ヤンキーが乱入する成人式

作者:なちゅい


 千葉県某所の公民館。
 この日は成人の日とあって、各自治体において成人式がとり行われており、この式場にも100名程度の新成人が集まっていた。
 多くは大学生、専門学校生だが、すでに就職している者も少なくない。
 学生時代のクラスメイトと再会し、思い出話に花を咲かせる新成人達。
 これから式が始まろうというタイミングになって突然、公民館の壁を破壊して乱入してくる空気の読めぬエインヘリアルの姿が。
「成人……式? うあ、マジだりぃ」
 入ってきたのは、黒髪をリーゼントにし、そり込みを入れた大男。
 特攻服にも見える服は一応、鎧の役割も果たしているらしい。
 そいつはバールのようなものを肩に担ぎ、この場の成人達へとガンを飛ばす。
「エインヘリアルだ!」
「逃げろ、殺されるぞ!!」
 ようやく大人になったのにという気持ちの新成人も少なくなく、これからやりたい事をたくさん抱えた者も多い。
 殺されてはたまらないと、新成人達は我先にと会場から飛び出そうとするが、100名の人が集まった入口は混雑してしまう。
「遠慮すんな、一緒に大人の遊びやろぉぜ!」
 エインヘリアルは両手に持ったバールのようなものを、片っ端から新成人達へと叩きつけて命を奪っていくのである……。


 ヘリポートへと集まるケルベロスの中、アイスエルフの少女、ミルファ・イスト(美幼女ガンナー・e85339)がこんな話題を挙げる。
「成人式で暴れ回る、ヤンキー風のエインヘリアルの罪人が出ないかなって思ったの」
 それを元にして、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がヘリオンで予知を行うと……。
「うん、それらしき罪人エインヘリアルの出現を確認したよ」
 アスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者であるこのエインヘリアルを放置すると、多くの人々の命が奪われてしまう。
 また、その罪人の行為によって、人々に恐怖と憎悪を振りまくこととなる。
 そうなると、地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅らせることに繋がってしまうので、是が非でもこの場で倒してしまいたい。

「罪人エインヘリアルは、ダレルという名前の男だよ」
 身長は3mほど。地球人などからすればかなり大柄な相手だが、エインヘリアルとしては一般的な体格だ。
 ヤンキー風の見た目をしたこの敵は、式場の脇の壁を破壊して内部へと入ってくる。
 そして、エインヘリアルは2本のエクスカリバールを手にして、ジャマーとして立ち回る。
 現場は、千葉県内某所のとある公民館だ。
 町内会規模の自治体の公民館である為、さほど大きな場所ではない。式場参加者もだいたい100人程度といったところ。
「避難勧告はエインヘリアルが出現してから始めてほしい」
 人がいない場所にエインヘリアルが出現すると、多数の人が集まる場所へと移動する可能性が高い。その状況まで予知では確認が難しいので、敵の出現後から対処を始めたい。
 一応、数人の警備員が常駐してくれており、警察隊も程なく駆けつけてくれる。
 それらと連携を取りつつ人的避難を進め、罪人エインヘリアルへの対処を進めたい。
「相手は使い捨ての戦力として送り込まれていることを自覚しているから、逃走せずに死力を尽くして戦うはずだよ」

 事後は公民館へのヒールで補修の後、式が開始されるはずだ。
「皆も折角だから、ケルベロスとして新成人達へと祝辞を述べてほしい」
 うまく事が運べば、彼らにとって印象深い出来事になる。
 年上のケルベロスはもちろんのこと、年齢として年下であってもケルベロスとしての視点での話は、新成人達がこの先生きていく上でとても為になることだろう。
「とにかく、新成人達を守らないといけないわね」
 ユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)も、この依頼解決に動くつもりのようだ。
「準備はいいかな。それでは行こうか」
 新成人達の未来は現状、ケルベロス達の手にかかっている。
 リーゼリットは最後にそう参加メンバー達へと告げるのだった。


参加者
カタリーナ・シュナイダー(断罪者の痕・e20661)
フローライト・シュミット(光乏しき蛍石・e24978)
齋藤・光闇(リリティア様の仮執事・e28622)
那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)
ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)
ミルファ・イスト(美幼女ガンナー・e85339)
ローゼス・シャンパーニュ(セントールの鎧装騎兵・e85434)
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)

