疲れた時は丸くて大きくて柔かいものに挟まれろ!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「いいか、お前ら! 疲れた時は丸くて大きくて柔かいものに挟まれろ! そうすれば、とんな疲れもいっぺんに吹っ飛ぶ! 俺が言うんだから、間違いない!」
 ビルシャナが廃墟と化した施設に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 信者達は丸くて大きく柔らかいクッションに埋もれ、幸せそうな表情を浮かべていた。

●セリカからの依頼
「盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化した施設。
 施設内は丸くて大きく柔らかいクッションで埋もれ、その中で信者達が生活をしているようである。
 そのため、信者達は丸くて大きく柔らかいクッションなしでは生きられない身体になっており、通常の生活が出来なくなっているようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 このまま信者達を放っておけば、駄目人間まっしぐら。
 それが間違っている事を伝えなければ、信者達がマトモな生活を送る事は不可能だろう。
 また信者達は洗脳されている影響で、丸くて大きく柔らかいモノに執着しているだけなので、それ以外のモノでも疲れが取れる事さえ理解すれば、洗脳を解く事が出来るはずである。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
除・神月(猛拳・e16846)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)
 

■リプレイ

●廃墟と化した施設の前
「またもや快適空間なのです! ちょっとしたブームなのです!」
 八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)は興奮した様子で、仲間達と一緒に廃墟と化した施設の前に立っていた。
 ビルシャナは信者達を前にして、『疲れた時は、丸くて、大きくて、柔らかいモノに挟まれるべき』であると訴えているらしく、敷地内には丸くて大きくて柔らかいモノが溢れ返っていた。
「こ、これは……ダメになるクッション!? な、なんて恐ろしいモノを……! ビルシャナ、許すまじ!」
 それを目の当たりにしたイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)が色々な意味で危機感を覚え、ダメになるクッションを拾い始めた。
 ダメになるクッションは、どれもフワフワ、モフモフ。
 思わず顔を埋めてしまいそうなほど魅力的であったため、そのままダイブしたい衝動に襲われた。
 だからこそ、回収!
 そのたび、モフっとした感触に襲われ、意識が持っていかれそうになった。
「でも、丸くて大きくて柔らかいだけだと一杯ありすぎて、ふわり困っちゃうの! 何に癒して欲しいのか、ちゃんと決めなきゃダメなのー!」
 盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)が能天気な笑みを浮かべ、ダメになるクッションに飛び込んだ。
 その途端、ふわりの身体をモフとした感触に包まれ、身も心も幸せな気持ちに包まれた。
「駄目です。こんなの、駄目駄目です! お猫様を敬愛しない邪悪(ビルシャナ)など、この地上に(私が滅刹して)存在しません。なので倒すのです!」
 そんな中、平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)が猫耳パーカー姿で尻尾を揺らしながら、敷地内を歩いて行った。
「それジャ、気合を入れて行くかネェ」
 そう言って除・神月(猛拳・e16846)がダメになるクッションを掻き分け、施設内に足を踏み入れた。

