年明け前の詐欺師

作者:久澄零太

「ちゅーわけで、奴をぶっ殺すのでちゅ☆」
 待て、待つんだ、帰りたくなるのは分かるんだがブラウザバックを連打するのはやめるんだ。
「人を騙すような輩に生存権はない。抹殺絶滅待ったなし」
 突然据わった目になって殺意マシマシな鳥さんはチーズを研ぎ澄ます。
「かつて、猫は干支を決めるアニマルレースにおいて鼠に騙された。一方鼠はあろうことか他者を利用して真っ先にゴールするという暴挙にまで出ている。このような輩が今なお世の中に生きているなど許されようかいや許すまじ」
 鼠捕りを磨き始めた鳥さんはその中心にチーズをセット。
「いくぞ同志達。卑怯者をぶち殺すのだ……!」
『イェスキャット! キルマウス!!』

「皆大変だよ!」
 大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)はコロコロと地図を広げて、とある日本家屋を示す。
「ここに猫は鼠に騙されて干支に入れなかったから鼠は抹殺すべきってビルシャナが現れて、町中に鼠捕りを仕掛ける計画を立ててるの!」
「害をもたらす鼠の駆除なら、放っておけそうですが……」
 多分そんなに甘くないんだろうなーって遠くを見るベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)。その予想は正しく。
「あらゆる鼠を絶滅させようとして、鼠っぽい獣人の人を襲い始める前にやっつけちゃって欲しいの!」
「つまり、やられる前にやれ、と言う事だな」
 アップを始めたブリジット・レースライン(セントールの甲冑騎士・en0312)へ、ベルローズが脳筋を見る眼差しを向けるが、何も間違ってないから一旦置いといて。
「信者は鼠の良さを語ると目を覚ましてくれるんだけど、実際の昔話の中に鼠がズルして最初の干支になったっていうお話もあるから、説得は難しいかも……いざとなったら、信者をバーンって気絶させちゃったほうが速いかもね!」
 わーい脳筋にしかならない流れだぞこれー? 説得になるか、戦闘になるか、番犬達の知能レベルが問われる……?
「なんていうか、猫としては複雑な気分なんだけど……とにかくやっつけちゃってね!」
 シュッシュッ、拳を振るう白猫に見送られて、番犬達は装備を整えるのだった。


参加者
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)
篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
クロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937)
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)

■リプレイ


「害獣として知られる鼠……病原としても知られる鼠……それの、良いところって……」
 太陽機の中、頭を抱えて座り込むシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)。鼠を擁護しなければならないのだが、負の側面しか出てこない。
「……すいません。今回はちょっと説得が思いつかないです、ギブアップです」
 考える事をやめたシフカは鎖を磨き始める。完全に殺る気だ……。
「え?説得?面倒なので物理で黙らせますね。鼠に慈悲などいらぬので……」
 白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)に至っては、殺意を隠そうとすらしてねぇ!?
「まずは罠を捜して解除する必要があります。そのために俊足のブリジットさんに捜索に向かって頂きたいのです……とりあえず隣町」
「戦場を離れろと言うのか……?」
 一方、非脳筋と思われるベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)はブリジット(脳筋)を排除するスタンス。しかし、事実上の敵前逃亡を促されて眼光が研ぎ澄まされるブリジットを説得する言葉を彼女は持ち得ているのか!?
「離れるのではありません、別任務をお願いしたいのです」
 ここで進み出てきたエニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)は通信機を取り出して。
「かつては伝令を司っていたその駿足、今こそ活躍の時でございます」
 騎士人馬に、黒い方の人馬(獣人)が微笑み。
「太陽騎士の予知は未来を読み解くものですが、もしも既に町中に鼠捕りが仕掛けられていた場合、それを一般人が撤去してしまえば次はその人々が狙われるでしょう」
「民草が巻き込まれる前に片付けてこい、と言う事か……」
 一応は納得したブリジットだが、エニーケの通信機をじー。
「戦場では役に立たないと聞いているが?」
「それは番犬とデウスエクスの趨勢を決める大きな戦いの話です。今回は下らな……もとい、細やかな諍いですから」
 話がまとまる一方、エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)は窓際に頬杖をついて、小さくため息。
「思うんだ」
 何を?
「なんか私、大食いネタキャラ扱いが定着しちゃってないかなって」
 定着していないなら、ブリジットは戦場に出ない策士だろうよ(つまりありえない)。
「ここは現役ウィッチドクターで医大生として、知的クールなシリアスキャラとしての真価を示す時じゃないかなって」
 小さく微笑み、ありもしない眼鏡を押し上げるエヴァリーナだが俺の経験上、このパターンは既にネタ堕ちしてるヤツだぞ?
「あ、ユキちゃん、お仕事上りにいいお店は……」
「ないよ」
 半眼ジト目の白猫と、目をピリオドにして首を傾げる医大生。
「ユキちゃん、お仕事上りにいいお店は……」
「聞き間違いじゃないから同じ質問しないで!?」
 ガーン!ショックでエヴァリーナが崩れ落ち。
「毎回ご飯食べるところが近くに在るわけないでしょ!?」
「そんなぁ……」
 さめざめと涙するエヴァリーナの傍ら、クロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937)は真ん中に穴が開いたピザ生地を構えて。
「事前情報の通りなら、ビルシャナがチーズを持ってるよね?」
「そっか、鳥さんからもらえばいいんだね!取りあえず信者にならなきゃ……」
「待ってノーチェさん、本来の目的から離れてるよ!?」
 ユキの制止を振り切って、エヴァリーナは真っ先に降下していく……。