■リプレイ


 千葉県某所までやってきたケルベロス。
 その日は成人の日とあって、彼らのやってきた公民館にも新成人達が集まってきていた。
「成人式ですか」
 長い赤髪の自宅警備員の少女、兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)はまだ16歳で、成人まではまだ数年ある。
 ただ、大人になるということの大切さを、今の内から考えないといけないと紅葉なりに考えている様子だ。
 この会場の参列者に紛れ、今チームにも何人か新成人がいたようで。
「こんなキレイな振袖着て式に出れるなんて、日本は良い所!」
 オーロラピンクの髪をポニーテールとした医学生、那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)は赤をメインとした振袖を着用している。
 そんな摩琴は自分と同じ新成人達の晴れ姿に興味津々。
 彼女同様に振袖着用の女性は多く、一生に一度のイベントとあって、綺麗に着飾る人は多い。
 また、男性はスーツが多めで、袴姿の者もちらほら。男性は自分から袴を選ぶことは少なく、家族に勧められて着る者も多いらしい。
 薄紫色の髪のフローライト・シュミット(光乏しき蛍石・e24978)は普段着用のスーツ姿で、参加者として紛れ込む。
 元デウスエクスのフローライトもまた身体年齢は20歳であるらしいが、定命化もあってかさほど意識はしていないようである。
「ううむ、どのような面持ちで参列すれば良いのでしょうか」
 こちらは定命化から僅か3ヵ月のセントール、顔に傷のある大男のローゼス・シャンパーニュ(セントールの鎧装騎兵・e85434)。
 人間状態となった彼はプラチナチケットを使い、礼服で潜入する。
(「距離置かれています? いえ、楽ではあるのですが」)
 騎士としての儀礼に多少心得はあるものの、彼はこの場では不向きだと判断し、できるだけ威圧感を出さぬよう佇む。
 しかし、壁の華ならぬ巌となりて、スカーフェイスを険しくしていた巨漢かつ強面のローゼスは、新成人達や保護者、来賓らの注目の的となってしまっていた。

 さて、予知によれば、罪人エインヘリアルが送られてくるのだという。
 内部に入るのが難しい見た目のメンバーは、公民館周辺で敵の出現を待つ。
「ヤンキー風のエインヘリアルが、ほんとにいるとは思わなかったの」
 緑色のウェーブヘアの少女、ミルファ・イスト(美幼女ガンナー・e85339)は自分の予見が当たっていたことに驚きつつ、絶滅機種種に指定したいくらいだと告げる。
「成人式を邪魔をしてくるエインヘリアルはうざいでございますね」
 灰色の長い髪を後頭部にてリボンで縛った齋藤・光闇(リリティア様の仮執事・e28622)が丁寧な口調ながらも、処すべきだと容赦なく対処する構えだ。
「晴れの日に暴れまわるとは度し難い。大事な式典だものな」
 同じ心持ちで隠れて待機していたのは、ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)だ。
 実年齢こそ不明だが、定命化してもまた身体年齢13歳ほどのオウガであるルイーゼは成人には見えず、かといって見た目も白髪、白い肌と日本人離れしている。
 それもあって、ルイーゼは公民館の非常口に近い位置で事態が動き出すのをじっと待っていた。
 程なくして、式が始まろうとするタイミング。
 そいつは突然、公民館の壁を破壊して式場へと乱入してくる。
「成人……式? うあ、マジだりぃ」
 黒髪リーゼントの罪人エインヘリアル、ダレル。
 2本のエクスカリバールを手にしたそいつは、この場の参列者全てを睨みつけてくる。
「エインヘリアルだ!」
「逃げろ、殺されるぞ!!」
 逃げ出す新成人とは逆に、エインヘリアルへと向かっていく者達の姿が。
「新成人のお兄さん、お姉さんたちの迷惑だから、サクッと退治するの」
 ミルファと合わせ、摩琴もこの場に現れる無法者に眉を寄せて。
「未来に期待を寄せる新成人を狙うヤツは許さないからね!」
 逃げようとする者に逆らってやってくるケルベロスに、エインヘリアルはにやりと笑みを浮かべるのである。


