はシュリアを見遣り、そんなことを呟いた。対するシュリアは魚の骨のタトゥーに群がってきた猫を追い払いながら不敵に笑む。
「悪いな、そんな少女時代はどこかに忘れてきたみたいだ」
言葉と同時に解き放った黒煙は煉獄の華の如く、戦場に深い色を宿していった。
刻々と時間が過ぎる。
間もなくすれば夢喰いがデスバレスに撤退してしまう時間――だが、どうやらマチルダはシュリアに興味を持っているようだ。
「少しだけ遊んであげる。戦いは嫌いだけど、苦手ではないのよ」
「それならたくさん相手をして貰おうかな!」
マイヤは輝く流星をマチルダに向けて解き放った。
分かり合うことは難しい。夢喰いと死神を取り巻く状況はきっと、自分達が思うよりずっと簡単な事ではないからだ。
「皆さん、もう少しです」
「死神がもう一体倒れました」
赤光のメスを振るいながら奏過が呼び掛け、シルディも敵の数を確認する。
残るは怪魚が二体とマチルダだけ。
マチルダはシュリアを狙い続け、魔力弾を放っている。
ティユとカロンは視線を交差させ、即座に魔女の背後に回り込んだ。渦巻くゲートのようなものが戦場に現れている。
「私達はあれに近付けはしませんが、ここまでの道を塞げば……」
「阻むことくらいは出来る」
番犬を寄せ付けぬ揺らぎの前にカロンが立ち塞がり、ティユがマチルダに向かう。逃がさぬと決めた以上、退路を防ぐのは必須。
此処は任せて欲しいと告げたティユ達に頷き、冰とルイーゼは怪魚に狙いを定める。
宿縁の力なのか、夢喰いはまだ逃走しない。
マチルダがシュリアを狙い続けているならば自分達の役目は死神の排除だ。航空機銃の折紙を放った冰に続き、ルイーゼが聖句からの旋律を死神に向ける。
その力は二体の怪魚を同時に貫き、瞬く間に地に伏せさせた。次の瞬間、デスバレスへのゲートが完全に消失する。
「彼女が人の害にしかならないのであれば――」
「……終わらせて」
ルイーゼの言葉を次ぐように、冰がシュリアに願う。
分かったぜ、と頷きを返した彼女は旋刃の一閃で魔女を穿った。痛い、と零した少女はシュリアを見つめ、力を紡ぎ返してきた。
マイヤは其処に援護として凍結の一撃を放ち、奏過は癒やしを施し続ける。
更にマチルダは絵本から幻想の仲間を解放していく。
ブリキの兵にお菓子の家、半透明の黒い猫。それらは夢を飾るかのようにカロンやティユ、そしてシュリアを穿った。
だが――。
「悪いが、この先は地獄行きだぜ」
シュリアは痛みを堪え、黒煙の銃弾をひといきに放った。
刹那、マチルダの胸元が真正面から貫かれる。かは、と吐息が溢れる声がしたかと思うと夢喰いの少女は膝をつく。
「マチは知りたかったの。知りたかっただけなのに。ああ、でもこれが――」
何故か憎悪を求めた少女。
彼女は誰にも聞こえぬ声で何事かを呟き、最期に静かに微笑んだ。
●目覚
そして、マチルダは消滅した。
奏過は勝利を確信し、マイヤとティユは消え去った夢喰いがいた場所を見下ろす。
「わたし達には守るもの、守りたいものがあるの」
「だから謝りはしないよ」
デウスエクス達にもそれぞれの何かがあるのだとは知っている。
だが、この戦いはその上でのぶつかりあいだった。ティユはこれが自分達のやるべきことだったと感じて、敵を見送っていた。
「おやすみなさい……」
シルディはせめて冥福を願おうと決めて静かに祈る。
あの世か次の生で出会えるのなら、どうか仲良くなれますように。そんな優しさもまた、ひとつのエゴに過ぎないのだろう。
冰とルイーゼはそっと視線を交わし、成すべきことを成したのだと確かめあった。
「未だ見ぬ頁……それは、元からなかったのかもしれない」
「うむ、しかし有るべき形に収まったはずだぞ」
あの少女には最初から自分達と共に往くという選択肢はなかったのだろう。それでもきっと、歩み寄ろうとしたことは全くの無駄ではなかったはず。
カロンは夜の空を見つめ、思いを零す。
「夢は何時か覚めるものです」
素敵な夢も、楽しい夢も、悲しい夢も、恐ろしい夢も。
彼女の夢はここで覚めたのだろう。これはただ、それだけの話。
「マチ……いや、マチルダ――」
シュリアは彼女が最期に見せた笑みの意味を考え、その名を言の葉に乗せる。
応える者はもう何処にもいない。
返事の代わりに冷たい夜風が吹き抜け、ケルベロス達の頬を静かに撫でていった。
作者:犬塚ひなこ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年2月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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