 所変わってとある日本家屋、その蔵の前。
「鼠共を仕留める時が来たのだ……!」
 悪鳥顔で教祖が蔵の鍵を開けると……。
「美味しい~!チーズによって融点が違うと、チーズでチーズフォンデュができちゃうんだね……!」
「ベーコンもいいけど、ウィンナーにチーズをつけても美味しいぞ!」
「めっちゃフォンデュってる!?」
 エヴァリーナとクロウを筆頭に、番犬達によるチーズフォンデュパーティーなう。
「こんな時こそお野菜です。じゃが芋にほうれん草、人参、ブロッコリーをくぐらせればあら不思議、サラダグラタンに早変わりです」
「こんな時でも人参です。人参こそが至高の食材にして最高のお野菜……」
 野菜狂のシフカが野菜料理作り始めるしエニーケは溶かしたチーズをスープ代わりに人参鍋を始める始末。食い物依頼じゃないのに野菜を持ってるってどういう事?
「「お野菜【人参】の素晴らしさを布教すべく持ち歩くのは基本でしょう!!」」
 お前ら神堕ちしてないよね?突然羽毛と翼が生えたりしないよね!?
「あちしが……あちしがしっかりしなくては……!」
 シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)が、義務感に駆られて震えている……だと!?
「落ち着くっす。番犬がバーバリアンの集団だと思われたら後々の活動に響くっす。ここは番犬のあふれる知性を見せつけるべきっす」
 シルフィリアスは深呼吸。鳥さんへと向き直り。
「いいっすか、鼠は知能が高くて危険がないか偵察を出してから行動したり、痕跡を消して行動したりすごい厄介なんすよ」
「そうだろう、鼠はやはり死すべき悪なのだ……」
 鳥オバケが聞きの体勢に入ったのを確認してから、早速シルフィリアスはカードを切る。
「罠を用意しても罠と見抜いて近寄らなかったり、毒の餌も毒だと覚えて食べなくなったりと、駆除するのも簡単じゃないんす。鼠捕り程度でどうにかできると思ってるんすか!」
「え、いやほら……我々は同志を集う一環としてやってるから手軽さがウリでね?」
 教義の根幹は否定されてない為、シルフィリアスのお説教に強く出る事ができないビルシャナはオロオロ。その翼にあった鼠捕りをシルフィリアスが強奪、異形の翼にバシン!
「てばさきっ!?」
「鼠を駆除するためにはまず掃除っす。掃除して鼠が住みにくい環境を作るっす。そして鼠の餌になる生ごみの処理をしっかりやることっす、こんなの仕掛けてる暇があったら町中の掃除をするっす!」
「イェスサー!!」
 翼の痛みに涙目な異形が敬礼した瞬間、その頬を魔法弾が掠め、焦げた蔵の壁に小さな稲妻が走る。
「マム、っすよ?」
「い、イェスマム!?」
 鳥さんはお掃除の準備を始めた。