●施設内
「いいか、お前ら! この心地良さに勝るモノなし! これさえあれば、何もいらない! そう断言する事が出来る程の逸品だ!」
 ビルシャナがいたのは、施設内の一角。
 そこは大量のクッションによって、雲の上っぽい感じになっている場所だった。
「……なるほど、それも体を休めるには良いかもしれません」
 そんな中、和がクッションに吸い込まれるようにして、モフっと倒れ込んだ。
 その途端、ほんわかとした感覚が全身を包み込み、沢山の睡魔達が和のまわりを飛び回った。
「そうだろ、そうだろ。ここは天国だ! そう思うんだったら、ここでゆっくりと休むといい」
 ビルシャナがイイ笑顔を浮かべながら、クッションをモフモフと叩いた。
「しかし、それはただ、体を休めているだけではありませんか? そこには足りないものがありませんか? そこに癒しは、足りてますか?」
 和がヒョコッと飛び起き、真剣な表情を浮かべ、ビルシャナ達に問いかけた。
「ああ、足りてる! 俺は、これで十分だ!」
 ビルシャナがクッションをギュッと抱き締め、幸せそうな表情を浮かべた。
「いいや、足りない! 圧倒的に、癒しが不足している! ……では、その癒しを得るにはどうしたら良いか……。みなさん、みなさんは、小さく可愛いもの見たとき、なんだかこう、心がほっこりして、自然と笑みが浮かんではきませんか? ならば、そう! お猫様を見ればいいのです! 猫はもちろん小さい。猫はもちろん可愛い。パーフェクトです。さあ、お猫様を見ましょう。なあに、近くにお猫様がいなくとも、スマホで動画が見れます。さあ、共にお猫様を見ましょう。あの愛らしい姿を拝謁しましょう。そして共に、お猫様の齎す癒しを享受しようではありませんか……」
 和が捲し立てるようにしながら、興奮した様子でビルシャナ達に迫っていった。
「いや、別に……」
 その気迫に圧倒されつつ、ビルシャナがクッションをギュッと抱き締めた。
「はぁ……、何も分かっていないようですね。自分が今どれほど血迷った事を口にしたのかさえ理解していない。やはり、これは……」
 和がハンターの如く鋭い視線を送り、ビルジャナをジロリと睨みつけた。
「何だか、ちょっと暑いのです」
 その間に、あこがコッソリと窓を開け、冷たい空気を室内に招き入れた。
 その途端、冷気が悪戯妖精の如く室内を飛び回り、ビルシャナ達に目には見えない氷のドレスを着せて回った。
「うひゃあ! 寒い! 寒い!」
 これにはビルシャナも悲鳴を上げ、頭からクッションの中に潜っていった。
「クッションに埋もれるのも良いのですが、ちょっと寒くありませんか? そんな時こそ、お布団の出番です。何故ならクッションだと、爪でぷちっとやっただけで破裂してしまうのです!」
 あこがクッションを爪で引っ掻き、中に詰まっていた大量のビーズが溢れさせた。
 その途端、静電気の影響で大量のビーズが、猫毛に次々とくっついた。
「こ、このように、にゃんこを飼っている場合、地獄絵図になるのです!!」
 あこが半泣きになりつつ、ビーズを必死に振り払ったものの、その気持ちに反して、大量のビーズが身体に纏わりついてきた。
 それを目の当たりにしたウイングキャットのベルが、警戒した様子で距離を取った。
「いや、それ以前に猫を飼っていないからなぁ……」
 ビルシャナがクッションの中からヒョッコリと顔を出し、複雑な気持ちになった。
「……ですが、この場所だと寒暖の影響が出てしまいます。それに対して洞窟であれば、何もしなくても一年を通し温度がほぼ一定に保たれるので夏も冬も快適です! 静かな場所でも水音が拡がる場所でも選び放題! 小さめでも好きなだけ音を出せるしがらみのない自分だけの空間を演出でき、広さを選べば……拡張次第で何でも収納できますよ!」
 そんな空気を一変させる勢いで、イッパイアッテナが凛とした風を使い、ビルシャナ達に対して訴えた。
 その影響で一般人達がクッションの中から次々と顔を出し、イッパイアッテナの言葉に耳を傾けた。
「いいな、洞窟! そうと決まれば、引っ越しの準備だ!」
 ビルシャナが瞳をランランと輝かせ、大量のクッションを抱きかかえた。
 洞窟に移動するだけであれば、教義に全く反していないため、ビルシャナ達はノリノリであった。
「……っテ、待て、コラ! 疲れた時に休みを取ろうってのガ、そもそも甘ぇんだヨ!!」
 その途端、神月が男性信者達の肩を抱き寄せ、意味ありげな様子でニヤリと笑った。
「な、何が言いたい……!」
 ビルシャナが身の危険を感じて、クッションを抱きかかえたまま、ゴクンと唾を飲み込んだ。
「疲れたんなラ、もっと疲れる事しテ、全部出し尽くしてから寝ちまった方が気持ち良いんだゼー? 物は試しってゆーしナ。あたしと遊んで天国見てからでも遅くはねーだロ?」
 神月が男性信者達とキスをしながら、隣の部屋まで歩いて行った。
「疲れた時はクッションなんかじゃなくてー、ふわりがいーっぱい癒してあげるの!」
 ふわりも胸の谷間を強調しながら、男性信者達に擦り寄った。
「おい、こら! やめろ! やめないか!」
 ビルシャナが危機感を覚え、ふわりをビシィッと叱りつけた。
 そんな空気を察した女性信者達が、どうしていいのか分からず、オロオロ、あたふた。
「でも、信者さん達のココ、とっても元気なの! ガオーって叫びそうなくらい元気なの! やっぱり、男の人はおっぱいが好きなのー♪ こうやって挟んであげるだけで、いっぱいミルクを出してくれるのー♪」
 それでも、ふわりはまったく気にせず、男性信者達のモノをシゴき、大量のミルクを全身に浴びた。
 その事が引き金となって、男性信者達の中で何かが弾け、まるで赤子の如くふわりの胸に吸いついた。