 晴れの式は、罪人エインヘリアルの登場で一気に殺伐としてしまう。
 入り口へと殺到仕掛けた人々に、ケルベロス達が避難誘導へと当たって。
「大丈夫なの、皆さん、慌てず避難してくださいなの」
 素早く、会場外から非常口を覗き込むように現れたミルファが新成人ら式の参列者へと割り込みヴォイスを響かせる。
「こちらにも脱出経路はある。移動が難しければ、わたしが行こう」
 ルイーゼも別の非常口に立ち、割り込みヴォイスを響かせて経路指示を行う。
 車いすでやってきていた保護者を、ルイーゼは自らの怪力で運び出してもいたようだ。
 内部には、白い翼で低空飛行するユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)の姿がある。
 彼女はミルファの依頼を受け、パニックを起こす人や怪我をしてしまった人のフォローに当たっていた。
「皆様、こちら側にも非常口はございます」
 割り込みヴォイスを響かせる光闇は子供のミルファがつつがなく誘導していることを確認し、ユリアが見ていない場所のフォローに当たる。
 仲間達の誘導が続く中、金髪ポニーテールにスーツ姿のカタリーナ・シュナイダー(断罪者の痕・e20661)も避難に当たりながら、エインヘリアルの方を見て。
「わざわざ底辺層のチンピラの姿で現れるとは、よほど物好きなんだな」
 ヤンキー姿の敵の姿に、カタリーナは相手の姿に思ったままを口に出す。
「それとも、自身の劣等感を自覚してその姿をしているのか?」
 いずれにせよ、ケルベロス達が控えるこの場に踏み込んだ地点でその命運は尽きているとカタリーナは疑わない。
「あぁ……?」
 鋭い視線を向けてくるエインヘリアルが一般人を襲わないよう、カタリーナはその動きに警戒していた。

 避難誘導の間、抑えに当たるメンバーがエインヘリアルを取り囲む。
「んだぁ、お前達は大人の遊びを楽しみたいのかぁ?」
「自分勝手に他者の命を弄ぶのは、大人でも遊びでもないよ?」
 エクスカリバールを照明で煌めかせたダレルの前に颯爽と現れた摩琴は、嘆息してしまって。
「さすが、見た目通り幼稚な考えだよね。そんなんじゃ、誰も命を奪えないよ?」
 ――ボクたちが護るんだからね!
 強い決意を抱く摩琴はエクトプラズムを圧縮させた霊弾を発し、叩き込んだ相手に相手を挑発する。
 そんな彼女へと殴り掛かろうとするダレルの前に、フローライトもまた立ち塞がって。
「暴れる人は……ここに留まってもらうよ……」
 敵のエクスカリバールを受けて服を破かれながらも、フローライトは右手砲より光弾を自らへ撃ち込む。
「護りの力を……」
 自らを淡い光で包み、フローライトはさらに会場から避難する式の参列者へと被害が及ばぬよう立ち回る。
 その間、ローゼスは足止めの為にと接敵して強く地面を踏み込み、相手の足元から刃の様な重撃を打ち込む。
「我々のお相手をして頂こう。否とは言わせぬぞ」
 向かってくるケルベロスに嬉々としている相手へ、ローゼスは抑えとなるメンバーと注目を集める。
 できれば、牽制に留めたかったところだが、相手が本気で攻めてくる以上、こちらも全力で抑えに当たる必要がある。
 控えていた紅葉も仲間達の回復支援の為にと、腕に巻き付く攻性植物から黄金の果実を取り出す。
「奇跡の実りよ、仲間に癒しの力を与え給えー!」
 煌めく光で前線の仲間に新たな力を与えつつ、紅葉はさらなる支援へと立ち回る。
「ちったぁ、たのしめそうだなぁ?」
 舌を垂らすエインヘリアルは品のない笑いを浮かべ、さらに飛びかかってくるのだった。