「鼠捕りは鼠以外が引っかかる事もあるんだよ?それこそ猫が興味本位でじゃれ付いて前足を挟んだりしたらかわいそうじゃないか!そんな装置をばらまこうだなんてそれでも猫好きかー!」
「人をフォークで指すんじゃありません!」
 三角巾で頭羽をまとめた鳥オバケにクロウがくってかかるが、逆に怒られつつ。
「いいんだよ、後で父さんにバレなきゃ怒られないから!そんな事より、鼠を絶滅させようって言うけど、イメージしてるのは害獣としての鼠だけでしょ?チンチラ!リス!ハムスター!カピバラ!そういう無害でかわいい鼠の仲間たちも手にかけようっていうのかー!モルモットなんてかわいいだけじゃなく、人と特性が近いからアレルギーの実験動物として役立ってるんだぞ!」
「鼠は世代交代が早いので、ハツカネズミなんかは新薬や先端医療の試験に用いられ、その成果は確実に人々の暮らしに貢献しています」
 クロウの叫びの横で、ベルローズはビジネススーツに眼鏡をスチャ。鼠の犠牲によって治療法が確立された病を記録した本を開き。
「ライフサイクルが短いという事は、試験に要する期間が短く済むメリットがありますし、鼠は多産なので検体の確保も容易ですね。移植実験用に改良された個体も居るそうで、こういった鼠達のおかげで、かつての不治の病ですら完治、快癒が夢ではなくなってるんです」
 ベルローズは最後に鳥さんをズビシッ。
「あなたが今生きてるのも、鼠達のおかげかもしれませんよ」
「それは実験用ラットの話だろう?ならば、他の鼠は抹殺だ……!」
 殺意漲る鳥さんの肩を、篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)がポムン。
「俺のお空の旅闇パ候補を潰すとはいい度胸っす」
「何言ってるのこの人?」
 無表情で圧をかけてくる佐久弥相手に、鳥さんもドン引きである。
「え、知らないんすか?最近話題のソシャゲっすよ」
 鳥さんにアプリの画面を見せながら。
「他にも、忍な空のカエル顔主人公めっちゃ格好いいじゃないっすか。ト ジェ はコンビでこそ良いんす。黄色い電気鼠のずんぐりむっくりも良いし、緑なライバルの塔とかずんと来るし……知らないっすか?」
 一部検閲入ってるぞ!?お前もう黙れ!
「え、それ本当に鼠の話……?」
 おめめが点な鳥さんの肩を、佐久弥がガシッ。
「是非やりましょうっす」
 布教するんじゃない!しかし狐姉妹モドキはよいものです。
「やってるんすか?」
 んなこたいいんだよ仕事しろよ!!
「ところで……」
 溶けるチーズを伸ばして、パスタ風に巻き取ってからチーズにフォンデュして頬張るエヴァリーナがふと、思い出したように。
「猫が相手を騙す有名なお話もあってね?長靴を履いた猫とか、鳥さんの理論で行くと猫にも生存権なくなっちゃうんだけど、それはいいのかな?」
「よいのだ、鼠だけが罪悪の塊なのであ……」
