寒桜にご用心!

作者:なちゅい


 桜といえば、場所にもよるが、3~5月に開花するソメイヨシノのイメージは強い。
 だが、それよりも早い時期に咲くカンザクラと呼ばれる種も存在する。

 静岡県在住の大学生、佐倉・結月は苗字もあってか、毎年この時期に一足早く咲く寒桜を見に来ている。
「今年も寒桜が咲き始めたわね」
 周囲にはさほど気にもかけずに犬の散歩や、ジョギングする人々もいる中、微笑ましげに寒桜を見上げ続ける結月。
 そんな中で、西の方から飛んでくる怪しげな花粉。
 それが結月の見上げていた寒桜へと纏わりついていく。
 次の瞬間、寒桜が枝をうねらせ、地面から根を蠢かせて動き始める。
 攻性植物と化した寒桜は、手前にいた結月へと憑りついていく。
「キャアアアアアアッ!」
 身を竦ませる結月の身体へと同化する寒桜は、彼女の足元から根を生やし、上半身を中心として枝を頭上へと伸ばし、花を咲かせていく。
「あれ、なんで……」
 体の主導権を奪われた結月の意識が途絶え、攻性植物は周囲に誰もいなくなった公園をさまよい始めるのだった。


 今年の冬は暖冬といわれてはいるが、さすがに桜と言われれば早すぎると感じるケルベロスは多いだろう。
 ちなみに、そう感じるきっかけとなるのは、アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)の一言だった。
「寒桜も攻性植物にされてしまうのではと思ってね」
 そんな彼の予見を確認すべく、ヘリオンでリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が予知を行うと……。
「一人の女性が攻性植物となった寒桜に襲われてしまうよ」
 現場は静岡県某所の公園。
 そこに飛んできた花粉が寒桜を攻性植物にしてしまう。
 後は、リーゼリットが言う通り、襲われた女性は宿主にされるようだ。
「この攻性植物が新たな被害を起こす前に、皆の手で倒してほしいんだ」

 ケルベロスが現地の公園到着時には利用者は避難しており、ほとんど人はいなくなっている。
 すぐに警察などが到着し、人的避難は問題なく進むようだ。
「だから、皆は攻性植物の対処に専念してほしいんだ」
 現れる攻性植物は1体のみ。
 女性と同化した敵はスナイパーとして立ち回り、咲かせた花より破壊光線を発射し、枝を触手のように操って叩きつけ、蠢かす根を地面に融合させて戦場の侵食を行うことがある。
 また、侵食は事後に、ヒールグラビティを使うことで元に戻すことができる。
「女性が攻性植物と一体化しているから、ただ倒すだけだと女性まで巻き込んでしまう」
 つまり、同化した女性まで命を落としてしまう。
 ただ、攻性植物にヒールをかけながら戦うことで、戦闘後に女性を救出できる可能性が生まれる。
 女性を救出したくはあるが、討伐に失敗した場合、攻性植物は周囲へと甚大な被害をもたらすのは間違いない。
「だから、最優先事項は攻性植物の討伐だと認識していてほしい」

 一通り説明し、リーゼリットはさらに続ける。
「事後のヒールが終わったら、寒桜観賞もいいかもしれないね」
 のんびり花を眺めるのもいいが、花より団子ならぬたい焼きと考えるのであれば、公園近くにあるたい焼き店でたい焼きを食べるのもいい。
「その前に、攻性植物討伐だね。……最善の形で討伐できることを、ボクは祈っているよ」
 彼女はそう一言付け加えてから、ヘリオンへと乗り込んでいくのだった。


参加者
立花・恵(翠の流星・e01060)
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
一之瀬・白(龍醒掌・e31651)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
エルム・ウィスタリア(薄雪草・e35594)
仁江・かりん(リトルネクロマンサー・e44079)
鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)

