みんな全て壊してあげる

作者:白鳥美鳥

●みんな全て壊してあげる
 テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)はメイドである。しかし、最近、ちょっと怖いメイドに出会った事で、少々メイドが怖かったりする。
 大丈夫、そう言うように相棒のライドキャリバーのテレーゼが寄り添ってくる。
「ありがとうございます。……そうですね。悪い事はそうそう続くものではございませんものね」
「あら、そうかしら?」
 しかし、そんなテレサの前にピンクの髪をなびかせたメイドが現れた。彼女はメイド姿ではあるが、その手にはハルバードを携えている。どう考えても怖い。
「ふふ、あなたを探していたのよ。そう……殺す為にね!」
 その言葉と共に、テレサにハルバードが振り下ろされた。

●ヘリオライダーより
「みんな、みんな! 緊急事態だよ!」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)が、大慌てでケルベロス達の前に駆けつけてきた。
「実は、テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)が宿敵であるデウスエクスの襲撃を受ける事を予知したんだ。だから、慌てて連絡を取ろうとしたんだけど……全然繋がらなくて、今、テレサがどうなっているか分からないんだよ。最悪の事態も想定できる状態だ。みんな、テレサが無事なうちに救出に向かって欲しいんだ!」
 デュアルは状況を伝える。
「テレサはメイドさんなんだけれど、相手もメイドさんみたいだね。どうやらハルバードが獲物みたいだ。これを使って攻撃を繰り出してくるらしい。見た目は普通のメイドさんって感じはするけれど……まあ、普通のメイドがハルバードなんて持ってるはず無いよね。テレサと相手がどういう関係なのかは俺には分からないけれど、間違いなく相手はテレサに強い殺意を抱いている。ただ、テレサを殺す事が一番優先事項だけれど、他の人達も彼女の憎しみの対象みたいだ。だから、万全を期してほしい」
 デュアルの話を聞いていたミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)は、哀しそうな顔をする。
「テレサちゃん、メイドさんで、メイドさん同士が戦うって何だかとっても哀しいの。勿論、メイドさんだから……ご主人様の意向とかあるんだろうけれど、同じ仕事に従事している同士が憎しみ合うのは哀しいの。みんな、テレサちゃんを助けるために力を貸して欲しいの!」


参加者
ユーリエル・レイマトゥス(知識求める無垢なるゼロ・e02403)
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)

■リプレイ

●みんな全て壊してあげる
「ふふ、あなたを探していたのよ。殺す為に、ね?」
 微笑むヨルダ・ザ・ドットテイカー。ピンク色の髪にポニーテール、可愛らしいメイドという風貌だが、言っている事が怖い。先日、見た目も中身も物凄く怖いメイドに出会っているだけに、テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)は嫌がおうにも拒否反応が出てしまう。
「テレサ、無事か!?」
「性懲りもなくまた来たな物騒メイドめ」
 聞きなれた声と共にティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)と、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)が現れる。その後に続き、ユーリエル・レイマトゥス(知識求める無垢なるゼロ・e02403)、源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)、ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)、七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)、如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)、ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)。そして、応援に駆けつけてくれたジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)、イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)、軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)、肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)。
 皆が駆けつけて来てくれて、テレサは『自分は一人ではない』と心から感じ安心する。そして、皆に感謝と感動を一杯込めて……アンニュイな無表情を見せる。その気持ちは伝わっていると信じているから。
「お仲間さんと一緒? 笑っちゃうわね」
 ヨルダは、楽しそうに高らかに笑うと、その緑色の瞳から光が消えた。
「……気に入らないから、死んで?」