●ビルシャナ
「いい加減しやがれ! 俺達は、これだけあれば十分だろうがあああああああああああ!」
 それを目の当たりにしたビルシャナが、ケモノの如く勢いで吠えた。
 その声に驚いた女性信者達がクッションを抱きかかえ、部屋の隅まで離れていった。
「……たクッ! さっきからギャアギャア、ギャアギャア、うるせぇナ! 黙ってねぇと痛い目に遭わすゾ!」
 神月もイラッとした様子で隣の部屋から顔を出し、ビルシャナの懐に潜り込み、降魔真拳を放ちつつ、ションボリとしたモノをシゴき始めた。
「い、いきなり、何をする! や、やめろぉ!」
 その事に動揺しつつ、ビルシャナが神月と距離を取った。
 だが、女性信者達は動けない。
 クッションを抱きしめたまま、その場から動けなくなっていた。
「それじゃ、ちゃちゃっと終わらせるのぉー!」
 ふわりがワイルドブレイドを仕掛け、腕を巨大刀に変形すると、力任せにビルシャナの身体をぶった斬った。
「ぐわああああああああ!」
 その途端、ビルシャナが悲鳴を響かせ、ペタンと尻餅をついた。
 しかし、傷口からドクドクと流れる血が止まる事はなく、常にデンジャラスな状態。
 それを目の当たりにした女性信者達が卒倒するほど、グロイ状態になっていた。
「私の提案を受け入れてくれたから、あんまり痛い目には遭わせたくないんだけどねぇ……」
 イッパイアッテナが複雑な気持ちになりつつ、深い溜息を漏らした。
 相箱のザラキ(ミミック)もクッションの中から顔を出し、同じように溜息を漏らした。
「知恵を崇めよ。知識を崇めよ。知恵なきは敗れ、知識なきは排される。知を鍛えよ。知に勝るものなど何もない。我が知の全てをここに示す」
 次の瞬間、和が全知の一撃(ディクショナリー・クラッシュ)を発動させ、猫事典を錬成すると、卓越した技量からなる達人の猫パンチを繰り出した。
「ね、猫なんて……大嫌い……だ」
 その一撃を喰らったビルシャナが涙目になりつつ、断末魔を響かせ、血溜まりの中に沈んでいった。
「ふわりねー、猫ちゃんも好きなのー♪」
 その言葉を掻き消すようにして、ふわりがピョコポンと飛び上がった。
「やっぱり、ふわふわなクッションは心地良いのです」
 そんな中、あこがクッションの中に埋もれ、スヤスヤと眠りにつくのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月24日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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