■リプレイ


 静岡県某所。
 その公園には、綺麗な寒桜が咲いている。
「普通の感覚だと、桜と言えば春なんだけど……」
 黒髪で細身の青年、立花・恵(翠の流星・e01060)は、こういう冬の桜というものも少し珍しくていいなと僅かに顔を綻ばせる。
 しかしながら、そんな寒桜を前にしているとはいえ、観光気分でもいられない。
「今日はお友達と一緒ですから、全然怖くないですよ!」
 可愛らしい青髪のウェアライダー、仁江・かりん(リトルネクロマンサー・e44079)は今回の依頼……攻性植物化した寒桜討伐にやる気を漲らせる。
「寒桜は綺麗なんですが……。これはちょっと困りますね」
 銀の長髪のレプリカント、エルム・ウィスタリア(薄雪草・e35594)は綺麗な桜の中、前方に見えるそれに戸惑いを見せる。
「折角の寒桜が、こうなっちゃ台無しだな」
 それは、人の姿をしてはいたが、足元から根、肩や頭上から幹や枝が頭上へと広がるように伸びており、無数の花を咲かせていた。
 攻性植物と化した寒桜は、女子大生、佐倉・結月の体を乗っ取っていたのだ。
「大丈夫です、ぼく達ならきっと助けられます!」
 かりんは語気に力を込め、この場の仲間達へと告げる。
「佐倉さんの未来を散らすわけにはいきませんねー」
「ちょっと時間がかかるけど、必ず助けるから、少しだけ待っていてね」
 猫のウェアライダー、朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)も寒桜を楽しむ為、攻性植物からびしっと女性を取り戻したいと意気込みを見せると、灰色の長髪で人形を抱えたアンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)も本心から攻性植物から彼女が解放されることを望んで。
「結月さんにはこれから新しい生活が待ってるんだ。絶対に助けるよ!」
「これから社会人になるっつうのに、宿主なんざ似合わねぇわな」
 黒いショートヘアのスレンダー女性、小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)も凛とした態度で救出を誓うと、筋肉質な肉体を持つ鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)も声を荒げて。
「きっちり救出といこうじゃねぇか!」
 何人もの教え子を世に出している塾講師の彼は、今回の被害者の姿を教え子に重ねていたようだ。
「…………」
 言葉なく、虚ろは視線を向けてくる女子大生……いや、攻性植物は根や枝を伸ばして、こちらを牽制してくる。
「……待ってろ、佐倉さん。必ず助けてみせるからな!」
「少々お待ちくださいね。助けますから」
 恵が軽く跳躍して相手の出方を窺うと、エルムが構えを見せつつもあまり痛い思いはさせたくないと本音も漏らす。
「聞こえてるか分からないけれど……結月さん、少し我慢してね」
 そして、今回のメンバーの多くが所属している旅団「龍髭学園 番犬部」の部長、名の示す通りに白い髪と鱗の一之瀬・白(龍醒掌・e31651)。
 一時的に、同じ部の仲間達との記憶を失ってしまっている白は部員達に僅かな負い目を感じながらも、それでも優しくしてくれるメンバー達にありがたさも感じていて。
「皆、往くよ……!」
 白は仲間達の後方からドラゴニックハンマーを携え、守るべき女子大生へと呼び掛けながら飛び出す仲間達と共に攻撃を開始するのである。