 避難誘導が進む中、警備員が呼んだ警察が駆けつけ、公民館周辺を囲みつつ、式の参列者の保護に当たる。
 程なく、避難誘導していたメンバーも戻ってくるだろう。
 それまで、確実に罪人エインヘリアル、ダレルは抑えねばならない。
 敵のエクスカリバールフルスイングを受け止めた摩琴が影の如き斬撃で攻め立て、高く跳び上がったローゼスがダレルの顔面目掛けて重力の蹴りを叩き込む。
「この傷ならまだ大丈夫……」
 その間に、フローライトが摩琴の傷の深さを見て、左手人差し指をその傷へと向け、発する細い光で傷を塞いでいく。
「忌まわしき力ですけど、皆の役に立てるのでしたら……!」
 さらに、紅葉が異常を振り払うべく、自身の傷から血液を飛ばす。
 戦線を持たせていたのはたった数分間だが、その僅かな時間は交戦する者にとってとてつもなく長い時間にも思えて。
「ふはは、こんなもんかぁ!?」
 敵は名のあるエインヘリアル。さすがに4人で抑えるには厳しい相手ではある。
 だが、そこに駆けつけてくる複数の影が。
「それ以上はさせないぞ」
 避難誘導を終え、真っ先に駆けつけてきたルイーゼが妖精靴から星形のオーラを撃ち込んでエインヘリアルを怯ませると、カタリーナもまた猛然と飛び込んで。
「チンピラ風情の姿を借りたところで、戦場を掻い潜ってきた軍人に勝てると思っているのか?」
 相手へと威圧し、カタリーナはバスターライフルから魔法光線を発射していき、ダレルへと強いプレッシャーを与えていく。
 その間に、ミルファが自らの小さい体を最大限に活かし、背後へと回り込んで。
「ミルファの動きについてこれるかな? なの」
 彼女は掌より生じた鋭い氷柱を素早く、エインヘリアルの背中へと打ち込んでいく。
「ダレルて、いったかぁ? オメェうざーんだよ」
 そして、最後に迫ってきた光闇が巣の口調でダレルへと呼び掛ける。
「こんな大切な日に襲ってくるて、よっぽど暇なんだなぁ、おい。それか、妬み嫉みか?」
「あぁ?」
 相手も光闇が喧嘩を吹っかけてきていると実感したらしい。
 呼びかけながらも、光闇は自らに魔人を卸すことで自らを強化して。
「まぁ、ええわ。オレ達ともっと遊んでいけよ。最後の遊びになるかもしれねぇけどなぁ」
 一通り、言いたいことをぶちまけた光闇はドラゴニックハンマーを握り、敵に向かって殴り掛かっていくのである。


 罪人エインヘリアルの攻撃は単体攻撃の身とあって、周囲の被害が広がることはほとんどないが、その分一撃が非常に痛い相手。
 それだけに、戦線を支える盾役2人の負担は非常に大きい。
 危険を察し、フローライトが右肩にいる小型攻性植物の「葉っさん」に顔を近付け深呼吸して、態勢を整え直す。
 仲間の危機を察すれば、紅葉も改造スマートフォンを手にして。
「皆が幸せになれるエピソードを、ご覧あれ」
 心温まるエピソードを投稿することで、紅葉はウェブを通じて視聴した人々からの共感によって仲間に癒しをもたらす。
 回復役としてサポートに当たるユリアもまたライトニングロッドを手にし、電気ショックを飛ばして回復と賦活を合わせて行っていたようだ。

 交戦続く中、狙撃役、火力役となるメンバーは一気にエインヘリアルの討伐を目指して。
「ミルファの名において命ずる」
 仲間達が気を引く相手に、相手後方へと位置取ったミルファは、氷属性のグラビティとミルファのグラビティを掛け合わせ、その場に氷の龍を生み出して。
「氷龍よ、敵をかっちかちに凍らせちゃえ」
 術者であるミルファの呼びかけに応えた氷の龍は結界をダレルの周囲へと張り巡らせ、氷で包み込んでいく。
 そこ目がけて、ローゼスは力の限り、蹴りを食らわせる。
 人の姿のまま戦っていたローゼスだが、その威力は人馬時の膂力と一切変わらない。騎士である彼は剛力を持って、万難を排しようとする。
「ちっ……、こいてんじゃねぇぞ、雑魚がァ!」
 両手のエクスカリバールに黄金の雷を宿すダレル。
 だが、それを摩琴が身を挺して受け止める。そのダメージは決して小さくはないが……。
「どうしたの? やっぱり幼稚だね」
 仲間が支えてくれていることを実感し、彼女はにっこりと笑い、相手を煽る。
「プロと素人の格の違いを思い知らせてやる」
 そこで、真横からカタリーナが展開したアームドフォートを一斉掃射して敵の動きを止め、間髪入れずに光闇も砲撃形態としたドラゴニックハンマーから砲弾を叩き込み、相手の動きを止めてしまう。
 エインヘリアルが硬直すれば、ルイーゼが「天蓋の万年筆」の先から作った洋墨玉を飛ばし、ダレルの体を塗りつぶそうとしていく。
「ぐ、ぬぬ……」
 体が硬直して動かぬエインヘリアル目がけ、摩琴が一気に攻勢に出て、召喚した銀のコルトパイソンPPCカスタム【Quick Python Custom】を手にする。
 すでに、シリンダーには飛翔スピード自慢のエクトプラズムがスタンバイ済みだ。
「撃ち抜け! High Speed Specter っ!!」
 高速で放たれた一発は敵の喉元を穿つと、薬液入りアンプルを割ったフローライトがかすみより義姉を召喚して。
「……捉えたよ……『核分裂』……」
 義姉の魔術改変能力とフローライトの量の魔力放出能力が合わさり、敵の核を引き裂いてしまう。
「これで大人しくなるかな……?」
「うぎゃあああああああっ!!」
 エインヘリアルは耳をつんざく断末魔の叫び声を上げたが、それもすぐに止み、この場から完全に消滅してしまったのだった。