●ダモクレス……ヨルダ・ザ・ドットテイカー
 ヨルダはハルバードを構えると、脇目も振らず、一気にテレサに強力な突き攻撃を放った。その強力な突きにテレーゼも間に入ろうとするけれど、そのまま強力な貫きの勢いでテレサごと吹き飛ばされた。
「大丈夫か、テレサ!」
「直ぐに回復しますね」
 勢いそのままに吹っ飛ばされたテレサをテレーゼが抱き起し、沙那がオーラの力で癒す。
「……ありがとうございます」
 二人の力を借りながらテレサは何とか立ち上がる。傍にはテレーゼも寄り添った。
「ちょっと、すっとしたわ。……さて、お友達ごっこはいつまで続くかしら?」
 ヨルダはハルバードを構えて微笑む。しかし、ここからは反撃の番だ。
「身体を巡る気よ、私の掌に集まり敵を吹き飛ばしなさい」
 綴が自身の気功を両手の掌に集めると一気にヨルダに向けて放ち、更に瑠璃は肉食獣の霊気を宿したアンクで胴を払うようにヨルダを殴りつけた。
「SYSTEM COMBAT MODE。RED EYE ON」
 戦闘モードに入ったマークはカメラアイを赤く発光させ、その光をヨルダへと向ける。それは、彼女の精神を揺るがす特殊な波長を持ち、テレサからマークへの戦意へと向けるように誘導していく。
「……私は、あなたに殺される訳にはまいりません」
 テレサとティーシャは畳み掛けるように竜砲弾をヨルダへと撃ち込んだ。
「情報収集開始……単純な攻撃、ゆえに強力ですか……。守りを固めていきましょう」
 ヨルダを見ながらユーリエルは、相手の情報分析をする。彼女の武器はハルバード。そして、それを強力な力で操って来るのだ。
 ユーリエルはチェーンを操りながら守護星座を描いて瑠璃達の守りを高めていく。
「集中力を上げていきます」
 ピコは粒子を放って更に彼等の神経を研ぎ澄ませていった。
「瑠璃ちゃんに力をあげるの!」
 ミーミアは雷の力を使って瑠璃の力の底上げをし、ウイングキャットのシフォンはリングを放った。
 更に、ジョルディ、イッパイアッテナ、双吉、鬼灯達も回復のサポート、守備のサポートに備えて、それぞれ動く。
「あんたにはお友達が一杯、ね。腹が立つわ。お友達の泣いている所、見たい?」
 くすりと笑うヨルダ。そして、次の瞬間、ハルバードで瑠璃、綴、マークを一気に薙ぎ払う。それと同時に、彼等にかけられていた守護が打ち砕かれた。
「中々に面倒な相手ですね。あのハルバード使いのメイドさんは」
「私も出来る限りサポートします」
「沙那さん、お願いするね」
 沙那の言葉に、綴と瑠璃は頷く。
「一緒に攻撃を合せましょう」
「ああ、頑張ろう」
 綴と瑠璃はヨルダに同時に攻撃をしかける。二人の急所を狙った電光石火の一撃は見事にヨルダにクリーンヒットする。その間に沙那は雷の力を使って瑠璃達に護りの壁を展開させた。
「DRONE EXPAND」
 マークもドローンを展開させて自分達の守備力を高めていく。
「「切り裂け!! デウスエクリプス!!」」
 テレサはティーシャにジャイロフラフープを搭載させ、神喰の双円刀『デウスエクリプス』により、ヨルダを急襲、切り裂いた。
「ピコさん、宜しくお願いします」
「はい、了解しました」
 ユーリエルとピコはそれぞれ、再びマーク達に向かって鎖と粒子による守りの力と集中力を高めていく。ミーミアも雷の力を使って瑠璃の力の強化を図った。
 ヨルダは思考を巡らせる。普通に考えれば、この中で一番危険な相手は瑠璃。何故か気になるのはマーク。しかし――それ以上に憎らしいのは、ぬくぬくと守られているテレサだ。
「……絶対、あなただけは――殺す!」
 鋭いハルバードの切っ先がキラリと煌めく。それと同時に再びテレサを狙って一気に貫いた。その強力な突き攻撃は、守りに入ったテレーゼや双吉、イッパイアッテナもテレサと一緒に貫き、吹き飛ばす。
 二度目の急襲とあって、今度は沙那と綴、ミーミアも一緒に慌ててテレサの手当てに向かった。また、ジョルディ、鬼灯も回復をサポートする。
「僕がいる事を忘れるな!」
 瑠璃はヨルダの注意を向けるように声を上げると、肉食獣の霊気を纏わせた胴払いの一撃を放つ。マークも、テレサではなくこちらに敵意を向けるように赤い瞳でヨルダの思考をかき乱した。
「……私は負けません」
 テレサは何とか立ち上がるとジャイロフラフープを用いてヨルダに向かい、一斉砲撃を行う。更にティーシャがエネルギー光線を撃ち込んだ。
 ピコとユーリエルも、お互いに頷きあい、自身達に集中力と守備力を高めていく。