 依頼としては、攻性植物となってしまった寒桜の撃破だ。
 ただ、撃破は寄生された女子大生、佐倉・結月の命を巻き込むこととなる。周辺の人々に及ぼす被害を考えれば、その命より撃破が優先されるのは止むをえない。
 しかしながら、この場のケルベロス達はたった1人の地球人の命を軽視せず、全力で女子大生を救い出すべくグラビティを繰り出していく。
 枝触手を振るってくる攻性植物に対し、低い体勢を取った環は正面から組みついていって。
「同い年なんですねー、絶対救い出してあげますからねー!」
 やや幼さも感じさせる環だが、同い年というだけでも親近感は強まる。
 救い出したい気持ちも高まり、環はいつも以上に気持ちを入れ込んで声をかけていた。
「ねーさん、皆の回復をお願いね」
 涼香の呼びかけに、ロシアンブルーのような見た目をしたウイングキャットのねーさんが応える。
 主の涼香と仲が良いねーさんは攻撃を受けていた環を中心に翼を羽ばたかせ、邪気を払ってくれていた。
 涼香本人は革靴で立ち回りながらも高く跳躍し、美しい虹を纏った蹴りを攻性植物の幹へと叩き込み、相手の注意を強く引く。
 そうして、盾役メンバーが攻性植物の抑えに当たる中、道弘が仲間の支援をとドローンを展開して負担の軽減へと動く。
 その道弘の視線の先には、攻性植物に操られる女子大生の姿が移る。
 彼女を救うという同じ目的を抱く仲間の為、道弘は全力を尽くす。
 同じ立ち位置のアンセルムは、攻性植物を……女子大生の傷を塞ぐべく施術を行う。
 一体化させられた女子大生の救出の為、アンセルムは一心に緊急手術を繰り返す。
「ちょっと痛いかもしれないけど……我慢してくれよ!」
 後方にいた恵は呼びかけを続け、流星の蹴りを攻性植物に叩きこむ。
 攻性植物が暴れぬよう動きを止められれば、それだけ女子大生の救出がスムーズに行えるはず。
「すまない。だが、必ず救い出すからな!」
 気合を入れながらも、恵は意識のない女子大生にさらに言葉をかけていた。
「絶対に助けてみせるから、諦めないで!」
 白もまた砲撃形態として構えたドラゴニックハンマーから砲弾を発し、攻性植物の動きを止めにかかる。
 ただ、一体化して体力をも共有する女子大生に生きてほしいと願いを込めて、呼びかけを繰り返す。
「植物に、寄生された人……大丈夫です、ぼく達がお助けします!」
 かりんもまた女子大生を守る為、そして、彼女の好きな寒桜も守る為にと優しく声をかけ、攻性植物の攻撃に苛まれる仲間の足元へとケルベロスチェインを這わせていく。
 黒い鎖は程なく魔方陣を描き、仲間を包み込む。
 しかし、攻性植物はいつの間にか地面に根を埋め込み、戦場を侵食し始めていた。
「雪も積もり積もれば盾となる」
 そのダメージから仲間を護ろうと、エルムはふわりふわりと仲間達の前方へと雪を降り積もらせ、仲間達を癒し護る盾を展開していく。
 エルムはさらに、腕に巻いた攻性植物が実らせた黄金の果実をもぎ取り、輝く光で仲間達を照らし出して浸食から護る。
 回復役となるかりんも、一緒に戦う仲間達が万全の状態で立ち回れるようにと注力する。
 そのかりんの前方では、彼女のサーヴァント、赤いランドセルの形をしたミミックのいっぽが大きく口を開く。
 かりんの願いもあって、いっぽはこの場の仲間達のカバーに当たりつつ、攻性植物の枝や根をガブガブと食らいついていた。
「……結月は、『兄様』みたいなことには、なっちゃだめなのです」
 本当は泣き虫な彼女は過去を去来させながらも、『せいぎのみかた』として、目の前の不条理から女性を救出すべく立ち回るのである。