「あと鳥が人を騙すお話もあるよね」
「質問したなら返事を聞いて!?」
 チーズに夢中なエヴァリーナは、もはや流れ作業の如く。
「舌切り雀とかブレーメン音楽隊とか、これは鳥さんも生存権ないから自ら焚き火に飛び込んでセルフ焼き鳥になるしかない流れだね?人間が人を騙すお話なんていちいち挙げてくのが大変なくらいにたっくさんあるから、信者さんも生存権ないよね?」
「やべぇ、こいつただのシリアルキラーだ……!」
 エヴァリーナがベーコンにフォークを突き刺し、溶けたチーズの中をくぐらせて一口で頬張ると、にやりと口角を上げる。影の在る眼差しは、信者達の肉を品定めして……なんて事はなく、本人はチーズ食ってるだけだし、彼女の眼に影があるのはリングピッツァマルゲリータを焼き上げたクロウを狙ってるから。
「まぁ実際、誰が悪いって言いだすときりがないっすよね」
 などと佐久弥がいう事には。
「おむすびころりんとかもそうっすけど、あれ、無欲なおじいさんが鼠から財宝を貰い、強欲なおじいさんが鼠を騙そうとして返り討ちに合うお話っすよ?鼠が被害者の物語もあるっす」
 いいっすか?話を区切り、佐久弥は信者達を正座させて。
「お猫様は、お猫様であるがゆえにかわゆく尊いんす。そして既に話があったように、猫も騙しているんす。猫被りって言葉は知ってるっす?騙すかどうかは問題じゃないんす……そう」
 ファサッと、翼を広げるように両手を広げて。
「ただ好きなものは好きと愛でればいい。そこに否定を持ち込むとか無粋っすよ」
 こいつも?こいつもなの?ビルシャナってるの!?
「もはや、猫と鼠の問題ではないでしょう」
 混沌とし始めた現場を取りまとめようと、エニーケが仲裁に入ると。
「鼠は自分に正直なだけでしたのよ……それが卑怯であろうとなんであろうとね。勝負というのは自分に正直な方が勝つのが常というもの。後からガーとかダーとか抗議するのは負け犬の遠吠えに過ぎません」
 犬ってガーとかダーとか鳴く?
「そこはお気になさらず」
 サラッと流して、エニーケは両手を広げて……いや待て、この流れ何回目!?
「つまり足腰の強さと我慢強さがウリのお馬さんが最強です!」
『どうしてそうなった!?』
 全員からの総ツッコミ!まぁ、そうなるな……。
「ふふふ実物を前にしても同じことが言えますか?」
 スッと、エニーケが蔵の入り口を示すと。
「本日のお馬さん、ブリジットさんです!」
 ドアの隙間からブリジットが覗いてた。
「恥ずかしがらないでいいんですよ?さぁ、お馬さんとしての誇りを胸に真ん中へ!」
「私はセントールだと何度も言っているだろう!?」
 現場には鼠派と猫派と馬派が乱立。勝利の栄冠を手にするのはどの勢力だ!?
「チーズ派もいるよ!!」
 エヴァリーナ、頼むからゴルゴンゾーラ片手に余計なカオスを生み出さないでくれ。