●許せない者
「……何よ、何よ、何よ!!」
 ヒステリックにヨルダは叫んだ。
「いいわね、あんたはお友達が一杯で。あなたも、あなたのお友達にもイライラする」
 自身も攻撃はある程度受けてはいるのだが、そんな事は気にならないらしい。ヨルダの許せないものはテレサとテレサを守る相手だ。
「全てを壊す……壊してあげる!」
 ヨルダのハルバードが煌めくと、再びマーク、瑠璃、綴を一閃した。しかし、ヨルダは一閃した相手よりも、テレサを睨んでいる。彼女の憎しみは確実にテレサに向かい、それがテレサの周囲にも及んでいる、と言った方が正しいのかもしれない。
「皆さん、回復します」
 沙那が直ぐに動いて、綴達へ雷の障壁を作り上げて回復させていく。
「こちらもテレサさんを壊される訳にはいかないんだ」
「あなたは危険な存在です。こちらが壊す側なのです。……私でも、やれば出来るのです!」
 瑠璃の足払いに近い急所を狙った蹴りと、綴の凍結の一撃がヨルダに向かって襲い掛かる。
 他のメンバーも手伝ってくれているが、テレサだけではなく多くの人が狙われる状況なので、マークもドローンを展開し、守りを固めていく。一気に加護類が消されてしまうのはやっかいだ。幸い、テレサの方にはそちらの攻撃が飛んでいないので、他の人達に任せる事が出来るのが安心ではある所なのだが……。
 そのテレサもティーシャと共に神喰の双円刀『デウスエクリプス』をヨルダに放って切り裂き攻撃を行っていく。ティーシャも合体技の後、体制を整え、凍結光線を撃ち放った。
 ピコも攻撃に移る。氷結を伴った螺旋を使ってヨルダを攻撃していく。一方のユーリエルは、念のためにもう一度鎖を使った守護星座の力を用いてマーク達の守備力を上げていった。
「ふふっ、あはははは!」
 かなりのダメージを受けている筈なのだが、ヨルダはさして気にしていない様である。寧ろ、この状況すら楽しんでいるかのようだ。
 彼女には回復手段がある。しかし、それを使う様子は見受けられない。回復よりも……テレサを狙う事の方が重要な様だ。
 そう、自らを犠牲にしてでも、彼女を壊してしまいたい。強い殺意の様なものを感じる。
「私が死んだとしても、テレサ、あなたは道連れよ?」
 再びハルバードは輝く。その矛先は間違いなくテレサだ。今回、テレサへの守りは薄く、どちらかというとサポートの人頼りの所がある。だからこそ、余計に狙われるのだろう。
 自身の怪我の痛みなど気にせず、ヨルダは一気にテレサを狙う。そして、再び、テレサと彼女を守ろうとしていた他人ごと、突き差し、吹っ飛ばした。
 勿論、直ぐに回復能力を持つ仲間達がテレサの元に駆けつける。しかし、いくら回復しても、確実にダメージが溜まってしまう。ここまで、テレサが狙われるのは想定外だった。
 ……そう、ヨルダがここまでテレサに執着しているとは思わなかった。しかし、彼女にとってテレサの置かれている環境は、余りにも羨ましく、余計に怒りを増幅してしまったのだろう。マークの狙いである『怒り』も槍による一閃で、単体狙いになっていないのだ。
 ヨルダの想いは分からない。しかし、テレサへの憎悪は確実に感じる。それも捨て身になりつつある。こういう相手程怖いものは無い。こうなると、早期決着をつけるしか無い。
「力を借りるよ!! グリフォン、その武威を示せ!!」
 瑠璃は生家で結ばれた太古の盟約により伝説の霊獣グリフォンを召喚すると、ヨルダに向かって解き放つ。
「身体を巡る気よ、私の掌に集まり敵を吹き飛ばしなさい」
 更に綴の気功に依る攻撃がヨルダに直撃する。
「TARGET IN SIGHT」
 マークも魔法光線をヨルダに向かって放ち、テレサもジャイロフラフープから一斉に主砲を撃ち放った。更にピコは急所を狙い強烈な一撃を加え、ユーリエルはチェンーンソー剣でジグザグに斬り裂いた。
「……私は、負けない。テレサだけでも道連れにする」
 ヨルダが取ってきた手段は、テレサ単体を狙う物。同じグラビティを使えば命中率は落ちる。それでも、彼女はそれを選んだ。一種の賭けだ。それだけ、テレサを道連れにしたいのだろう。それは、一種の執着と信念さえ感じさせた。
 一か八か、その賭けにヨルダはかける。……そして、その執念は確率さえ凌駕した。煌めくハルバードは、テレサを貫く。勿論、庇ってくれる人達もいるが、それすら凌駕する……ある意味、彼女の最後の一撃。
 テレサも直ぐに手当てされるが、ミーミアによって、彼女の攻撃力もかなり高くなっている。ヨルダを撃破するには十分なくらいに。
 だから、後はおぜん立てをする位だ。
 瑠璃は足払いをするように攻撃をしかけ、綴は凍結の一撃を放つ。
「貴方の運命は……あら、お気の毒。負のサイクルに踏み込んでますね?」
 沙那の占いにより、ヨルダは悪魔に齎す魔に侵された。
「ティーシャさん、宜しくお願い致します」
「ああ、当然だ」
 ティーシャにジャイロフラフープが搭載され、二人の合わせ技が発動する。神喰の双円刀『デウスエクリプス』……それが、ヨルダへの最後の攻撃になったのだった。