 女子大生、佐倉・結月を救い出す為には、彼女の体力を気がけながらも、一体化した攻性植物を弱らせる必要がある。
 これを行う為には、相手に対して攻撃と回復を繰り返す必要があり、必然的に戦闘時間が長引いてしまう。
 この戦いで最善の結果をもたらすべく、涼香はあらゆる状況を想定しながらも、環と分担して攻性植物の攻撃のほとんどを引き付ける。
 絡みつく枝や地面と合わせてケルベロスをも侵食しようとする根。さらに、女子大生の頭上の枝に咲かせた寒桜の花から発してくる怪光線。
 攻性植物の攻撃を一心に受け止め、涼香は翼猫のねーさんと全力で交戦に当たる。
 涼香が紡ぐ古代語の詠唱が完了し、放たれた光線が攻性植物の身体を穿つ。
 それによって、涼香は敵を少し石に近づけ、無力化を目指す。
 まるで幹のように直立したままの女子大生に対し、取り付いた寒桜攻性植物は狂ったように枝や根を蠢かせてくる。
 敵の動きを見据えた白は、逆手に構えた小太刀型のマインドソードで切りかかる。
 基本的には女子大生にはアンセルムが回復に当たっているが、彼だけでは攻撃が過剰となることもしばしばあり、白は応急的に光の盾も展開させた。
「寒桜もぼく達が必ずお守りします! せいぎのみかたは、約束は絶対に破らないのです!」
 いっぽに攻撃を控えさせたかりんが呼びかけると、体力を取り戻した攻性植物がなおも根を広げて周囲を侵食する。
 かりんは仲間を護る為、紙兵を周囲へと撒いていくそばで、仲間達のダメージが大きいことを察したのか、エルムが渋い顔をする。
 広範囲に及ぶ侵食の影響を懸念するエルムは妖精靴で舞い踊り、花びらのオーラを舞わせて戦う仲間達を正気に戻す。
「朱藤さん、小鳥遊さん、大丈夫ですか?」
 あんなにも綺麗な花を咲かせているのに、こんなにも仲間達を傷つけてくる寒桜に、エルムは複雑な感情を抱いてしまう。
 道弘も確実に侵食の根が及ぼす催眠状態を完全に取り去るべく、仲間へと気力を飛ばす。
 ただ、仲間のサポートが厚くなれば、また攻撃が先行することとなり、女子大生があからさまに苦しそうな表情をして悶える。
「もっともっと元気出していきましょー!」
 すかさず、盾役の環が大型の猫の形をした気を女子大生へと撃ち込む。
 道弘もまた、彼女の回復に回って。
「これから社会に出るんだろう。こんなところでもたついてどうする……――破!!」
 普段から、生徒達に向けて発破をかけている道弘は女子大生を鼓舞して生きる活力を漲らせようとしていた。
 アンセルムはほぼほぼ、自らの手数を女子大生の体力維持に費やす。
 チームに回復役は十分。アンセルムは安心して魔術切開を行い、寄生主の治療を続けていく。
「もう少しの辛抱だ! 頑張れ!」
 攻性植物の動きが鈍りだしたことで、精神を極限にまで高めた恵が根や葉を起爆させつつ女子大生へと呼びかける。
 恵はまた、定期的にリボルバー銃「T&W-M5キャットウォーク」から破壊力を込めた銃弾を撃ち出し、仲間が咄嗟に回復で付与する形となった支援効果を打ち消す。
 徐々に、女子大生の頭上の桜の花びらが散っていく。
 枝や根には力がなくなっていくにもかかわらず、女子大生はさほど苦しむ表情がなくなってきており、攻性植物の寄生の力の弱まりを感じさせていた。
 もうひと踏ん張りとケルベロス達は気力を振り絞り、やや攻勢を強める。
 まるでチョークの如く握ったファミリアロッドを道弘が投げつけ、トカゲの姿へと変化したファミリアが仲間達のつけた傷を切り広げていく。
 攻撃の手数は十分と判断したアンセルムは、そのまま女子大生の回復を続ける。
 しかしながら、攻性植物はかなり消耗しており、力がなくなっていく一方。
 白が両手足を竜のそれへと変化させて鋭い爪で貫けば、翼猫ねーさんが尻尾のリングで複数の根、枝を縛り付け、涼香も同じくケルベロスチェインで別の枝と根を纏めて締め上げていく。
 徐々に、女子大生の身体からはがれかける寒桜の攻性植物。
 好機と感じた環が一気に駆け、攻性植物目がけて電光石火の蹴りを叩き込む。
「佐倉さんは返してもらうよー!」
 環は攻性植物の体を蹴り、その反動で女子大生の体を一気に引きはがす。
 佐倉・結月の身体は無事な一方で、寄生先を失った攻性植物は見る見るうちに枯れ果てていく。
 完全にグラビティ・チェインを枯渇させた攻性植物は灰となっていき、風に吹き飛ばされてなくなってしまう。
 攻性植物の消滅を確認した恵はくるくるとリボルバー銃を回転させ、ホルスターへとしまったのだった。