 エインヘリアルを倒したケルベロス達だが、それで終わりではない。
 外には、式の再開を待っている新成人達がいる。
 ルイーゼは髪に留めたままの『バレッタデバイス・メメント』を左手を添え、口伝の聖句より即興歌唱を始める。
 新成人達を思い、ルイーゼは未来を自らの手でつかみ取るといった内容の歌を口ずさんでいた。
 フローライトは光弾を発し、ミルファは光り輝く掌を翳して破壊箇所を幻想で埋めていく。
 翼を広げたユリアはオーロラの光を発し、紅葉は改造スマートフォンを操作し、今回の1件について皆に共感を得ることで公民館を修復していた。
 武器から蒸気を発して作業に当たっていた摩琴は大きく頷き、作業を完了させて。
「それじゃ、改めて成人式をやっちゃおう♪」
 彼女は嬉しそうに、外で待っていた新成人達を中へと招き入れていた。

 数時間遅れで開始される成人式。
 つつがなく進行する式の中、開催する自治体は折角だからと、この場を救ったケルベロス達にも祝辞を披露していただくようにと要望する。
 まず、檀上へと光闇が上がって。
「この良き日に、御学友と再会した事と思います」。
 自然に切れてしまった縁を結び直すのは、とても難しい。再度この場で結ばれた縁を大事にと光闇は告げる。
「その縁を大事に、切れてしまったら永遠に会えなくなるのかもしれないのですから」
 すでに、進学などで疎遠となった者との出会いを経験する新成人達は小さく頷きつつ、拍手していた。
「祝辞とは……うーむ」
 ルイーゼは改まって話すことを躊躇い、仲間達の話に耳を傾けることにしていたようだ。
 ケルベロスの祝辞は続く。
「貴方たちは大人となったのです、大人としての責任感を大事にし、頑張って下さいね」
 紅葉は新成人達へと励ましの一言を贈る。
「新成人のお兄さん、お姉さん、おめでとうございますなの」
 続き、見た目幼くも定命化が比較的最近なミルファが輝く笑顔で祝辞を述べる。
「ミルファたち、子供が憧れる、立派な大人になってくださいなの」
 可愛らしくお願いして頭を下げ、拍手に包まれ壇上から降りていった。
「成人おめでとう御座います」
 セントールのローゼスはまだ地球になじんで3ヵ月。含蓄深い言葉は出ないと彼が振った話題は……。
「皆様はワインを飲める年齢になりましたね。あれは素晴らしいものです。是非ワインを嗜み、人生に華を飾りましょう」
 現在、興味津々なワインについて簡潔に伝え、ローゼスは祝辞に代えていた。
「大人になったから、できる事がぐっと増えると思うの」
 そして、自身も新成人である真琴にとっては祝辞であり、抱負でもある。
「でも、それは責任が伴うもの。ボクはその責任を背負えるのが楽しみなんだ」
 最後に、元々、ダモクレスであったフローライト。
「だけど……色んな偶然が重なって……今……ヒトとして『家族』と一緒に生きている……」
 なお、フローライトの家、シュミット家の兄弟は全員、血の繋がりがないそうだ。
「命を……家族を大切に……」
 まだ、デウスエクスとの戦いは続く。
 だからこそ、命の大切さを訴えかけたフローライトの祝辞に、新成人達は惜しみない拍手で応えてくれたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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