●仲間がいる大切さ
「姉妹機が多いのも困りモノですね」
 戦場の跡地をヒールしていた時、ピコがテレサにそう話しかけた。ピコ自身も姉妹機との因縁に思う所があるからだ。
「……でも、ピコ様を始め、皆様が私を助けに来て下さいました。今、思うと、ヨルダは寂しかったのでございましょう。私には、こんなに助けに来て下さる方々がいらっしゃったのでございますから」
 テレサは思う。今回、かなり集中して狙われた。だが、その時に発せられたヨルダの言葉は、ある意味、寂しさを感じさせるものだった。テレサには守ってくれる人達がいるのに、自身はそうではないと。
 それは、テレサにとって仲間達の存在を何よりも心から嬉しく思える事でもあるし、今回の戦いで、相当傷つくはめに陥ったが、それでも戦えたのは、一重に皆がいたからだ。
 それが、ヨルダと大きく違っていたのだと思う。
 それにしても、と、マークが話しかけてきた。
「あと何人来るんだ……」
 彼の疑問も最もだと思う。短期間に立て続けにテレサは襲われたのだから。しかし、それはテレサにも分からない。
「まあ、テレサはやらせんよ。何度来ようとな」
 とても頼もしい事をティーシャが言ってくれる。
「でも、テレサさんが無事で良かったですよ」
「ええ、そうですね。一時はどうなるかと思いましたが……」
「そうだね。本当に良かったよ」
 綴、沙那、瑠璃の言葉にテレサも嬉しくなる。
「そうですね。テレサさんの無事だった事が一番嬉しいのですから」
 ユーリエルの言葉に、テレサはアンニュイな表情のままだが、とても嬉しく感じる。助けに来てくれた人達が大勢いる。それこそが、自らの宝物だと思うから――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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