 事後、メンバー達は助け出した女子大生、佐倉・結月の手当てを行う。
 体調確認を行っていたアンセルムが緊急手術を施す間に、白、道弘が彼女の容態回復と兼ねて光の盾やドローンを展開していく。
 また、道弘はチームの年長者としての責任とのことで、人々の保護や公園の封鎖に当たってくれていた警察にも完了報告を行っていた。
「この度は本当にありがとうございました」
 目を覚ました女子大生はケルベロスに助けられたことを、心から感謝する。
 なお、そこで同世代の女性と間違われた恵が怒っていたのはさておき。
 女子大生、佐倉・結月は深くメンバー達へと頭を下げ、この場を後にしていった。

 一仕事を終えたケルベロス達。
 改めて、白は寒桜を仰いで。
「冬の桜っていうのも乙なものだねぇ……」
 この時季に見られる桜は珍しいと考える白。
 まだまだ寒いこの時期に咲く早桜に、防寒具で身を包むメンバー達は少しばかり早い季節を感じずにはいられない。
 ……ただ、今回のチームメンバーは花より団子ならぬたい焼きという者も多い。
「たい焼きは頭からですよね!」
 かりんは寒桜を見上げつつ、早速しっぽの先までたっぷりあんこが詰まったたい焼きを頭からがぶり。
 そんな自分を見つめるミミックのいっぽに気づいて、かりんはたい焼きを差し出していた。
「寒い冬に温かいたい焼きは最高だよなぁ~~♪」
 疲れた分糖分補給と、恵がにこやかにたい焼きを口にする。
 傍では道弘がおかず系をと、少し塩気の効いたツナマヨを食べていた。
 寒桜の中に開きかけた桜のつぼみを見つけた彼は、受け持つ受験生と自然に重ねて開花祈願を行う。
 そんな仲間達が買ったたい焼きに、エルムは興味を抱きつつあんこたっぷりのたい焼きを食べていた。
「桜も綺麗だし、たい焼きもポカポカ。尻尾まであんこはみっちり」
 美形で見た目は大人な男性を思わせるエルムだが、甘いもの好きな彼女の姿は子供っぽさを感じさせる。彼は番犬部のお土産用にと様々な種類のたい焼きの詰め合わせも購入していたようだ。
「ありがとう、きっと皆喜ぶよ」
 部長である白もエルムに感謝を表し、たい焼きを食べつつ桜観賞。
 そんな彼らの視線の先では、環とアンセルムも寒桜の下、たい焼きを食べ歩きながらゆっくりとお散歩。
 2人もまた、番犬部の差し入れでお持ち帰りを用意していたようだ。
「皆と一緒に賑やかに見るのも楽しいけれど、2人だけで静かに見るのも素敵だよね」
 アンちゃんことアンセルムはポツポツと桜の感想を語りながら、カスタードが入ったたい焼きを頭から齧っていく。
「どんちゃん賑やかな花見も好きですけど、たまには2人でゆったりと……なんてのも乙ですよねー」
 環もまた、頭からたい焼きを食べる。中身は餡子だろうか。
「まあ、そう感じるのはキミと一緒に歩いているからかもしれない……なんてね?」
「えっ……?」
 思わぬ彼からの言葉に、環は頬を赤らめてしまう。
 寒空の下にもかかわらず、そんな2人を寒桜の花々が優しく見守っているようにも見えたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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