「猫の社会的地位向上と普及には鼠の存在がすごく大きいんだけどなー……それまで狩りのライバルだったのが、農耕が始まり穀物を貯蔵するようになって、それを狙う鼠を駆除するために飼われ出したのがきっかけなんだから」
「つまり、猫は鼠ありきの地位って事っすね」
 クロウの呟きに佐久弥が頷き、エニーケが首を傾げて。
「それなら日々は農業を手伝い、いざとなれば武士を乗せる騎乗動物だった馬こそ、人の発展と共にあった生き物故に最高位にあるのでは?」
「スコルーク、私の背に手を置くのはやめてくれ。まるで私が馬の一例のように見える」
 半眼ジト目のブリジットとキラキラおめめ(前髪で見えないけど、馬ヘッドの左右から光が零れてる)のエニーケが見つめ合う。
「しかし、一番有名になった、と言えるのはやはり鼠ですよね?」
 ベルローズが名状してはならない人鼠の絵画を掲げ……それは組織でも接触禁忌と謳われる怪物だぞ!?
「そもそも鼠皆殺しって、生態系のバランスブレイクもいい所なんだけど……」
 なんでガチな話ぶち込んでくるんだよエヴァリーナ!?
「……面倒だから置いといてチーズを食べよう」
 働けぇ!
「ふむ、つまり話をまとめるとこうですね?」
 明日香が深く思案していたのか、降ろしていた目蓋を開けば。
「鳥さんをコロコロして事件解決すればよろしい、と」
 ただのバーサーカー!?
「鼠に慈悲など無用です。しかし鳥さんは逃せない。もう殴るしかありませんよね」
 信者の頭をガッ!した明日香。握力に物を言わせるのかと思いきや。
「ですが、私は殴る蹴るに頼る脳筋ではありません」
 バヂバヂ!ボンッ!!
「苦しむ前に片付けて差し上げましょう」
 電流で信者の頭が爆ぜてアフロに!?真っ黒焦げになった信者を投げ捨てて、明日香はにこり。
「ご安心ください、命までは取りません。えぇ、命『は』」
「こいつ皆殺しならぬ皆アフロにする気だー!?」
「落ち着くのだ!奴は所詮一匹アフロ量産機。数で圧倒すれば……」
「ニャーッ!」
 鳥さんの顔面にシフカが跳び蹴りをブチ込み壁に叩き付け、拳を丸めて構える。
「私悪くないもん……意味わからない教義を掲げるビルシャナが悪いんだもん……」
 クールキャラのはずが脳筋ロールになってしまったせいか、頬をぷっくり膨らませて。
「食らえ猫パンチ!」
「トサカ!?」
 顔面にスナップを利かせたフック!
「猫両目隠し!」
 もう片方の猫手で左右からパーン!
「猫跳び膝蹴り!」
 頭を抱え込み嘴に強烈な膝ァ!……これ猫関係ある?
「そして必殺の……」
 ピヨシャナ状態の異形から距離を取ったシフカは四足に構え。
「猫ビーム!!」
 前脚を上げて猫のポーズで、目から放たれる光線がピヨシャナを焼き尽くす!!……猫関係ないよね!?
「教祖様がやられた!?」
「早く逃げ……」
 逃走を図る信者だが、扉の前にはエニーケとブリジット。早速ブリジットにとっ捕まった一人が吊るし上げられて。
「わかっているでしょうが、信者の人には手加減でお願いします」
「死なない程度に殴ればいいんだな?」
 鳥さんに猫パンチのラッシュを叩きこむシフカに促され、ブリジットは信者をシューッ!信者の群れに超!エキサイティン!!
「素晴らしい腕前ですわ……私も続かなくては」
「ひっ!?」
 エニーケは信者の胸倉を掴み上げると、しかしその顎先に人差し指を添える優雅なスタイルのまま、逆の手の中指を親指に引っ掛けて。
「馬って、人間で言うなら中指一本で全身を支えているそうですよ?つまり、この一撃はお馬さんの蹄相当の一撃……!」
 スパァン!デコピンで派手に吹っ飛ばされた信者は意識を手放した。
「なんて連中だ……」
 猫殴りにされた鳥さんが逃げるが、紫のスカートがヒラリ。
「魔法で吹き飛ばせばINT的な何かの高さをアピールできるはずっす!」
 杖を振るえばシルフィリアスの服が弾け飛び、彼女の体を七色の光が包み込む。散った布地はリボンに変わり、彼女の体に結びついてはワンピース衣装を形作っていく。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
 かーらーの。
「まどろっこしいからタメなしでいくっすよ!」
 ブイサインを目元にあてて、ウィンク一つで魔法陣が展開。ついでに牙を生やした髪が鳥さんをモグモグ。動きを封じて高く掲げると。
「鳥らしく大空に羽ばたくといいっす!」
 ゴウッ!放たれた光の奔流が異形を飲みこみ、雲の向こうへと吹き飛ばしてしまった。
「恐ろしい敵だったね……」
 エヴァリーナは青空の彼方で微笑んでる鳥さんを眺めるが、チーズピザ食ってるからどうにも締まりがない。
「って、それ自分のリングピザ!!」
「え、置いてあったからいいのかなって……」
「騒がしくなってたから片付くの待ってたのにー!!」
 しかもクロウのやつ横取りしてたのかよ!?
「ブリジットさん、折角ですから人参のチーズフォンデュでもいかが?」
「……それ大丈夫なのか?」
 エニーケに誘われたブリジットは、元がビルシャナ所蔵とあって不審顔。でも食べる。
「……折角某忍者に合わせて、爆発するペンギンビルシャナ人形持ってきたのに出番なかったっす」
 佐久弥テメーマジでいい加減にしろよ!?ていうかそれペンギン違いだろ!?
「ちゃんと悪臭をばら撒くっすよ?」
 余計アカンわ!!
(後で大神さんをなでなでもふもふしにいこう)
 番犬達の喧騒を背に、そんな事を思うシフカは一足先に撤退していくのだった。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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